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室内に入った瞬間感じたのは、違和感。
この建物の大きさからは考えられない空間の広さに、唖然とした。
玄関を入るとすぐにダイニングキッチンがあり、その奥にはかなり広いリビングがある。
外観での大きさからいけば、このダイニングキッチンだけでいっぱいなはず。
なのに、恐らく更にその奥にも部屋がありそうだ。
配置されている家具もシンプルで落ち着いた色合いだが、誰の目から見てもとても質の良いものだとわかるほどで、不躾とは思いながらもきょろきょろと見渡した。
私に椅子をすすめながら正面に座っている男女は、この室内に非常にそぐわない、人からかけ離れたその美貌と、全く共通点が見つからない衣服を身に付けニコニコと、目がくらむような笑顔を向けてきた。
目の前の女性は・・・まるで日本人のようで、黒い髪は長く額には歴史の教科書かなんかで見た事がある様な冠を付けている。
そのいでたちも、物語の挿絵で見た事がある天女の様で・・・ふわふわと羽衣が浮いていた。
そして男性はと言うと、明らかに西洋人っぽくて金髪碧眼。いでたちもまた歴史書か映画なんかで見たことのある古代ローマの皇帝の様な格好だ。
そんな二人に対し私は会社帰りだった為に、紺色系のスーツ。
なんなのかしら・・・この絵面は・・・・面接かよ・・・
色んな事に耐えきれなくなった私の脳みそは悩むことを放棄し、取り敢えず現状を把握しようと動き始めた。
「あの・・・ここは一体、どこなのですか?」
恐る恐る口を開けば、何故か目の前の二人はお互いの顔を見合わせ感動したかのように手を握り合っている。
「あぁ・・・愛し子の声・・・・」
――――え?
「生よ!生声よっ!」
―――はぁ?
「なんて愛らしいのか、我が娘は」
・・・・・・・・
「本当に・・・永遠に聞いていられるわ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なにこれ・・・綺麗な顔してるけど、イタイ人達なの?ヤバイ人?
どことなく身の危険を感じ、椅子から腰を上げようとすると目の前の二人は焦った様に謝罪し始めた。
「すまない!怖がらないでくれないか」
「ごめんなさいね。あまりに嬉しくて舞い上がってしまったわ」
「あぁ、まずはお茶を入れよう」
そう言いながらパチンと指を鳴らすと、一瞬にして目の前に湯気の立つ紅茶とお菓子が現れた。
驚きに目を瞠りつつも、なんだかもう何でもありな感じで「いただきます」と素直に頂けば、その美味しさにやっと落ち着いた気がして、ほっと息を吐いた。
「少しは落ち着いたかい?」
「・・・はい」
「では、この状況について説明しようか」
そう言った矢先、目の前の二人は手と手を取り合ってにっこりとほほ笑んだ。
「私達、神様なんだよ」
その言葉にしばし固まってしまったけれど、無言で立ち上がり足元に置いてある荷物を持ち扉へ向かおうとした。
「うわ!待って待って!これ本当だから!」
「わたくし達、本当に神様なのよぉ!」
押し倒さんばかりの勢いで縋りつかれ引き留められ、渋々座り直せば二人もほっとしたように席に着いた。
「信じられないかもしれないけど、これ、本当だから。そして『水野 江里』の魂を創ったのも我々だから」
何故、自分の名前を知っているのかだとか、そんな事は何となく些細な事の様な気がして、取り敢えず話を聞く為に居住まいを正した。
この建物の大きさからは考えられない空間の広さに、唖然とした。
玄関を入るとすぐにダイニングキッチンがあり、その奥にはかなり広いリビングがある。
外観での大きさからいけば、このダイニングキッチンだけでいっぱいなはず。
なのに、恐らく更にその奥にも部屋がありそうだ。
配置されている家具もシンプルで落ち着いた色合いだが、誰の目から見てもとても質の良いものだとわかるほどで、不躾とは思いながらもきょろきょろと見渡した。
私に椅子をすすめながら正面に座っている男女は、この室内に非常にそぐわない、人からかけ離れたその美貌と、全く共通点が見つからない衣服を身に付けニコニコと、目がくらむような笑顔を向けてきた。
目の前の女性は・・・まるで日本人のようで、黒い髪は長く額には歴史の教科書かなんかで見た事がある様な冠を付けている。
そのいでたちも、物語の挿絵で見た事がある天女の様で・・・ふわふわと羽衣が浮いていた。
そして男性はと言うと、明らかに西洋人っぽくて金髪碧眼。いでたちもまた歴史書か映画なんかで見たことのある古代ローマの皇帝の様な格好だ。
そんな二人に対し私は会社帰りだった為に、紺色系のスーツ。
なんなのかしら・・・この絵面は・・・・面接かよ・・・
色んな事に耐えきれなくなった私の脳みそは悩むことを放棄し、取り敢えず現状を把握しようと動き始めた。
「あの・・・ここは一体、どこなのですか?」
恐る恐る口を開けば、何故か目の前の二人はお互いの顔を見合わせ感動したかのように手を握り合っている。
「あぁ・・・愛し子の声・・・・」
――――え?
「生よ!生声よっ!」
―――はぁ?
「なんて愛らしいのか、我が娘は」
・・・・・・・・
「本当に・・・永遠に聞いていられるわ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なにこれ・・・綺麗な顔してるけど、イタイ人達なの?ヤバイ人?
どことなく身の危険を感じ、椅子から腰を上げようとすると目の前の二人は焦った様に謝罪し始めた。
「すまない!怖がらないでくれないか」
「ごめんなさいね。あまりに嬉しくて舞い上がってしまったわ」
「あぁ、まずはお茶を入れよう」
そう言いながらパチンと指を鳴らすと、一瞬にして目の前に湯気の立つ紅茶とお菓子が現れた。
驚きに目を瞠りつつも、なんだかもう何でもありな感じで「いただきます」と素直に頂けば、その美味しさにやっと落ち着いた気がして、ほっと息を吐いた。
「少しは落ち着いたかい?」
「・・・はい」
「では、この状況について説明しようか」
そう言った矢先、目の前の二人は手と手を取り合ってにっこりとほほ笑んだ。
「私達、神様なんだよ」
その言葉にしばし固まってしまったけれど、無言で立ち上がり足元に置いてある荷物を持ち扉へ向かおうとした。
「うわ!待って待って!これ本当だから!」
「わたくし達、本当に神様なのよぉ!」
押し倒さんばかりの勢いで縋りつかれ引き留められ、渋々座り直せば二人もほっとしたように席に着いた。
「信じられないかもしれないけど、これ、本当だから。そして『水野 江里』の魂を創ったのも我々だから」
何故、自分の名前を知っているのかだとか、そんな事は何となく些細な事の様な気がして、取り敢えず話を聞く為に居住まいを正した。
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