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34話 エビルゲート
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サラマンダーにイフリート。彼らとの出会いを思い出してみる。
サラマンダーは、油断を誘うように少女の姿に変化して、僕の頭ごと食らおうと飛び掛ってきた。
イフリートは、最初から隠すことなくこちらに敵意を向けていた。僕を見るなり猛スピードで突進してきて、走りながら炎の塊を飛ばしてきた。
「うーん、いや、全然話し合いとか、そんな雰囲気はなかったかな。顔を見るなり敵意を向けられたよ」
『おかしいな。そんなはずはないと思うんだけど……。サラマンダーなんて、どちらかというと無口でおどおどしてる静かな精霊なのに』
「門を抜けることで性格が変わるというのか?でも、そうなるとあなたは特に性格が変わっているわけではないんですよね」
『私の名前はフレデリカという。そうですね、詳しくはわからないのですが、私は体が大きいからイフリートの姿に変えて十体に分かれてエビルゲートをくぐった。ひょっとしたら、それが性格が変わらなかった理由なのかもしれませんね』
「フレデリカって、女性だったの!?」
朱里姉さんが驚いているが、精霊ではなくドラゴンなのだから性別はどちらも考えられるだろう。
「僕は御剣藍之助、隣にいるのは朱里姉さん。いきなり攻撃をしてしまって申し訳ない。すぐに怪我を治そう。完全治癒パーフェクトヒール!」
治癒魔法については、母さんが専門にやっているので僕は細かな治療はできない。それでも、出血を止めたり細胞を活性化させたりすることはそれなりにできる。
『おぉー、おぉー、すごいすごい。藍之助は治癒魔法のエキスパートでもあるんだね。これならそう時間も経たずに全部治るよ。うわー、ありがとう』
「礼を言われても、勝手に攻撃したのはこっちだからな……」
『それで、さっきの話なんだけど、しばらくしたらまたエビルゲートは開くのかな?』
「そのエビルゲートっていうのは異界の門のことか?」
僕が門を指さして尋ねるとフレデリカはうんうんと首を縦にふって肯定した。
それにしても随分とフレンドリーなドラゴンだな。
『君たちの世界では異界の門というんだね。これは、エビルゲート。邪悪なる門を意味する言葉で、ゲートの先は闇の世界の住人が棲息する世界だと言われていたんだ』
得意気に話すフレデリカだが、それはこの世界が闇の世界だと言っていることになる。そっくりそのまま言葉を返したいものだな。
『でも、藍之助たちを見ていると、この世界が闇の世界だとは思えない。言葉もちゃんと通じるし、とても美しい海が広がっている。やっぱり、自分の目で見てみないことにはわからないことってあるよね、うんうん』
「門はまたしばらくしたら開くはずだよ。今までの傾向からすると、日中は一時間も間を置かないで開くと思う」
『そうか、それなら次にゲートが開いたら私に精霊たちを説得させてもらえないかな。すぐにゲートへ送り返すからさ』
送り返せるのか? そんなことを考えていたら朱里姉さんがフレデリカに質問していた。
「ちょっと待って、フレデリカ。あの門ってこちらから向こうの世界へ行けるの?」
『えっ? 行けないの!?』
「少なくとも、異界の門を越えて行った人ってのは聞いたことがないわ。開いてもすぐに閉じちゃうし」
『ど、どうしよう。私、もう戻れないのかな……』
「戻れるかどうかはわからないが、門が開くみたいだぞ。フレデリカ、頼めるか?」
『あっ、うん。任せておいて』
門から出てきたのはイフリート二体。どう見ても好戦的な構えをしていたが、目の前にいる大きなドラゴンを見て少し焦った表情をしている。
『やぁやぁ、君たち。うん? 何だか雰囲気がいつもと違うような? あれ? 話ができない!?』
結果から言うと、全くもって話し合いにはならなかった。意を決したイフリートが無謀にもフレデリカに攻撃をしてきたのだ。
イフリートの攻撃程度ではダメージはほとんど入らないようだが、フレデリカはどうしたものかと困った表情をしていた。
結果的にはその大きな足でもって踏みつけて、苦しまないように一瞬で倒してみせた。エリーゼの消耗戦的な戦い方を見せたら悲しみそうだ。
『これは困ったなぁ。エビルゲートを超えると邪悪な性格に変わってしまうということなのか。つまり、ゲートの先が闇の世界なのではなく、ゲートを超えた者が邪悪な者になってしまうということか……』
門は再び閉まっており、フレデリカがその大きな爪を器用に使い開けようとしているが、もちろんビクともしない。
『あ、開かないよね。これ、どうしよう。本当に戻れないのかも……』
「次に門が開いた瞬間、イフリートの姿になって入ってみるってのはどうかな?」
『おぉー、ソレだよ。藍之助は賢いのだね。あとさ、しばらくゲートが開かないのなら、この世界のことを教えてもらえないかな』
どうやら穏やかな性格をしているドラゴンなので、戻れない場合はうちの島で過ごしてもらっても構わないけど、フレデリカの大きさを考えるとちょっと狭すぎるか。
「もちろん構わないよ。どんなことが聞きたい?」
『話をするなら同じぐらいのサイズになった方がいいかな。よし、人間の姿に変身しよう』
そう言って、あっという間に人の姿に変わってしまったフレデリカは、とても美しい女性の姿になっていた。
サラマンダーは、油断を誘うように少女の姿に変化して、僕の頭ごと食らおうと飛び掛ってきた。
イフリートは、最初から隠すことなくこちらに敵意を向けていた。僕を見るなり猛スピードで突進してきて、走りながら炎の塊を飛ばしてきた。
「うーん、いや、全然話し合いとか、そんな雰囲気はなかったかな。顔を見るなり敵意を向けられたよ」
『おかしいな。そんなはずはないと思うんだけど……。サラマンダーなんて、どちらかというと無口でおどおどしてる静かな精霊なのに』
「門を抜けることで性格が変わるというのか?でも、そうなるとあなたは特に性格が変わっているわけではないんですよね」
『私の名前はフレデリカという。そうですね、詳しくはわからないのですが、私は体が大きいからイフリートの姿に変えて十体に分かれてエビルゲートをくぐった。ひょっとしたら、それが性格が変わらなかった理由なのかもしれませんね』
「フレデリカって、女性だったの!?」
朱里姉さんが驚いているが、精霊ではなくドラゴンなのだから性別はどちらも考えられるだろう。
「僕は御剣藍之助、隣にいるのは朱里姉さん。いきなり攻撃をしてしまって申し訳ない。すぐに怪我を治そう。完全治癒パーフェクトヒール!」
治癒魔法については、母さんが専門にやっているので僕は細かな治療はできない。それでも、出血を止めたり細胞を活性化させたりすることはそれなりにできる。
『おぉー、おぉー、すごいすごい。藍之助は治癒魔法のエキスパートでもあるんだね。これならそう時間も経たずに全部治るよ。うわー、ありがとう』
「礼を言われても、勝手に攻撃したのはこっちだからな……」
『それで、さっきの話なんだけど、しばらくしたらまたエビルゲートは開くのかな?』
「そのエビルゲートっていうのは異界の門のことか?」
僕が門を指さして尋ねるとフレデリカはうんうんと首を縦にふって肯定した。
それにしても随分とフレンドリーなドラゴンだな。
『君たちの世界では異界の門というんだね。これは、エビルゲート。邪悪なる門を意味する言葉で、ゲートの先は闇の世界の住人が棲息する世界だと言われていたんだ』
得意気に話すフレデリカだが、それはこの世界が闇の世界だと言っていることになる。そっくりそのまま言葉を返したいものだな。
『でも、藍之助たちを見ていると、この世界が闇の世界だとは思えない。言葉もちゃんと通じるし、とても美しい海が広がっている。やっぱり、自分の目で見てみないことにはわからないことってあるよね、うんうん』
「門はまたしばらくしたら開くはずだよ。今までの傾向からすると、日中は一時間も間を置かないで開くと思う」
『そうか、それなら次にゲートが開いたら私に精霊たちを説得させてもらえないかな。すぐにゲートへ送り返すからさ』
送り返せるのか? そんなことを考えていたら朱里姉さんがフレデリカに質問していた。
「ちょっと待って、フレデリカ。あの門ってこちらから向こうの世界へ行けるの?」
『えっ? 行けないの!?』
「少なくとも、異界の門を越えて行った人ってのは聞いたことがないわ。開いてもすぐに閉じちゃうし」
『ど、どうしよう。私、もう戻れないのかな……』
「戻れるかどうかはわからないが、門が開くみたいだぞ。フレデリカ、頼めるか?」
『あっ、うん。任せておいて』
門から出てきたのはイフリート二体。どう見ても好戦的な構えをしていたが、目の前にいる大きなドラゴンを見て少し焦った表情をしている。
『やぁやぁ、君たち。うん? 何だか雰囲気がいつもと違うような? あれ? 話ができない!?』
結果から言うと、全くもって話し合いにはならなかった。意を決したイフリートが無謀にもフレデリカに攻撃をしてきたのだ。
イフリートの攻撃程度ではダメージはほとんど入らないようだが、フレデリカはどうしたものかと困った表情をしていた。
結果的にはその大きな足でもって踏みつけて、苦しまないように一瞬で倒してみせた。エリーゼの消耗戦的な戦い方を見せたら悲しみそうだ。
『これは困ったなぁ。エビルゲートを超えると邪悪な性格に変わってしまうということなのか。つまり、ゲートの先が闇の世界なのではなく、ゲートを超えた者が邪悪な者になってしまうということか……』
門は再び閉まっており、フレデリカがその大きな爪を器用に使い開けようとしているが、もちろんビクともしない。
『あ、開かないよね。これ、どうしよう。本当に戻れないのかも……』
「次に門が開いた瞬間、イフリートの姿になって入ってみるってのはどうかな?」
『おぉー、ソレだよ。藍之助は賢いのだね。あとさ、しばらくゲートが開かないのなら、この世界のことを教えてもらえないかな』
どうやら穏やかな性格をしているドラゴンなので、戻れない場合はうちの島で過ごしてもらっても構わないけど、フレデリカの大きさを考えるとちょっと狭すぎるか。
「もちろん構わないよ。どんなことが聞きたい?」
『話をするなら同じぐらいのサイズになった方がいいかな。よし、人間の姿に変身しよう』
そう言って、あっという間に人の姿に変わってしまったフレデリカは、とても美しい女性の姿になっていた。
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