王子に嫌われたい!

ひとみん

文字の大きさ
上 下
8 / 32

8

しおりを挟む
「待って!じゃあ、サクラは俺じゃない男と結婚して家庭を築くってこと!?」

・・・・なんか一気に飛躍してるけど・・・・

「まぁ、将来的にはそうなる可能性もあるのかな?」
私がそう答えると、王子は正にこの世の終わりの様な顔をし、非常に残念な表情へと変化していった・・・・どのように変わっていったかは・・・本人の人権を尊重し控えさせて頂きます・・・

そんな王子の様子を見かね助け舟を出したのはリズだった。
「サーラ様、恐らくその未来予想図は叶わないものと思われます」
「え?何で!?」
「先ほども言いましたでしょう?貴女の重要性を」
「・・・・・・はっ!そうだった!私、狙われてるんだった!」
私にとっては、忘れてしまいたい現実を突きつけられてしまう。
名前云々で騒いでたら、ついついうっかり忘れてたわ・・・・

そんな私を、こいつ馬鹿じゃないの?ってな目で見るリズ。えぇえぇ、危機感なくてすみませんね!

「サーラ様は顔だけではなく、そのオツムも真っ平らで機能していないのですね」
厭味ったらしい溜息と一緒に呟かれた一言に、悔しいけどぐうの音も出ない。
思わず地団駄を踏み、リズを睨み付けた。
「兎に角、町で働くことはできません。貴女がどうしても早死にしたいというのであれば、止めはしませんが」
「うぐっ・・・・」
痛いとこを突かれ口を噤む私とは反対に、アリオスはいつにもましてキラキラを倍増させながらリズに尊敬のまなざしを向けていた。

次第に遠のいていく自立への道。
項垂れる私にリズは「別に自立への道は一つではないでしょう」と、呆れ顔を前面に出しながらも、相変わらず馬鹿な子を見るような眼で私を見る。

その視線が本当に、色んな意味で悲しい・・・リズの言う事が正論であればあるほどにね。
確かに道は一つではない。この城内での下働きとか、色々仕事はあるはずだ。だから・・・・ほかの道が結婚とか、言わないよね?

「取り敢えず、働くのは城内にしていただきます。王子の世話係という事で。で、個人的にはお友達から始めてください」

「え?世話係!?下働きじゃなくて?」
「お友達?恋人じゃなくて!?」

私と王子がそれぞれの反応を返す中、リズは本当に面倒くさそうに私らを睥睨するように、見た。
背後にはブリザードが見えた気がしたのは・・・多分、幻ではないと思う。
だって、確実に室内の温度が下がったものっ!

「私にしてみれば二人の関係なんてどーでもいいんですよ。面倒くさい。ただ、私を含め国民が戦争に巻き込まれ大変な思いをするのが嫌なのです。わかりました!?」

リズさん、いつも以上に怖いんですけど・・・

そんな思いを飲み込み、有無を言わせぬ言葉の強さと冷たい眼差しに、私たちはただただ頷くしかない。
「だったらいつまでもグダグダ我侭言わない。王子は国の為に働きなさい。サーラ様も働きたいのであれば、ただの穀潰しになり果てる前に己の存在価値を示しなさい!」
「「はいっ!!」」
私たち二人は背筋を伸ばし、勢いよく返事を返した。

誰が偉い人なのか・・・わからないくらい混沌としてきた・・・
だけれど私の本能が告げる・・・リズには逆らっちゃいけないよ・・・と。

そんなこんなで、全てリズが仕切り収めてしまった。
あれだけ悩んでいた私は一体、何だったのか・・・と思ってしまうけど・・・
でも、彼が私の力を目的に求婚してきたのではない事が分かっただけでも、私は嬉しかった。

この関係がこれからどう進むのかはわからないけれど、取り敢えずお友達から始める事にした私とアリオス。
私の望まない方向へと進まない事を祈りつつ、今までの延長線上とはいえ、自分の居場所を確保できた事にほっと胸を撫で下ろした。


そして、それから数日後だった。
実は、リズはリゾレットという名のアリオスの腹違いの妹で、この国の最強の一人と謳われるほどの魔法使いであるという事を知ったのは・・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~

浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。 御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。 「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」 自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

男装の公爵令嬢ドレスを着る

おみなしづき
恋愛
父親は、公爵で騎士団長。 双子の兄も父親の騎士団に所属した。 そんな家族の末っ子として産まれたアデルが、幼い頃から騎士を目指すのは自然な事だった。 男装をして、口調も父や兄達と同じく男勝り。 けれど、そんな彼女でも婚約者がいた。 「アデル……ローマン殿下に婚約を破棄された。どうしてだ?」 「ローマン殿下には心に決めた方がいるからです」 父も兄達も殺気立ったけれど、アデルはローマンに全く未練はなかった。 すると、婚約破棄を待っていたかのようにアデルに婚約を申し込む手紙が届いて……。 ※暴力的描写もたまに出ます。

処理中です...