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一章
13 ダークネステイム
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ダークネステイムには種類があり、スライムのように僕の方から強制的にテイムする場合とモンスターの方からテイムされたいとやって来る場合がある。
戦闘の後とかで「とても強いお方。どうか私を倒さないで仲間にして貰えませんか?」と目をうるうるとさせながら懇願してくるパターンがそれだ。
とはいえ僕とジャイアントスパイダーは戦ってもいないし、テイムされてまで一緒にいたいと思う気持ちが正直よくわからない。
そもそもモンスターというのは本能の赴くままに行動するのが基本的なスタンス。気の弱いジャイアントスパイダーが危険を冒してまで人の住む村にやって来るというのがそもそもおかしい。
眩い光に包まれていたジャイアントスパイダーだったものは、光の収束とともに一回り小さな個体となり漆黒だった体は真っ白な体へと進化を遂げちゃんとテイムされていた。
「神獣様が誕生された……」
「おいっ、真っ白になっちまったぞ!」
「テ、テイム、今のテイムよね!?」
村人が総出で驚くなか、聖女が一人あわあわとさらに驚いている。
「な、なんでレン君テイムしてるの?」
「い、いえいえ。僕は何もしてません。この蜘蛛のモンスターの方からテイムされにきたというか……な、何ででしょうね?」
とりあえずはすっとぼけるしかない。普通のテイムをよく知らないけど、ダークネステイムのようにモンスター側からお願いされるケースがあるのかもしれないし。
「きっとそれだけトマクの実が食べたかったんじゃないかな」
勇者アシュレイは僕が収穫したばかりトマクの実をカゴから手に取ると一口齧ってみせる。もちろん、朝採れのトマクの実はとても美味しい。王都で並んでいるものとは比較にならないだろう。というか、勝手にうちの商品を食べるな。
「う、うん、美味いね!」
「で、でも勇者様」
「それにモンスターの方から希望してテイムされるケースというのは聞いたことがあるよ。よほどトマクの実を気に入ったんだろうね。さすがはレティさんのお兄さんだよ」
よかった。一般的なテイム魔法でもそういうのあるんだ……。勇者アシュレイ、今だけは礼を言っておこう。トマクの実を勝手に食べたことは許す。
これで僕の罪は問われないはず。
それどころか、これからは正々堂々と隠れずにルミナス村周辺のモンスターを狩らせることが可能になるかもしれない。このジャイアントスパイダー改めホワイトクイーンタラテクトにね。
何故にダークネステイムで暗黒属性から光属性のモンスターに進化したのかは不明だけど、村の神獣として扱われるのなら寧ろ都合がいい。聖女と近い属性なら観光産業的にも相乗効果が得られそうだ。
「ところでレン君、テイムしたモンスターだけど何ていう種族なのですか?」
「えっ、種族ですか?」
「テイムしたんだからわかるでしよ?」
ホワイトクイーンタラテクトって言ったら絶対やばいのは僕でもわかる。多分だけどもの凄い希少種な気がするからね。長いこと魔族として生きてきた記憶を遡ってもこの名前は出てこなかった。
ここは僕としてもこの状況を利用させてもらおう。ルミナス村の観光産業を盛り上げるためでもある。
「このモンスターはホーリータラテクト。聖なる蜘蛛のモンスター、上位種です」
「ホーリータラテクト!?」
「ミルフィーヌ、名前を聞いたことは?」
「……ありません」
そりゃ聞いたことないだろう。だって僕が今付けたばかりの存在しない種族なのだから。実際の名前はホワイトクイーンタラテクトとかいうやばめのモンスターなのだ。
ところが調子に乗って嘘をついたのが良くなかったのかもしれない。
僕の絶望ターンはまだまだ続いていく。
ホーリータラテクトと紹介したモンスターはさらに激しく光り輝くと人化してしまったのだ。
「ええっ! と、どういうこと!?」
レティよりも少し背の高い白い衣装を纏った女の子だ。
「テイムして頂いたばかりか、名付けまでも誠にありがとうございます」
いきなり人の言葉も喋れるらしい。
って、何て言った。な、名付けだと……。
このモンスターはホーリータラテクト
「あ、あれが名付けになっちゃうの!?」
「はい。少し長いので、ご主人様にはリタとでもお呼び頂ければ幸いです」
「リタ……」
「はいっ」
ホワイトクイーンタラテクト改めホーリータラテクトからの人型バージョンのリタ。情報が多すぎて理解が追いつかない。
リタは僕の左腕を抱きしめるようにしてその喜びを表現すると、そのまま頭を擦り付けるようにしてくる。
「ちょっ、近い、近いって」
「お、お兄ちゃんから離れて!」
「そうよ離れなさい。あなたは、その、さっきのモンスターよね?」
よく分からないけど、レティと聖女が怒り始めた。一体僕はどうしたらいいのだろうか……。
戦闘の後とかで「とても強いお方。どうか私を倒さないで仲間にして貰えませんか?」と目をうるうるとさせながら懇願してくるパターンがそれだ。
とはいえ僕とジャイアントスパイダーは戦ってもいないし、テイムされてまで一緒にいたいと思う気持ちが正直よくわからない。
そもそもモンスターというのは本能の赴くままに行動するのが基本的なスタンス。気の弱いジャイアントスパイダーが危険を冒してまで人の住む村にやって来るというのがそもそもおかしい。
眩い光に包まれていたジャイアントスパイダーだったものは、光の収束とともに一回り小さな個体となり漆黒だった体は真っ白な体へと進化を遂げちゃんとテイムされていた。
「神獣様が誕生された……」
「おいっ、真っ白になっちまったぞ!」
「テ、テイム、今のテイムよね!?」
村人が総出で驚くなか、聖女が一人あわあわとさらに驚いている。
「な、なんでレン君テイムしてるの?」
「い、いえいえ。僕は何もしてません。この蜘蛛のモンスターの方からテイムされにきたというか……な、何ででしょうね?」
とりあえずはすっとぼけるしかない。普通のテイムをよく知らないけど、ダークネステイムのようにモンスター側からお願いされるケースがあるのかもしれないし。
「きっとそれだけトマクの実が食べたかったんじゃないかな」
勇者アシュレイは僕が収穫したばかりトマクの実をカゴから手に取ると一口齧ってみせる。もちろん、朝採れのトマクの実はとても美味しい。王都で並んでいるものとは比較にならないだろう。というか、勝手にうちの商品を食べるな。
「う、うん、美味いね!」
「で、でも勇者様」
「それにモンスターの方から希望してテイムされるケースというのは聞いたことがあるよ。よほどトマクの実を気に入ったんだろうね。さすがはレティさんのお兄さんだよ」
よかった。一般的なテイム魔法でもそういうのあるんだ……。勇者アシュレイ、今だけは礼を言っておこう。トマクの実を勝手に食べたことは許す。
これで僕の罪は問われないはず。
それどころか、これからは正々堂々と隠れずにルミナス村周辺のモンスターを狩らせることが可能になるかもしれない。このジャイアントスパイダー改めホワイトクイーンタラテクトにね。
何故にダークネステイムで暗黒属性から光属性のモンスターに進化したのかは不明だけど、村の神獣として扱われるのなら寧ろ都合がいい。聖女と近い属性なら観光産業的にも相乗効果が得られそうだ。
「ところでレン君、テイムしたモンスターだけど何ていう種族なのですか?」
「えっ、種族ですか?」
「テイムしたんだからわかるでしよ?」
ホワイトクイーンタラテクトって言ったら絶対やばいのは僕でもわかる。多分だけどもの凄い希少種な気がするからね。長いこと魔族として生きてきた記憶を遡ってもこの名前は出てこなかった。
ここは僕としてもこの状況を利用させてもらおう。ルミナス村の観光産業を盛り上げるためでもある。
「このモンスターはホーリータラテクト。聖なる蜘蛛のモンスター、上位種です」
「ホーリータラテクト!?」
「ミルフィーヌ、名前を聞いたことは?」
「……ありません」
そりゃ聞いたことないだろう。だって僕が今付けたばかりの存在しない種族なのだから。実際の名前はホワイトクイーンタラテクトとかいうやばめのモンスターなのだ。
ところが調子に乗って嘘をついたのが良くなかったのかもしれない。
僕の絶望ターンはまだまだ続いていく。
ホーリータラテクトと紹介したモンスターはさらに激しく光り輝くと人化してしまったのだ。
「ええっ! と、どういうこと!?」
レティよりも少し背の高い白い衣装を纏った女の子だ。
「テイムして頂いたばかりか、名付けまでも誠にありがとうございます」
いきなり人の言葉も喋れるらしい。
って、何て言った。な、名付けだと……。
このモンスターはホーリータラテクト
「あ、あれが名付けになっちゃうの!?」
「はい。少し長いので、ご主人様にはリタとでもお呼び頂ければ幸いです」
「リタ……」
「はいっ」
ホワイトクイーンタラテクト改めホーリータラテクトからの人型バージョンのリタ。情報が多すぎて理解が追いつかない。
リタは僕の左腕を抱きしめるようにしてその喜びを表現すると、そのまま頭を擦り付けるようにしてくる。
「ちょっ、近い、近いって」
「お、お兄ちゃんから離れて!」
「そうよ離れなさい。あなたは、その、さっきのモンスターよね?」
よく分からないけど、レティと聖女が怒り始めた。一体僕はどうしたらいいのだろうか……。
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