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一章
22 教会完成式典
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村には温浴施設が出来て大きな街道沿いには様々な商店が建ち並び、新しい建物の木の香りがしている。引越し先からは荷物が運び込まれて、間もなく観光客の迎え入れの準備も整ってきた。
今日はメインの教会が完成した式典が執り行われるとのことで、大司教様と聖女様がルミナス村の成功を祈念してお祈りを捧げてくれるのだという。
集まったルミナス村の面々もいよいよかという気持ちが強いようで、これからの未来に期待を膨らませている。
「お兄ちゃん、立派な教会だね。光が反射してとってもきれい」
「うん、そうだね」
教会は最新の建築様式で建てられたそうで、観光地仕様のステンドグラスをメインにした美しい仕上がりとなっている。教会の場所は少し高台に建っており、陽の光によるグラデーションが楽しめるとか大工さんが話していた。
これは遠くからの見栄えも計算しているようで、街道から真っ直ぐ教会が見えるようにしている。歩いて近づくにつれ陽の光で色が変化するらしい。朝や夕方でもまた違う一面を見せてくれるのだろう。
実はリタと散歩がてら歩いて建築の見学とかしてると大工さんの方からいろいろと話してくれるようになったのだ。やはり一番の観光名所ということもありお金がいっぱい掛けられている。
「それでは、式典のご挨拶に来られました勇者アシュレイ様よりお言葉を頂戴したいと思います」
「ちっ、現れやがったな勇者め……」
レティもすぐに僕の背中に隠れるようにして耳を塞いでいる。ふっ、嫌われているな勇者よ。
そんなことは気にもせず壇上に上がる前にレティに投げキッスをしてくる勇者アシュレイ。こいつ死ねばいいのに。
しばらく顔を見せなかったから忘れていたが、王都からルミナス村は近いのでこれからもちょくちょく顔を見かけることになるのだろう。まったく平和な時の勇者ほど手に余るものはない。
「本日はお日柄もよく、みなさまにおかれましては教会の完成記念式典にお集まり頂きまして誠にありがとうございます……」
意外と普通に話もできるのだなと感心していたのだけど、その視線はチラチラとレティを捉えて離さない。聖女はちゃんとレティを守る役目を果たしてくれるのだろうか。頼むぞ本当に。
「相変わらず気持ち悪い奴だな。レティ、大丈夫か。うちに帰るか?」
「平気だよお兄ちゃん。それに今日はミルフィーヌお姉さまの晴れ舞台だから見逃せないもの」
聖女とはすっかりお友達になってしまったようで、レティもこの日を楽しみにしていた。というか、いつの間にかお姉ちゃんポジションをゲットしている聖女の打ち解け能力が恐ろしく感じる。まあ、毎日一緒に生活しているのだから多少は仲も良くなるか。
その聖女は珍しく少し緊張気味に自分の出番を待っている。早朝から神官に連れていかれ、身を清めたりとか化粧を施したりやらで大変だったらしい。また聖女用の祭事服の着付けに相当時間がかかったとのこと。
「こう見るとあいつ聖女様だったんだなと改めて思うよね」
真っ白な聖女様仕様の祭礼服は純白の美しいドレスのようにも見え、いつもより二割増で聖女っぽさがアップしている。
「うん、とっても綺麗。まるで結婚式みたいだね」
「あーうん。そうなると聖女様の相手は勇者で大司教様は神父様に見えなくもないか」
「もう、そんなこと言ったらミルフィーヌお姉さまに怒られるよ」
大司教様も黒と金ピカを織り交ぜたいつもよりゴージャスなお召し物を着ていてふくよかなお腹が目立たないゆったりとした祭礼服に袖を通している。
そうして各々の発言が終わり一段落し、聖女ミルフィーヌが壇上に上がると一際大きな声があがる。何だかんだ温浴施設にも毎日顔を出し、リタと周辺のモンスター退治なんかも精力的に行っている庶民的な聖女をルミナス村の面々は既に虜になってしまっている。
「聖女様ぁー」
「今日も素敵だよっ!」
「愛してるぜー」
「早く温泉に浸かれるといいな!」
笑顔で手を振る聖女はやはり聖女様で、いつの間にルミナス村に溶け込んでいたのだろうと感心してしまう。これが聖女のやり方なのだろう。
「庶民派聖女か……」
「何それ、ミルフィーヌお姉さまっぽいけど」
「庶民派でなければ我が家に寝泊まりなんかしないよ」
教会の裏手に建てられた神殿関係者専用の宿舎は立派な造りで、新築になったとはいえ我が家とは比べるまでもないゴージャスさだ。そこには住まずにリタと多分僕の監視をする聖女は職務に忠実なのだろう。
「まあ、家は他と比べて家の中も清潔だし、スライムとリタさんがいるから安全だもん。それに畑近くのポツンと一軒家だからうるさくないしね」
「そうか。そう考えるとうちも意外と快適なのかもしれないな」
スライムと神獣様がいて、これほど守りの堅い家はないだろう。盗賊団が束になってきても秒で片付けられそうだ。それにスライムの家事スキルは異常なほど高い。新築とはいえ塵一つ残さずに吸収し、寝ている間に身体のメンテナンスまでしてくれるのだ。
そういえば聖女の髪の毛も以前と比べてキラキラに輝いているような気がしないでもない。レティの指示で仕方なく嫌々メンテナンスをしている程度でもこの美髪だ。そりゃ引越しも拒むか……。
「それでは、神獣様にテープカットをお願いしたいと思います!」
目の前ではこれまた既に村に馴染んでしまったホワイトクイーンタラテクトが白い蜘蛛で現れて、前足を器用に振るいテープをカットしてみせた。
「おめでとうございます! 本日より新しいルミナス村の誕生です。明日の乗合馬車の一便から多くの観光客がいらっしゃいますので、みなさん準備をしっかりしてくださいね」
「儲けるぞ、儲けるぞ、儲けるぞぉー!」
ルミナス村のみなさん、とてもやる気満々なご様子。
僕もルミナス村の観光事業が上手くいくように王都から街道沿いにかけてのモンスター討伐とか陰ながら手伝おうと思っている。
どうもリタをテイムした影響なのかわからないけど魔力が増えてきているんだよね。聖女が同じ屋根の下にいる以上今まで以上にバレないように気をつけなくてはならない。
今日はメインの教会が完成した式典が執り行われるとのことで、大司教様と聖女様がルミナス村の成功を祈念してお祈りを捧げてくれるのだという。
集まったルミナス村の面々もいよいよかという気持ちが強いようで、これからの未来に期待を膨らませている。
「お兄ちゃん、立派な教会だね。光が反射してとってもきれい」
「うん、そうだね」
教会は最新の建築様式で建てられたそうで、観光地仕様のステンドグラスをメインにした美しい仕上がりとなっている。教会の場所は少し高台に建っており、陽の光によるグラデーションが楽しめるとか大工さんが話していた。
これは遠くからの見栄えも計算しているようで、街道から真っ直ぐ教会が見えるようにしている。歩いて近づくにつれ陽の光で色が変化するらしい。朝や夕方でもまた違う一面を見せてくれるのだろう。
実はリタと散歩がてら歩いて建築の見学とかしてると大工さんの方からいろいろと話してくれるようになったのだ。やはり一番の観光名所ということもありお金がいっぱい掛けられている。
「それでは、式典のご挨拶に来られました勇者アシュレイ様よりお言葉を頂戴したいと思います」
「ちっ、現れやがったな勇者め……」
レティもすぐに僕の背中に隠れるようにして耳を塞いでいる。ふっ、嫌われているな勇者よ。
そんなことは気にもせず壇上に上がる前にレティに投げキッスをしてくる勇者アシュレイ。こいつ死ねばいいのに。
しばらく顔を見せなかったから忘れていたが、王都からルミナス村は近いのでこれからもちょくちょく顔を見かけることになるのだろう。まったく平和な時の勇者ほど手に余るものはない。
「本日はお日柄もよく、みなさまにおかれましては教会の完成記念式典にお集まり頂きまして誠にありがとうございます……」
意外と普通に話もできるのだなと感心していたのだけど、その視線はチラチラとレティを捉えて離さない。聖女はちゃんとレティを守る役目を果たしてくれるのだろうか。頼むぞ本当に。
「相変わらず気持ち悪い奴だな。レティ、大丈夫か。うちに帰るか?」
「平気だよお兄ちゃん。それに今日はミルフィーヌお姉さまの晴れ舞台だから見逃せないもの」
聖女とはすっかりお友達になってしまったようで、レティもこの日を楽しみにしていた。というか、いつの間にかお姉ちゃんポジションをゲットしている聖女の打ち解け能力が恐ろしく感じる。まあ、毎日一緒に生活しているのだから多少は仲も良くなるか。
その聖女は珍しく少し緊張気味に自分の出番を待っている。早朝から神官に連れていかれ、身を清めたりとか化粧を施したりやらで大変だったらしい。また聖女用の祭事服の着付けに相当時間がかかったとのこと。
「こう見るとあいつ聖女様だったんだなと改めて思うよね」
真っ白な聖女様仕様の祭礼服は純白の美しいドレスのようにも見え、いつもより二割増で聖女っぽさがアップしている。
「うん、とっても綺麗。まるで結婚式みたいだね」
「あーうん。そうなると聖女様の相手は勇者で大司教様は神父様に見えなくもないか」
「もう、そんなこと言ったらミルフィーヌお姉さまに怒られるよ」
大司教様も黒と金ピカを織り交ぜたいつもよりゴージャスなお召し物を着ていてふくよかなお腹が目立たないゆったりとした祭礼服に袖を通している。
そうして各々の発言が終わり一段落し、聖女ミルフィーヌが壇上に上がると一際大きな声があがる。何だかんだ温浴施設にも毎日顔を出し、リタと周辺のモンスター退治なんかも精力的に行っている庶民的な聖女をルミナス村の面々は既に虜になってしまっている。
「聖女様ぁー」
「今日も素敵だよっ!」
「愛してるぜー」
「早く温泉に浸かれるといいな!」
笑顔で手を振る聖女はやはり聖女様で、いつの間にルミナス村に溶け込んでいたのだろうと感心してしまう。これが聖女のやり方なのだろう。
「庶民派聖女か……」
「何それ、ミルフィーヌお姉さまっぽいけど」
「庶民派でなければ我が家に寝泊まりなんかしないよ」
教会の裏手に建てられた神殿関係者専用の宿舎は立派な造りで、新築になったとはいえ我が家とは比べるまでもないゴージャスさだ。そこには住まずにリタと多分僕の監視をする聖女は職務に忠実なのだろう。
「まあ、家は他と比べて家の中も清潔だし、スライムとリタさんがいるから安全だもん。それに畑近くのポツンと一軒家だからうるさくないしね」
「そうか。そう考えるとうちも意外と快適なのかもしれないな」
スライムと神獣様がいて、これほど守りの堅い家はないだろう。盗賊団が束になってきても秒で片付けられそうだ。それにスライムの家事スキルは異常なほど高い。新築とはいえ塵一つ残さずに吸収し、寝ている間に身体のメンテナンスまでしてくれるのだ。
そういえば聖女の髪の毛も以前と比べてキラキラに輝いているような気がしないでもない。レティの指示で仕方なく嫌々メンテナンスをしている程度でもこの美髪だ。そりゃ引越しも拒むか……。
「それでは、神獣様にテープカットをお願いしたいと思います!」
目の前ではこれまた既に村に馴染んでしまったホワイトクイーンタラテクトが白い蜘蛛で現れて、前足を器用に振るいテープをカットしてみせた。
「おめでとうございます! 本日より新しいルミナス村の誕生です。明日の乗合馬車の一便から多くの観光客がいらっしゃいますので、みなさん準備をしっかりしてくださいね」
「儲けるぞ、儲けるぞ、儲けるぞぉー!」
ルミナス村のみなさん、とてもやる気満々なご様子。
僕もルミナス村の観光事業が上手くいくように王都から街道沿いにかけてのモンスター討伐とか陰ながら手伝おうと思っている。
どうもリタをテイムした影響なのかわからないけど魔力が増えてきているんだよね。聖女が同じ屋根の下にいる以上今まで以上にバレないように気をつけなくてはならない。
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