竜帝と番ではない妃

ひとみん

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彼等の許せるだけの時間を使って、私は魔法を教えてもらった。
『神様の子供』だということもあり、魔力は無限大らしいことがわかった。
また、魔力だけではなく神力も備わっている事も判明し、まさにチート。
神様達・・・もとい、両親は大喜びで、ありとあらゆる知恵を授けてくれたわ。

ただ、お父様、お母様と呼ばないと、いじけて魔法を教えてもらえないのよね。
まぁ、魂の生みの親だから両親で間違いないんだろうけど・・・何だか、照れちゃうわ・・・

私もまた、意外と呑み込みが早いらしく、教えてもらった事はどんどんと吸収したの。だって、本当に楽しかったんだもの。
おかげで、一か月ほどで必要不可欠な魔法はほぼ取得してしまった。
魔法もそうだけど、この世界での常識や国同士の関係、世界情勢なども基本的な事、重要な事も教えてもらった。要点だけだけどね。
後は自分で必要だなと思った事は書物や、ちょっとしたきっかけで同居することになった兎人族のルリとスイ姉妹に教えてもらっている。
暇そうに見えていた神様二人だけど、それなりに忙しいらしく、私が基本的な事をマスターすると泣く泣く神界へと帰って行った。

それから半年が過ぎた。
やりたい事もなく、ただただテレビを見ながらお酒を飲んでゴロゴロしていた時よりは、遙かに充実している今。
それにこの世界に来て一週間経った頃に知り合った、兎人族の双子の姉妹ルリ(姉)とスイ(妹)。
彼女等姉妹との出会いは、結界に沿ってパトロールと称し散策していた時に、山犬に追われている姉妹を見つけ、助けて以来の付き合いになるの。
両神様とも顔を合わせ、恐れおののく姉妹に私のボディーガードと言う大役を命じたのだ。
護衛なのだから常に一緒に居るようにと神様からのお達しに、今では一緒に住んでいるのよ。
兎と聞けば、か弱くて可愛らしいイメージがあるけど、この世界での兎は暗部的な役割がとても適している種族。
実際、ルリとスイは神様達に扱かれ、かなり強くなったらしい。だって、神様達にお墨付きを貰うくらいだから。
本人たちは兎人族の落ち零れなのだと卑下していたけど、神様からも認められたのだから自信を持っていいと思う。
でも本人達は一族からは冷遇されていたらしく、中々自信が持てないでいるのよ。
こんなに可愛らしい姉妹をイジメるなんて・・・許せないわね。
詳しい事はまだ話してくれないけど、余り良い状況ではなかったことが窺える。
兎もそうだけど、この世界の生き物と地球での生き物の生態が同じと思わない方がいいのだと、話を聞いて改めて思うことが沢山あった。
この世界の狼である銀狼族も、実力主義の厳しい序列という所は地球と同じだと思うけど、一夫一妻ではなくトップに君臨するとハーレムを作るらしいのよ。
私としては地球の生物の生態しか分からないし(大雑把にだけど)、神様と兎人族しか会った事がないから「そうなの?」位にしか思わないけど、この世界の種族の生態はなかなか興味深いものがあるなと思ったわ。

ルリとスイが引っ越してきて共に生活しはじめると、誰かと共に生活する嬉しさと懐かしさに、無性に泣きたくなる時がある。
そんな私に姉妹は、何も言わずにそっと寄り添ってくれるのだから、好きにならない方がおかしいというもの。
そして、兎の目は紅と言うイメージしかなかったけど、姉のルリは青、妹のスイは緑の目をしていて、まるで生まれたての子供の様にキラキラとしていてとても美しい。
普段は人型だけど、兎の姿に戻ると本当に可愛らしく、まるでぬいぐるみそのもの。
その立ち姿は可愛らしくて、まるで「不思議の国のアリス」に出てくる三月兎か、某国の物語に出てくる悪戯兎のよう。
真っ白で毛がふわふわで、小学生位の大きさで・・・・その姿を見る度、壮絶な可愛らしさに、まふまふしたくて・・・・というか、してしまって、二人にはドン引きされてるわ。

人型でも、その可愛らしさは損なわれる事はないのよ。
肩まである真っ白な髪。ストレートなのが姉のルリで、フワフワとくせ毛なのがスイ。
人型になっても身長はあまり変わらず、小学校高学年くらいの大きさなの。

お茶を一口飲み、ほぉっと息を吐くと、いつものように姉妹をじっと観察した。

・・・・いつ見ても、何度見ても可愛らしい!!
ちょこんと椅子に座っている姿は、贔屓目抜きで愛らしく思わず抱き着きたくなってしまう。
二人とも魔力が高く、完璧な人間体になれるけど、せめてウサギ耳があったら・・・と、ケモミミ派ではないけど、彼女らに超似合うだろうなと、ひそかに想像してはニヤニヤしてしまい、彼女らにいつも不思議そうに見られているわ。
そんな穏やかな毎日が幸せで、満ち足りた日々を満喫していた。



可愛らし姉妹にこの世界の情勢を教えてもらい魔法を切磋琢磨しながら、平和に暮らしていたある日の事。
結界外の偵察をしていたルリが、血相を敢えて家に飛び込んできたのだ。

「エリ様!竜人様が倒れています!」
「え?竜人?」
「こちらに保護してもいいですか?」
正直、姉妹以外の生き物は結界内に入れたくない。ましてや、竜人はこの世界で一番強い種族と言われていて、会った事どころか見た事もない私にとっては未知の種族。
それにこの結界内の世界樹は、この世界の命とも言えるモノ。
思わず考え込んだ私にルリは「悪い方ではありません。私もスイも保証します」と、祈る様に胸元で手を組む。

どこか必死なルリを見下ろし、小さくため息をついた。
別に見捨てるとかそんなことは考えていない。ただ、世界樹に近づけたくなかっただけで。
しかたないな・・・病気なのか怪我なのかは分からないけれど、ルリの様子から余り良い状態ではなさそうだし・・・
いざとなれば、神力で追い出せばいいか。

「わかった。スイは竜人に付いているのよね?そこに飛ぶ・・わよ」
拒絶されなかった事にパッと表情を輝かせたルリは、差し出した私の手を握ったのだった。
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