竜帝と番ではない妃

ひとみん

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「で、聞きたい事って?」

レイのその言葉に弾かれる様に私の思考は戻り、今更ながらワタワタと暴れはじめる。
「レ、レイ!なんで、こんな・・・・」
なんて言っていいのか言葉が出なくて、酸素が足りない魚の様に口をパクパクさせるしかない。・・・くっ!情けないわ・・・
もっとこう、大人の余裕で・・・って、レイの方が大人なのよね・・・
幼体の頃も、落ち着いた子供ではあるなぁとは思ってた。冷静に考えれば、当然の事なんだけど。
そんな大人びた顔を崩したかったのもあるけど、本当に綺麗で可愛らしくて、表情を崩すたびにメロメロだったのよ。
・・・・確かにやりすぎだったと思うわ・・・
抱きしめたり、頬擦りしたり、ご飯食べさせたり・・・一緒に寝たり・・・・
でも、一緒に寝てたのは体調が心配だった事と小さかったからで、今は止めようと言ってるのよ?それに同意しないのはレイであって、別の部屋で寝ても気づけばレイが一緒に寝てるんだもの。
仕方ないじゃない・・・ワタシ、ワルクナイ・・・

多分・・・というより、絶対顔を真っ赤にして硬直する私に、嬉しそうにレイは顔を寄せてくる。
「で、聞きたい事って?」
「むぐぐ・・・な、なんで、こんな事、するのか・・・・聞きたくて・・・」
最後はまさに消え入るような声で、本当に情けなかったけど・・・言い切ったわ!
そんな私にレイは、キョトンとしたように首を傾げた。

ちきしょう!めっちゃ可愛いやんけっ!!

「何でって、エリには勘違いじゃないって言っただろ?」
「いや、だからその勘違いの意味よ!」
「意味?俺がエリを好きだと勘違いしてしまうって意味だろ?」
正解だったの!?うっそーん!!
「だから勘違いじゃないと言った」
「え?という事は・・・」
確か『番』が今は怖いと言っていた。
そんな状況になってしまったと。
「・・・つまり・・・」
「俺がエリを愛しているという事だ」

好き、を通り越して、愛している、だと??

口の中がカラカラなはずなのに、ゴキュリという変な音を立てて唾が喉を通っていくのを、まるで他人事の様に感じたのだった。




意識が戻ったのはルリとスイが戻ってきた時。
気を失っていなかったと思うんだけど、記憶が一部飛んでたわ・・・あまりに恥ずかしくて・・・

あれからのレイは、グイグイ攻めてきた。
えぇ、全く持って慈悲の心もなくね。
恥ずかしくて恥ずかしくて、心臓がバクバクいって、気を失いたいと思ったくらいにっ!

「好きだ。愛している。今は弟の様に思っていてもいい。絶対に俺を好きにさせるから。遠慮なんてしないよ」

ええ、ええ、遠慮の欠片もありませんでしたよ。
顔中にキスされて、拒絶すれば嫌いなのかと眉を下げる。
「嫌いじゃないわよ!どちらかと言えば好きよ!」
と、やけくそになってそう叫べば、それはもう嬉しそうに「じゃあ、結婚して?」と言う。

いや、極端すぎない?

確かに結婚は出会ってからの年月はあまり関係ないと思う。
長く付き合ったからって必ず結婚するわけではないし、出会って間もないうちに結婚する場合だってある。
私の祖父母がそうだった。祖母と出会う前、祖父には六年もの間付き合ってた人がいたそうだ。
結局、その女性とは結ばれる事無く破局。その後出会った祖母と三ケ月という短い交際期間で結婚し、添い遂げた。
孫の私から見ても、とても仲睦まじく愛し合っていた事はわかる。
思春期真っただ中の時は「どうして長く付き合ったのに?」と理解できなかったけど、年齢を重ねていくごとに、色んな経験をしていくごとに、なんとなく理解できるようにはなっていた。

正直、レイにはドキドキしてる。
「好き」かと聞かれれば「好きだ」と答えれるけれど、それが恋愛なのかどうかはっきりとは言えない。
ただ、これだけアプローチされると気持ちは傾いていく一方だけど。
顔が良いからだとか、彼が竜帝だからとかではない。
うまく言えないけれど、ここに居るレイは本当、リラックスしてるんだなって。
竜帝として仕事をしている姿もキリリとしていてかっこいいなって思っているけど、見た事もない日本料理を見て食べて驚いている顔や、あどけない寝顔、私を見てふわっと微笑む顔。
とても好ましいと思っている。
急激ではあるけど、成長するにつれ戸惑いながらも徐々に惹かれていたのだと思う。
でも、いずれは会わなくなるのだからと、自分に納得させていた。
それなのに、これだ!
目を背けていた事に、無理矢理目線を合わせられた感じ。

もう、息も絶え絶えって…こういう事を言うのかしら・・・

私は耐えられないとばかりに、ルリとスイにギンと目を見開き「SOS」と念を送ったのだけれど、悲しい事に一向に気づいてくれる気配はなかった。
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