3 / 44
3
しおりを挟む
この世には沢山の世界が存在しているのだという。
私が住んでいた世界。そして、今ここにある世界の他にも沢山。
そして世界の数だけ神様も存在している。そんな神様たちも時折交流があるらしい。
私の世界の神様=目の前の女性、この世界の神様=目の前の男性も例外ではなく、親睦を深めていたみたい。
話してみれば互いに相性が良かったらしく、意気投合。友情の印に何かを残そうではないかと盛り上がり、二人の力を込めた魂を創り出したのだという。
天女の格好をした彼女は私の世界の神様で本来固定の姿と言うものはこれといってなく、私にわかりやすい姿をとってくれているらしい。
反対に彼はこの世界の唯一神セルティスと言うのだそうだ。そして、この姿固定で世間一般に知れ渡り、信仰されているらしい。
二つの世界の力を宿した魂は両方の世界を交互に転生するはずだった。
順番から言えば、此度はこの世界に生まれるはずだったのが、何の力が作用したのか二度続けて同じ世界に転生してしまったのだという。
生まれるはずの無い世界に生まれ落ちた所為か、縁が薄くどこか浮いた存在になってしまっていたそうだ。
それを聞いて、私は妙に納得してしまう。
私の両親は五歳の時に、事故で二人同時に亡くしている。
その後は、母の両親でもある祖父母の元で育てられたけど、二十歳に祖父が亡くなり、その三年後の昨年には祖母も亡くなってしまった。
私の父は元々天涯孤独な人で、母も兄弟姉妹もなく一人っ子。唯一の肉親は祖父母のみ。
その祖父母が亡くなり、文字通り私も天涯孤独となってしまった。
高校卒業後すぐに就職したので、多少は祖父母孝行はできたかもしれないと、自分では思っている。
いずれはいなくなってしまうのだと心の中で理解していたけれど、その喪失感は自分が思っていた以上に大きかったらしく、半年以上体調が安定せず、精神的にも肉体的にもかなりきつかった。
でもここ最近は体調も安定し、これまで通りの生活にやっと戻ったと思った矢先に・・・・
私をあの世界につなぎとめていたのは、祖父母の存在だったらしい。
それは縁を持たない私と唯一、繋がりを持っていた人間だったから。
本来生まれるはずがなかった世界。つなぎとめるものが無くなれば、それは排除されてしまう。
つまり、死ぬという事。
「だから事故の寸前にこちら側に呼び寄せたのよ」
「本来、誰か一人に関わる事は良しとされていないのだが、この度は異常事態だからね」
「それに貴女はわたくし達の愛しい子供。そうそう、わたくしの事はお母様と呼んで!」
「では私はお父様だな」
とても大事な話をしていたのに、非常に残念な方向へと進んでいく。
ジト目で二人を見れば、「娘が冷たい!反抗期?」と泣真似までし始める。
何だか神様って言う割に鬱陶しいかも・・・
見知らぬ場所で、理解を超えた話。かなり緊張していたのか、彼等の人間臭さにホッとし、身体から力が抜けていった。
「つまりは、本来は魂の状態で二つの世界を行き来するはずが、生身の身体で行き来したって事ですか?」
「そうなのよ!あぁ・・・わたくしの可愛い子は頭もいいのかしら・・・・」
「そうだね。流石我らの子だ」
とうっとりしたように頷いている。
・・・何なんだこれは・・・
私が何かしゃべるたびに感動し褒めちぎる。
そんな人間でない事くらい自分自身で分かっているから、正直いたたまれない・・・・そんな気持ちと共に、素直に嬉しい気持ちも芽吹いてくるのだからやるせない。
縁が薄い・・・・両親以外でも確かにそうだった。
幼い頃から祖父の影響で続けていた弓道でも、学校に通っていた時も、表面上仲良くはしていても友人と呼べる人はできなかった。
就職してからも単に同僚という関係から深いものへとなることはない。
恋人もできた事はあったが、長く続く事は無かった。別れた理由さえ覚えていない。いつの間にか疎遠になっていた・・・という感じがほとんど。
だから休日は基本一人だったけれども、特段不都合もなかった。気を使うこともなかったし、使われることもなかったから。
でも、やはり時折無性に寂しく思う事はあった。
そんな時は『人間って一人じゃ生きていけないのかな?』と、自分にはない縁と言うものに憧れ縋りつきたいと何度思った事か。
目の前の自称神様だという二人の話を信じるのなら、この世界には本来私と結ぶはずだった縁がある・・・・
そう考えただけで、なんだか胸の奥に小さな明かりが灯ったような気がした。
全ては気の持ちようなんだろうけどね・・・・と物思いに耽っていると、目の前の二人は手と手を取り合い、キラキラとした眼差しでこちらを見ている。
「・・・・笑ったわ・・・・」
「あぁ・・・何と愛らしい・・・」
自分も気付かぬうちにどうやら笑っていたらしい。
しかし・・・・この反応には口元が引きつる反面、やはり嬉しい・・・・
コホンとひとつ咳払いすると、今後の身の振り方を二人に聞く事で、私は照れくさい気持ちを誤魔化した。
私が住んでいた世界。そして、今ここにある世界の他にも沢山。
そして世界の数だけ神様も存在している。そんな神様たちも時折交流があるらしい。
私の世界の神様=目の前の女性、この世界の神様=目の前の男性も例外ではなく、親睦を深めていたみたい。
話してみれば互いに相性が良かったらしく、意気投合。友情の印に何かを残そうではないかと盛り上がり、二人の力を込めた魂を創り出したのだという。
天女の格好をした彼女は私の世界の神様で本来固定の姿と言うものはこれといってなく、私にわかりやすい姿をとってくれているらしい。
反対に彼はこの世界の唯一神セルティスと言うのだそうだ。そして、この姿固定で世間一般に知れ渡り、信仰されているらしい。
二つの世界の力を宿した魂は両方の世界を交互に転生するはずだった。
順番から言えば、此度はこの世界に生まれるはずだったのが、何の力が作用したのか二度続けて同じ世界に転生してしまったのだという。
生まれるはずの無い世界に生まれ落ちた所為か、縁が薄くどこか浮いた存在になってしまっていたそうだ。
それを聞いて、私は妙に納得してしまう。
私の両親は五歳の時に、事故で二人同時に亡くしている。
その後は、母の両親でもある祖父母の元で育てられたけど、二十歳に祖父が亡くなり、その三年後の昨年には祖母も亡くなってしまった。
私の父は元々天涯孤独な人で、母も兄弟姉妹もなく一人っ子。唯一の肉親は祖父母のみ。
その祖父母が亡くなり、文字通り私も天涯孤独となってしまった。
高校卒業後すぐに就職したので、多少は祖父母孝行はできたかもしれないと、自分では思っている。
いずれはいなくなってしまうのだと心の中で理解していたけれど、その喪失感は自分が思っていた以上に大きかったらしく、半年以上体調が安定せず、精神的にも肉体的にもかなりきつかった。
でもここ最近は体調も安定し、これまで通りの生活にやっと戻ったと思った矢先に・・・・
私をあの世界につなぎとめていたのは、祖父母の存在だったらしい。
それは縁を持たない私と唯一、繋がりを持っていた人間だったから。
本来生まれるはずがなかった世界。つなぎとめるものが無くなれば、それは排除されてしまう。
つまり、死ぬという事。
「だから事故の寸前にこちら側に呼び寄せたのよ」
「本来、誰か一人に関わる事は良しとされていないのだが、この度は異常事態だからね」
「それに貴女はわたくし達の愛しい子供。そうそう、わたくしの事はお母様と呼んで!」
「では私はお父様だな」
とても大事な話をしていたのに、非常に残念な方向へと進んでいく。
ジト目で二人を見れば、「娘が冷たい!反抗期?」と泣真似までし始める。
何だか神様って言う割に鬱陶しいかも・・・
見知らぬ場所で、理解を超えた話。かなり緊張していたのか、彼等の人間臭さにホッとし、身体から力が抜けていった。
「つまりは、本来は魂の状態で二つの世界を行き来するはずが、生身の身体で行き来したって事ですか?」
「そうなのよ!あぁ・・・わたくしの可愛い子は頭もいいのかしら・・・・」
「そうだね。流石我らの子だ」
とうっとりしたように頷いている。
・・・何なんだこれは・・・
私が何かしゃべるたびに感動し褒めちぎる。
そんな人間でない事くらい自分自身で分かっているから、正直いたたまれない・・・・そんな気持ちと共に、素直に嬉しい気持ちも芽吹いてくるのだからやるせない。
縁が薄い・・・・両親以外でも確かにそうだった。
幼い頃から祖父の影響で続けていた弓道でも、学校に通っていた時も、表面上仲良くはしていても友人と呼べる人はできなかった。
就職してからも単に同僚という関係から深いものへとなることはない。
恋人もできた事はあったが、長く続く事は無かった。別れた理由さえ覚えていない。いつの間にか疎遠になっていた・・・という感じがほとんど。
だから休日は基本一人だったけれども、特段不都合もなかった。気を使うこともなかったし、使われることもなかったから。
でも、やはり時折無性に寂しく思う事はあった。
そんな時は『人間って一人じゃ生きていけないのかな?』と、自分にはない縁と言うものに憧れ縋りつきたいと何度思った事か。
目の前の自称神様だという二人の話を信じるのなら、この世界には本来私と結ぶはずだった縁がある・・・・
そう考えただけで、なんだか胸の奥に小さな明かりが灯ったような気がした。
全ては気の持ちようなんだろうけどね・・・・と物思いに耽っていると、目の前の二人は手と手を取り合い、キラキラとした眼差しでこちらを見ている。
「・・・・笑ったわ・・・・」
「あぁ・・・何と愛らしい・・・」
自分も気付かぬうちにどうやら笑っていたらしい。
しかし・・・・この反応には口元が引きつる反面、やはり嬉しい・・・・
コホンとひとつ咳払いすると、今後の身の振り方を二人に聞く事で、私は照れくさい気持ちを誤魔化した。
26
お気に入りに追加
367
あなたにおすすめの小説

妾に恋をした
はなまる
恋愛
ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。 そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。
早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。
実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。
だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。
ミーシャは無事ミッションを成せるのか?
それとも玉砕されて追い出されるのか?
ネイトの恋心はどうなってしまうのか?
カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?

【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。

私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる