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帰ってきたルリとスイに「助けて」という意味を込めて手を伸ばしたのに、姉妹たちはちょっと驚いたように眉を寄せ、そして飽きれたように溜息を吐き、咎める様にレイを見た。
その瞬間、室内の空気がピンと張りつめる。
「陛下、もう少しゆっくり進められなかったのですか?」
「エリ様が今にも死にそうです」
え?ちょっと、緊張感とほど遠い内容なんですけど!そんな事より、私を助けて!
「仕方がない。ほぼ体調は戻ってきている。帰国するのもそう遠くないからな」
「では、犯人も?」
「関わったものは全て捕えられ、尋問中だ」
え、え?レイを裏切った人が分かったの?私なにも聞いてないし!
「全容が分かり次第、説明するので少し待って欲しい」
「承知しました」
「こちらもそれらが解決しないうちは、エリ様を帝国へお連れすることはできませんから」
三人でどんどん進んでいく話。
私だけ何故か除け者みたいに・・・入っていけないわ。
そんな不満を心の中でぶちまけていると、先程までの緊張感漂う空気が一気に緩くなる。
「で、エリ様は陛下の事を何と?」
ルリがニヤリと笑った。
「残念な事に、未だ家族枠のようだ」
「まぁ、エリ様の態度を見ていればそんな感じですね」
「で、この状態は?」
スイがやっと、私がレイの膝に乗せられ抱きしめられている現実を指摘してくれた。
今更よね。遅いわよ!私としては、家に帰ってきた瞬間に指摘してほしかったのに!!
そんな私の不満は、声に出ることは無かった。
一言でも発すれば恥ずかしさのあまり、大人げなく奇声を上げると自覚しているから。
「俺を意識してもらう為の、スキンシップだよ」
しらっと答えるレイに、姉妹は「なるほど」とあっさり納得。
まてや!おいっ!何、納得してんのよ!!
叫びたい!叫びたいわよっ!
でも、声に出せば、大声で「恥ずかし!やめてぇぇぇ!!」と、マジ大人げなく騒いでしまいそうで、ぐっと堪えているのよっ!
言いたいことはあるわよ。沢山、あるわよ。
取り敢えずこの恥ずかしい状況から脱したく、レイの膝から降りようと藻掻くけれど一向に上手くいかない。
「ところで、先程から一言も話さないね。どうしたの?エリ」
脱出しようと藻掻きはするが一言もしゃべらない私を不審に思い、レイが腰をさらにグイっと引き寄せた。
その瞬間、私の羞恥メーターの針が振り切れ、もう叫ぶしかなかった。
「恥ずかしいのよぉぉ!もう、死にそうなくらい恥ずかしいのよぉぉぉぉぉ!!」
本来であればレイの腕から抜け出して、自室にでも駆け込めばいいのだろうけど、腰に絡みついた彼の腕の強さがその機会を潰し、仕方ないからレイの肩に顔を隠すように抱き着いた。
だってもう、顔を見られるのが耐えられない・・・・隠れたいのよ・・・穴があったら入りたいってやつよ・・・
首を絞める勢いでレイに抱き着き、呪文の様に「恥ずかしい」を唱える。
もう無理、死ぬ・・・恥ずか死ぬわっ!
さっきから私の目線は泳ぎっぱなしだったけど、もうルリとスイの顔すら見る事ができず、レイの肩に額を乗せぐりぐりする私を宥めるかのように、背を優しく撫でられる。
「ごめん、エリ。まさかこんなに恥ずかしがるなんて、思ってもみなくて」
「・・・・ウソ・・面白がってた・・・」
「いや、面白がってない。可愛いとしか思わない」
「っ!またそう言う事言って!私を殺す気!?」
「人聞きの悪い事を。愛する人を殺すわけないだろ?それに俺は全力でエリを口説くんだ。可愛いものを可愛いと言って何が悪い?」
当然の様にむず痒い事を言うもんだから、思わす顔を上げてしまった。
レイの顔が、鼻が触れ合うくらい近くて、私は思いっきり仰け反った。
「やっと目を合わせてもらえた」
嬉しそうに蕩ける様な眼差しが、声が、倒れない様に抱きとめる背中の熱い腕が、全てが私の脳髄を侵食していく。
そんな錯覚をしてしまうくらい・・・・顔が、全身が熱くて・・・・
所謂、キャパオーバーで私は念願の気絶をすることができたのだった。
その瞬間、室内の空気がピンと張りつめる。
「陛下、もう少しゆっくり進められなかったのですか?」
「エリ様が今にも死にそうです」
え?ちょっと、緊張感とほど遠い内容なんですけど!そんな事より、私を助けて!
「仕方がない。ほぼ体調は戻ってきている。帰国するのもそう遠くないからな」
「では、犯人も?」
「関わったものは全て捕えられ、尋問中だ」
え、え?レイを裏切った人が分かったの?私なにも聞いてないし!
「全容が分かり次第、説明するので少し待って欲しい」
「承知しました」
「こちらもそれらが解決しないうちは、エリ様を帝国へお連れすることはできませんから」
三人でどんどん進んでいく話。
私だけ何故か除け者みたいに・・・入っていけないわ。
そんな不満を心の中でぶちまけていると、先程までの緊張感漂う空気が一気に緩くなる。
「で、エリ様は陛下の事を何と?」
ルリがニヤリと笑った。
「残念な事に、未だ家族枠のようだ」
「まぁ、エリ様の態度を見ていればそんな感じですね」
「で、この状態は?」
スイがやっと、私がレイの膝に乗せられ抱きしめられている現実を指摘してくれた。
今更よね。遅いわよ!私としては、家に帰ってきた瞬間に指摘してほしかったのに!!
そんな私の不満は、声に出ることは無かった。
一言でも発すれば恥ずかしさのあまり、大人げなく奇声を上げると自覚しているから。
「俺を意識してもらう為の、スキンシップだよ」
しらっと答えるレイに、姉妹は「なるほど」とあっさり納得。
まてや!おいっ!何、納得してんのよ!!
叫びたい!叫びたいわよっ!
でも、声に出せば、大声で「恥ずかし!やめてぇぇぇ!!」と、マジ大人げなく騒いでしまいそうで、ぐっと堪えているのよっ!
言いたいことはあるわよ。沢山、あるわよ。
取り敢えずこの恥ずかしい状況から脱したく、レイの膝から降りようと藻掻くけれど一向に上手くいかない。
「ところで、先程から一言も話さないね。どうしたの?エリ」
脱出しようと藻掻きはするが一言もしゃべらない私を不審に思い、レイが腰をさらにグイっと引き寄せた。
その瞬間、私の羞恥メーターの針が振り切れ、もう叫ぶしかなかった。
「恥ずかしいのよぉぉ!もう、死にそうなくらい恥ずかしいのよぉぉぉぉぉ!!」
本来であればレイの腕から抜け出して、自室にでも駆け込めばいいのだろうけど、腰に絡みついた彼の腕の強さがその機会を潰し、仕方ないからレイの肩に顔を隠すように抱き着いた。
だってもう、顔を見られるのが耐えられない・・・・隠れたいのよ・・・穴があったら入りたいってやつよ・・・
首を絞める勢いでレイに抱き着き、呪文の様に「恥ずかしい」を唱える。
もう無理、死ぬ・・・恥ずか死ぬわっ!
さっきから私の目線は泳ぎっぱなしだったけど、もうルリとスイの顔すら見る事ができず、レイの肩に額を乗せぐりぐりする私を宥めるかのように、背を優しく撫でられる。
「ごめん、エリ。まさかこんなに恥ずかしがるなんて、思ってもみなくて」
「・・・・ウソ・・面白がってた・・・」
「いや、面白がってない。可愛いとしか思わない」
「っ!またそう言う事言って!私を殺す気!?」
「人聞きの悪い事を。愛する人を殺すわけないだろ?それに俺は全力でエリを口説くんだ。可愛いものを可愛いと言って何が悪い?」
当然の様にむず痒い事を言うもんだから、思わす顔を上げてしまった。
レイの顔が、鼻が触れ合うくらい近くて、私は思いっきり仰け反った。
「やっと目を合わせてもらえた」
嬉しそうに蕩ける様な眼差しが、声が、倒れない様に抱きとめる背中の熱い腕が、全てが私の脳髄を侵食していく。
そんな錯覚をしてしまうくらい・・・・顔が、全身が熱くて・・・・
所謂、キャパオーバーで私は念願の気絶をすることができたのだった。
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