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一章

44 王宮へのお仕置き1

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 地下水路を抜けていったん王都の外に出た僕たちは、カメレオンフロッグと合流してすぐさま次の作戦にとりかかる。

「王宮に忍び込んでまず宰相を捕らえる。それから王様のいる場所まで案内させてお説教する感じかな」

 お説教のあたりで疑問符を浮かべるユリイカ。

「お説教……ですか。殺さないのですか?」

「はあー」

 魔族はすぐ殺す殺さないになるから嫌だよね。そんなんだからいつまで経っても仲間内で殺し合いとかしてるんだよ。

「な、な、なんですか、その虫を見るような目はやめてください」

「ユリイカ、王様も宰相も殺さないよ。せっかく平和な世界が始まったばかりなんだから、僕としてはこのまま新しい魔王が出てくるまで静かな世界をキープしてもらいたいんだ」

「そういうものですか?」

「そういうものなの。特にうちの村は観光で成り立っているんだから政情不安定じゃ人も集まらないんだよ」

「はあ」

 よく分かってなさそうだけど、人と暮らすことで僕と同じように少しづつ学んでいってもらいたい。魔族とは違って弱い部分を助け合いで補う文化は素晴らしいことだと思うんだ。

「ということで、王宮に行こうか。ユリイカの魔法はうるさいから禁止ね」

「ええっ!」

 そもそもユリイカにこういうのは向いていない。潜入して音を立てずに敵を無力化させるなんて芸当はできない。その分、広範囲での戦闘では無類の強さを発揮するのだけどね。

「はい、ダークネスインビジブル」

「なるほど、これで隠れていたのですね」

「ユリイカの魔法でインビジブルもきれいさっぱり吹き飛ばされてしまったけどね」

「これからは爆炎魔法を使うのにも気をつけなければなりませんね」

「味方を巻き込む魔法はもうやめてもらいたいかな」

「大丈夫です!」

 すごく心配だけど、今は信じることにしよう。さっきの爆炎魔法は僕が魔王だからあれぐらい大丈夫という気持ちもあったはずだし……。

 いや、それでも臣下の礼をとる相手に対して爆炎魔法っていうのもあれだよね。僕(魔王)を見つけるのに必死だったからなのだとは思うけどさ。その辺も含めて魔族と人の違いというのを教えていかなければならないのだと思う。

 簡単な打ち合わせをしつつ、再びお城へと向かうと、周囲は突然の爆発で集まった騎士や街の人たちで騒がしくしている。

 もっと静かにこそっと処理するはずだったのにな。僕の視線が痛かったらしいユリイカが直ぐに頭を下げてきた。

「も、申し訳ございません」

「いや、まあ知らなかったわけだしね。この後、大人しくしてくれたら問題ない」

「が、頑張ります」

 頑張らなくていい。

 ということで、慌ただしい様子の現場をすり抜けて真っ直ぐお城へと向かっていく。お城からは続々と騎士が出てきているので、結果的にお城の警備は薄くなっていくという奇跡。それをユリイカに話したら調子に乗りそうなので、もちろん黙っておく。

「こんな隠密系の魔法があったのなら勇者パーティなんて簡単に返り討ちにできたかもしれませんね」

「そんな甘くはないよ。彼らだって索敵ぐらいするだろう。それに万が一先制攻撃は出来たとしても、その後はユリイカがやったように魔法で効果は打ち消されてしまうだろうからね」

 騎士たちは僕らに気づくことなく駆けていく。門も開いているのでそのままスムーズに入れてしまった。お城の中にいたスライムに鍵を開けてもらったり、門番を倒したりすることなく、とってもスムーズに宰相の部屋の前まで辿り着いてしまった。

 ちなみに、宰相の部屋の前にいた騎士はカメレオンフロッグがあっさり取りおさえ気絶させている。やはり視認外からの理不尽な先制攻撃は強い。

 どこから持ってきたのかスライムが布で口を塞ぎ、縄で身動きを封じていく。このまま置いとくと誰かに見つかるので宰相の部屋に連れていくか。

「失礼します」

「こんな時間になんだ。って……ど、どういうことだ!」

 宰相が驚くのも無理はない。彼の目から見えているのは口を塞がれ手足を縛られた騎士なのだから。もちろん、僕らの姿はインビジブルの効果で見えていない。声と音が聞こえるぐらいだろう。

「知っているかもしれないが、神殿への襲撃は失敗に終わった」

「だ、誰だ! 声だけが聞こえる……。そ、それにしても、や、やはりそうだったか」

 騎士からも少なからず報告が上がってきていたのだろう。爆発の起こった場所と時刻から考えてある程度は予想できる。

「見えない者よ。お前は神殿の者か?」

「さてね。それを教えるわけにはいかないが、宰相には今から王様のいる場所まで案内してもらう」

「王のいる場所じゃと!? お、王の命を奪うつもりか」

「おまえ達が変な動きをしない限り、命だけは保証しよう」

「わ、わかった」

 宰相も今のこの状況を理解したのだろう。王宮に騎士の数も少なく、見えない敵が騎士を倒している。自分を殺すことなど簡単なはず。目的が不明ではあるものの、闇ギルドの神殿襲撃を事前に把握していることから神殿関係者だと思っている。しかしながらそれは僕にとっては好都合。

 このまま神殿の関係者だと思わせておいて、妙な動きをとらせないようにするのもありかもしれない。

「騎士がいても変な動きをしたらすぐに殺すから気をつけるんだね。さあ、案内しろ!」
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