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本編

平和な日常(リース嬢)

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よくわからないが、後日、謝罪と再度顔合わせの場を作るべきと言うことになったのだが、謝罪はさておき、再度顔合わせは長期延長となった。よくわからないのだが、殿下の教育が間に合っていないと言うことで、殿下が強化合宿に隣国の学園に一時的に入学するんだそうだ。


・・・でも、隣国の学園って、12歳からだったような。殿下、まだ5歳だよね?それにこの国にも学園はある。そちらも12歳からだが。


色んな疑問が生まれたが、陛下の決定なので、私は何も言うべくはない。

気付けば、私も5歳。殿下に会った時の殿下の年齢だ。しかし、それにしても、私は小さい。


一応、一生懸命運動しているんだけれど、運動神経も体も成長が遅い。

その生っちろい腕なんか蛇みたいだ。

そう思いながら、力こぶをつくろうとして、袖をまくって腕を曲げる。

横からブフッと吹き出す声がして、思わず、振り向くと私専属のメイドのマリアが少し赤い顔で、私の腕を見ている。

無言で袖をなおされ、腕を仕舞われる。


ジッとマリアを見つめると

マリア「ダメです。リース様。乙女は袖を捲るなんかしちゃ駄目なんです。」

と言われ、確かにそうかもと思い、頷く。

マリア「わかってくださったのなら、良いのです。リース様は頭がいいですね。可愛いし、最高です。」

と最後の方が意味が分からなかったが、お茶を入れている別のメイドも偶然通りかかった侍従と執事もこっそり盗み見している兄上も皆で頷く。


・・・肯定された・・・。

どう、反応するのが正解?

・・・というか、なんでみんな私を見てるの?

恥ずかしい。


思わず、赤くなり、顔を手で覆う。

ところどころから

「おっふ。」

と言う、短い叫び声と倒れる音が聞こえる。顔をあげると兄上が倒れている。父上が何故だかいて、蹲っている。


「え?え?」

戸惑っているとメイドたちが侍従を追い出し、ドアを閉め、メイドたちと私だけになった。

今日はカモミールティー。

ちょっと特殊なにおいだが、たまには飲みたくなる味だ。


何口かに分けてお茶を飲んで、ふと窓から外を見る。空は1個だけ小さな雲があるだけでいい天気だ。


・・・あの雲、エビみたいだ。


「えびちゃんみたいな雲です。」

と私がつぶやくとメイドの視線が空に行く。

「「えびちゃん?」」

と呟き、雲を見て、納得した後、何故だか、にんまりといい笑顔で微笑まれた。


・・・なぜだろう?


****


ロイス殿下は隣国の学園で飛び級をし、来年には学園を卒業なされるらしい。聞けば、稀代の天才とか賢者の再来とか言われている。初めて会った時の子供っぽさから全く想像できないが、2年経てば、そりゃあ、違うんだろう。


よくわからないが、帝国の学園でなにやら騒動が起きたらしく、すぐには戻れないんだと手紙が届いた。

あの初対面以降、私と殿下は文通をしている。


口では言えないことも手紙でなら・・・と思ったが、やはり、上手く書けないでいる。一応、日々あった出来事や思ったことなどを思うままに書いて、その後、マリアに添削を頼む。そして、何故だか、今度は兄上、そして、父上、最後に母上に添削され、書き直して、手紙を送っている。


手紙を回し読みされている間、私はいつも居た堪れない。というか、恥ずかしいのだ。

それに、手紙を読むたびみんな悶えるんだ。恥ずかしい。


そして、ロイス殿下からの返事もきっと誰かしらに添削されているんだと思って、一生懸命照れを隠す。きっと貴族ならみんな通る道!


そう思って、グッと耐える毎日。

そう、ロイス殿下は毎日手紙を書いているらしいのだ。5日に1回届く殿下からの手紙は常に5通以上。つまり、1日に1通以上書いているようなのだ。それでは、こちらも同じくらい書かないと不敬になると思って、いつも必死に手紙の内容を考えている。


それに伴い、よく庭を散歩しているので、いつの間にか公爵邸の使用人や出入りの商人とも仲良くなっていた。よくわからないが、私は可愛いんだそうだ。何度か自分の顔を鏡で見たが、人形の様に整っているとは思うが、そこまでか?と思う程度である。


パーツは確かに左右対称についているし、目も大きい。口は小さいが、唇の桃色さは化粧をしていないのにすごいなーと思うが、それくらいだ。正直、私には美的センスが欠けているんじゃないかとつくづく思う。


父上も母上も兄上も積極的に私にプレゼントをしようとするが、プレゼントより一緒に食べたり遊んだりしたいと言ったところ、週に一度は庭でお茶会を家族全員で行うことが決まった。


前世は母子家庭だったし、一人っ子だったから、家族一杯でお茶会はなんかうれしい。

私はドレスより、庭師のトムじいさんみたいなオーバーオールが欲しいと言ったら、家族全員とメイドたち全員おそろいのオーバーオールが出来ていた。お腹のポケットに公爵家の家紋入り。


・・・アリなんだろうか?


更にしばらくすると執事や侍従、みんなも同じ服を持っていた。

・・・突っ込みを入れるべきなんだろうか?


しかし、突っ込みは誰にどうやって入れるべきなんだろうか?やっぱり最初に言いだした兄上だろうか?

いや、そもそも私が言い出したのだから、私が突っ込みされる側?

葛藤しながらも、今日も私はつい、無言でいてしまう。心のすれ違いとかを避けるためにもちゃんと言葉に出さなきゃいけないと分かっているのに、どうにも上手くできない。


・・・いや、まだ、私は5歳。今後の課題として頑張ろう。



****


私6歳。ロイス殿下8歳となり、ロイス殿下は予定通り、隣国の学園を卒業されるようなのだが、なぜか研究都市に更に留学なされるとのこと。これには陛下も正妃様も戸惑っておられるらしく、理由を聞けば、国内の学園に戻る為だと言っていた。


・・・わからない。

実際に見ていないので、本当かどうかの審議は私には無理だが、隣国の学園と自国の学園の学力的な差はほぼ無いと聞いている。確かに研究都市にある大学よりは、残念だが自国の学園の質は大きく劣ると思うが、8歳の彼が何を頑張るんだろうか?


しかし、男が決めたことなのだ。応援はしよう。自分で決め、能力も備えているのなら、どんどん吸収するのは素晴らしいことだし、婚約者として誇らしいと思う。無理しないで欲しいが、手紙だけで申し訳ないが、応援させてほしいという内容のことを手紙に書く。

最初の添削で、マリア撃沈。その後も次々にみんな撃沈したり、悶えたりして、正直困る。


陛下にあてた手紙にも、彼には12歳まで好きにさせて欲しいと言う旨の手紙を書きたいと言ったら、うんうんと何度も父上と母上に頷かれ、手紙ではなく交換日記が開始されることになった。ちなみに陛下→私→正妃様→私→陛下と言う感じの順で私を挟んで行われるんだそうだ。


これ、普通なんだろうか?

しかし、当然のことと言うように陛下も正妃様も言われるのだ。きっと普通なんだろう。

うんうん、とその場で頷き、私も私もと父上と母上も交換日記することになった。


どうやら、私は交換日記2冊を交互に毎日書き、手紙も書かなくてはならない様子。

・・・もしかしたら、文章が上手になるかもしれないなぁとちょっとうきうきしている。


****


何が何だか、さっぱりだ。

なんだかんだで、私は10歳を迎えた。


先日、研究都市の大学がまだ卒業できていないから待ってと殿下が手紙に書いてきた。すると、陛下にもその手紙が届いたらしいのだが、陛下が何故後に届くんだろうとひと悶着。先に交換日記の方で相談していたので、問題らしい問題にはならなかったが。そして、最近、私の1つ下の第二王子が私の婚約者になるとか言い出したり、3つ下の第三王子がいや、俺がと言い出したり・・・。


その旨をロイス殿下の手紙に書いたら、赤い髪のデート子爵子息が護衛についたりと・・・ちなみにデート子爵子息は18歳で、研究都市の護り手と言われる英雄なんだそうですが、良いのだろうか?他国の英雄だよね?なんで、私の護衛なんだろうか?


私「・・・。」

ジッとデート様を見ながら、考えていたら、顔をそらされてしまった。


・・・うーん。答えてくれなさそうだ。いや、待て待て、まだ、私は一言も発していない。誤解を招いているだけなのかもしれない。ちゃんと聞けば答えてくれるかもしれないじゃないか。


私「・・・な・・・。」

えっと、なんて言えばいいんだっけ?初めの言葉は・・・いや、そもそも、まだ挨拶はしたっけ?

・・・したと思う。デート子爵子息が押しかけ護衛にきたって、父上が言って、兄上と勝負があって、で、兄上負けちゃって、・・・勝てるわけないよね?既に戦役突破した英雄だし、兄上よりも年上なんだし。


・・・兄上、負けても綺麗だなぁ。クッコロってやっても、なかなか似合う。


ハッ!思考がそれた。違う違う。それは、それとして、今はデート様が、何故私の護衛になったのかを聞こうとしていたのに思考がそれ捲った。そうだ、私はどうやって、それを聞き出そうかと思っていたんだ。


・・・単純に聞けばいいのでは?

そう思って、少しうつむいていた顔をあげると目の前にデート様の顔のドアップがあった。どうやら、しゃがんで、私の顔を覗き込んでいるらしい。

思わず、目を見開く。

すると、デート様が急にピンっと姿勢よく立ち上がって、周りを確認し始めてしまった。


え?何かあるの?


思わず、私も周りを確認。公爵邸の中だし、探しても特に何もない。


???


でも、私は外にも出ていない箱入り娘。王城に行くときだって、馬車から一歩も出ない。馬車から出ても、王城の玄関から部屋の中までの2分くらい。公爵邸の庭には出るが、外に出るのはそれくらい。王城では庭も歩いていない。


私「お外に出たいなぁ・・・。」

思わず、そう、口に出てしまった。


おおぉ!これこそ、言葉!ちゃんと喋れる!私。

独り言とかすごい成長だと思う。

とか考えていたら、何故だか、緊急会議が設置されていた。


その間、私はメイドのマリアとお茶会。最近、家庭教師として何故だか隣国の女公爵リリス様がいらっしゃっているので、宿題について、考えを巡らせながら、マリアに相談しようかと思い、マリアを見る。

マリアが無言で微笑む。


・・・駄目だ、宿題は自分でやろう。


私「お茶の後、図書室に行きます。」

マリア「かしこまりました。」


その後、図書室に行き、宿題を終わらせると遠くで

「よっしゃーーー!!!」

「くっ!」

とか雄たけびと苦悩が聞こえてきた。


一体なんだろう?

声の方向に行こうとしたら、マリアにそっと止められた。


なんで?と思って、マリアを見ると

マリア「あれは、男どもの戦いなのです。女性が見るものではありません。」

とのこと。


それなら仕方が無い。


そう思い、自室に戻ろうとしたら、父上に止められた。

父「リース!明後日、一緒に街に行こう!兄のジョーンも一緒だ!」


どうやら、お外に出かけられるようです。嬉しくて、思わず、父上に抱き着いたら、父上が鼻血を出して倒れてしまいました。

私「父上。ちちうえぇ!大丈夫ですか?ご病気なのですか?そんな、体調悪いのに、私の為に頑張らなくていいのです。わがままを言いました。ごめんなさい。」

といっぱいいっぱい喋った。父上はビクンビクンと痙攣するのみ。

すると、そっと兄上とマリアと私の肩をポンポンと叩いて

兄「そっとしておいてあげて。喜んでいるだけだから。」

マリア「気にしないで大丈夫です。旦那様が変態なだけです。」

と言った。


変態?なんで、この会話で変態が出てきたんだろう?


気付けば、ナーシャに父上が回収されている。俵抱っこされて、水場のある方向に。

そう言えば、鼻血出していたもんな。

急いで追いかけ、父上の鼻血をそっとハンカチで拭いたら、

「グハッ!」

と言って、意識を取り戻したばかりの父上がまた、ぐったりとした。でも、その顔は満足げだったので、後ろにいる兄上とマリアの首を振るジェスチャーでそっとしておくことにした。



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