38 / 49
38話 魔力量強化
しおりを挟む
今朝は、フレデリカとエリーゼと僕の三名で異界の門改めエビルゲートに来ている。
「それでは、エリーゼさんの特訓を優先してあげてください。ゲートから出てくる精霊たちは私が討伐しよう」
「任せてしまって大丈夫か?」
「働かざるもの食うべからずですよ。エビルゲートから出てくる精霊については、私に何かできるわけでもなさそうなので気にしないでください」
仲間だった精霊を討伐しなければならないのは心苦しいとこもあるかと思っていたのだが、意外にもあっさりしているようで安心した。
「ボス、フレデリカはどのくらい強いですか?」
「僕とそんなに変わらないぐらいじゃないか」
そんな会話が聞こえていたのだろう。フレデリカが振り向くとエリーゼに答えた。
「いやいや、藍之助の方が強いよ。多分、あの召喚魔法をもう一度くらっていたら間違いなく殺されていたと思うんだよね。久し振りに身の危険を感じたよ」
「あれは朱里姉さんがいたから召喚できたものだ。それに、フレデリカに戦闘の意思はほとんどなかっただろう。まともに戦っていたらどうなっていたかはわからないよ。僕の欠点は魔力量の少なさにある。持久戦になったら勝ち目はない」
「ヤ、ヤバいですよ。ボスと同等のレベルとかやっぱりドラゴンさんなだけはあるですね。凶暴なドラゴンさんだったら人類が滅亡していたかもしれないのです」
「エリーゼさん、ドラゴンというのは孤独な種族なんだ。もちろん、仲の良い精霊やモンスターはいることもあるけど、一生のほとんどは一人で過ごす時間が多い。そんな種族が凶暴なわけないだろう」
「フレデリカ、ぼっちだったですか……」
「力試しで討伐しようと来る者は返り討ちにするけど、こちらから何か行動を起こすようなことはないよ」
「さみしくなかったですか?」
「種族的にそういうものだと思っていたんだ。一人でいることは気ままだし好きだよ。でもね、この世界で藍之助たちと出会って、関わって美味しい食事を頂いて、優しくされて。うん、友達っていうのも面白そうだなって思えてきたんだ」
いきなり攻撃をしてしまったのにフレデリカは僕たちを友達認定してくれていたらしい。
「友達……か?」
「いやだったかい?」
「そんなことはない。こちらこそよろしく頼む」
「ボスだけズルいですよ! フレデリカ、エリーゼも友達ですよね?」
「はい、エリーゼさんもお友達です」
ドラゴンの友達認定はかなり緩いらしい。
「やったです。エリーゼ、御剣島に来てから友達増えまくりですよ!」
島にきて出来た友達というのは星那だけだろう。まさか、手を振ってくれる島の少女達を友達と言っている訳ではないだろうな。そもそも何で人口の少ない土地にきて友達が増えてるんだ。この真性ぼっちめ。
「ボスも友達にしてあげてもいいですよ?」
「はいはい。それじゃあ特訓を始めるぞ」
「ちょっ、待つですボス! な、何をしようとしてるですか!?」
僕の手のひらには魔力の塊が炎のように漂っている。これは正真正銘ただの魔力体なのだけど、今からこれをエリーゼの身体の中に注入する。
「細かい説明をするよりも慣れた方が早い。じっとしてろ、別に初日はそんな痛くはないはず……」
「は、はずって、絶対痛いやつじゃないですか!?」
「ちっ、影縛り」
「ふぇっ、う、動けない、です……」
「大丈夫、痛みはないから。はい、深呼吸して。吸ってー、吐いてー、よしっ、いけ!」
「ふ、ふぅ、ふぇっ!?」
「いいか、エリーゼ。お前の丹田、つまり魔力が生産される場所に俺の魔力を注入した。魔力量を増やすために強引に丹田を刺激しながら広げているといえばわかりやすいか」
コクコクと頷くエリーゼ。別に言葉は喋れるはずだが、身体に入ってきた魔力にビビっているのだろう。
「今入れた魔力はエリーゼの持つ量の1.5倍ぐらいだ。今日はその量が馴染むまで魔法は使用禁止な。それから、体は動かした方がいいからサラマンダーが出たら、力の秘薬でぶっ飛ばせ」
そんなことして大丈夫なのか? 的な顔をしているが、魔力を馴染ませるにはそれが一番効果があると思われる。
「いいから準備をしておけ。それから、魔力は放出せずに手のひらでイメージをかためる訓練をする」
何言ってるのコイツ? 的な表情をしているのがムカつかせる。
「別に喋れない訳じゃないんだ。質問があるなら声を出せ」
「な、なんか、お腹が膨らんで口から魔力が出ちゃいそうなんですよ」
俺が渡した魔力は丹田に収まっている。溢れ出てはいないので大丈夫なはずだが、圧迫されているからか、自分の魔力が外に出ようとしているように感じているのかもしれない。
「そ、そうか。でも、口から魔力は逃げていかないから安心しろ。そこまでの量を注入していない。これを見てみろ」
手のひらから改めて魔力の塊を炎のように出すと、その形を炎から鳥の姿へと変えていく。炎の鳥がゆっくりと羽ばたきながら僕の肩にとまる。
「そ、それは……?」
「魔力をイメージしたものに変換する初歩の訓練だ。魔法はイメージ力がものをいう。今日から毎日丹田を広げながら魔力変換をスムーズに行う。そして、サラマンダーが出てきたらぶっ飛ばせ」
「ボス、無理です……」
エリーゼの手のひらには小さな芋虫がうにうにと動いていた。
一応イメージしたのは鳥らしい……。
これはかなり時間がかかりそうだ。でも、魔力量を増やすのもそれなりに時間はかかる。じっくり取り組んでもらうしかない。
「それでは、エリーゼさんの特訓を優先してあげてください。ゲートから出てくる精霊たちは私が討伐しよう」
「任せてしまって大丈夫か?」
「働かざるもの食うべからずですよ。エビルゲートから出てくる精霊については、私に何かできるわけでもなさそうなので気にしないでください」
仲間だった精霊を討伐しなければならないのは心苦しいとこもあるかと思っていたのだが、意外にもあっさりしているようで安心した。
「ボス、フレデリカはどのくらい強いですか?」
「僕とそんなに変わらないぐらいじゃないか」
そんな会話が聞こえていたのだろう。フレデリカが振り向くとエリーゼに答えた。
「いやいや、藍之助の方が強いよ。多分、あの召喚魔法をもう一度くらっていたら間違いなく殺されていたと思うんだよね。久し振りに身の危険を感じたよ」
「あれは朱里姉さんがいたから召喚できたものだ。それに、フレデリカに戦闘の意思はほとんどなかっただろう。まともに戦っていたらどうなっていたかはわからないよ。僕の欠点は魔力量の少なさにある。持久戦になったら勝ち目はない」
「ヤ、ヤバいですよ。ボスと同等のレベルとかやっぱりドラゴンさんなだけはあるですね。凶暴なドラゴンさんだったら人類が滅亡していたかもしれないのです」
「エリーゼさん、ドラゴンというのは孤独な種族なんだ。もちろん、仲の良い精霊やモンスターはいることもあるけど、一生のほとんどは一人で過ごす時間が多い。そんな種族が凶暴なわけないだろう」
「フレデリカ、ぼっちだったですか……」
「力試しで討伐しようと来る者は返り討ちにするけど、こちらから何か行動を起こすようなことはないよ」
「さみしくなかったですか?」
「種族的にそういうものだと思っていたんだ。一人でいることは気ままだし好きだよ。でもね、この世界で藍之助たちと出会って、関わって美味しい食事を頂いて、優しくされて。うん、友達っていうのも面白そうだなって思えてきたんだ」
いきなり攻撃をしてしまったのにフレデリカは僕たちを友達認定してくれていたらしい。
「友達……か?」
「いやだったかい?」
「そんなことはない。こちらこそよろしく頼む」
「ボスだけズルいですよ! フレデリカ、エリーゼも友達ですよね?」
「はい、エリーゼさんもお友達です」
ドラゴンの友達認定はかなり緩いらしい。
「やったです。エリーゼ、御剣島に来てから友達増えまくりですよ!」
島にきて出来た友達というのは星那だけだろう。まさか、手を振ってくれる島の少女達を友達と言っている訳ではないだろうな。そもそも何で人口の少ない土地にきて友達が増えてるんだ。この真性ぼっちめ。
「ボスも友達にしてあげてもいいですよ?」
「はいはい。それじゃあ特訓を始めるぞ」
「ちょっ、待つですボス! な、何をしようとしてるですか!?」
僕の手のひらには魔力の塊が炎のように漂っている。これは正真正銘ただの魔力体なのだけど、今からこれをエリーゼの身体の中に注入する。
「細かい説明をするよりも慣れた方が早い。じっとしてろ、別に初日はそんな痛くはないはず……」
「は、はずって、絶対痛いやつじゃないですか!?」
「ちっ、影縛り」
「ふぇっ、う、動けない、です……」
「大丈夫、痛みはないから。はい、深呼吸して。吸ってー、吐いてー、よしっ、いけ!」
「ふ、ふぅ、ふぇっ!?」
「いいか、エリーゼ。お前の丹田、つまり魔力が生産される場所に俺の魔力を注入した。魔力量を増やすために強引に丹田を刺激しながら広げているといえばわかりやすいか」
コクコクと頷くエリーゼ。別に言葉は喋れるはずだが、身体に入ってきた魔力にビビっているのだろう。
「今入れた魔力はエリーゼの持つ量の1.5倍ぐらいだ。今日はその量が馴染むまで魔法は使用禁止な。それから、体は動かした方がいいからサラマンダーが出たら、力の秘薬でぶっ飛ばせ」
そんなことして大丈夫なのか? 的な顔をしているが、魔力を馴染ませるにはそれが一番効果があると思われる。
「いいから準備をしておけ。それから、魔力は放出せずに手のひらでイメージをかためる訓練をする」
何言ってるのコイツ? 的な表情をしているのがムカつかせる。
「別に喋れない訳じゃないんだ。質問があるなら声を出せ」
「な、なんか、お腹が膨らんで口から魔力が出ちゃいそうなんですよ」
俺が渡した魔力は丹田に収まっている。溢れ出てはいないので大丈夫なはずだが、圧迫されているからか、自分の魔力が外に出ようとしているように感じているのかもしれない。
「そ、そうか。でも、口から魔力は逃げていかないから安心しろ。そこまでの量を注入していない。これを見てみろ」
手のひらから改めて魔力の塊を炎のように出すと、その形を炎から鳥の姿へと変えていく。炎の鳥がゆっくりと羽ばたきながら僕の肩にとまる。
「そ、それは……?」
「魔力をイメージしたものに変換する初歩の訓練だ。魔法はイメージ力がものをいう。今日から毎日丹田を広げながら魔力変換をスムーズに行う。そして、サラマンダーが出てきたらぶっ飛ばせ」
「ボス、無理です……」
エリーゼの手のひらには小さな芋虫がうにうにと動いていた。
一応イメージしたのは鳥らしい……。
これはかなり時間がかかりそうだ。でも、魔力量を増やすのもそれなりに時間はかかる。じっくり取り組んでもらうしかない。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
職業が魔王なので勇者の村を追放されたけど、幼馴染が女勇者になったので陰ながら手助けしようと思う
つちねこ
ファンタジー
「職業は……まおう。レックスの職業は、魔王です」
えっ、魔王って職業だったの!?
もちろん、職業が魔王な僕は、そのまま村に居られるはずもなく追放されてしまう。
気掛かりといえば、幼馴染のエリオ。彼女の職業は勇者だったのだ。魔王討伐の旅は簡単なことではない。あれっ、でも魔王って僕?
逃げた先で出会った魔王軍の元四天王に助けられながらも、レックスは魔王の力を想像以上に扱えるようになっていく。
この物語は、器用さだけが売りだった農家の少年が魔王の力に覚醒し、陰の第三勢力となり無双するお話である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】リアルデス 世界を救うより、妖精を育てよう
製作する黒猫
ファンタジー
勇者と呼ばれ、一つの世界を救った男セキミヤ。しかし、元の世界に戻って彼を待っていたのは、平凡な日常だった。すっかり変わってしまった彼には、息苦しいくらいの日常。そんな彼に訪れた転機は、2度目の異世界転移だった。
今回の旅では、妖精をパートナーとして連れ歩けると聞き、彼は妖精の中でも弱く、力のないものを選ぶ。なぜなら、育てがいがあるから。「怠惰」の称号持ちの妖精だと聞き、歓喜する。なぜなら、面白そうだから。
大切なパートナーである妖精を育てるため、彼は救いの手を差し伸べる。
コメディの予定ですが、設定がシリアスな部分があります。
カクヨム・小説家になろうにも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる