3 / 3
一章 統制のフォウンド 2
しおりを挟む
この世界では珍しくない、全長一キロメートルを超える超々高層ビルの一つ。それは『第十二位総合学校』の校舎だった。
フォウンドのエリアにはそれぞれ序列が存在し、第一位であるエリア1から第二十五位であるエリア25までが存在する。また、それぞれのエリアは自らの序列を冠した総合学校を設置することが義務付けられており、たとえば『第十二位総合学校』とは「エリア12を代表する総合学校」だということだ。
第十二位総合学校ビルの構造は一階から四十八階までが教育区、四十九階から六十四階までが研究区、六十五階から百八十四階までが居住区、百八十五階から二百階までが教務区、それより上の二百五十階までが制御区となっている。
そのうちの十二階、教育区の高等教育課程フロアにある大講堂。赤を基調とした格式ある大講堂には千人近くの学生が詰め掛けていた。その中に少し遅れてセーラー服の少女が座り、隣の席に居た女子生徒が小声で話しかける。
「悠里ちゃん……遅いよー」
「わりぃ咲絢、遅くなった」
悠里と呼ばれた少女は同年代の少女達と比べると背が高めで、癖のない真っ直ぐで長い髪が特徴的だ。対する咲絢と呼ばれた少女は背丈から髪の長さまで全てが平均的。しかし、すれ違えば大抵の男が振り返るような美少女だった。
「いや、自宅通学でさ。住めるものならここの居住区に住みたいわ」
「自分の家があるって羨ましいね」
「よく言われるけど、通学に無駄な時間かかるし実際何もいいことないわよ」
自分の家がある悠里は他人から頻繁に羨ましがられる。というのも、大抵の人間は政府の支援により無償で運営される居住区に住んでおり、相当の金持ちでもなければわざわざ自宅を購入することがないからだ。
「えっ、でも家は広いでしょ?」
「広すぎて困るくらいよ」
「無茶苦茶羨ましいじゃん!」
やれやれと言った感じで肩をすくめて答える悠里に対し、ハイテンションで質問攻めを行う咲絢。
その調子で二人がおしゃべりを続けて少し経った頃、講壇の背後にある扉が開いた。扉から現れたのは、白衣を身にまとう長身の中年男だ。
白衣の男は講壇に立ち、千人近くの学生が彼に注目する。
「げっ、あれは」
そして悠里は講壇に立つ男を見て気づいた。
男は名乗る。
『初めまして。今回特別にこの講義を行う、エリア12総督の坂原浩史です』
「パパかよ」
「やばいレベルの偉い人じゃん……」
突然の総督登場に周囲が大きくざわめく。
エリア12総督。その肩書き通り、彼はエリア12における最高権力者だった。
フォウンドのエリアにはそれぞれ序列が存在し、第一位であるエリア1から第二十五位であるエリア25までが存在する。また、それぞれのエリアは自らの序列を冠した総合学校を設置することが義務付けられており、たとえば『第十二位総合学校』とは「エリア12を代表する総合学校」だということだ。
第十二位総合学校ビルの構造は一階から四十八階までが教育区、四十九階から六十四階までが研究区、六十五階から百八十四階までが居住区、百八十五階から二百階までが教務区、それより上の二百五十階までが制御区となっている。
そのうちの十二階、教育区の高等教育課程フロアにある大講堂。赤を基調とした格式ある大講堂には千人近くの学生が詰め掛けていた。その中に少し遅れてセーラー服の少女が座り、隣の席に居た女子生徒が小声で話しかける。
「悠里ちゃん……遅いよー」
「わりぃ咲絢、遅くなった」
悠里と呼ばれた少女は同年代の少女達と比べると背が高めで、癖のない真っ直ぐで長い髪が特徴的だ。対する咲絢と呼ばれた少女は背丈から髪の長さまで全てが平均的。しかし、すれ違えば大抵の男が振り返るような美少女だった。
「いや、自宅通学でさ。住めるものならここの居住区に住みたいわ」
「自分の家があるって羨ましいね」
「よく言われるけど、通学に無駄な時間かかるし実際何もいいことないわよ」
自分の家がある悠里は他人から頻繁に羨ましがられる。というのも、大抵の人間は政府の支援により無償で運営される居住区に住んでおり、相当の金持ちでもなければわざわざ自宅を購入することがないからだ。
「えっ、でも家は広いでしょ?」
「広すぎて困るくらいよ」
「無茶苦茶羨ましいじゃん!」
やれやれと言った感じで肩をすくめて答える悠里に対し、ハイテンションで質問攻めを行う咲絢。
その調子で二人がおしゃべりを続けて少し経った頃、講壇の背後にある扉が開いた。扉から現れたのは、白衣を身にまとう長身の中年男だ。
白衣の男は講壇に立ち、千人近くの学生が彼に注目する。
「げっ、あれは」
そして悠里は講壇に立つ男を見て気づいた。
男は名乗る。
『初めまして。今回特別にこの講義を行う、エリア12総督の坂原浩史です』
「パパかよ」
「やばいレベルの偉い人じゃん……」
突然の総督登場に周囲が大きくざわめく。
エリア12総督。その肩書き通り、彼はエリア12における最高権力者だった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
華研えねこ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる