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一章
7 ロリコン勇者
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何故かレティの前に立つ勇者アシュレイ。なんだかとても絶望的な気分なのは気のせいだろうか……。
でも、これはチャンスと言えなくもない。アシュレイをうまくこちら側に引き込めれば聖女を丸めこめる可能性もある。レティには申し訳ないが少し様子を見てもいいだろうか。
「な、なんでしょうか?」
「なんと美しい。その白くキメの細かい肌、太陽の光に輝く美しい髪、そして吸い込まれそうなほどに綺麗なブルーアイ」
毎日スライムと過ごすレティはそのエステを全身で享受しているので、はっきり言って美少女であることは間違いない。血の繋がった僕がそう言えるほどにレティ可愛い。
「失礼」
アシュレイは跪くとそのままレティの手を取ると、それがさも当たり前であるかのように、その甲に軽く口をつけた。
「ひっ、い、いやぁー、お、お兄ちゃん!」
一瞬、何が起こっているのか理解ができなかったが、アシュレイがレティの手の甲にキスをしている。
レティはまだ十二歳だ。確かに我が妹ながらその可愛らしさは否定しないが、小さい頃の栄養不足もあり、まだ体は小さく成長期はきっとこれから。つまり、見た目としては十歳、いやそれよりも若く見られることだってあるのだ。
しかしながら、アシュレイのレティを見る目は完全に一人の女性を心の底から愛でるもの。しかも、躊躇なくその手に触れキスをしやがった。少女に性的嗜好を持つ大人と考えて間違いない。
こ、こいつロリコンだったのか……。
前言撤回、こいつらはやはり全員敵だ。
「レティから離れろ!」
僕はアシュレイからレティを引き剥がすと、すぐに後ろに下がり距離をとる。
「あ、ああ……レティさんと言うのですね」
更に、僕の意思を理解したブラックメタルスライムが僕たちを守るように展開し守っている。緊急事態の為、留守番させていたスライムも村の外を警備していたスライムも集合させた。
「黒いスライムが十匹もいるなんて……信じられないわ」
聖女が何か言っているが、今はこの変態に集中するべきだろう。というか、剣聖も賢者もアシュレイを見て若干ひいている。こいつらも勇者の性癖を知らなかったのだろう。
「あなたは、もしやレティさんのお兄様ですか?」
「お前にお兄様と呼ばれる筋合いはない。勇者パーティというのは、初めてあった村人の手の甲にキスをするのが普通なのか?」
僕の言葉に剣聖レーベン、賢者エイルマーは激しく首を横に振っている。
「そんなことはないが、美しい方に敬意を払い賛辞を送るのは礼儀の範疇だと思っている」
迷いのない言葉だ。また自分の行動が正しいのだと疑うこともない。
「お前の妹を美しいと思う気持ちは百歩譲って理解してやらなくもない。だが、レティはまだ十二歳なんだ。気持ち悪いから今後は目に入る距離には近づかないでもらいたい」
「そ、そんな……」
「当たり前だろう。レティが震えているのが見えないのか? 勇者なら何をしてもいいとでも思っているのか? それとも勇者が十二歳の子供に愛を語りかけていたと王都で噂を流してもいいのか」
「なっ、卑怯だぞ! とてもレティさんのお兄様とは思えない残虐魔王振りではないか」
「ちゃんと自分の行動が異常だと理解しているじゃないか。あと僕は魔王ではない」
「一般的に認められない恋だからといって僕は諦めたくはないんだ」
「お前自分が特別な人間だとでも思っているのか? 勇者だって一人の人間だ。少なくともレティの気持ちを考えたうえで五年後に来るのなら話ぐらいなら僕が聞いてやってもいい」
こういうロリコンには正論をぶつけてやればいい。さあ、お前の絶望的な表情を見せてみろ。
「五年後だと……。それでは遅い、あきらかに遅すぎる。今がレティさんの一番美しい時だというのに。五年も経ったら……」
そう、五年も経てばレティも大人に近づき更にその美貌に磨きがかかるはずなのだが、それはアシュレイの望む美しさとはかけ離れてしまう。
すがるように手を伸ばしながら地面に膝をつく勇者の姿はとても気持ち悪い。ルミナス村の村人も信じられないという眼をアシュレイに向けている。
するとレーベンとエイルマーが小さな声で興味深い話をしているのが耳に入った。
「アシュレイ様がテレシア姫との結婚を拒否されたのはこれが理由だったのか」
「長く旅をしてきたが、全く気がつかなかった。まさか少女にしか愛を向けられない方だったとは……」
魔王討伐から五年。勇者パーティも解散が決まっているようなので、アシュレイとしても今まで隠していた性癖が解放されてしまったのだろう。だが、それをレティに向けることだけは断じて許さん。
聖女はブラックメタルスライムの多さに驚愕しているし、剣聖と賢者は勇者にドン引きしている。
いくら元魔王の僕といえども、これの納め方はわからない。とりあえず、レティはスライムたちに任せて僕一人で村長の家に行こうか。
もう……せっかくの歓迎会が台無しだよ。
でも、これはチャンスと言えなくもない。アシュレイをうまくこちら側に引き込めれば聖女を丸めこめる可能性もある。レティには申し訳ないが少し様子を見てもいいだろうか。
「な、なんでしょうか?」
「なんと美しい。その白くキメの細かい肌、太陽の光に輝く美しい髪、そして吸い込まれそうなほどに綺麗なブルーアイ」
毎日スライムと過ごすレティはそのエステを全身で享受しているので、はっきり言って美少女であることは間違いない。血の繋がった僕がそう言えるほどにレティ可愛い。
「失礼」
アシュレイは跪くとそのままレティの手を取ると、それがさも当たり前であるかのように、その甲に軽く口をつけた。
「ひっ、い、いやぁー、お、お兄ちゃん!」
一瞬、何が起こっているのか理解ができなかったが、アシュレイがレティの手の甲にキスをしている。
レティはまだ十二歳だ。確かに我が妹ながらその可愛らしさは否定しないが、小さい頃の栄養不足もあり、まだ体は小さく成長期はきっとこれから。つまり、見た目としては十歳、いやそれよりも若く見られることだってあるのだ。
しかしながら、アシュレイのレティを見る目は完全に一人の女性を心の底から愛でるもの。しかも、躊躇なくその手に触れキスをしやがった。少女に性的嗜好を持つ大人と考えて間違いない。
こ、こいつロリコンだったのか……。
前言撤回、こいつらはやはり全員敵だ。
「レティから離れろ!」
僕はアシュレイからレティを引き剥がすと、すぐに後ろに下がり距離をとる。
「あ、ああ……レティさんと言うのですね」
更に、僕の意思を理解したブラックメタルスライムが僕たちを守るように展開し守っている。緊急事態の為、留守番させていたスライムも村の外を警備していたスライムも集合させた。
「黒いスライムが十匹もいるなんて……信じられないわ」
聖女が何か言っているが、今はこの変態に集中するべきだろう。というか、剣聖も賢者もアシュレイを見て若干ひいている。こいつらも勇者の性癖を知らなかったのだろう。
「あなたは、もしやレティさんのお兄様ですか?」
「お前にお兄様と呼ばれる筋合いはない。勇者パーティというのは、初めてあった村人の手の甲にキスをするのが普通なのか?」
僕の言葉に剣聖レーベン、賢者エイルマーは激しく首を横に振っている。
「そんなことはないが、美しい方に敬意を払い賛辞を送るのは礼儀の範疇だと思っている」
迷いのない言葉だ。また自分の行動が正しいのだと疑うこともない。
「お前の妹を美しいと思う気持ちは百歩譲って理解してやらなくもない。だが、レティはまだ十二歳なんだ。気持ち悪いから今後は目に入る距離には近づかないでもらいたい」
「そ、そんな……」
「当たり前だろう。レティが震えているのが見えないのか? 勇者なら何をしてもいいとでも思っているのか? それとも勇者が十二歳の子供に愛を語りかけていたと王都で噂を流してもいいのか」
「なっ、卑怯だぞ! とてもレティさんのお兄様とは思えない残虐魔王振りではないか」
「ちゃんと自分の行動が異常だと理解しているじゃないか。あと僕は魔王ではない」
「一般的に認められない恋だからといって僕は諦めたくはないんだ」
「お前自分が特別な人間だとでも思っているのか? 勇者だって一人の人間だ。少なくともレティの気持ちを考えたうえで五年後に来るのなら話ぐらいなら僕が聞いてやってもいい」
こういうロリコンには正論をぶつけてやればいい。さあ、お前の絶望的な表情を見せてみろ。
「五年後だと……。それでは遅い、あきらかに遅すぎる。今がレティさんの一番美しい時だというのに。五年も経ったら……」
そう、五年も経てばレティも大人に近づき更にその美貌に磨きがかかるはずなのだが、それはアシュレイの望む美しさとはかけ離れてしまう。
すがるように手を伸ばしながら地面に膝をつく勇者の姿はとても気持ち悪い。ルミナス村の村人も信じられないという眼をアシュレイに向けている。
するとレーベンとエイルマーが小さな声で興味深い話をしているのが耳に入った。
「アシュレイ様がテレシア姫との結婚を拒否されたのはこれが理由だったのか」
「長く旅をしてきたが、全く気がつかなかった。まさか少女にしか愛を向けられない方だったとは……」
魔王討伐から五年。勇者パーティも解散が決まっているようなので、アシュレイとしても今まで隠していた性癖が解放されてしまったのだろう。だが、それをレティに向けることだけは断じて許さん。
聖女はブラックメタルスライムの多さに驚愕しているし、剣聖と賢者は勇者にドン引きしている。
いくら元魔王の僕といえども、これの納め方はわからない。とりあえず、レティはスライムたちに任せて僕一人で村長の家に行こうか。
もう……せっかくの歓迎会が台無しだよ。
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