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一章
39 スライムの調査
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■■■スライム視点
ダークネスインビジブルの効果は約三日間。僕の役目はレティ様を誘拐した犯罪者の親玉を特定することと闇ギルドの隠れ家を発見すること。
神殿では姿の見えない僕の目の前で取り調べは夜通しで行われている。途中で何度か王宮から妨害のような使者が来ているけど完全に無視しているのは素晴らしいと思うの。
神殿は勇者の身柄すらも渡していない。これは勇者の意思というか協力あってのことなんだけど。というか、勇者が率先して取り調べをしている。
「それで誰の命令でやったんだ?」
「ああん? お、俺の命令だよ!」
「やれ」
「ふひぎゃあああっ!」
順番に指の骨を折られたり、雷系の魔法で鋭い痛みだけを与えている。神殿という場所でありながら、かなり拷問にも慣れているらしい。
拷問をさせる勇者となかなか口を割らないA級犯罪者のセプター。既にリンドルとラグルスは気を失って倒れている。どうやら情報をとるのに苦戦しているっぽい。
「勇者様、回復が追いついておりません。もう少し時間をおきましょうか」
「弱いな。こんなレベルでレティさんに危害を加えようとしたとは……もう死んだ方がいいんじゃないか」
殺すのが目的ではないでしょ。とは誰も突っ込まない空気の読める神官さん達。
「勇者様、次はこちらの薬を飲ませましょう」
「それは?」
「神殿で新しく開発した自白剤でございます。飲めばすぐに気分が高揚し口が滑りやすくなります。また、依存性が高いので薬を得るのために自ら喋りだす者もおります。やり過ぎると廃人になってしまいますが……」
「それは手っ取り早い。すぐにやろう」
さて、ここからが本番って感じなのかな。あとは神殿に来た王宮からの使者も追跡しよう。
分裂っと。
ぽよよーんと分裂すると、さっき神殿に来て怒鳴り散らしていた王宮関係者を追っていく。
ブラックメタルスライムは四度の分裂が可能で、離れていても分離体と情報共有ができるのである。
ちなみに、通常体十匹が集合することで合体し、時間制限アリながらキングメタルスライムになれる。まだそこまで強いモンスターと遭遇していないのでちゃんと試したことはないけど結構強くなるってご主人様が言ってた。
使者は予想通りにお城へと戻っていきます。王都の一番奥に佇む大きな建物。インビジブル効果を引き継いでいる僕は後ろをそのままついて行くけど気づかれることはなさそう。
そうしていくつかの廊下や階段を進み辿り着いたのは少し大きめの部屋。扉をノックするとすぐに「入りなさい」との声が聞こえてきた。
「それで神殿の反応は?」
部屋に入るとすぐにそう声が掛けられる。あきらかに焦燥した様子で使者からの返答を促している。
「宰相様、やはり神殿は王宮に対してかなりの不信感を抱いております。勇者様の身柄すら渡す気配がありません」
「それを何とかするのが使者の役目だろ! もういい下がれっ!」
「も、申し訳ございません」
部屋の中には白髪の疲れた表情の中年男性がガックリと項垂れています。この宰相って人が親玉なのでしょうか。
「こうなったら闇ギルドに口封じをさせる他ありませんね。王に報告するにしても、これ以上の失敗は許されません」
はい、親玉はこの国の王様でしたー。
宰相はそのまま闇ギルドへ依頼に向かうようなので、今度は宰相を追うことにします。
闇ギルドに到着したら、もう一度分裂して情報を集めよう。ここまではとても順調と言ってもいい。というか、これで僕の役目はほとんど完了することになる。
宰相はフードの深いローブに着替えて飲み屋街を足早に歩いていく。たぶん貴族様とかが立ち寄らないようなエリア。路地に座っている輩が死んだような目で金になるものはないかと追っている。
宰相さん襲われたらどうするんだろ。周囲に騎士とかは見当たらない。何というか、危なっかしい。
「し、失礼する」
宰相さんが入ったのは小さなバー。客の数は少なく、店に入ってきた宰相を値踏みするような視線が交差する。
「また、あんたか……」
「闇のカクテルを出せ」
「ちっ、奥の部屋へ行きな」
合言葉なのか店員は奥に控えている人に目で合図を送ると宰相に「早く行け」と顎で促した。どうやらこの奥にあるのが闇ギルドのアジトということなのだろう。
扉を抜けると地下へと降りる階段があり、少し開けた部屋に出る。いくつか部屋のようなものがあったり、食べかけの料理やゴミが散乱している。
水の流れる音が聞こえることから、王都の地下水路を出入りに使用しているっぽい。
「マーロウ、お前らの仲間がミスしたせいで大変なことになっているんだ。あいつらが口を滑らせる前に何とかしろ!」
「てめぇ、口の利き方に気をつけろや!」
宰相がソファに腰掛けている厳つい男に話しかけると、すぐに近くに控えている若い男が睨みつけながら宰相さんを怒鳴り散らす。
「すみませんねぇ。うちの者もまさかあの三人で失敗するとは思っていなくてですね、この通り荒れてるわけですわ」
どうやら、このマーロウというのが闇ギルドのリーダーっぽい。額に傷のある浅黒い男だ。
「神殿にいる三人を早急に始末しろ。それしか方法がない」
「この野郎、舐めた口ききやがってっ!」
マーロウは若い男を手で制しながら、指を三本立ててニヤリと笑ってみせる。
「くっ、三千万ギルだと。いくら何でも高すぎだ!」
「違いますよ。三億ギルです」
「はあああああ!?」
「相手が神殿となれば話が変わってきやすぜ」
「ふっかけすぎだ! ふ、ふざけるな」
「そうですかい。ではこの話はなかったということで。おいっ、客人のおかえりだ」
「へいっ」
「ちょ、ちょっと待て。待ってくれ」
「どうするんですか?」
「わ、わかった。必ず用意するから、すぐに頼む。もう時間がないのだ……」
「毎度ありがとうございます。おいっ、お前ら酒を開けろ。契約だ!」
この場所は臭いけど、とりあえずここでもう一度分裂っと。
これで神殿と闇ギルド、それから宰相付きで三匹。あとはご主人様との連絡用に最後の分裂で任務完了かなー。さて、報告報告っと。
ダークネスインビジブルの効果は約三日間。僕の役目はレティ様を誘拐した犯罪者の親玉を特定することと闇ギルドの隠れ家を発見すること。
神殿では姿の見えない僕の目の前で取り調べは夜通しで行われている。途中で何度か王宮から妨害のような使者が来ているけど完全に無視しているのは素晴らしいと思うの。
神殿は勇者の身柄すらも渡していない。これは勇者の意思というか協力あってのことなんだけど。というか、勇者が率先して取り調べをしている。
「それで誰の命令でやったんだ?」
「ああん? お、俺の命令だよ!」
「やれ」
「ふひぎゃあああっ!」
順番に指の骨を折られたり、雷系の魔法で鋭い痛みだけを与えている。神殿という場所でありながら、かなり拷問にも慣れているらしい。
拷問をさせる勇者となかなか口を割らないA級犯罪者のセプター。既にリンドルとラグルスは気を失って倒れている。どうやら情報をとるのに苦戦しているっぽい。
「勇者様、回復が追いついておりません。もう少し時間をおきましょうか」
「弱いな。こんなレベルでレティさんに危害を加えようとしたとは……もう死んだ方がいいんじゃないか」
殺すのが目的ではないでしょ。とは誰も突っ込まない空気の読める神官さん達。
「勇者様、次はこちらの薬を飲ませましょう」
「それは?」
「神殿で新しく開発した自白剤でございます。飲めばすぐに気分が高揚し口が滑りやすくなります。また、依存性が高いので薬を得るのために自ら喋りだす者もおります。やり過ぎると廃人になってしまいますが……」
「それは手っ取り早い。すぐにやろう」
さて、ここからが本番って感じなのかな。あとは神殿に来た王宮からの使者も追跡しよう。
分裂っと。
ぽよよーんと分裂すると、さっき神殿に来て怒鳴り散らしていた王宮関係者を追っていく。
ブラックメタルスライムは四度の分裂が可能で、離れていても分離体と情報共有ができるのである。
ちなみに、通常体十匹が集合することで合体し、時間制限アリながらキングメタルスライムになれる。まだそこまで強いモンスターと遭遇していないのでちゃんと試したことはないけど結構強くなるってご主人様が言ってた。
使者は予想通りにお城へと戻っていきます。王都の一番奥に佇む大きな建物。インビジブル効果を引き継いでいる僕は後ろをそのままついて行くけど気づかれることはなさそう。
そうしていくつかの廊下や階段を進み辿り着いたのは少し大きめの部屋。扉をノックするとすぐに「入りなさい」との声が聞こえてきた。
「それで神殿の反応は?」
部屋に入るとすぐにそう声が掛けられる。あきらかに焦燥した様子で使者からの返答を促している。
「宰相様、やはり神殿は王宮に対してかなりの不信感を抱いております。勇者様の身柄すら渡す気配がありません」
「それを何とかするのが使者の役目だろ! もういい下がれっ!」
「も、申し訳ございません」
部屋の中には白髪の疲れた表情の中年男性がガックリと項垂れています。この宰相って人が親玉なのでしょうか。
「こうなったら闇ギルドに口封じをさせる他ありませんね。王に報告するにしても、これ以上の失敗は許されません」
はい、親玉はこの国の王様でしたー。
宰相はそのまま闇ギルドへ依頼に向かうようなので、今度は宰相を追うことにします。
闇ギルドに到着したら、もう一度分裂して情報を集めよう。ここまではとても順調と言ってもいい。というか、これで僕の役目はほとんど完了することになる。
宰相はフードの深いローブに着替えて飲み屋街を足早に歩いていく。たぶん貴族様とかが立ち寄らないようなエリア。路地に座っている輩が死んだような目で金になるものはないかと追っている。
宰相さん襲われたらどうするんだろ。周囲に騎士とかは見当たらない。何というか、危なっかしい。
「し、失礼する」
宰相さんが入ったのは小さなバー。客の数は少なく、店に入ってきた宰相を値踏みするような視線が交差する。
「また、あんたか……」
「闇のカクテルを出せ」
「ちっ、奥の部屋へ行きな」
合言葉なのか店員は奥に控えている人に目で合図を送ると宰相に「早く行け」と顎で促した。どうやらこの奥にあるのが闇ギルドのアジトということなのだろう。
扉を抜けると地下へと降りる階段があり、少し開けた部屋に出る。いくつか部屋のようなものがあったり、食べかけの料理やゴミが散乱している。
水の流れる音が聞こえることから、王都の地下水路を出入りに使用しているっぽい。
「マーロウ、お前らの仲間がミスしたせいで大変なことになっているんだ。あいつらが口を滑らせる前に何とかしろ!」
「てめぇ、口の利き方に気をつけろや!」
宰相がソファに腰掛けている厳つい男に話しかけると、すぐに近くに控えている若い男が睨みつけながら宰相さんを怒鳴り散らす。
「すみませんねぇ。うちの者もまさかあの三人で失敗するとは思っていなくてですね、この通り荒れてるわけですわ」
どうやら、このマーロウというのが闇ギルドのリーダーっぽい。額に傷のある浅黒い男だ。
「神殿にいる三人を早急に始末しろ。それしか方法がない」
「この野郎、舐めた口ききやがってっ!」
マーロウは若い男を手で制しながら、指を三本立ててニヤリと笑ってみせる。
「くっ、三千万ギルだと。いくら何でも高すぎだ!」
「違いますよ。三億ギルです」
「はあああああ!?」
「相手が神殿となれば話が変わってきやすぜ」
「ふっかけすぎだ! ふ、ふざけるな」
「そうですかい。ではこの話はなかったということで。おいっ、客人のおかえりだ」
「へいっ」
「ちょ、ちょっと待て。待ってくれ」
「どうするんですか?」
「わ、わかった。必ず用意するから、すぐに頼む。もう時間がないのだ……」
「毎度ありがとうございます。おいっ、お前ら酒を開けろ。契約だ!」
この場所は臭いけど、とりあえずここでもう一度分裂っと。
これで神殿と闇ギルド、それから宰相付きで三匹。あとはご主人様との連絡用に最後の分裂で任務完了かなー。さて、報告報告っと。
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