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一章
30 ミルフィリッタ教会
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ジャスティンさんの仕事を考えるために僕は新しくなったルミナス村を改めて歩いてみることにした。やはり、多くの観光客が歩いているのを見ると懸念事項は自ずと見えてくる。飲食関係は人気だし、人が多いことから宿泊関係も間違いなく安泰だろう。
苦戦しているのは土産物屋などの物販関係だ。当たり前だけど手先の器用な元農家がどんだけ頑張ったところで限界はある。業種のバランスというのは大事なのだろうけど、これでは物販組が少し不憫に思える。
そうしてしばらく歩きながら辿り着いたのは新しく完成した美しい教会、その名はミルフィリッタ教会。おそらく大司教様あたりがミルフィーヌとホーリータラテクトを混ぜて名づけたのだと思われる。
「それで、私に話って何ですか? もう少ししたらリタさんと祈りの間にいかなければならないのですけど」
「あー、うん。悪いね。忙しい時に」
「いいから、早く話してください」
「えっとね……」
とりあえずルミナス村の物販組の苦境について聖女に説明をした。まだ、初日とはいえこのままでは野菜運搬業が増えてしまう。
「木彫りの神獣様は値付けを失敗してるとしかいいようがないのですけど。そうですね、王都の教会でもやっていることですが御守りと護符の委託販売をしてみますか」
「御守りと、護符?」
「売れないと思ってるみたいですけど、王都の教会では一番売れているんですからね」
どうやら教会で祈りを捧げた木板を布でくるんで首から下げられるようにした物を自分の身を守る御守りとして、護符は商売繁盛や家内安全などの願いが込められたものを神官が書き写した札で家に飾って魔除のように使うのが流行りなのだという。
「ミルフィリッタ教会で私や神官がお祈りをした木板を2,000ギル。護符は5,000ギルでお渡しします」
「ただの木板が2,000ギルで、紙の札が5,000ギルになるのか……」
「それが相場です。物販関係の方は御守りを包む布やネックレスを作って販売するといいでしょう」
「護符はどうするんだ?」
「護符入れや家で飾るための額縁や盾を一緒にして販売すればいいのです。神獣様を彫れるならそれぐらいは出来るでしょう」
「おお、それは助かるよ。ジャスティンさんたちもきっと喜ぶと思う」
実際、商人の方が多く来られてるのだし、商売繁盛の護符とかは売れるのかもしれない。問題はそれが王都でも手に入るという所か。
「木札の入れ物に使う布だけどホーリータラテクトの糸を使ってもいいかな。あと、可能なら聖女様や神獣様のデザインを使いたい」
「糸は……私じゃなくてリタさんに聞いてください。それから私のデザインですか。ちょっと大司教様と相談させてくださいね。神獣様のデザインについては問題ないですよ。神殿はあくまでもリタさんを神獣様と認めただけですからね」
つまり、神獣様については自由に使っていいということか。というか、ジャスティンさんが既に木彫りで勝手に掘ってるんだけどさ。
とりあえずはこれで少し物販組の可能性が開けてきた気がする。あとは、それぞれに任せておけばいいだろう。
「レン君、糸はちゃんと販売してくださいね。こういうのは最初が肝心なんです。ルミナス村は今後もっと栄えていきますので、無料にしたらリタさんが大変なことになってしまいます」
「そ、そういうものか……」
「そういうものです」
確かにリタだって無尽蔵に糸を出せるわけではないだろう。余り大盤振る舞いをするのもよくないか。
「でも、いくらにしようか……」
「神獣様の糸ですから、それだけで商人が喉から手が出るほどの逸品でしょう。一束10,000ギルでいかがでしょう」
「10,000ギルだって!?」
「そのあたりが相場かと」
何で聖女が神獣様の糸の相場を知っているのかはあえて聞かないけど、王都にいた聖女がそう言っているのだからきっとそういうものなのだろう。だいたい一束ってどのくらいだよね。このあたりはあとでリタとも相談してみようか。
それにしても、うちの稼ぎ頭は完全にリタになってしまったな。小さいながらも大黒柱として頑張って農作業をしてきて、今回の観光産業の流れで作地面積も大幅に広がったというのに……僕の月収をあっさりと超えていったな。
「相談に乗ってくれてありがとう。聖女様も今日は初日だし頑張ってくださいね」
「ミルフィーヌでいいです」
「えっ?」
「だ・か・ら! 家の中とか、あと周りに人がいない時は聖女じゃなくてミルフィーヌと呼んでいいです」
「あ、ああ。わかったよミルフィーヌ」
僕がそう呼ぶと聖女は何処か嬉しそうに部屋を出ていった。きっと聖女もルミナス村の力になれたことが嬉しかったのだろう。
聖女に相談したのは正解だったな。やはりその道の専門家にアドバイスを求めた方が話が早い。
「さて、せっかくだし僕も聖女とリタの活躍ぶりでも覗いていこうかな」
ミルフィリッタ教会には大勢の観光客が続々と入ってきている。王都で販売している前売りチケットにより全て満席らしい。神殿はあらゆるところでお金を集めていく。こういう団体は敵に回さないほうがいい。
「ダークネスインビジブル!」
あまり褒められたものではないのだろうけど、見つからなければ大丈夫だと思う。ダークネスインビジブルは姿隠しの暗黒魔法だ。魔力や気配も遮断するので例え聖女や神官がいてもわかるまい。
何だかんだ一緒の家で過ごしているので応援ぐらいはしてやろうという気持ちなのかな。僕を倒した勇者パーティのメンバーだったとはいえ、今はあの時とは違う。
あとリタも結構な給料をもらうのだから見合った働きをみせないと早々にクビになってしまうだろうからね。
苦戦しているのは土産物屋などの物販関係だ。当たり前だけど手先の器用な元農家がどんだけ頑張ったところで限界はある。業種のバランスというのは大事なのだろうけど、これでは物販組が少し不憫に思える。
そうしてしばらく歩きながら辿り着いたのは新しく完成した美しい教会、その名はミルフィリッタ教会。おそらく大司教様あたりがミルフィーヌとホーリータラテクトを混ぜて名づけたのだと思われる。
「それで、私に話って何ですか? もう少ししたらリタさんと祈りの間にいかなければならないのですけど」
「あー、うん。悪いね。忙しい時に」
「いいから、早く話してください」
「えっとね……」
とりあえずルミナス村の物販組の苦境について聖女に説明をした。まだ、初日とはいえこのままでは野菜運搬業が増えてしまう。
「木彫りの神獣様は値付けを失敗してるとしかいいようがないのですけど。そうですね、王都の教会でもやっていることですが御守りと護符の委託販売をしてみますか」
「御守りと、護符?」
「売れないと思ってるみたいですけど、王都の教会では一番売れているんですからね」
どうやら教会で祈りを捧げた木板を布でくるんで首から下げられるようにした物を自分の身を守る御守りとして、護符は商売繁盛や家内安全などの願いが込められたものを神官が書き写した札で家に飾って魔除のように使うのが流行りなのだという。
「ミルフィリッタ教会で私や神官がお祈りをした木板を2,000ギル。護符は5,000ギルでお渡しします」
「ただの木板が2,000ギルで、紙の札が5,000ギルになるのか……」
「それが相場です。物販関係の方は御守りを包む布やネックレスを作って販売するといいでしょう」
「護符はどうするんだ?」
「護符入れや家で飾るための額縁や盾を一緒にして販売すればいいのです。神獣様を彫れるならそれぐらいは出来るでしょう」
「おお、それは助かるよ。ジャスティンさんたちもきっと喜ぶと思う」
実際、商人の方が多く来られてるのだし、商売繁盛の護符とかは売れるのかもしれない。問題はそれが王都でも手に入るという所か。
「木札の入れ物に使う布だけどホーリータラテクトの糸を使ってもいいかな。あと、可能なら聖女様や神獣様のデザインを使いたい」
「糸は……私じゃなくてリタさんに聞いてください。それから私のデザインですか。ちょっと大司教様と相談させてくださいね。神獣様のデザインについては問題ないですよ。神殿はあくまでもリタさんを神獣様と認めただけですからね」
つまり、神獣様については自由に使っていいということか。というか、ジャスティンさんが既に木彫りで勝手に掘ってるんだけどさ。
とりあえずはこれで少し物販組の可能性が開けてきた気がする。あとは、それぞれに任せておけばいいだろう。
「レン君、糸はちゃんと販売してくださいね。こういうのは最初が肝心なんです。ルミナス村は今後もっと栄えていきますので、無料にしたらリタさんが大変なことになってしまいます」
「そ、そういうものか……」
「そういうものです」
確かにリタだって無尽蔵に糸を出せるわけではないだろう。余り大盤振る舞いをするのもよくないか。
「でも、いくらにしようか……」
「神獣様の糸ですから、それだけで商人が喉から手が出るほどの逸品でしょう。一束10,000ギルでいかがでしょう」
「10,000ギルだって!?」
「そのあたりが相場かと」
何で聖女が神獣様の糸の相場を知っているのかはあえて聞かないけど、王都にいた聖女がそう言っているのだからきっとそういうものなのだろう。だいたい一束ってどのくらいだよね。このあたりはあとでリタとも相談してみようか。
それにしても、うちの稼ぎ頭は完全にリタになってしまったな。小さいながらも大黒柱として頑張って農作業をしてきて、今回の観光産業の流れで作地面積も大幅に広がったというのに……僕の月収をあっさりと超えていったな。
「相談に乗ってくれてありがとう。聖女様も今日は初日だし頑張ってくださいね」
「ミルフィーヌでいいです」
「えっ?」
「だ・か・ら! 家の中とか、あと周りに人がいない時は聖女じゃなくてミルフィーヌと呼んでいいです」
「あ、ああ。わかったよミルフィーヌ」
僕がそう呼ぶと聖女は何処か嬉しそうに部屋を出ていった。きっと聖女もルミナス村の力になれたことが嬉しかったのだろう。
聖女に相談したのは正解だったな。やはりその道の専門家にアドバイスを求めた方が話が早い。
「さて、せっかくだし僕も聖女とリタの活躍ぶりでも覗いていこうかな」
ミルフィリッタ教会には大勢の観光客が続々と入ってきている。王都で販売している前売りチケットにより全て満席らしい。神殿はあらゆるところでお金を集めていく。こういう団体は敵に回さないほうがいい。
「ダークネスインビジブル!」
あまり褒められたものではないのだろうけど、見つからなければ大丈夫だと思う。ダークネスインビジブルは姿隠しの暗黒魔法だ。魔力や気配も遮断するので例え聖女や神官がいてもわかるまい。
何だかんだ一緒の家で過ごしているので応援ぐらいはしてやろうという気持ちなのかな。僕を倒した勇者パーティのメンバーだったとはいえ、今はあの時とは違う。
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