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本編
リースの日常は箱庭と同じ(リース嬢)
しおりを挟む待ちに待った外出です。家族全員、街の豪商のようなちょっと下品な格好とも思える格好にチェンジ!私もいつものドレスではなく、水色のワンピースを着用している。フリルは一杯あるが、ドレスではないらしい。(父上談)
今日は護衛のデート様も冒険者の格好をしている。メイドのマリアも冒険者の格好。メイドのナーシャはなんかすごく強そうな女冒険者の格好。
こっそり、マリアに聞けば、ナーシャは元Sランクの冒険者なんだとか。
私「すごいね。ナーシャ。」
と言うとナーシャは少し赤くなって、
ナーシャ「ありがとうございましゅ。」
と噛みながら、照れていた。ナーシャは可愛いなぁ。
とか思ってにこにこしていたら、みんなが顔をハンカチで抑えている。一体何が起こったんだろうか?
あ、そっか、みんなナーシャの照れに悶えているんだ!最近、私は萌えと言うのをちゃんと理解できるようになった。わかるぞ~わかる。普段、無表情の人が照れると実に萌えるんだよね!わかるぞ~。
私はいつの間にかドヤ顔になっていたらしく、マリアに、可愛いですけど、今は街中だからと諫められた。
なんで、街中はダメなのかは教えてくれなかったが。
街は凄かった。
市場は活気にあふれ、物にあふれている。ただ、ちょっと路地に入ると治安はかなり悪かった。それに臭かった。
それでも見るもの食べるものすべて新鮮で、楽しく。父上が珍しく高い高いをしてくれたし、初めて肩車をしてくれた。
まぁ、貴族はやらないんだそうだ。市政の人がやっていたので、羨ましいと思って見ていたら、してくれた。
私「父上ありがとう!」
と言うと物凄く嬉しそうな顔をしてくれた。途中、デート様が急に動いて、ゴツンという鈍い音と共に誰かが倒れた気がしたが、そこには誰もいなかったので、デート様も私たち家族も???だったり、幽霊だと兄上がからかったりして、その楽しい外出は終わった。
街から帰って、私は前世の知識を元にちょっと図面を描いたり、書類を描いたりして、父上に提出。
父上が私を天才だと褒めてくれて、のちに王都全体に下水道が通ることになった。
スラムはいつの間にかかなり縮小され、スラムにいた人はほぼ強制的に公務員になったんだとか。どうしてだろう?
今までなかった公衆の安いテルマエ(銭湯)があちこちに建ち、治安もだが、衛生が格段に上がったんだそうだ。今まで夏と冬に必ず流行していた病気も今年はかなり少ないんだそうだ。
私は交換日記で陛下と正妃様にお礼を書かれた。年齢的にも立場的にも直接礼は言えないけど、ありがとうって書いていた。その心遣いだけでもありがたいので、私は、お礼にお礼で返してしまったが。
そんなこんなしていたら、1か月後、ナーシャとデート様が結婚していた。ナーシャはヨイツ侯爵家の5女。自主的に公爵家のメイドになっていたが、かなりの変わり者でうちにいたんだそうだ。知らなかった。デート様が子爵子息なので、かなりデート様が無理しなきゃいけないんだそうだが、婿入りなので、何とかなるとか・・・まぁ、英雄なのだからなんとかなるだろう。二人とも結婚しても、公爵家で働くことは辞めないんだそうだ。
・・・まぁ、婿入り結婚したので、研究都市の人は泣いていたんだそうだが。
そりゃあ、研究都市の英雄様だもんね、デート様。
私は、下水道設計士として、他の都市の図面を描く毎日。
最近では陛下から依頼があり、他国の都市地図ももらって、その下水道設備の地図も手掛けている。
前世の知識があるから思うのだけれど、これは大丈夫なのだろうか?他国のしかも、王都の地図に見えるのだが・・・。
防衛都市とか魔法都市とかの地図を眺めながら、戦争の時に役立ちそうだな・・・。いいのかなぁ。と思いながら作業した。
少なくとも、自国と防衛都市は敵対とは言わないが、あまり仲が良くない。魔法都市も同様だ。いつも中立を謳う研究都市は、比較的味方だが・・・いいのだろうか?
そうして、私はあっと言う間に12歳となった。
入学式へ出発の時、父上はオイオイと泣いて、「せめて、1時間だけでも」と訳の分からないことを言っていた。母上が何回か父上をアッパーしていたので、何とかなるとは思うけど・・・。
兄上がにこやかな笑顔で、父上にドヤ顔していたけど、いったい何がどうしてこういう状況なのかは不明だ。
ぜひとも聞きたいのだが・・・どう聞くべきなんだろうか?
兄上にエスコートされながら、学園に到着。通常は、婚約者がエスコートするらしいのだが、何でか陛下から接近禁止令が王子の方にされているらしい。一体何がどうして?
それに、彼には3歳に会った時以来全く会えていない。きっと、大きくなっているだろうなぁと思う。私が12さいなら、彼は14歳。前世でいうなら中学二年生。まさしく、中二病の年頃か・・・別名思春期病。痛いことをして黒歴史とか作っているんだろうか?とか考えていたら、入学式が始まった。途中、ピンク色の髪の少女が遅刻して、式に乱入する騒ぎがあったが、概ね、それ以外は普通に式が終わった。
各教室にそれぞれ行くことになり、一度、兄上から離れることになった。兄上が駄々を捏ねて、「後、1時間だけ。」と父上と同じことを言ったので、「メッです。兄上。」と言ったら、兄上が倒れてしまった。
慌てて、先生を呼ぶと初老の女性の先生が現れ、「・・・もう、ある意味手遅れだわ。」と言った。なので、物凄く混乱したが、ポンポンと頭を撫でられ、「貴方のせいじゃないから、早く教室に行きなさい。」と促されてしまった。
「私が責任もって病院に連行するから、安心なさい。」と言われ、そんなに重病なのかと聞いたら、沈黙の後、「命にかかわることじゃないから安心なさい。」と言われた。
兄上は一体どんな病気なんだろう?不安ではあるが、大丈夫と何度も言われて、しぶしぶ教室に向かった。
教室につくと、3歳の時に会った王子様に色合いがそっくりの青年が教壇の前に立っていた。親戚だろうか?と思った。
「お久しぶりです。リース嬢。私は、ロイス・リーマンです。ずっと、お会いしたかった。」
と跪いて言われた。
「え?ロイス殿下?接近禁止令が出ているロイス殿下ですか?」
とつい、聞いてしまった。
「はい。接近禁止令が未だに解かれていないので、是非ともご内密に。」
と耳元で言われ、つい真っ赤になる。クラスのみんながガタッと席を立った。振り向けば、なんか殺気立っている。ひぃえ。席に着いたが、視線は消えない。消えていないが、ほとんどその視線は教師のロイス殿下に向かっている。ひとつだけ、私に向けられているが、あんなにカッコイイ殿下から跪かれたのだ、仕方が無い。
いや、それより、未だに殿下に殺気を放っている他の同級生たちはいったいどうしたんだろうか?
次の日も父上が「一緒に学園に行くぅ!」と我儘を言って、母上にしばかれていた。兄上にエスコートされながら、同じ馬車で学園に向かう。昨日は、顔合わせ程度のことしかなかったが、今日はオリエンテーションがあるらしい。
要は、お茶会の授業。殿下がお茶会の主人で、私たちがお客と言う設定。
既に子息子女は勉強済みのことなので、各々挨拶をし、席に着く。優秀者クラスに配属されたクラスメイトは約1名を除き、全員、礼儀作法がちゃんとできており、問題ない。貴族位順に殿下に挨拶に行くのだが、その約一名は、いきなり、順番すっ飛ばして、殿下に挨拶に行こうとして、副担任に怒られていた。その為、その娘以外は全員、殿下に挨拶をし、お茶会を無事終えた。
ちなみにその約一名は、昨日、私に殺気を飛ばした娘で、加えて、遅刻してきたピンク頭の娘だ。貴族位も男爵令嬢。親に作法を教わっていない可哀そうな娘だ。
噂を聞けば、明日にでも別クラスに編入することになるらしい。可哀想に。しかし、別のクラスなら、特に問題はないだろう。このクラス以外は礼儀作法に五月蠅くないのだから。
今日は、お茶会の作法と教室でお茶の歴史なんかの雑談とかテースティングとかをして、終わった。貴族の学校は本当に勉強らしい勉強と違うんだなぁとつくづく思った。
次の日、私以外のクラスメイトが同じ時計のようなものをしていた。聞いても答えてくれなかったが、聞き方が不味かったのだろうか?話しかけた子達が鼻血を出して倒れたので、これ以上追及できなかったのが、正しい。
「我が人生に一片の曇りなし」って言って倒れたんだけど、どこのラオウなのだろうか?
その日から殿下に対する視線が柔らかくなっていたので、まぁいいか。と思う。
次の日、殿下がうちに馬車で迎えに来て、父上に封筒を渡していた。父上は封筒の中身を見てフルフルと震え、殿下が「ざまぁ。」と言ってニヤニヤしていたので、「父上を虐めないでください。」と言うと殿下がショックで倒れてしまった。
しかし、自業自得なので、放置したところ、陛下に私と会っていたことがバレて、今日一日学園に来ることは無かった。
ちなみに、その日、父上と兄上が封筒の中身を必死にクリスタル加工していたのだが、あれは一体何なんだろう?
次の日、ズタボロで、包帯を巻いた殿下が教壇に立った。接近禁止令が解かれたらしい。しかし、殿下の首になんか、隷属の首輪があるような・・・。あまり気にしないでおこう。だって、隷属の首輪にしっかりと王家の紋章がされているんだもの。気にしたら、駄目な奴だ。
次の日、学園の図書館で調べものをしようとしたら、あのピンク頭の可哀そうな娘がつっかかってきた。・・・が、3秒も立たずに衛兵が来て、ピンク頭を回収していったので、会話らしい会話はできず、一体何が起こったのかと風が通り過ぎたなぁ・・・程度だった。
次の日、赤い髪の少年が突っかかってきそうに私に向かって、競歩で来たんだけど、周りのクラスメイトが気付き、近づく前に腋をがっしり捕まえられて、どこかに移動させられていた。
次の日は誰も突っかかりそうにも突っかかっても来なかったが、そこら中から視線を感じる。振り向いても誰もこちらを見ている人はいないので、ちょっと居心地が悪かった。
次の日は、友達を作ろうとして、失敗。言葉が出なかった。練習しようと誰もいない中庭に行き、偶然そこにいた黒縁の猫を相手に練習した。
私「ねこさん、なー?」
猫「にゃーん。」
私「ねこさん、私はリースって言います。」
猫「にゃ?」
私「にゃーん。」
しばらく練習し、教室に戻ろうとしたところ、地面に赤いシミが!驚いて、先生を呼ぶと教室に戻っていいよと言われたので、取り合えず、帰っていった。
その日の夜、父上と兄上がオークションに行くと言って張り切っていた。一体何を購入しようとしているんだろう?母上が父上を必死に説得していたが、「情景付きだぞ!!」と言って母上を困らせていた。
次の日、殿下が同級生のミミー侯爵子息とこそこそしていた。
次の日、クラスメイトの時計がバージョンアップしていた。いいなぁ。私も欲しい。
そのことを中庭で猫さんに言ったら、次の日机の上にクラスメイトと同じ形の時計が置いてあった。うれしいので、今日は猫さんにそれを報告に行こう。
次の日、視線の端に一瞬ピンク頭が見えたような気がしたが、振り向いても誰もいなかった。
次の日、学園から脱落者が2名出てしまったと全校集会みたいなので、発表があった。脱落者は2名とも鉱山送りになったんだそうだ。誰だかわからないが、可哀そうに。
最近、中庭には必ず赤い水溜りができるけど、教師は土地特有のもので悪いものじゃないからと言っていた。初めに恐怖を覚えたのだが、特有のものなら仕方が無い。
殿下やクラスメイトがたまに倒れるのは、最近、学園内に流行っている健康なものだけがなる病気なので気にするなと言われた。基本的には健康なので、安心していいんだそうだ。流行の病で命にかかわらないのなら、良いかと思って、今は気にしないようにしている。
でも、目の前で倒れられるのは、やっぱり、びっくりするので、つい、看病してしまう。
最近、クラスメイトが外貨を稼ぐ手段についての話し合いをよくしている。領の発展のためにもなるからと言っているので、私も混ぜでもらいたい。
・・・しかし、きっかけがわからなかった。
中庭で、猫さんに愚痴ってみたところ、猫耳の同級生がいつの間にか教室にいて、その娘が友達になってくれると言ってくれた。嬉しかったので、ちょっといつもより遅く馬車に乗ったら、兄上が泣いてしまった。
「ごめんなさい。」と言うと、頭を撫でられ「いや、良いんだ。友達は大事だ。」と言ってくれたので安心した。
その日の夜、また、父上と母上と兄上がオークションに行くと言って、執事長に止められていた。
ちなみに猫耳の友達はナーコさんという。爵位は教えてくれなかったが、同じクラスなので、きっと貴族なんだろうと思う。
ナーコさんはたまにしっぽが私の腕にくるんと巻き付いてくるので、くすぐったい。
陛下と正妃様との交換日記も父上と母上の交換日記も当たり障りのない日常を書いているのだが、学園内のアレソレを書くと何故だか見てきたような感じの返信が来るのは一体何でだろうか?
あれやそれやと前世で一度は学園生活をやったから、今世では飽きるかと思ったが、やはり、魔法もある世界だし、貴族学校と言うこともあり、いろんな新鮮さがある。当たり前だが、前世とクラスメイトが違うし、友達もいるし、楽しい。
前世で無かった、魔法の授業は特に面白く、魔術式と魔法力の訓練は全く未知のものだったから、すぐにはできなかったのだが、練習と訓練を繰り返し、達成。訓練中に少しだが、クラスメイトとも仲良くできた気がする。
今日は護衛のデート様も冒険者の格好をしている。メイドのマリアも冒険者の格好。メイドのナーシャはなんかすごく強そうな女冒険者の格好。
こっそり、マリアに聞けば、ナーシャは元Sランクの冒険者なんだとか。
私「すごいね。ナーシャ。」
と言うとナーシャは少し赤くなって、
ナーシャ「ありがとうございましゅ。」
と噛みながら、照れていた。ナーシャは可愛いなぁ。
とか思ってにこにこしていたら、みんなが顔をハンカチで抑えている。一体何が起こったんだろうか?
あ、そっか、みんなナーシャの照れに悶えているんだ!最近、私は萌えと言うのをちゃんと理解できるようになった。わかるぞ~わかる。普段、無表情の人が照れると実に萌えるんだよね!わかるぞ~。
私はいつの間にかドヤ顔になっていたらしく、マリアに、可愛いですけど、今は街中だからと諫められた。
なんで、街中はダメなのかは教えてくれなかったが。
街は凄かった。
市場は活気にあふれ、物にあふれている。ただ、ちょっと路地に入ると治安はかなり悪かった。それに臭かった。
それでも見るもの食べるものすべて新鮮で、楽しく。父上が珍しく高い高いをしてくれたし、初めて肩車をしてくれた。
まぁ、貴族はやらないんだそうだ。市政の人がやっていたので、羨ましいと思って見ていたら、してくれた。
私「父上ありがとう!」
と言うと物凄く嬉しそうな顔をしてくれた。途中、デート様が急に動いて、ゴツンという鈍い音と共に誰かが倒れた気がしたが、そこには誰もいなかったので、デート様も私たち家族も???だったり、幽霊だと兄上がからかったりして、その楽しい外出は終わった。
街から帰って、私は前世の知識を元にちょっと図面を描いたり、書類を描いたりして、父上に提出。
父上が私を天才だと褒めてくれて、のちに王都全体に下水道が通ることになった。
スラムはいつの間にかかなり縮小され、スラムにいた人はほぼ強制的に公務員になったんだとか。どうしてだろう?
今までなかった公衆の安いテルマエ(銭湯)があちこちに建ち、治安もだが、衛生が格段に上がったんだそうだ。今まで夏と冬に必ず流行していた病気も今年はかなり少ないんだそうだ。
私は交換日記で陛下と正妃様にお礼を書かれた。年齢的にも立場的にも直接礼は言えないけど、ありがとうって書いていた。その心遣いだけでもありがたいので、私は、お礼にお礼で返してしまったが。
そんなこんなしていたら、1か月後、ナーシャとデート様が結婚していた。ナーシャはヨイツ侯爵家の5女。自主的に公爵家のメイドになっていたが、かなりの変わり者でうちにいたんだそうだ。知らなかった。デート様が子爵子息なので、かなりデート様が無理しなきゃいけないんだそうだが、婿入りなので、何とかなるとか・・・まぁ、英雄なのだからなんとかなるだろう。二人とも結婚しても、公爵家で働くことは辞めないんだそうだ。
・・・まぁ、婿入り結婚したので、研究都市の人は泣いていたんだそうだが。
そりゃあ、研究都市の英雄様だもんね、デート様。
私は、下水道設計士として、他の都市の図面を描く毎日。
最近では陛下から依頼があり、他国の都市地図ももらって、その下水道設備の地図も手掛けている。
前世の知識があるから思うのだけれど、これは大丈夫なのだろうか?他国のしかも、王都の地図に見えるのだが・・・。
防衛都市とか魔法都市とかの地図を眺めながら、戦争の時に役立ちそうだな・・・。いいのかなぁ。と思いながら作業した。
少なくとも、自国と防衛都市は敵対とは言わないが、あまり仲が良くない。魔法都市も同様だ。いつも中立を謳う研究都市は、比較的味方だが・・・いいのだろうか?
そうして、私はあっと言う間に12歳となった。
入学式へ出発の時、父上はオイオイと泣いて、「せめて、1時間だけでも」と訳の分からないことを言っていた。母上が何回か父上をアッパーしていたので、何とかなるとは思うけど・・・。
兄上がにこやかな笑顔で、父上にドヤ顔していたけど、いったい何がどうしてこういう状況なのかは不明だ。
ぜひとも聞きたいのだが・・・どう聞くべきなんだろうか?
兄上にエスコートされながら、学園に到着。通常は、婚約者がエスコートするらしいのだが、何でか陛下から接近禁止令が王子の方にされているらしい。一体何がどうして?
それに、彼には3歳に会った時以来全く会えていない。きっと、大きくなっているだろうなぁと思う。私が12さいなら、彼は14歳。前世でいうなら中学二年生。まさしく、中二病の年頃か・・・別名思春期病。痛いことをして黒歴史とか作っているんだろうか?とか考えていたら、入学式が始まった。途中、ピンク色の髪の少女が遅刻して、式に乱入する騒ぎがあったが、概ね、それ以外は普通に式が終わった。
各教室にそれぞれ行くことになり、一度、兄上から離れることになった。兄上が駄々を捏ねて、「後、1時間だけ。」と父上と同じことを言ったので、「メッです。兄上。」と言ったら、兄上が倒れてしまった。
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「私が責任もって病院に連行するから、安心なさい。」と言われ、そんなに重病なのかと聞いたら、沈黙の後、「命にかかわることじゃないから安心なさい。」と言われた。
兄上は一体どんな病気なんだろう?不安ではあるが、大丈夫と何度も言われて、しぶしぶ教室に向かった。
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「お久しぶりです。リース嬢。私は、ロイス・リーマンです。ずっと、お会いしたかった。」
と跪いて言われた。
「え?ロイス殿下?接近禁止令が出ているロイス殿下ですか?」
とつい、聞いてしまった。
「はい。接近禁止令が未だに解かれていないので、是非ともご内密に。」
と耳元で言われ、つい真っ赤になる。クラスのみんながガタッと席を立った。振り向けば、なんか殺気立っている。ひぃえ。席に着いたが、視線は消えない。消えていないが、ほとんどその視線は教師のロイス殿下に向かっている。ひとつだけ、私に向けられているが、あんなにカッコイイ殿下から跪かれたのだ、仕方が無い。
いや、それより、未だに殿下に殺気を放っている他の同級生たちはいったいどうしたんだろうか?
次の日も父上が「一緒に学園に行くぅ!」と我儘を言って、母上にしばかれていた。兄上にエスコートされながら、同じ馬車で学園に向かう。昨日は、顔合わせ程度のことしかなかったが、今日はオリエンテーションがあるらしい。
要は、お茶会の授業。殿下がお茶会の主人で、私たちがお客と言う設定。
既に子息子女は勉強済みのことなので、各々挨拶をし、席に着く。優秀者クラスに配属されたクラスメイトは約1名を除き、全員、礼儀作法がちゃんとできており、問題ない。貴族位順に殿下に挨拶に行くのだが、その約一名は、いきなり、順番すっ飛ばして、殿下に挨拶に行こうとして、副担任に怒られていた。その為、その娘以外は全員、殿下に挨拶をし、お茶会を無事終えた。
ちなみにその約一名は、昨日、私に殺気を飛ばした娘で、加えて、遅刻してきたピンク頭の娘だ。貴族位も男爵令嬢。親に作法を教わっていない可哀そうな娘だ。
噂を聞けば、明日にでも別クラスに編入することになるらしい。可哀想に。しかし、別のクラスなら、特に問題はないだろう。このクラス以外は礼儀作法に五月蠅くないのだから。
今日は、お茶会の作法と教室でお茶の歴史なんかの雑談とかテースティングとかをして、終わった。貴族の学校は本当に勉強らしい勉強と違うんだなぁとつくづく思った。
次の日、私以外のクラスメイトが同じ時計のようなものをしていた。聞いても答えてくれなかったが、聞き方が不味かったのだろうか?話しかけた子達が鼻血を出して倒れたので、これ以上追及できなかったのが、正しい。
「我が人生に一片の曇りなし」って言って倒れたんだけど、どこのラオウなのだろうか?
その日から殿下に対する視線が柔らかくなっていたので、まぁいいか。と思う。
次の日、殿下がうちに馬車で迎えに来て、父上に封筒を渡していた。父上は封筒の中身を見てフルフルと震え、殿下が「ざまぁ。」と言ってニヤニヤしていたので、「父上を虐めないでください。」と言うと殿下がショックで倒れてしまった。
しかし、自業自得なので、放置したところ、陛下に私と会っていたことがバレて、今日一日学園に来ることは無かった。
ちなみに、その日、父上と兄上が封筒の中身を必死にクリスタル加工していたのだが、あれは一体何なんだろう?
次の日、ズタボロで、包帯を巻いた殿下が教壇に立った。接近禁止令が解かれたらしい。しかし、殿下の首になんか、隷属の首輪があるような・・・。あまり気にしないでおこう。だって、隷属の首輪にしっかりと王家の紋章がされているんだもの。気にしたら、駄目な奴だ。
次の日、学園の図書館で調べものをしようとしたら、あのピンク頭の可哀そうな娘がつっかかってきた。・・・が、3秒も立たずに衛兵が来て、ピンク頭を回収していったので、会話らしい会話はできず、一体何が起こったのかと風が通り過ぎたなぁ・・・程度だった。
次の日、赤い髪の少年が突っかかってきそうに私に向かって、競歩で来たんだけど、周りのクラスメイトが気付き、近づく前に腋をがっしり捕まえられて、どこかに移動させられていた。
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次の日は、友達を作ろうとして、失敗。言葉が出なかった。練習しようと誰もいない中庭に行き、偶然そこにいた黒縁の猫を相手に練習した。
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猫「にゃーん。」
私「ねこさん、私はリースって言います。」
猫「にゃ?」
私「にゃーん。」
しばらく練習し、教室に戻ろうとしたところ、地面に赤いシミが!驚いて、先生を呼ぶと教室に戻っていいよと言われたので、取り合えず、帰っていった。
その日の夜、父上と兄上がオークションに行くと言って張り切っていた。一体何を購入しようとしているんだろう?母上が父上を必死に説得していたが、「情景付きだぞ!!」と言って母上を困らせていた。
次の日、殿下が同級生のミミー侯爵子息とこそこそしていた。
次の日、クラスメイトの時計がバージョンアップしていた。いいなぁ。私も欲しい。
そのことを中庭で猫さんに言ったら、次の日机の上にクラスメイトと同じ形の時計が置いてあった。うれしいので、今日は猫さんにそれを報告に行こう。
次の日、視線の端に一瞬ピンク頭が見えたような気がしたが、振り向いても誰もいなかった。
次の日、学園から脱落者が2名出てしまったと全校集会みたいなので、発表があった。脱落者は2名とも鉱山送りになったんだそうだ。誰だかわからないが、可哀そうに。
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殿下やクラスメイトがたまに倒れるのは、最近、学園内に流行っている健康なものだけがなる病気なので気にするなと言われた。基本的には健康なので、安心していいんだそうだ。流行の病で命にかかわらないのなら、良いかと思って、今は気にしないようにしている。
でも、目の前で倒れられるのは、やっぱり、びっくりするので、つい、看病してしまう。
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・・・しかし、きっかけがわからなかった。
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「ごめんなさい。」と言うと、頭を撫でられ「いや、良いんだ。友達は大事だ。」と言ってくれたので安心した。
その日の夜、また、父上と母上と兄上がオークションに行くと言って、執事長に止められていた。
ちなみに猫耳の友達はナーコさんという。爵位は教えてくれなかったが、同じクラスなので、きっと貴族なんだろうと思う。
ナーコさんはたまにしっぽが私の腕にくるんと巻き付いてくるので、くすぐったい。
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あれやそれやと前世で一度は学園生活をやったから、今世では飽きるかと思ったが、やはり、魔法もある世界だし、貴族学校と言うこともあり、いろんな新鮮さがある。当たり前だが、前世とクラスメイトが違うし、友達もいるし、楽しい。
前世で無かった、魔法の授業は特に面白く、魔術式と魔法力の訓練は全く未知のものだったから、すぐにはできなかったのだが、練習と訓練を繰り返し、達成。訓練中に少しだが、クラスメイトとも仲良くできた気がする。
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本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
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