皇國の防戦記

長上郡司

文字の大きさ
上 下
51 / 68
第三章 山岳城塞奪還戦

50 本陣にて

しおりを挟む
グレン達が本陣の天幕に到着すると、二人の上官であるキリク戦隊長がすでに着席していた。




「お疲れ様です、キリク戦隊長」




「あぁ・・・」




グレンの挨拶に、キリクは小さく頷いた。




「キリク、今回の功労者だ。もっと部下を労ってやれ」




キリクのぶっきらぼうな反応を、ベルフォルト師団長が諌める。




「・・・良くやったグレン」




「ありがとうございます・・・戦隊長」




微妙な空気が流れた。






















「・・・報告は以上になります。」




「ご苦労だった、グレン中隊長。隊員共々ゆっくり休んでくれ」




「はっ、それでは失礼します」




“あれ?軍長は?”




疑問を抱えつつ、二人が天幕から退出しようとすると・・・




「すまない、待たせたな」




軍団長ボルドが入幕した。




配下の幕僚は一斉に立ち上がり、胸に手を当てる。




グレン達もそれに倣う。




「グレン中隊長」




「はっ」




「今回は大義だった、この城を奪還できたことの意味は大きい」




「はっ」




「これからも、国家国民の為、隊員と共に励んでくれ」




「ありがたく」



















                   帰路の会話







「やっぱり迫力が違うな・・・大将軍は」




「貴方も頑張って目指してくださいね?」




「いや、お前がなる方が先だろ?」




「私は軍人としての立身出世には興味がないので」




「あ?」




「前にも伝えたはずですよ、グレン」




空気が変わった。




今までの爽やかな青年将校の顔は、完全に一変している。




冷や汗が出てきた。




夏場にも関わらず、酷く寒気がする。 




先程まで騒がしく鳴いていた夏虫の声がなにも聞こえない。













「少し強めに“掛けすぎ”ましたかね?」




「なにを・・・」




「ふっ・・・」




何かがおかしい。




何だ?




何かが・・・・・・・・・



















「あぁ・・・分かってるよ大隊長、俺はこの國の大将軍になる」




「それは頼もしい」
















これでいいんだ




これで




いい







これで




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく
ファンタジー
 「毒無効」と聞いて、強い能力を思い浮かべる人はまずいないだろう。  それどころか、そんな能力は必要のないと考え、たとえ存在しても顧みられないような、そんな最弱能力と認識されているのではないか。  そんな能力を神から授けられてしまったアラン・ブレイクはその栄光の人生が一転、挫折へと転がり落ちてしまう。  ここは「ギフト」と呼ばれる特別な能力が、誰にでも授けられる世界。  そんな世界で衆目の下、そのような最弱能力を授けられてしまったアランは、周りから一気に手の平を返され、貴族としての存在すらも抹消されてしまう。  そんな絶望に耐えきれなくなった彼は姿を消し、人里離れた奥地で一人引きこもっていた。  そして彼は自分の殻に閉じこもり、自堕落な生活を送る。  そんな彼に、外の世界の情報など入ってくる訳もない。  だから、知らなかったのだ。  世界がある日を境に変わってしまったことを。  これは変わってしまった世界で最強の能力となった「毒無効」を武器に、かつて自分を見限り捨て去った者達へと復讐するアラン・ブレイクの物語。  この作品は「小説家になろう」様にも投降されています。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし

佐倉 蘭
歴史・時代
★第10回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ ある日、丑丸(うしまる)の父親が流行病でこの世を去った。 貧乏裏店(長屋)暮らしゆえ、家守(大家)のツケでなんとか弔いを終えたと思いきや…… 脱藩浪人だった父親が江戸に出てきてから知り合い夫婦(めおと)となった母親が、裏店の連中がなけなしの金を叩いて出し合った線香代(香典)をすべて持って夜逃げした。 齢八つにして丑丸はたった一人、無一文で残された—— ※「今宵は遣らずの雨」 「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

処理中です...