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32話 ファイア・ドレイク
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全てのモンスターの最上位に位置するのがドラゴンである。ワイバーン等の劣種とは違い、あきらかに種族レベルは一段異なる。通常であれば、その強さゆえに弱者の相手などはしない。そもそも興味を持たない。
そのドラゴンが異界の門から現れた。正確にはイフリート十体が合体してその姿を具現したというのが正しい。
しかしながら、その姿を鑑定するとファイア・ドレイク火炎竜とでている。精霊とは別種の個体へと進化してしまっている。
朱里姉さんいわく、続けざまに十体出てきて攻撃の意思を持たずに、すぐに合体し始めたとのこと。最初からドラゴンになるつもりで出てきている。
「あ、藍之助、鑑定結果は?」
「本当にドラゴンだね。ファイア・ドレイク、これは間違いなく火炎竜だ」
「はぁ……で、強さは?」
「……星那、エリーゼを連れて戻ってくれ。父さんには念のため結界の強化をするよう伝えてもらいたい。朱里姉さんは僕と一緒にここで戦ってもらう」
「わかりました。エリーゼ、行きましょう」
「だ、だ、大丈夫ですか? ド、ドラゴンですよ!」
「私たちがここにいたらお兄さま達が全力で戦えないということです。早く行きますよ」
「わ、わかったです。ボス、お姉さん、ファイトです」
朱里姉さんの戦闘面での強さは、父さんに次いで三番目と思われる。思われるっていうのは、実際に戦ってないからわからないというだけで、魔力などを総合的に見ての判断にすぎない。
それでも、何かあったら頼るぐらいには朱里姉さんのことを信頼しているし、その判断力は御剣家随一といってもいい。
その朱里姉さんが戦いもせずに、僕をこの場に呼んだということからも、相当な危機感を持っていると思っていい。
「単純にイフリート十体分の強さという訳にはいかないよね」
「完全に別物でしょ。ていうか、これ、倒せるの?」
ファイア・ドレイクはこの場から立ち去っていく星那とエリーゼを一瞥するものの追いかけようとはしない。どうやら自分を前にして逃げ出そうとしない僕と朱里姉さんに興味を持っているのかもしれない。
その立ち居振る舞いは威風堂々、とても静かなものだ。ただ暴れるだけで知能の低いトカゲではないのだろう。
「倒さないと、一番近くにあるうちの島が危険なんだよね」
「あー、そうしたら魔導飛行機も壊されちゃうのかな……。それはちょっと困るわね。で、私はフォローに回ればいいのよね?」
「うん、それでお願い。おそらく、僕たちのことを舐めているであろう間に一気に終わらせたいかな」
ファイア・ドレイクがこちらを見る視線は、何で逃げないのか? といった不思議な感じなのだろう。
その大きさは高さ約二十メートル級、翼を広げた横幅は三十メートルを超えるかもしれない。普通に怪獣って奴だよね。
そのままの状態だったら門から出てこれないサイズだよね。だからこその合体なのか? 今はわからないけど、とりあえず先手必勝といかせてもらおうか。
「じゃあ、早速だけど僕は少し離れたところで召喚魔法の準備をしておくから、しばらく相手をしといてもらえる?」
「いきなり丸投げ!? 姉使いが荒すぎるわよ! ……でも、火炎竜に氷属性の召喚魔法コキュートスは効きめがありそうね……。しょうがない、やればいいんでしょ、やれば」
朱里姉さんはゆっくりドラゴンに近づきながら、魔力を隠しもせずに高めていく。その濃い濃度の魔力を見て、ドラゴンも顔をあげる。
「どうせ効かないんだろうけど、がっつり気合い入れていくわよ。氷演乱舞 ブリザード」
『えっ!? ちょっ、ちょっと……』
それはいつだったか、イフリート相手に僕も使った魔法。火属性のモンスターを相手とするなら、まずはこの魔法を選択することになる。
ブリザード、嵐をともなう氷の魔法だ。まともに食らえばイフリート程度なら一瞬で氷像となる。さらに竜巻を加えて凍った身体を粉々にするまでがこの魔法の完成形になるのだが、ファイア・ドレイクはあ然としながらもかわそうともせずに受けてみせる。
ん? あ然……?
いや、今はこのタイミングを逃さずに畳み掛けるのみ。
僕は一気に魔力を高めていく。相手は最強のドラゴンなのだ。全力をもって相手をしなければならない。中途半端な攻撃は時間稼ぎにもならないのだから。
「冥府より召喚せし嘆きの川よ、地獄より喚びし悪魔達よ、この者に永遠の苦しみを与えよ。凍りの牢獄! カイーナ、アンテノーラ、トロメア、ジュデッカ!」
『あっ、そ、それは、ちょっとヤバそうかな。あ、あの、ストップ! ちょっ、やめてぇぇ!』
何か聞こえたような気がしたけど、召喚魔法はすでに発動している。火属性のモンスターに対して僕が使えるなかでも最強の召喚魔法だ。
もしも、これで効果がなかったとしたら、捨て身の作戦に撃って出るしかなくなる。
凍りの牢獄に囲まれたファイア・ドレイクはその囲いをキョロキョロと落ち着かない表情で見ているが、第一の攻撃であるカイーナがさく裂すると、この世のものとは思えない叫び声を上げはじめた。
コキュートスは全部で四段階の攻撃を与える召喚魔法である。少なくとも今まで、アンテノーラに移行したことはないので、すでに三段階目であるトロメアに移行している時点でファイア・ドレイクの強さがとんでもないものであることがわかる。
ちなみに、僕の魔力は一気に半分以下にまで低下してしまったが、朱里姉さんからお茶を渡されて少しだけ回復をしているところだ。
これでもしもファイア・ドレイクがコキュートスを耐えきってしまった場合、再度追加のコキュートスを撃つことが出来る。
しかしながら、そうなると僕の魔力は完全に空っぽになってしまうので、朱里姉さんに島まで運んでもらって、結界による防衛で時間稼ぎをするしかなくなる。
そのドラゴンが異界の門から現れた。正確にはイフリート十体が合体してその姿を具現したというのが正しい。
しかしながら、その姿を鑑定するとファイア・ドレイク火炎竜とでている。精霊とは別種の個体へと進化してしまっている。
朱里姉さんいわく、続けざまに十体出てきて攻撃の意思を持たずに、すぐに合体し始めたとのこと。最初からドラゴンになるつもりで出てきている。
「あ、藍之助、鑑定結果は?」
「本当にドラゴンだね。ファイア・ドレイク、これは間違いなく火炎竜だ」
「はぁ……で、強さは?」
「……星那、エリーゼを連れて戻ってくれ。父さんには念のため結界の強化をするよう伝えてもらいたい。朱里姉さんは僕と一緒にここで戦ってもらう」
「わかりました。エリーゼ、行きましょう」
「だ、だ、大丈夫ですか? ド、ドラゴンですよ!」
「私たちがここにいたらお兄さま達が全力で戦えないということです。早く行きますよ」
「わ、わかったです。ボス、お姉さん、ファイトです」
朱里姉さんの戦闘面での強さは、父さんに次いで三番目と思われる。思われるっていうのは、実際に戦ってないからわからないというだけで、魔力などを総合的に見ての判断にすぎない。
それでも、何かあったら頼るぐらいには朱里姉さんのことを信頼しているし、その判断力は御剣家随一といってもいい。
その朱里姉さんが戦いもせずに、僕をこの場に呼んだということからも、相当な危機感を持っていると思っていい。
「単純にイフリート十体分の強さという訳にはいかないよね」
「完全に別物でしょ。ていうか、これ、倒せるの?」
ファイア・ドレイクはこの場から立ち去っていく星那とエリーゼを一瞥するものの追いかけようとはしない。どうやら自分を前にして逃げ出そうとしない僕と朱里姉さんに興味を持っているのかもしれない。
その立ち居振る舞いは威風堂々、とても静かなものだ。ただ暴れるだけで知能の低いトカゲではないのだろう。
「倒さないと、一番近くにあるうちの島が危険なんだよね」
「あー、そうしたら魔導飛行機も壊されちゃうのかな……。それはちょっと困るわね。で、私はフォローに回ればいいのよね?」
「うん、それでお願い。おそらく、僕たちのことを舐めているであろう間に一気に終わらせたいかな」
ファイア・ドレイクがこちらを見る視線は、何で逃げないのか? といった不思議な感じなのだろう。
その大きさは高さ約二十メートル級、翼を広げた横幅は三十メートルを超えるかもしれない。普通に怪獣って奴だよね。
そのままの状態だったら門から出てこれないサイズだよね。だからこその合体なのか? 今はわからないけど、とりあえず先手必勝といかせてもらおうか。
「じゃあ、早速だけど僕は少し離れたところで召喚魔法の準備をしておくから、しばらく相手をしといてもらえる?」
「いきなり丸投げ!? 姉使いが荒すぎるわよ! ……でも、火炎竜に氷属性の召喚魔法コキュートスは効きめがありそうね……。しょうがない、やればいいんでしょ、やれば」
朱里姉さんはゆっくりドラゴンに近づきながら、魔力を隠しもせずに高めていく。その濃い濃度の魔力を見て、ドラゴンも顔をあげる。
「どうせ効かないんだろうけど、がっつり気合い入れていくわよ。氷演乱舞 ブリザード」
『えっ!? ちょっ、ちょっと……』
それはいつだったか、イフリート相手に僕も使った魔法。火属性のモンスターを相手とするなら、まずはこの魔法を選択することになる。
ブリザード、嵐をともなう氷の魔法だ。まともに食らえばイフリート程度なら一瞬で氷像となる。さらに竜巻を加えて凍った身体を粉々にするまでがこの魔法の完成形になるのだが、ファイア・ドレイクはあ然としながらもかわそうともせずに受けてみせる。
ん? あ然……?
いや、今はこのタイミングを逃さずに畳み掛けるのみ。
僕は一気に魔力を高めていく。相手は最強のドラゴンなのだ。全力をもって相手をしなければならない。中途半端な攻撃は時間稼ぎにもならないのだから。
「冥府より召喚せし嘆きの川よ、地獄より喚びし悪魔達よ、この者に永遠の苦しみを与えよ。凍りの牢獄! カイーナ、アンテノーラ、トロメア、ジュデッカ!」
『あっ、そ、それは、ちょっとヤバそうかな。あ、あの、ストップ! ちょっ、やめてぇぇ!』
何か聞こえたような気がしたけど、召喚魔法はすでに発動している。火属性のモンスターに対して僕が使えるなかでも最強の召喚魔法だ。
もしも、これで効果がなかったとしたら、捨て身の作戦に撃って出るしかなくなる。
凍りの牢獄に囲まれたファイア・ドレイクはその囲いをキョロキョロと落ち着かない表情で見ているが、第一の攻撃であるカイーナがさく裂すると、この世のものとは思えない叫び声を上げはじめた。
コキュートスは全部で四段階の攻撃を与える召喚魔法である。少なくとも今まで、アンテノーラに移行したことはないので、すでに三段階目であるトロメアに移行している時点でファイア・ドレイクの強さがとんでもないものであることがわかる。
ちなみに、僕の魔力は一気に半分以下にまで低下してしまったが、朱里姉さんからお茶を渡されて少しだけ回復をしているところだ。
これでもしもファイア・ドレイクがコキュートスを耐えきってしまった場合、再度追加のコキュートスを撃つことが出来る。
しかしながら、そうなると僕の魔力は完全に空っぽになってしまうので、朱里姉さんに島まで運んでもらって、結界による防衛で時間稼ぎをするしかなくなる。
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