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一章
51 仲間になりたそうに見ている
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ブラックドラゴンは仲間になりたそうにこちらを見ている。これはリタの時と全く同じパターンとみていい。
僕は知っている。迂闊に頭を撫でようものなら魔力を勝手に吸い取りテイムされようとしてくるやつだ。まあ、巨体過ぎて手が届かないけどさ。
「却下」
僕の言葉を理解しているのか、それともスライムから通訳されているのか。絶望で膝をつくドラゴンとか初めて見たよ。
「あのねー、理由を話したらご主人様怒るかもしれないから言わなかったんだけど、このブラックドラゴンがテイムされたいのは僕たちとユリイカのせいでもあるんだー」
んん? スライムとユリイカのせい?
スライムから事情を聞いて盛大にため息が出てしまった。
「それで主犯のユリイカはどこにいった?」
「体調が優れないから魔王城にこもって椅子を作るってー」
「離れを勝手に魔王城と呼ばせるな。あと、体調優れないやつが椅子作ってんじゃねぇ!」
ユリイカの奴、怒られるのを察して一人逃げやがったな。
「あんまり怒らないであげて。椅子はご主人様のを作ってるのー。あとね、自分がいると話がややこしくなるから僕たちに任せるってー」
それを丸投げからの逃げというのだ。魔族ならではの合理的な考えとも言えるが、それは人間社会においては信頼を失う行動になる。
「ユリイカを至急ここに呼んできてもらえる?」
「わかったー」
それからしばらくして肩をビクビクとさせているユリイカが連行されてきた。「や、やっぱり帰るー」とか「もう少し時間が必要なのだー」とか声が聞こえていたので自分でも悪い事をしたという自覚はちゃんとあるのだろう。
「はいユリイカ、正座」
「は、はひ」
「相手がモンスターとはいえ、無害な種族に手を出したらダメだよ」
「も、申し訳ございません」
「スライム達もだよ。これからは話しの通じるモンスターかどうかもちゃんと確認してから行動するように」
「はーい!」
「ユリイカ、ブラックドラゴンにはちゃんと謝ったの?」
「う、うむ、謝った」
ブラックドラゴンも頷いているので、多分そうなんだろう。
「これから僕のそばで人として生きていくなら、自分の失敗は自分で決着させなければ周りからの信頼は得られないよ。ただ強ければ従うっていうのは人の社会では通用しないんだ」
ユリイカは人との暮らしに慣れていないから、もう少し時間は掛かるとは思うけど、今はまだ村の人達と距離を置いてもらった方がいいかな。
「も、申し訳ございません」
「今回の件は、知らなかったこととはいえブラックドラゴンに迷惑をかけてしまった。だから、僕ができる範囲でお詫びをしたいと思う」
僕がブラックドラゴンを見ると、無い尻尾をフリフリして喜んでいるのが何となくわかる。テイムはしたくない。でも、シャインブラックベリーとやらを育てないとこのドラゴンは生きていけないのだという。
僕の畑で栄養たっぷり、且つダークネスグロウを用いて一気に実を成すことは可能だと思う。これはスライムと僕が長年に渡って土を改良してきたからやれる大技であってそう何度も使えるものではない。安定して実を食べられるようになるにはきっと一年近くは掛かってしまうだろう。
それまでの間このドラゴンを死なないように面倒を見るにはダークネステイムしかない。テイムされたモンスターは僕の魔力によって多少エネルギーを得られる。一年程度であれば何とか大丈夫だろう。
「ところで、何でこのドラゴンは僕にテイムされるのを喜んでいるのかな?」
「えっとねー、もう一人で生きるのに疲れたんだってー。みんなこの巨体を怖がって仲間に入れてもらえないし、突然力試しをするが如く襲われたりするのがもう嫌なんだってー」
いろいろと苦労してきたんだろうな。考え方がとても達観している。そういう理不尽な目に会ってきたこと、何処か親近感が湧くのは気のせいだろうか。君が全てに絶望する前に会えてよかったと思う。
「ブラックドラゴン、こちらに頭を。うん、では君をテイムするよ。ダークネステイム!」
ゆっくりと嬉しそうに頭だけを僕の前に持ってくるように首を伸ばしてくる。まさか人の体に転生してからドラゴンをテイムする日がやって来ようとは思いもしなかった。
大きかったブラックドラゴンは光に包まれると予想通り進化を遂げてしまった。僕がテイムするとどういう訳かみんな進化するよね。
光が収まるとそこには元がドラゴンとは思えないほどに小さな姿をした褐色の女の子がいた。気の小ささがサイズの大きさに現れているのだろうか。
「これがテイムされるということ……。すごい……力が湧いてきた。今なら空を飛べるかもしれない」
さっきまでついていたでっかい翼は空を飛ぶためのものではなかったのだろうか。
「えっと、よろしく。ユリイカが迷惑をかけたね」
「もうモンスターに怯えてなくてもいい? 人にも襲われない?」
「その姿でいるなら大丈夫だと思うよ」
ちなみに、進化後の種族名はブラックメタルドラゴンとなっていた。元々の名前にメタルが追加された感じだ。追記事項を確認すると、その艶やかな皮は高額で取引される可能性があり、肉はこの世で最上級の味らしい。
まさに狩られる側のドラゴンなのかもしれないな。
さて、レティに何て言おうか……。
僕は知っている。迂闊に頭を撫でようものなら魔力を勝手に吸い取りテイムされようとしてくるやつだ。まあ、巨体過ぎて手が届かないけどさ。
「却下」
僕の言葉を理解しているのか、それともスライムから通訳されているのか。絶望で膝をつくドラゴンとか初めて見たよ。
「あのねー、理由を話したらご主人様怒るかもしれないから言わなかったんだけど、このブラックドラゴンがテイムされたいのは僕たちとユリイカのせいでもあるんだー」
んん? スライムとユリイカのせい?
スライムから事情を聞いて盛大にため息が出てしまった。
「それで主犯のユリイカはどこにいった?」
「体調が優れないから魔王城にこもって椅子を作るってー」
「離れを勝手に魔王城と呼ばせるな。あと、体調優れないやつが椅子作ってんじゃねぇ!」
ユリイカの奴、怒られるのを察して一人逃げやがったな。
「あんまり怒らないであげて。椅子はご主人様のを作ってるのー。あとね、自分がいると話がややこしくなるから僕たちに任せるってー」
それを丸投げからの逃げというのだ。魔族ならではの合理的な考えとも言えるが、それは人間社会においては信頼を失う行動になる。
「ユリイカを至急ここに呼んできてもらえる?」
「わかったー」
それからしばらくして肩をビクビクとさせているユリイカが連行されてきた。「や、やっぱり帰るー」とか「もう少し時間が必要なのだー」とか声が聞こえていたので自分でも悪い事をしたという自覚はちゃんとあるのだろう。
「はいユリイカ、正座」
「は、はひ」
「相手がモンスターとはいえ、無害な種族に手を出したらダメだよ」
「も、申し訳ございません」
「スライム達もだよ。これからは話しの通じるモンスターかどうかもちゃんと確認してから行動するように」
「はーい!」
「ユリイカ、ブラックドラゴンにはちゃんと謝ったの?」
「う、うむ、謝った」
ブラックドラゴンも頷いているので、多分そうなんだろう。
「これから僕のそばで人として生きていくなら、自分の失敗は自分で決着させなければ周りからの信頼は得られないよ。ただ強ければ従うっていうのは人の社会では通用しないんだ」
ユリイカは人との暮らしに慣れていないから、もう少し時間は掛かるとは思うけど、今はまだ村の人達と距離を置いてもらった方がいいかな。
「も、申し訳ございません」
「今回の件は、知らなかったこととはいえブラックドラゴンに迷惑をかけてしまった。だから、僕ができる範囲でお詫びをしたいと思う」
僕がブラックドラゴンを見ると、無い尻尾をフリフリして喜んでいるのが何となくわかる。テイムはしたくない。でも、シャインブラックベリーとやらを育てないとこのドラゴンは生きていけないのだという。
僕の畑で栄養たっぷり、且つダークネスグロウを用いて一気に実を成すことは可能だと思う。これはスライムと僕が長年に渡って土を改良してきたからやれる大技であってそう何度も使えるものではない。安定して実を食べられるようになるにはきっと一年近くは掛かってしまうだろう。
それまでの間このドラゴンを死なないように面倒を見るにはダークネステイムしかない。テイムされたモンスターは僕の魔力によって多少エネルギーを得られる。一年程度であれば何とか大丈夫だろう。
「ところで、何でこのドラゴンは僕にテイムされるのを喜んでいるのかな?」
「えっとねー、もう一人で生きるのに疲れたんだってー。みんなこの巨体を怖がって仲間に入れてもらえないし、突然力試しをするが如く襲われたりするのがもう嫌なんだってー」
いろいろと苦労してきたんだろうな。考え方がとても達観している。そういう理不尽な目に会ってきたこと、何処か親近感が湧くのは気のせいだろうか。君が全てに絶望する前に会えてよかったと思う。
「ブラックドラゴン、こちらに頭を。うん、では君をテイムするよ。ダークネステイム!」
ゆっくりと嬉しそうに頭だけを僕の前に持ってくるように首を伸ばしてくる。まさか人の体に転生してからドラゴンをテイムする日がやって来ようとは思いもしなかった。
大きかったブラックドラゴンは光に包まれると予想通り進化を遂げてしまった。僕がテイムするとどういう訳かみんな進化するよね。
光が収まるとそこには元がドラゴンとは思えないほどに小さな姿をした褐色の女の子がいた。気の小ささがサイズの大きさに現れているのだろうか。
「これがテイムされるということ……。すごい……力が湧いてきた。今なら空を飛べるかもしれない」
さっきまでついていたでっかい翼は空を飛ぶためのものではなかったのだろうか。
「えっと、よろしく。ユリイカが迷惑をかけたね」
「もうモンスターに怯えてなくてもいい? 人にも襲われない?」
「その姿でいるなら大丈夫だと思うよ」
ちなみに、進化後の種族名はブラックメタルドラゴンとなっていた。元々の名前にメタルが追加された感じだ。追記事項を確認すると、その艶やかな皮は高額で取引される可能性があり、肉はこの世で最上級の味らしい。
まさに狩られる側のドラゴンなのかもしれないな。
さて、レティに何て言おうか……。
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