32 / 49
32話 ファイア・ドレイク
しおりを挟む
全てのモンスターの最上位に位置するのがドラゴンである。ワイバーン等の劣種とは違い、あきらかに種族レベルは一段異なる。通常であれば、その強さゆえに弱者の相手などはしない。そもそも興味を持たない。
そのドラゴンが異界の門から現れた。正確にはイフリート十体が合体してその姿を具現したというのが正しい。
しかしながら、その姿を鑑定するとファイア・ドレイク火炎竜とでている。精霊とは別種の個体へと進化してしまっている。
朱里姉さんいわく、続けざまに十体出てきて攻撃の意思を持たずに、すぐに合体し始めたとのこと。最初からドラゴンになるつもりで出てきている。
「あ、藍之助、鑑定結果は?」
「本当にドラゴンだね。ファイア・ドレイク、これは間違いなく火炎竜だ」
「はぁ……で、強さは?」
「……星那、エリーゼを連れて戻ってくれ。父さんには念のため結界の強化をするよう伝えてもらいたい。朱里姉さんは僕と一緒にここで戦ってもらう」
「わかりました。エリーゼ、行きましょう」
「だ、だ、大丈夫ですか? ド、ドラゴンですよ!」
「私たちがここにいたらお兄さま達が全力で戦えないということです。早く行きますよ」
「わ、わかったです。ボス、お姉さん、ファイトです」
朱里姉さんの戦闘面での強さは、父さんに次いで三番目と思われる。思われるっていうのは、実際に戦ってないからわからないというだけで、魔力などを総合的に見ての判断にすぎない。
それでも、何かあったら頼るぐらいには朱里姉さんのことを信頼しているし、その判断力は御剣家随一といってもいい。
その朱里姉さんが戦いもせずに、僕をこの場に呼んだということからも、相当な危機感を持っていると思っていい。
「単純にイフリート十体分の強さという訳にはいかないよね」
「完全に別物でしょ。ていうか、これ、倒せるの?」
ファイア・ドレイクはこの場から立ち去っていく星那とエリーゼを一瞥するものの追いかけようとはしない。どうやら自分を前にして逃げ出そうとしない僕と朱里姉さんに興味を持っているのかもしれない。
その立ち居振る舞いは威風堂々、とても静かなものだ。ただ暴れるだけで知能の低いトカゲではないのだろう。
「倒さないと、一番近くにあるうちの島が危険なんだよね」
「あー、そうしたら魔導飛行機も壊されちゃうのかな……。それはちょっと困るわね。で、私はフォローに回ればいいのよね?」
「うん、それでお願い。おそらく、僕たちのことを舐めているであろう間に一気に終わらせたいかな」
ファイア・ドレイクがこちらを見る視線は、何で逃げないのか? といった不思議な感じなのだろう。
その大きさは高さ約二十メートル級、翼を広げた横幅は三十メートルを超えるかもしれない。普通に怪獣って奴だよね。
そのままの状態だったら門から出てこれないサイズだよね。だからこその合体なのか? 今はわからないけど、とりあえず先手必勝といかせてもらおうか。
「じゃあ、早速だけど僕は少し離れたところで召喚魔法の準備をしておくから、しばらく相手をしといてもらえる?」
「いきなり丸投げ!? 姉使いが荒すぎるわよ! ……でも、火炎竜に氷属性の召喚魔法コキュートスは効きめがありそうね……。しょうがない、やればいいんでしょ、やれば」
朱里姉さんはゆっくりドラゴンに近づきながら、魔力を隠しもせずに高めていく。その濃い濃度の魔力を見て、ドラゴンも顔をあげる。
「どうせ効かないんだろうけど、がっつり気合い入れていくわよ。氷演乱舞 ブリザード」
『えっ!? ちょっ、ちょっと……』
それはいつだったか、イフリート相手に僕も使った魔法。火属性のモンスターを相手とするなら、まずはこの魔法を選択することになる。
ブリザード、嵐をともなう氷の魔法だ。まともに食らえばイフリート程度なら一瞬で氷像となる。さらに竜巻を加えて凍った身体を粉々にするまでがこの魔法の完成形になるのだが、ファイア・ドレイクはあ然としながらもかわそうともせずに受けてみせる。
ん? あ然……?
いや、今はこのタイミングを逃さずに畳み掛けるのみ。
僕は一気に魔力を高めていく。相手は最強のドラゴンなのだ。全力をもって相手をしなければならない。中途半端な攻撃は時間稼ぎにもならないのだから。
「冥府より召喚せし嘆きの川よ、地獄より喚びし悪魔達よ、この者に永遠の苦しみを与えよ。凍りの牢獄! カイーナ、アンテノーラ、トロメア、ジュデッカ!」
『あっ、そ、それは、ちょっとヤバそうかな。あ、あの、ストップ! ちょっ、やめてぇぇ!』
何か聞こえたような気がしたけど、召喚魔法はすでに発動している。火属性のモンスターに対して僕が使えるなかでも最強の召喚魔法だ。
もしも、これで効果がなかったとしたら、捨て身の作戦に撃って出るしかなくなる。
凍りの牢獄に囲まれたファイア・ドレイクはその囲いをキョロキョロと落ち着かない表情で見ているが、第一の攻撃であるカイーナがさく裂すると、この世のものとは思えない叫び声を上げはじめた。
コキュートスは全部で四段階の攻撃を与える召喚魔法である。少なくとも今まで、アンテノーラに移行したことはないので、すでに三段階目であるトロメアに移行している時点でファイア・ドレイクの強さがとんでもないものであることがわかる。
ちなみに、僕の魔力は一気に半分以下にまで低下してしまったが、朱里姉さんからお茶を渡されて少しだけ回復をしているところだ。
これでもしもファイア・ドレイクがコキュートスを耐えきってしまった場合、再度追加のコキュートスを撃つことが出来る。
しかしながら、そうなると僕の魔力は完全に空っぽになってしまうので、朱里姉さんに島まで運んでもらって、結界による防衛で時間稼ぎをするしかなくなる。
そのドラゴンが異界の門から現れた。正確にはイフリート十体が合体してその姿を具現したというのが正しい。
しかしながら、その姿を鑑定するとファイア・ドレイク火炎竜とでている。精霊とは別種の個体へと進化してしまっている。
朱里姉さんいわく、続けざまに十体出てきて攻撃の意思を持たずに、すぐに合体し始めたとのこと。最初からドラゴンになるつもりで出てきている。
「あ、藍之助、鑑定結果は?」
「本当にドラゴンだね。ファイア・ドレイク、これは間違いなく火炎竜だ」
「はぁ……で、強さは?」
「……星那、エリーゼを連れて戻ってくれ。父さんには念のため結界の強化をするよう伝えてもらいたい。朱里姉さんは僕と一緒にここで戦ってもらう」
「わかりました。エリーゼ、行きましょう」
「だ、だ、大丈夫ですか? ド、ドラゴンですよ!」
「私たちがここにいたらお兄さま達が全力で戦えないということです。早く行きますよ」
「わ、わかったです。ボス、お姉さん、ファイトです」
朱里姉さんの戦闘面での強さは、父さんに次いで三番目と思われる。思われるっていうのは、実際に戦ってないからわからないというだけで、魔力などを総合的に見ての判断にすぎない。
それでも、何かあったら頼るぐらいには朱里姉さんのことを信頼しているし、その判断力は御剣家随一といってもいい。
その朱里姉さんが戦いもせずに、僕をこの場に呼んだということからも、相当な危機感を持っていると思っていい。
「単純にイフリート十体分の強さという訳にはいかないよね」
「完全に別物でしょ。ていうか、これ、倒せるの?」
ファイア・ドレイクはこの場から立ち去っていく星那とエリーゼを一瞥するものの追いかけようとはしない。どうやら自分を前にして逃げ出そうとしない僕と朱里姉さんに興味を持っているのかもしれない。
その立ち居振る舞いは威風堂々、とても静かなものだ。ただ暴れるだけで知能の低いトカゲではないのだろう。
「倒さないと、一番近くにあるうちの島が危険なんだよね」
「あー、そうしたら魔導飛行機も壊されちゃうのかな……。それはちょっと困るわね。で、私はフォローに回ればいいのよね?」
「うん、それでお願い。おそらく、僕たちのことを舐めているであろう間に一気に終わらせたいかな」
ファイア・ドレイクがこちらを見る視線は、何で逃げないのか? といった不思議な感じなのだろう。
その大きさは高さ約二十メートル級、翼を広げた横幅は三十メートルを超えるかもしれない。普通に怪獣って奴だよね。
そのままの状態だったら門から出てこれないサイズだよね。だからこその合体なのか? 今はわからないけど、とりあえず先手必勝といかせてもらおうか。
「じゃあ、早速だけど僕は少し離れたところで召喚魔法の準備をしておくから、しばらく相手をしといてもらえる?」
「いきなり丸投げ!? 姉使いが荒すぎるわよ! ……でも、火炎竜に氷属性の召喚魔法コキュートスは効きめがありそうね……。しょうがない、やればいいんでしょ、やれば」
朱里姉さんはゆっくりドラゴンに近づきながら、魔力を隠しもせずに高めていく。その濃い濃度の魔力を見て、ドラゴンも顔をあげる。
「どうせ効かないんだろうけど、がっつり気合い入れていくわよ。氷演乱舞 ブリザード」
『えっ!? ちょっ、ちょっと……』
それはいつだったか、イフリート相手に僕も使った魔法。火属性のモンスターを相手とするなら、まずはこの魔法を選択することになる。
ブリザード、嵐をともなう氷の魔法だ。まともに食らえばイフリート程度なら一瞬で氷像となる。さらに竜巻を加えて凍った身体を粉々にするまでがこの魔法の完成形になるのだが、ファイア・ドレイクはあ然としながらもかわそうともせずに受けてみせる。
ん? あ然……?
いや、今はこのタイミングを逃さずに畳み掛けるのみ。
僕は一気に魔力を高めていく。相手は最強のドラゴンなのだ。全力をもって相手をしなければならない。中途半端な攻撃は時間稼ぎにもならないのだから。
「冥府より召喚せし嘆きの川よ、地獄より喚びし悪魔達よ、この者に永遠の苦しみを与えよ。凍りの牢獄! カイーナ、アンテノーラ、トロメア、ジュデッカ!」
『あっ、そ、それは、ちょっとヤバそうかな。あ、あの、ストップ! ちょっ、やめてぇぇ!』
何か聞こえたような気がしたけど、召喚魔法はすでに発動している。火属性のモンスターに対して僕が使えるなかでも最強の召喚魔法だ。
もしも、これで効果がなかったとしたら、捨て身の作戦に撃って出るしかなくなる。
凍りの牢獄に囲まれたファイア・ドレイクはその囲いをキョロキョロと落ち着かない表情で見ているが、第一の攻撃であるカイーナがさく裂すると、この世のものとは思えない叫び声を上げはじめた。
コキュートスは全部で四段階の攻撃を与える召喚魔法である。少なくとも今まで、アンテノーラに移行したことはないので、すでに三段階目であるトロメアに移行している時点でファイア・ドレイクの強さがとんでもないものであることがわかる。
ちなみに、僕の魔力は一気に半分以下にまで低下してしまったが、朱里姉さんからお茶を渡されて少しだけ回復をしているところだ。
これでもしもファイア・ドレイクがコキュートスを耐えきってしまった場合、再度追加のコキュートスを撃つことが出来る。
しかしながら、そうなると僕の魔力は完全に空っぽになってしまうので、朱里姉さんに島まで運んでもらって、結界による防衛で時間稼ぎをするしかなくなる。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


勇者の育成係に任命されました
茜カナコ
ファンタジー
結城司は車道に飛び出した女子高生を救おうと、車の前に飛び出した。
すると光に包まれて、知らない場所で目を覚ます。
そこは宮殿で、美しい少女が薄いヴェールだけを見に纏い立っていた。
少女はミクルと名乗った。
勇者候補生で、召喚魔法を唱えたと言った。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。

孤独の魔女と独りの少女
徒然ナルモ
ファンタジー
遥かな昔、凡ゆる魔術 凡ゆる法を極め抜き 老いや衰退すらも超克した最強の存在 魔女達の力で、大いなる厄災は払われ 世界は平穏を取り戻してより 、八千年 …避けられぬと思われていた滅びから世界を救った英雄 又は神として、世界は永遠を生きる七人の魔女達によって統治 管理 信仰され続けていた…
そんな中 救った世界を統治せず、行方をくらませた 幻の八人目の魔女が、深い森の中で 一人の少女を弟子にとったと言う
神話を生きる伝説と 今を生きる少女の行く末は、八千年前の滅びの再演か 新たな伝説の幕開けか、そんなものは 育ててみないと分からない
【小説家になろうとカクヨムにも同時に連載しております】

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる