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48話 双子の戦い
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とりあえず、大山と玉垣のやりとりはしっかり録音録画させてもらったので、あとはこの研究所をめちゃくちゃしても大丈夫だと思う。
「おいっ、しっかりしろ、リリカ! 先に朔丸を救出する。ルリカのことはそれからだ」
エリアシールドを張り巡らされているから奴らもこの場所からは脱出できない。
「で、でも……わかった」
死んだ人間をアイテムで動かせるのか? 到底信じられないことだが、実際にルリカが動いている姿を画面越しに見ている。
こいつらの倫理観とかクソとしか思えないが、死んだ人間はやはり静かに眠らせてあげたい。
下の部屋の解除ボタンがわからないため、リリカの手を引っ張りながら階段を降りて扉ごと吹き飛ばすことにする。
「朔丸、扉から離れろ!」
「は、はい。大丈夫です」
勢いをつけて扉を蹴破ると、中から朔丸が出てくる。いや、魔法少女サクラちゃんだった。
「似合ってるな」
「藍之助様、そんなことを言っている場合ですか?」
下から再び突き上げるように縦揺れが起こる。おそらく、ルリカがもう下の階にいるのだろう。
そして、すぐに床が爆発するようにして陥没すると、浮き上がるようにルリカが目の前に現れた。
「敵勢力発見、排除します」
「ルリカ、私よ。リリカよ。お願いだから目を覚まして!」
ルリカは聞く耳を持たず、ステッキに魔力を注入している。
「リリカ、あきらめろ。ちっ!」
リリカと同じ闇属性の魔力が放たれると、僕は、リリカを抱えて反対方向へとダイブした。
次々と魔力に出し惜しみ無くめちゃくちゃに攻撃をしてくる。
目に光がないとでも言えばいいだろうか。残念ながらルリカは、ただの入れ物として利用されているに過ぎない。
ルリカが亡くなったことで、強引に魔力量を増やしていったのだろう。見た目には普通に見えるが、その実状はボロボロの状態だ。身体から魔力が漏れだしているし、きっと長くは持たない。完全な使い捨ての駒として利用している。
しかしながら、魔力量は今まで感じたことがないぐらいに強力だ。
「もう、あれはルリカではない」
「わ、わかってるってば! でも、許せない」
リリカも頭では理解している。ずっと一緒に過ごしてきた双子の妹が、死んだ後にもこのような扱いを受けているのだ。
「逃げ回ってるばかりでつまらない」
研究所を壊さん勢いで暴れていたルリカも、攻撃が当たらないことに、つまらなそうな顔を向ける。
確かに逃げ回ってるだけでは解決はしないな。
「リリカ、恨むなら大山と玉垣を恨めよ」
「わ、私も戦う。藍之助だけに戦わせるわけにはいかない」
「そうか。なら、朔丸は逃げた二人を追ってくれるか? 外には出れないようにはしてある」
「かしこまりました。お任せ下さい」
玉垣は声しか知らないだろうが、大山のことは顔も把握しているはず。朔丸なら大丈夫だろう。
「お前に恨みはないが、このままではリリカが可哀想なのでな。すぐに大人しくさせてやる」
「逃げてばっかりの癖によく言う。早く死ね」
おそらく、本能に近いもので動いているのだろう。動きはめちゃくちゃではあるが、その攻撃一つ一つが致命傷を与えるものを繰り出してくる。
きっと、魔力が無くなるまでその動きは止まらない。ルリカの攻撃を躱しながら、どう攻めるかを考える。
やはり、狙いは丹田になるか。
すでに死んでいるとはいえ、人の姿をして喋っている者を殺さなければならないというのは、それなりにくるものが無いわけではない。
「瞬間移動」
ルリカの真後ろに移動してから、丹田に狙いを定めるものの、こちらを見ずに魔力エネルギーが飛んでくる。
「ちっ、目が見えていないのか」
「藍之助、どういうこと?」
「こいつは、俺たちの姿を見ているんじゃない。魔力で位置を判断している」
「魔力で……。ならば、こうすればどう?」
リリカは複数の魔力エネルギーを浮かべ、動かしていく。
「お前、頭が悪いのか? 目は見えていないが、魔力エネルギーの大きさで位置ぐらい判断できる」
「そう。なら、しっかり判断することね」
浮かべていた魔力エネルギーを更に増やすと、激しく動かしていく。こんな狭い通路で動かしていたら、その内ぶつかってしまう。
いや、それがリリカの狙いか。
「なるほど、僕も協力しよう」
周囲を埋め尽くさんばかりの魔力エネルギーがぶつかり合い爆発していく。その量とボリュームに、リリカがギョッとした視線を向けてくるが気にしない。
これで、作戦は成功。これだけ激しくエネルギー体が爆発している状況では、ルリカはどの位置に僕たちがいるのか判別できない。
前後左右を慌ただしく振り向いては、強引に攻撃していく。リリカもめちゃくちゃだが、ルリカもめちゃくちゃだ。
しかし、リリカの作戦は上手く嵌ってしまった。自らの攻撃や爆発に巻き込まれながらルリカの四肢は脆く崩れていこうとしている。
研究所は大きく崩れ、天井を突き抜けて空が見えている。
すでに上空に移動した僕らのことをルリカは気づいていない。
勢いのまま研究所をぶっ壊そうとは思っていたが、まさか、自分以外がそうするとは想像していなかった。
最後ぐらいは僕がトドメをさそうと、魔力を練りあげようとしたところで、リリカにその腕を止められた。
「助けられなくてごめん。私だけ生き残ってごめん。せめて、せめて、もう二度と苦しまないように、愛してるよルリカ」
「ダークインパクトメガフレア!」
リリカの放った必殺技は、魔力エネルギー体を巻き込むようにして壮絶な爆発を繰り返していく。
そして、その中心にいるのはルリカ。
双子の戦いは、あっさりと。そして、激しい爆発音とともに幕がおりた。
後ろ姿に涙を拭うリリカは、しばらくその中心を見つめ続けていた。
「おいっ、しっかりしろ、リリカ! 先に朔丸を救出する。ルリカのことはそれからだ」
エリアシールドを張り巡らされているから奴らもこの場所からは脱出できない。
「で、でも……わかった」
死んだ人間をアイテムで動かせるのか? 到底信じられないことだが、実際にルリカが動いている姿を画面越しに見ている。
こいつらの倫理観とかクソとしか思えないが、死んだ人間はやはり静かに眠らせてあげたい。
下の部屋の解除ボタンがわからないため、リリカの手を引っ張りながら階段を降りて扉ごと吹き飛ばすことにする。
「朔丸、扉から離れろ!」
「は、はい。大丈夫です」
勢いをつけて扉を蹴破ると、中から朔丸が出てくる。いや、魔法少女サクラちゃんだった。
「似合ってるな」
「藍之助様、そんなことを言っている場合ですか?」
下から再び突き上げるように縦揺れが起こる。おそらく、ルリカがもう下の階にいるのだろう。
そして、すぐに床が爆発するようにして陥没すると、浮き上がるようにルリカが目の前に現れた。
「敵勢力発見、排除します」
「ルリカ、私よ。リリカよ。お願いだから目を覚まして!」
ルリカは聞く耳を持たず、ステッキに魔力を注入している。
「リリカ、あきらめろ。ちっ!」
リリカと同じ闇属性の魔力が放たれると、僕は、リリカを抱えて反対方向へとダイブした。
次々と魔力に出し惜しみ無くめちゃくちゃに攻撃をしてくる。
目に光がないとでも言えばいいだろうか。残念ながらルリカは、ただの入れ物として利用されているに過ぎない。
ルリカが亡くなったことで、強引に魔力量を増やしていったのだろう。見た目には普通に見えるが、その実状はボロボロの状態だ。身体から魔力が漏れだしているし、きっと長くは持たない。完全な使い捨ての駒として利用している。
しかしながら、魔力量は今まで感じたことがないぐらいに強力だ。
「もう、あれはルリカではない」
「わ、わかってるってば! でも、許せない」
リリカも頭では理解している。ずっと一緒に過ごしてきた双子の妹が、死んだ後にもこのような扱いを受けているのだ。
「逃げ回ってるばかりでつまらない」
研究所を壊さん勢いで暴れていたルリカも、攻撃が当たらないことに、つまらなそうな顔を向ける。
確かに逃げ回ってるだけでは解決はしないな。
「リリカ、恨むなら大山と玉垣を恨めよ」
「わ、私も戦う。藍之助だけに戦わせるわけにはいかない」
「そうか。なら、朔丸は逃げた二人を追ってくれるか? 外には出れないようにはしてある」
「かしこまりました。お任せ下さい」
玉垣は声しか知らないだろうが、大山のことは顔も把握しているはず。朔丸なら大丈夫だろう。
「お前に恨みはないが、このままではリリカが可哀想なのでな。すぐに大人しくさせてやる」
「逃げてばっかりの癖によく言う。早く死ね」
おそらく、本能に近いもので動いているのだろう。動きはめちゃくちゃではあるが、その攻撃一つ一つが致命傷を与えるものを繰り出してくる。
きっと、魔力が無くなるまでその動きは止まらない。ルリカの攻撃を躱しながら、どう攻めるかを考える。
やはり、狙いは丹田になるか。
すでに死んでいるとはいえ、人の姿をして喋っている者を殺さなければならないというのは、それなりにくるものが無いわけではない。
「瞬間移動」
ルリカの真後ろに移動してから、丹田に狙いを定めるものの、こちらを見ずに魔力エネルギーが飛んでくる。
「ちっ、目が見えていないのか」
「藍之助、どういうこと?」
「こいつは、俺たちの姿を見ているんじゃない。魔力で位置を判断している」
「魔力で……。ならば、こうすればどう?」
リリカは複数の魔力エネルギーを浮かべ、動かしていく。
「お前、頭が悪いのか? 目は見えていないが、魔力エネルギーの大きさで位置ぐらい判断できる」
「そう。なら、しっかり判断することね」
浮かべていた魔力エネルギーを更に増やすと、激しく動かしていく。こんな狭い通路で動かしていたら、その内ぶつかってしまう。
いや、それがリリカの狙いか。
「なるほど、僕も協力しよう」
周囲を埋め尽くさんばかりの魔力エネルギーがぶつかり合い爆発していく。その量とボリュームに、リリカがギョッとした視線を向けてくるが気にしない。
これで、作戦は成功。これだけ激しくエネルギー体が爆発している状況では、ルリカはどの位置に僕たちがいるのか判別できない。
前後左右を慌ただしく振り向いては、強引に攻撃していく。リリカもめちゃくちゃだが、ルリカもめちゃくちゃだ。
しかし、リリカの作戦は上手く嵌ってしまった。自らの攻撃や爆発に巻き込まれながらルリカの四肢は脆く崩れていこうとしている。
研究所は大きく崩れ、天井を突き抜けて空が見えている。
すでに上空に移動した僕らのことをルリカは気づいていない。
勢いのまま研究所をぶっ壊そうとは思っていたが、まさか、自分以外がそうするとは想像していなかった。
最後ぐらいは僕がトドメをさそうと、魔力を練りあげようとしたところで、リリカにその腕を止められた。
「助けられなくてごめん。私だけ生き残ってごめん。せめて、せめて、もう二度と苦しまないように、愛してるよルリカ」
「ダークインパクトメガフレア!」
リリカの放った必殺技は、魔力エネルギー体を巻き込むようにして壮絶な爆発を繰り返していく。
そして、その中心にいるのはルリカ。
双子の戦いは、あっさりと。そして、激しい爆発音とともに幕がおりた。
後ろ姿に涙を拭うリリカは、しばらくその中心を見つめ続けていた。
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