皇國の防戦記

長上郡司

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第四章 亡霊少女

56 追憶のグレン

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エリーゼはどこかに去った。




霧が晴れるが如く鮮やかな去り際は、まるで何も無かったかの様な思い違いを起こしそうになる。




が・・・しかし、残念ながら彼女は、先程まで確かにこの場所に居た。




十年以上の時を越え、亡霊となってグレンの前に姿を現したのだ。




彼女は去ったが、グレンは一向に立ち上がれなかった。




全身を激しい虚脱感に苛まれ、指の動き一つ取れないのだ。




“十年以上経つのか・・・もう・・・”




グレンは、エリーゼの最期を実は人伝ながら、ある程度は耳にしていた。




だが、耳で聞くのと目で見るのではやはり違う。




亡霊少女はグレン眼前で、自らの最期の姿を詳細に伝えた後、その無残をまざまざと見せてくれた。




トラウマを直に抉られた。




それも、そのトラウマその物に




深く、深く、根深いその傷を




グレンは抉り取られた。



















“寝るか?・・・もう・・・”




しばらく経ち、ようやく立ち上がれるまでになったグレンは、ベッドに足を向ける。




ふと、窓の外を見る。




暗闇が広がっている。




深く、暗い、漆黒が、窓ガラスを覆い尽くしている。




その深淵の風景を、グレンにある人物を連想させる。




“・・・・・・・・・・・・お前は・・・・・・本当に・・・・・・”




その意識を振り払い、グレンは床に就いた。

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