皇國の防戦記

長上郡司

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第一章 英雄の憎悪

09 終了報告

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「クソっう・・・お!ごはっ!」




仮眠中のグレンが飛び起きた。




その拍子に、頭から簡易ベッドを転げ落ちた。




「隊長、何やってんですか?・・・」




数少ない年下の小隊長であるエリアが、まるで不審者を見つめるが如く話しかけてきた。




作戦終了後の報告書を投げられた挙句に、惰眠を貪った挙句の果てにベッドから転げ落ち、頭を




強打して唸っている上司を目の当たりにしては、まあ無理も無いが・・・




「夢見が良さそうだったので、起こさないでおきましたよいやぁ出来る部下だなぁ、我ながら」




「・・・最低の目覚めだよ、畜生が」




“こんな所で何をやってんだ俺は・・・”




「・・・?どういう状況だったっか?」




「戦闘は終了ですよ、被害は予想よりも少なく抑えられました。うちと第一中隊を投入後に決着は




付きました。




アイラはやはり凄いですね、瞬殺でしたよ」




「あぁ、そうかあいつか・・・」




「現在は城門を封鎖、守備固めを行っています。これでどうにか守りきれるでしょう」




「・・・そうか」




いまいち記憶に無い




あまりにも夢見が悪かったからだろうか?




「・・・隊長、大丈夫ですか?戦り終わってすぐに寝込んだから他の者も心配していましたよ」




「すまんかったな、それは俺がやらなきゃいかんのに・・・」




「別に構いませんよ、いつかは自分もやることですから」




このエリアと言う男は、憎まれ口こそ叩くものの、確かな実力を持ち合わせた優秀なグレンの




部下である。




年齢はグレンの一つ下で、主に諜報活動による情報収集を得意とする。




対人の戦闘はあまり得意ではないが・・・




「エリア、終わったよ・・・あっ隊長起きたの?」




天幕に入ってきたのは、先ほどの会話にも出てきたアイラと呼ばれる小柄な女だ。




「あぁ、何が終わったんだ?」




「掃討」




「・・何持ってんだ?お前」




「これ?お土産」




グレンに投げて渡したそれは、人間の生首だった。




「いらねえよ、俺に渡してどうすんだこんなもん。本営に行けや」




「めんどい」




「つれないですねえ隊長も。素直に褒めたらどうですか?喜びますよ?」




「この女がそんな殊勝な性格だと思ってんのか?お前」




「いやぁ、自分は褒められたら素直に嬉しいですよ?もっと褒めてくださいよ隊長」




「気持ち悪りぃ、吐きそうだわ」




一見和やかな雰囲気の会話だが、三人の中央には、未だに血が滴っている敵の首が




転がっていた・・・

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