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40話 うごめく野望

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 頭がとても重い。私はここで一体何をしているのだろう。何か大事なことを忘れているような……。
 でもそれが何なのか全然思い出せない。

 実験で薬を飲まされていたことは覚えている。隣にはルリカがいたような気がするのだけど……。

 周りを見渡しても、ルリカの姿は見当たらなかった。

「わ、私は……。ルリカは? ルリカはどこにいるの?」

 相変わらず部屋からは出られないようで、しかしながら、代わりにスピーカーからの声が答えてくれた。

『それがね、薬の副作用が出てしまったようなんだ。ルリカには別室で治療してもらってます』

「ふ、副作用!? ルリカは大丈夫なの? ルリカに会わせてっ!」

『残念ながら今は面会することはできない。予断を許さない状況なんだ。でもね、御剣家が独占管理している異界の門を取り戻せば可能性はなくもない。そこでとれるドロップアイテムを継続的に摂取することで回復が見込めそうなんだ』

「よ、よかった……」

『それが、あまりよくない事態でね。人命がかかっているというのに、御剣家は異界の門もドロップアイテムも独占していて、こちらに回すつもりがないようなんだ』

「そ、そんな。な、なんで……」

『御剣の者は、この国にとって百害あって一利なし。あいつらは殺さなければならない。そうしないと、ルリカは助からないからね。何より時間もあまりない』

「こ、殺す……?」

『そうだ。御剣の者は全員殺さなければならない。そうしないと、ルリカは助けられないんだ。我々も何とかしてルリカを助けたいのだけど、いくらお願いしても御剣の者は手を貸してくれない』

「酷い人たち。……それならもう殺すしかないわね」

 あらかじめ言葉が誘導されているかのように出てくる。でも、この人の言っていることは間違っていない。
 ルリカを助けるには、異界の門とドロップアイテムを御剣家から取り戻さなければならない。

『そう、御剣の者は全員殺すしかない。御剣に与するものも全て殺すんだ。そうしないと……』

「……ルリカは助からない」

 御剣の者を殺さないとルリカは助からない。ルリカが助かるのであれば私は御剣家を倒さなければならない。

『そうだ。御剣は倒せ、御剣は殺せ』

 倒す。御剣の者を。
 殺す。御剣の者を。



『リリカの闇の魔力は、この数日でかなり成長しているはずだ。体の具合はどうですか?』

「問題ありません。体の調子は今までにないぐらいに良好です。いつでも行けます」

『そうですか。念の為、最終チェックを行います。結果次第で出発は明日以降になるでしょう。ルリカのためにも頑張るんだ。それから、御剣の者は嘘つきが多い。言葉巧みにリリカを騙そうとするだろう。決して耳を傾けてはならないよ』

「わかりました」


※※※


「リリカの様子は問題ないのか?」

「大山幹事長、いらしてたのですか」

 政界の重鎮と呼ばれている大物元議員だ。彼が幹事長だった時に魔道具研究所は大きく成長させてもらった。
 魔道具研究所はもちろん、いまだに多くの派閥グループにも顔が聞くフィクサーだ。

「元幹事長だよ。わしはもう政界を引退しておる。それよりも、ルリカは惜しいことをしたな。まさかあの程度で死んでしまうとは思わなかった」

「事故として処理頂けるようで痛み入ります」

「魔道具研究所の名前を出す訳にはいかんからな。すぐに、新しい魔法少女候補を補充しなさい」

「……それが魔女の監視が強まっておりまして、育成学校の生徒からは厳しいようです」

「生徒が難しいのなら、入学前の少女を狙いたまえ。それなら問題あるまい」

「かしこまりました。そのように致します」

「それから、月野の妹とかで騒がれている魔法少女がいるだろう。あの子をこちらに引き込めないのか?」

「さ、さすがにそれは厳しいのでは?」

「そもそも魔法少女育成学校を卒業していないというではないか。魔法少女に免許がある訳では無いが、卒業もせずに認めてしまうというのも問題があるだろう」

「お、おっしゃる通りでございます」

「ステッキの授与とか、理由をつけて呼び出せ。あれは月野のアキレス腱にもなるぞ」

「なるほど、洗脳してしまえば魔女も強く行動できなくなりますか」

「そういうことだ。次の選挙で黒川を総裁の座から降ろす。あいつは月野と関係が近くなりすぎた。このままではいつになっても異界の門を取り戻せない」

「まさか御剣家に邪魔をされることになるとは思いませんでした」

「奴らもそれなりにやるようだが、SSランクになったリリカには敵わないだろう。これで、もっと金が稼げるようになるぞ。ドロップアイテムは金の成る木だ。魔法少女の強化が進めば、門をもっと増やせる」

「はい。研究所も大きくなりますね」

「あちらの門から採れるドロップアイテムも早急に調べあげるんだ。リリカが死んだ妹のためにいくらでもとってくるだろうからね」
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