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一章
57 夢の楽園
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■■■勇者アシュレイ視点
ようやく王宮からの連絡があったと思ったら、すぐに登城しなさいとのお達しが届いた。
正直に言って、僕の王宮に対する信頼は完全に失墜している。何を言っても知らない、指示なんてしていないの一点張り。そんな道理が通じるわけがない。
「これでは、レティさんに合わす顔がない。せっかく神殿が僕とレティさんとの会食を計画してくれているというのに……」
城はどこか緊張感があって、いつもの雰囲気とは異なる感じがしないでもない。ようやく罪を認めて頭を下げるのだろうか。僕の怒りは全く収まらないが、二度とこのようなことがないように強く言いくるめなければならない。
僕のせいでレティさんが危険な目にあうなんてことは絶対にあってはならない。それがきっかけでレティさんに嫌われるようなことがあったら僕は絶望してしまう。
「勇者アシュレイ様が到着されました」
「う、うむ。入れ」
いつもより緊張気味の宰相様の声が聞こえてくる。どうやらこの部屋には王様と宰相様がいるらしい。
すでに人払いがされているようで、部屋の前に待機していた騎士さえも離れていく。
「宰相様もいらっしゃいましたか。あの三人からは闇ギルドに依頼をしたのは宰相様、あなただと聞いております。今日こそは真相を教えていただくまで帰りませんよ!」
「そのことなのだが……」
「いや、よい。わしが説明をしよう。アシュレイよ、我々も闇ギルドに脅されていたのじゃ」
「脅されていた?」
「実はな、闇ギルドにテレシアが誘拐されていたのじゃ。奴らの言うことを聞かないと命の保証はないと言われておって、身動きがとれなかったのじゃ」
「テレシア姫が! いや、しかし……」
「あの三人はA級とはいえ実務部隊。任務で口が割れる可能性もあるのだ。本当のことなど教えられておらんよ」
いや、まさか……。
でも、その可能性は無くはない……のか。
「し、しかし、闇ギルドは何のためにそんなことを」
「そんなこともわからんのか? 奴らにとって最大の脅威はアシュレイそなた達じゃよ。闇ギルドにとって勇者パーティがバラバラになった今こそが最大のチャンスだったのじゃろう」
「つまり、僕たち一人一人を殺害しようと計画を立てていたというのですか!」
「そうじゃ。そして一番の脅威である勇者アシュレイ、お前が最初に殺される計画だったのじゃよ」
「そ、そんな……。そんなことが」
「しかしながら、計画は失敗に終わった。闇ギルドにとって計算外だったのは神獣様の介入じゃ」
「神獣様が!? あっ……」
「そうじゃ。人質をとられ身動きを封じられたお前を助け、すぐに闇ギルドの動きを察知し地下水路に隠されていたアジトの位置を暴き爆破。そして、昨夜ようやく闇ギルドのリーダーであるマーロウを倒し、無事にテレシアを奪還し全てが解決した。これも全ては神獣様のおかげなのじゃ」
「それならそうと、何で僕に真実を教えてくれなかったのですか!」
「お前は神殿と一緒に王宮を疑っていた。極秘裏に闇ギルドからテレシアを救い、且つアシュレイを守るにはこれしかなかったのじゃ。本当のことを言えずに申し訳なかった」
「王宮は僕たちを守っていたというのですか」
「当たり前じゃろう。この世界を救い、わしの溺愛するテレシアを嫁にやりたいと思うほど信頼しているアシュレイのため。当然のことじゃ。例えお主に疑いの目を向けられようともな……」
「うっ、そ、その、申し訳ございません」
「もうよいのじゃ。全ては終わったこと」
「王宮を疑うなど、僕もどうかしていました。何かお詫びをさせてください」
「わしとお前の仲じゃ。そんなことは気にしなくてもよい。だが、どうしてもというのであれば一つ話を聞いてもらえぬだろうか」
「はっ、何なりと」
「お主がルミナス村の少女に恋心を抱いているのは聞いた。そして残念ながら聖女候補として入信したことも」
「は、はい……」
「そして、王宮がお主とテレシア姫との結婚を望んでいることも知っているな?」
「はい」
「そこで、一つ王宮からクエストを出そうと思う。勇者アシュレイ、お前を伯爵として取り立て領土を与える。その領土において聖女育成協会の設立をしてみたらどうかと思うのだ。聖光魔法を学ぶ無垢な少女を育成するというのは魔王を倒した後の勇者の仕事として相応しくはないだろうか?」
「無垢な少女を育成……」
「もちろん領土を与えるからにはテレシアと結婚しなければならない。それぐらいは理解しているな?」
「も、もちろんです」
「勇者アシュレイよ。これは勇者の格を上げる最後のクエストじゃ。見事成功させてテレシアと共に公爵位を目指すがいい」
これはとても魅力的な提案だ。社会的に触れ合うことが許されない無垢な少女を学びの場において公的にお触りすることが許される。
そのためならば愛しているわけではないがテレシア姫と結婚することで社会的地位を確立するというのは悪くない話だ。
無垢な少女にお兄さまと呼ばせて面倒をみる。たまには一緒にお風呂で語り合う授業とかとり入れてもいいかもしれない。夏は川遊び、冬は温泉で温まり、無垢な少女が微成長する姿を目に焼き付け喜びを分かち合う素晴らしい世界。
そうか、僕はこのために魔王を倒し世界を平和にしたのかもしれない。聖女育成協会を早く立ち上げることが出来れば、レティさんをルミナス村から合法的に連れ出すことだって可能かもしれない。
夢は広がる無垢な少女の永遠ループ。僕はこのクエストを絶対に成功させてみせる!
僕だけの夢の楽園をつくるんだ!
ようやく王宮からの連絡があったと思ったら、すぐに登城しなさいとのお達しが届いた。
正直に言って、僕の王宮に対する信頼は完全に失墜している。何を言っても知らない、指示なんてしていないの一点張り。そんな道理が通じるわけがない。
「これでは、レティさんに合わす顔がない。せっかく神殿が僕とレティさんとの会食を計画してくれているというのに……」
城はどこか緊張感があって、いつもの雰囲気とは異なる感じがしないでもない。ようやく罪を認めて頭を下げるのだろうか。僕の怒りは全く収まらないが、二度とこのようなことがないように強く言いくるめなければならない。
僕のせいでレティさんが危険な目にあうなんてことは絶対にあってはならない。それがきっかけでレティさんに嫌われるようなことがあったら僕は絶望してしまう。
「勇者アシュレイ様が到着されました」
「う、うむ。入れ」
いつもより緊張気味の宰相様の声が聞こえてくる。どうやらこの部屋には王様と宰相様がいるらしい。
すでに人払いがされているようで、部屋の前に待機していた騎士さえも離れていく。
「宰相様もいらっしゃいましたか。あの三人からは闇ギルドに依頼をしたのは宰相様、あなただと聞いております。今日こそは真相を教えていただくまで帰りませんよ!」
「そのことなのだが……」
「いや、よい。わしが説明をしよう。アシュレイよ、我々も闇ギルドに脅されていたのじゃ」
「脅されていた?」
「実はな、闇ギルドにテレシアが誘拐されていたのじゃ。奴らの言うことを聞かないと命の保証はないと言われておって、身動きがとれなかったのじゃ」
「テレシア姫が! いや、しかし……」
「あの三人はA級とはいえ実務部隊。任務で口が割れる可能性もあるのだ。本当のことなど教えられておらんよ」
いや、まさか……。
でも、その可能性は無くはない……のか。
「し、しかし、闇ギルドは何のためにそんなことを」
「そんなこともわからんのか? 奴らにとって最大の脅威はアシュレイそなた達じゃよ。闇ギルドにとって勇者パーティがバラバラになった今こそが最大のチャンスだったのじゃろう」
「つまり、僕たち一人一人を殺害しようと計画を立てていたというのですか!」
「そうじゃ。そして一番の脅威である勇者アシュレイ、お前が最初に殺される計画だったのじゃよ」
「そ、そんな……。そんなことが」
「しかしながら、計画は失敗に終わった。闇ギルドにとって計算外だったのは神獣様の介入じゃ」
「神獣様が!? あっ……」
「そうじゃ。人質をとられ身動きを封じられたお前を助け、すぐに闇ギルドの動きを察知し地下水路に隠されていたアジトの位置を暴き爆破。そして、昨夜ようやく闇ギルドのリーダーであるマーロウを倒し、無事にテレシアを奪還し全てが解決した。これも全ては神獣様のおかげなのじゃ」
「それならそうと、何で僕に真実を教えてくれなかったのですか!」
「お前は神殿と一緒に王宮を疑っていた。極秘裏に闇ギルドからテレシアを救い、且つアシュレイを守るにはこれしかなかったのじゃ。本当のことを言えずに申し訳なかった」
「王宮は僕たちを守っていたというのですか」
「当たり前じゃろう。この世界を救い、わしの溺愛するテレシアを嫁にやりたいと思うほど信頼しているアシュレイのため。当然のことじゃ。例えお主に疑いの目を向けられようともな……」
「うっ、そ、その、申し訳ございません」
「もうよいのじゃ。全ては終わったこと」
「王宮を疑うなど、僕もどうかしていました。何かお詫びをさせてください」
「わしとお前の仲じゃ。そんなことは気にしなくてもよい。だが、どうしてもというのであれば一つ話を聞いてもらえぬだろうか」
「はっ、何なりと」
「お主がルミナス村の少女に恋心を抱いているのは聞いた。そして残念ながら聖女候補として入信したことも」
「は、はい……」
「そして、王宮がお主とテレシア姫との結婚を望んでいることも知っているな?」
「はい」
「そこで、一つ王宮からクエストを出そうと思う。勇者アシュレイ、お前を伯爵として取り立て領土を与える。その領土において聖女育成協会の設立をしてみたらどうかと思うのだ。聖光魔法を学ぶ無垢な少女を育成するというのは魔王を倒した後の勇者の仕事として相応しくはないだろうか?」
「無垢な少女を育成……」
「もちろん領土を与えるからにはテレシアと結婚しなければならない。それぐらいは理解しているな?」
「も、もちろんです」
「勇者アシュレイよ。これは勇者の格を上げる最後のクエストじゃ。見事成功させてテレシアと共に公爵位を目指すがいい」
これはとても魅力的な提案だ。社会的に触れ合うことが許されない無垢な少女を学びの場において公的にお触りすることが許される。
そのためならば愛しているわけではないがテレシア姫と結婚することで社会的地位を確立するというのは悪くない話だ。
無垢な少女にお兄さまと呼ばせて面倒をみる。たまには一緒にお風呂で語り合う授業とかとり入れてもいいかもしれない。夏は川遊び、冬は温泉で温まり、無垢な少女が微成長する姿を目に焼き付け喜びを分かち合う素晴らしい世界。
そうか、僕はこのために魔王を倒し世界を平和にしたのかもしれない。聖女育成協会を早く立ち上げることが出来れば、レティさんをルミナス村から合法的に連れ出すことだって可能かもしれない。
夢は広がる無垢な少女の永遠ループ。僕はこのクエストを絶対に成功させてみせる!
僕だけの夢の楽園をつくるんだ!
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