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一章
58 バフォメット捕獲作戦
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勇者アシュレイがルンルンな足どりで部屋を出ていった。彼の中では様々な妄想が駆け巡っているのだろう。
テレシア姫には申し訳ないけど、形は作ってあげたのであとは自分自身で頑張ってもらいたい。王様も宰相もホッとした表情をしつつも、本当に実現可能な話なのかと頭を悩ませている。
「神獣様、大丈夫なのでしょうか」
宰相が心配そうにたずねてくる。しかしながら、神殿が聖女育成を勇者に任せるようなことを簡単に決めるわけがない。ミルフィーヌが反対するのも想像できる。
「勇者と神殿の関係性は良好だ。このまま話し合いを進めていきながら徐々に外堀から埋めていけばいい。今はとにかくテレシア姫との結婚を急げ」
「か、かしこまりました。して、神殿の方は?」
「これは大きな事業になる。そんな簡単に進む話ではない」
「しかしながら、それではアシュレイが怒るのでは……」
「話し合いの場を必ず三者間で行いなさい。王宮、神殿、そして勇者アシュレイ。もちろん私も後ろから神殿をつつくようにはするが、王宮は必ず勇者の味方をすればいい」
ハッと気づいたように王様が手をうった。
「なるほど、常にアシュレイと味方の立ち位置でいれば、話の進みが遅くても怒りの矛先は神殿に向かう」
「これなら大丈夫そうでございますな王様」
宰相も少しは安堵したようだ。あとのことはこの二人にしっかり話を進めてもらいながら途中経過を確認していけばいい。
そして、神殿と勇者の関係が悪くなるのはこちらとしては一向に構わないというか、そうなってもらいたいとさえ思っている。
「わかっているとは思うが、私のことは神殿に言わないように」
「も、もちろんでございます。神獣様は神殿側の味方かと思っていたのですが……違うのですね」
「勘ぐるでない」
「も、申し訳ございません」
神殿がどんな反応をするのかわからないけど、勇者と王宮が提案する事業を無碍に断ることはできないだろう。打ち合わせという名の時間稼ぎをしていく中で、テレシア姫と結婚とか領地経営とかで忙しくなればいいんじゃないかな。
少なくともしばらくの間はルミナス村に遊びに来るような余裕はないだろう。自分の夢のためにも頑張ってもらいたい。応援はしないけどね。
「あっ、それから王命で牧場の件をルミナス村に伝えておくように。管理については神獣様に一任するということで」
「す、すぐに早馬を飛ばします」
「私はこれからバフォメット捕獲にいってくる。あとのことはしっかり頼むぞ」
「かしこまりました」
『旦那、あっしも一緒に行っていいでやんすか?』
カメレオンフロッグからお願いとは珍しい。
「構わないけど何で?」
『自分の力がどのぐらい上がっているのか試してみたいでやんす。ほらっ、この辺りだと弱いモンスターしかいないじゃないっすか』
進化してから街道に現れるモンスターの駆除をお願いしていたものの、どこか物足りなかったのかもしれない。
「じゃあスライム達はここに残るのとルミナス村で牧場予定地を整地するチームに分かれよう。僕とカメレオンフロッグでバフォメットを捕まえてくる」
『了解でーす』
バフォメットは王都からルミナス村とは反対方面に行った山岳地帯の頂上付近に生息するモンスターらしい。
勇者パーティが討伐したのは山の中腹まで降りてきてしまったはぐれの個体だったらしい。どうやら無謀にも討伐しようとちょっかい出した冒険者がいたらしく、バフォメットが激怒して降りてきてしまったとのこと。基本的に棲み分けが出来ているモンスターで頂上付近から動かないと言われている。
「あれか……」
ダークネスブーストを使ってたどり着いた先には黒くモコモコした巨大なモンスターが大量に、寒さ対策なのかひとかたまりになって集まっていた。仲間同士の仲は良好らしい。というか数がいっぱいいてよかった。
『ちょっ、旦那……速すぎるでやんす。進化前だったらまだ山のふもとっすよっ』
ちょうどタイミングよくカメレオンフロッグも到着したようだ。ダークネスブーストは僕も全力を出していたわけではなく、カメレオンフロッグがギリギリ着いてこられる程度のスピードしか出していない。
「アベベバァァァ!」
「アベベバァァァ!!!!」
どうやらこちらの姿を確認したらしいバフォメットたちが独特な声で騒ぎはじめている。モコモコした毛の奥から光るように見える紅い瞳からは自分たちの縄張りに入ってきた侵入者に対する怒りが窺える。
話し合いで解決できれば楽でよかったのだけど、どうやらそうもいかない模様。
『旦那、ここはあっしに任せてもらえませんか』
「結構強そうなんだけど大丈夫か?」
一体でも勇者パーティが苦戦したというモンスターなのだ。よくよく考えたら僕とカメレオンフロッグだけだと相手にならないんじゃないだろうか……。
そんな不安を感じさせることなく前に進みでるカメレオンフロッグ。少しだけ頼もしい。
するとバフォメット側からも一際大きな巨体の一頭が出てきた。
よくわからないけど、代表者による力試し的な話になっているのかもしれない。知らんけど。
モンスター同士の熱い闘いは嫌いじゃない。でもね、カメレオンフロッグよ。お前の戦闘スタイルは正々堂々とした真正面からのぶつかり合いではなくて、隠密からの奇襲攻撃なんじゃないのか……。
そんな僕の気も知らずに二体のぶつかり合いが始まってしまった。
テレシア姫には申し訳ないけど、形は作ってあげたのであとは自分自身で頑張ってもらいたい。王様も宰相もホッとした表情をしつつも、本当に実現可能な話なのかと頭を悩ませている。
「神獣様、大丈夫なのでしょうか」
宰相が心配そうにたずねてくる。しかしながら、神殿が聖女育成を勇者に任せるようなことを簡単に決めるわけがない。ミルフィーヌが反対するのも想像できる。
「勇者と神殿の関係性は良好だ。このまま話し合いを進めていきながら徐々に外堀から埋めていけばいい。今はとにかくテレシア姫との結婚を急げ」
「か、かしこまりました。して、神殿の方は?」
「これは大きな事業になる。そんな簡単に進む話ではない」
「しかしながら、それではアシュレイが怒るのでは……」
「話し合いの場を必ず三者間で行いなさい。王宮、神殿、そして勇者アシュレイ。もちろん私も後ろから神殿をつつくようにはするが、王宮は必ず勇者の味方をすればいい」
ハッと気づいたように王様が手をうった。
「なるほど、常にアシュレイと味方の立ち位置でいれば、話の進みが遅くても怒りの矛先は神殿に向かう」
「これなら大丈夫そうでございますな王様」
宰相も少しは安堵したようだ。あとのことはこの二人にしっかり話を進めてもらいながら途中経過を確認していけばいい。
そして、神殿と勇者の関係が悪くなるのはこちらとしては一向に構わないというか、そうなってもらいたいとさえ思っている。
「わかっているとは思うが、私のことは神殿に言わないように」
「も、もちろんでございます。神獣様は神殿側の味方かと思っていたのですが……違うのですね」
「勘ぐるでない」
「も、申し訳ございません」
神殿がどんな反応をするのかわからないけど、勇者と王宮が提案する事業を無碍に断ることはできないだろう。打ち合わせという名の時間稼ぎをしていく中で、テレシア姫と結婚とか領地経営とかで忙しくなればいいんじゃないかな。
少なくともしばらくの間はルミナス村に遊びに来るような余裕はないだろう。自分の夢のためにも頑張ってもらいたい。応援はしないけどね。
「あっ、それから王命で牧場の件をルミナス村に伝えておくように。管理については神獣様に一任するということで」
「す、すぐに早馬を飛ばします」
「私はこれからバフォメット捕獲にいってくる。あとのことはしっかり頼むぞ」
「かしこまりました」
『旦那、あっしも一緒に行っていいでやんすか?』
カメレオンフロッグからお願いとは珍しい。
「構わないけど何で?」
『自分の力がどのぐらい上がっているのか試してみたいでやんす。ほらっ、この辺りだと弱いモンスターしかいないじゃないっすか』
進化してから街道に現れるモンスターの駆除をお願いしていたものの、どこか物足りなかったのかもしれない。
「じゃあスライム達はここに残るのとルミナス村で牧場予定地を整地するチームに分かれよう。僕とカメレオンフロッグでバフォメットを捕まえてくる」
『了解でーす』
バフォメットは王都からルミナス村とは反対方面に行った山岳地帯の頂上付近に生息するモンスターらしい。
勇者パーティが討伐したのは山の中腹まで降りてきてしまったはぐれの個体だったらしい。どうやら無謀にも討伐しようとちょっかい出した冒険者がいたらしく、バフォメットが激怒して降りてきてしまったとのこと。基本的に棲み分けが出来ているモンスターで頂上付近から動かないと言われている。
「あれか……」
ダークネスブーストを使ってたどり着いた先には黒くモコモコした巨大なモンスターが大量に、寒さ対策なのかひとかたまりになって集まっていた。仲間同士の仲は良好らしい。というか数がいっぱいいてよかった。
『ちょっ、旦那……速すぎるでやんす。進化前だったらまだ山のふもとっすよっ』
ちょうどタイミングよくカメレオンフロッグも到着したようだ。ダークネスブーストは僕も全力を出していたわけではなく、カメレオンフロッグがギリギリ着いてこられる程度のスピードしか出していない。
「アベベバァァァ!」
「アベベバァァァ!!!!」
どうやらこちらの姿を確認したらしいバフォメットたちが独特な声で騒ぎはじめている。モコモコした毛の奥から光るように見える紅い瞳からは自分たちの縄張りに入ってきた侵入者に対する怒りが窺える。
話し合いで解決できれば楽でよかったのだけど、どうやらそうもいかない模様。
『旦那、ここはあっしに任せてもらえませんか』
「結構強そうなんだけど大丈夫か?」
一体でも勇者パーティが苦戦したというモンスターなのだ。よくよく考えたら僕とカメレオンフロッグだけだと相手にならないんじゃないだろうか……。
そんな不安を感じさせることなく前に進みでるカメレオンフロッグ。少しだけ頼もしい。
するとバフォメット側からも一際大きな巨体の一頭が出てきた。
よくわからないけど、代表者による力試し的な話になっているのかもしれない。知らんけど。
モンスター同士の熱い闘いは嫌いじゃない。でもね、カメレオンフロッグよ。お前の戦闘スタイルは正々堂々とした真正面からのぶつかり合いではなくて、隠密からの奇襲攻撃なんじゃないのか……。
そんな僕の気も知らずに二体のぶつかり合いが始まってしまった。
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