転生魔女は国盗りを望む

ひとみん

文字の大きさ
19 / 60

19

しおりを挟む
「ところでお兄様、こんな時間にどうされました?いつもの秘密の小部屋にいたのでは?」
と、クスクス笑うルイナ。
その儚くも美しい微笑みに、ファラトゥールは感動してしまう。

これで健康的だったら・・・傾国並みでしょ。

痩せ細り、髪や肌には艶もなく、顔色も悪い。
アシアスもそうだったが、兎に角、言い方は悪いが、くたびれ貧乏くさいのだ。

まぁ、アシアスでさえ毒を抜いて免疫力をあげただけで劇的に変わったからなぁ。
体力無さそうだから、少し時間はかかるかもしれないけど、健康になったら思いっきり化けそうね。

なんてことを考え、彼等の会話を何も聞いていなかったファラトゥール。アシアスに名前を呼ばれてようやく我にかえった。
「ファーラ様。妹を紹介したいので姿を現していただけますか」
「あぁ」
そう言って、隠密魔法を解いた。
 


兄であるアシアスから会わせたい人がいるいと言われ、一緒に入ってこなかったのだから、当然のことながら部屋の外で待っているのだと思っていた。
なのに、突然現れた美しい女性。
ルイナは驚きはしたが、突然目の前に現れた女性が、大魔法使いファーラだと一目でわかってしまった。

何故なら、何時からだったろうか。アシアスが大魔法使いファーラの話ばかりするようになったのは。
そしてペンダントの秘密。
一度ルイナを連れて地下工房へと向かおうとしたが、入る事はできなかった。
恐らくペンダントさえ着ければ入れたかもしれないが、そうなれば一人でそこに行く事になる。
危険だから駄目だと兄であるアシアスに反対され、ルイナはまだ地下工房へは行った事が無かった。
危険とは、地下工房が危険なのではなく、ルイナが一人でそこへ行き倒れてしまえば、誰も助けにいけないから。
それほどまでにルイナは弱っていたのだ。

産まれた時から、ルイナは身体が弱かった。
母親はアシアスは正妃から生まれているが、ルイナは側室が母親だ。
この王家は一夫多妻が認められており、現国王には沢山の妻がいた・・
王妃は一人であるが、側室が両手では収まらないほどいたのだ。だが現在は、存命しているのは片手で間に合う人数。
王妃は既に亡くなっている。アシアスが十歳の時、毒を盛られ亡くなった。
犯人は王妃の座を狙っていた側室の一人で、すぐに捕まり処刑されその家自体が無くなってしまった。
国王は王妃が亡くなっても、次の王妃を決めることはなかった。どれだけ周りの人間が騒いでも、首を縦に振ることは無かった。
だから側室達は、勝手に権力争いを始めた。そして、両の手では収まらないくらいいた側室は、瞬く間に数を減らし今現在の人数で小康状態を保っている。

ルイナの母も他の側室に殺されてしまっていた。
突然の出来事に途方に暮れていたルイナに手を差し伸べてくれたのが、アシアスだった。
それ以降、ルイナはアシアスの庇護下に入り、この年になるまで生きる事ができたのだ。
というのも、あれだけ側室がいたのも関わらず、子供はルイナ一人しか生まれなかったのだから、命の危険にさらされる事は珍しくもなかったのが現実だ。

この国の後宮は特殊で、国王が求めて側室となるわけではない。
というのも財政難のガルーラ国。後宮などに掛けるお金など無いのだ。
よって、後宮に入りたいのなら自分で自分の面倒はみろよ。場所だけは提供してやる。その代わり、王家は一切関わらないから、と。うるさい貴族達を黙らせるための苦肉の策とも言えた。
つまりは、押しかけ女房的なシステムになっている。
国王が全く求めていないのに、何としても主権を握りたい強欲な貴族達が、自費・・で側室として娘を送り込み、何とか国王の情けを貰おうと無駄な努力をする場所。それが後宮なのだ。

親が強欲だから娘もそうかと言われれば、否定するだろう。
食うか食われるかの檻の中へ、自分の意志など関係なく放り込まれた令嬢達は堪ったものではない。
しかも自費での生活。当然貧富の差が出てくる。
そうなれば豊かな家は強く、貧しい家は虐げられる。
耐えきれず失踪する令嬢も多くいたという。
ある意味、人間版蟲毒そのものだったが、国王は手を差し伸べるどころか、見向きもしなかった。
なんせ、勝手に住み着いているだけの人間なのだから。
そんな状況の中、ルイナが産まれた事はまさに奇跡。とは言っても、ルイナの母親も事故的な状況で国王と関係を持ち、たった一回の情交で妊娠してしまったのだから、ある意味不幸としか言いようがなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

勝手にしろと言ったのに、流刑地で愛人と子供たちと幸せスローライフを送ることに、なにか問題が?

赤羽夕夜
恋愛
アエノール・リンダークネッシュは新婚一日目にして、夫のエリオット・リンダークネッシュにより、リンダークネッシュ家の領地であり、滞在人の流刑地である孤島に送られることになる。 その理由が、平民の愛人であるエディットと真実の愛に満ちた生活を送る為。アエノールは二人の体裁を守る為に嫁に迎えられた駒に過ぎなかった。 ――それから10年後。アエノールのことも忘れ、愛人との幸せな日々を過ごしていたエリオットの元に、アエノールによる離婚状と慰謝料の請求の紙が送られてくる。 王室と裁判所が正式に受理したことを示す紋章。事態を把握するために、アエノールが暮らしている流刑地に向かうと。 絶海孤島だった流刑地は、ひとつの島として栄えていた。10年以上前は、たしかになにもない島だったはずなのに、いつの間にか一つの町を形成していて領主屋敷と呼ばれる建物も建てられていた。 エリオットが尋ねると、その庭園部分では、十年前、追い出したはずのアエノールと、愛する人と一緒になる為に婚約者を晒し者にして国王の怒りを買って流刑地に送られた悪役王子――エドが幼い子を抱いて幸せに笑い合う姿が――。 ※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

モラハラ王子の真実を知った時

こことっと
恋愛
私……レーネが事故で両親を亡くしたのは8歳の頃。 父母と仲良しだった国王夫婦は、私を娘として迎えると約束し、そして息子マルクル王太子殿下の妻としてくださいました。 王宮に出入りする多くの方々が愛情を与えて下さいます。 王宮に出入りする多くの幸せを与えて下さいます。 いえ……幸せでした。 王太子マルクル様はこうおっしゃったのです。 「実は、何時までも幼稚で愚かな子供のままの貴方は正室に相応しくないと、側室にするべきではないかと言う話があがっているのです。 理解……できますよね?」

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...