エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~

つちねこ

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43話 リリカの実力

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 ステッキに集められた魔力を結界に向けて撃ち出そうとしているリリカ。どうやら話し合いにもならない。

 Fランクであるエリーゼの先輩力には期待できないようだ。

「リ、リリカ、ダメです!」

「ダークインパクトメガフレア!」

 ステッキに集まる膨大な闇の魔力。ステッキはすでに必殺技が撃てる状態になっていたらしい。

「ちっ、瞬間移動」

 少ない魔力を使ってリリカの真後ろに瞬間移動すると、狙いを定めているステッキを下から軽くチョップして撃ち出しの角度を変える。

 凄まじい威力となった闇属性の必殺技は、はるか上空へと飛んでいった。

「み、御剣、いつの間に移動した!? 私に近づくな!」

 リリカの後ろ回し蹴りにあっさり飛ばされてしまった僕は海に叩きつけられてしまう。

 防御魔法を展開できない程の魔力量に悲しくなる。エリーゼに何とか出来るのだろうか、いや何とかしてもらうしかない。

 とりあえず、少しでも魔力を回復させないことには何もできない。今の僕には、お茶を飲むしかやることがない。

「ボ、ボス!」

「御剣の者が、どれほどの力を秘めているのかと思っていたけど大したことなさそうね」

「ボスに喧嘩売るとか人生終わりたいですか? 私、知らないですよ」

「あの程度の力でBランク魔法少女を倒したというのが信じられないぐらいに弱い。こんなに弱いのにドロップアイテムを独占しているなんて、絶対に許せない!」

 ステッキの魔力ゲージを溜めながらエリーゼに体術で向かっていくリリカだが、こと体術に関していえば身体強化スキルを持っているエリーゼに利がある。技術はないけども。

 ここ数日のイフリート討伐によって対人戦闘を繰り返してきたエリーゼの方が実戦慣れしているようで、徐々にリリカを押し始めている。

「ドロップアイテムの独占? いったい何を言ってるですか。ドロップアイテムは内海の門からとれるアイテムと定期的に交換することになってるですよっ!」

 会話しながらもエリーゼのプリズムパンチがリリカのお腹にめり込んでいく。

「ぐぅ、う、嘘をつくな! だったら何でルリカは助からないの」

「ルリカがどうかしたですか? 何が起こってるのか詳しく話してほしいです。エリーゼで力になれることことなら御剣家にも掛け合ってみるですよ」

 どこかためらうような、エリーゼの言葉を疑うような迷いがリリカにある。誰かに何かを吹き込まれてここに来ているのは間違いない。

「……い、異界の門とドロップアイテムは私が管理する。Fランクのエリーゼ先輩と御剣の者はここを立ち去るがいい」

「それはできないですよ。私は月野様の命令でここの管理を御剣家と共同で行っているです。リリカをここへ派遣したのは誰の指示ですか?」

「そんなこと話す必要はない。ここのドロップアイテムを持っていかなければルリカが……」

「リリカ、魔法少女の力は誰のために使うと習ったですか? 今のあなたは妹の為にその力を使おうとしてるです。そんなことは絶対に許されないですよっ!」

 続けざまの攻撃がリリカを吹き飛ばす。近接格闘においてはエリーゼの方が完全に上、このまま続けばリリカを倒せる可能性もある。

 ここに魔法が加わると流れは一転してしまう。バレる前に何とか終わらせたいところなのだが……。

「なんで、なんでFランク魔法少女のエリーゼ先輩にSSランク級になった私の力が通用しないの!」

「エリーゼはここでいろんな人から強くなるために指導してもらってるです。昔のエリーゼだと思ったら大間違いですよ!」

「やっぱり、ここで得られるドロップアイテムのおかげで強くなってるのね。あなたや御剣家だけで独占してアイテムを使用しているなんて許せない!」

 まずいな……。ステッキが再びマックスまで光はじめている。あの必殺技をエリーゼが何とか出来るとは思えない。

 魔力を十分に溜め込んだリリカは髪を逆立てるようにしながら必殺技を撃つ体制に入る。

「い、いや、少しはドーピングしてるですけど、独占は断じてしてないですよ。一応ですが、ちゃんと交換もしてるですからね」

「嘘つきの言葉は信じない。私は、私はルリカの為ならなんだってやる。その為なら御剣の者もそれに与するものも全て倒す。邪魔をするならエリーゼ、あなたも殺す」

「ま、待つです。リリカは騙されてるですよ」

「ダークインパクト……」

「エリーゼ! いったん結界の中に戻るんだ」

「ふぇ? で、でも」

「……メガフレア!」

 さっきよりもさらに魔力が込められた必殺技が放たれている。

 リリカの必殺技はエリーゼを巻き込み、さらにフレデリカの結界をも一気に飲み込もうとしていた。

 最悪だ……。

 エリーゼとしてはフレデリカがせっかく作ってくれた結界を守りたい気持ちがあったのだろうが無茶が過ぎる。

「お、おいっ、エリーゼ、しっかりしろ!」

「ボ、ボス……」

「現状でお前が一番の戦力だというのに、勝手に戦闘不能になりやがって。でもそのおかげか、辛うじてフレデリカの結界は守られたようだがな」

「よ、よかった……です」


 さて、困ったな。魔力もほとんどないこの状態でどうしたものか。

 応援が来るまで持つのだろうか。

 いや、やるしかないのか。

 エリーゼを結界内で寝かせると、僕はリリカの前に立った。
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