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25話 閣議1
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その日の夜に、内閣からの呼び出しがあった。間違いなく、異界の門のことと、御剣家との交渉結果についてだろう。
一応、上司である巴村大臣には報告済みではある。何年もの間、話し合いの場すら得られなかった御剣家との関係が少しだけ動いた。それだけでも今回の一件は収穫だと思える。
そして、私たちが思っている以上に御剣家の魔法使いは強い。
「魔法省政策参与月野です」
「あー、待っていましたよ。入りなさい」
会議室で待ち受けていたのは内閣官房長官の西條さんだった。黒川総理を支えるブレーンであり、派閥での立ち回りも上手く次期総理の呼び声も高い方だ。
「すみません、遅れましたでしょうか?」
部屋に入るとすでに主だった大臣が席についており、会議の途中といった雰囲気を感じさせていた。
資料を捲る音と、説明する官僚の声が聞こえている。
「いえ、時間前ですよ。少し問題が発生していましたので、先にその説明を各大臣にしておりました。月野さんには前情報なく御剣家との会談で感じたことを話してもらいたいと思いましてね」
問題が発生か。ここのところ政府内でも独断による行動が多く、信頼に欠けるところがある。魔法省内でも敵と味方が入り混じっているような状況なのだから、他も似たり寄ったりなのでしょう。
「みなさん、月野さんが参られましたので一度情報共有をさせて頂きますね。御剣島周辺海域における異界の門発生について、魔法省におきまして独断で魔法少女を派遣し、門を開かせたとの報告が入りました。巴村さん、これはあなたの指示であると報告が上がっておりますがいかがですかな?」
「知らん。事務次官の暴走であろう。まあ、二つ目の異界の門を開かせたいという気持ちは私も常に話していた通りであるからして、私の意を汲んで勝手に動いた可能性はあるかもしれんがな」
「あなたの指示であるというのは、その事務次官榊原氏からの報告なのですが」
「奴が仕事のできる人間だったことは私も知っているが、彼の暴走を知っていち早く特別警察を向かわせたのはこの私だ。わざわざ仲間を見殺しにするようなことはしませんよ」
「この狸め……」
「何かおっしゃいましたか? 西條さん」
「ええ、それから魔導哨戒機が出動しておりますがこれは魔法省は把握されておりますか?」
「知らん。それも事務次官が勝手にやったことだろう」
「それは私も初耳です。出動の目的は何でしょうか?」
「巴村さんも月野さんも知らないということですね。目的は御剣島沖に派遣した魔法少女三名がロストしたため、その調査に向かったということになっています。この指示は榊原元事務次官です」
「奴の犯行なのだからそうだろうよ。それで、それがどうしたというのだ」
「その魔導哨戒機以下パイロットが行方不明なのです。月野さんは何かご存じではありませんか? 例えば、御剣家で救命活動をしていたとか」
「い、いえ、そのような話はなかったです。行方不明になった時間を教えてください。御剣家に聞いてみましょう」
「ほぅ、月野さんは御剣家と連絡がとれるのですか?」
「魔法を媒介にして話し合いができる環境が整いました。今後も御剣家とは異界の門の管理やドロップアイテムについて情報共有する必要がありますので」
「それはよかった。電波が通じないので、この時代に手紙でやり取りするというのもね……。では、哨戒機とパイロットのことを頼めますか?」
「は、はい、お任せください」
「そんなことより、門の管理について話をしたい。なぜ、御剣家と共同で管理する必要があるのかね? それではアイテムの取り分が減ってしまうのではないか?」
「それについては、国防総省としても疑問ですね。せっかく開いた異界の門なのですから、政府主導で管理するべきです。御剣島もこの国の一部なのですから」
「そのことについては、月野さんに使者として話をしてもらっております。そもそも、こちらから一方的に相互不可侵条約を破っておりますし、さすがに難しいのではないかと。ねぇ月野さん」
「西條さんのおっしゃるとおりです。こちらから一方的に条約を破棄しており、さらに魔法少女三名の捕虜交換が条件だったのです。共同管理という名目がとれただけでも御の字ではないかと」
その言葉にすぐ反応したのは巴村大臣だった。他にも不服そうな顔は何名かいる。こういうのはちゃんと覚えておいた方がいいだろう。
「これだから、女に交渉などさせるべきではなかったのだよ。こんな交渉はやり直しだ! わしが仕切り直してやろう」
そもそも私たちであの異界の門の管理はできない。彼らがいるから任せられるのであって、こちらが主導して管理することなどありえない。
もしも場所が違ければ、国が滅びていた可能性すらあるのだから。
一応、上司である巴村大臣には報告済みではある。何年もの間、話し合いの場すら得られなかった御剣家との関係が少しだけ動いた。それだけでも今回の一件は収穫だと思える。
そして、私たちが思っている以上に御剣家の魔法使いは強い。
「魔法省政策参与月野です」
「あー、待っていましたよ。入りなさい」
会議室で待ち受けていたのは内閣官房長官の西條さんだった。黒川総理を支えるブレーンであり、派閥での立ち回りも上手く次期総理の呼び声も高い方だ。
「すみません、遅れましたでしょうか?」
部屋に入るとすでに主だった大臣が席についており、会議の途中といった雰囲気を感じさせていた。
資料を捲る音と、説明する官僚の声が聞こえている。
「いえ、時間前ですよ。少し問題が発生していましたので、先にその説明を各大臣にしておりました。月野さんには前情報なく御剣家との会談で感じたことを話してもらいたいと思いましてね」
問題が発生か。ここのところ政府内でも独断による行動が多く、信頼に欠けるところがある。魔法省内でも敵と味方が入り混じっているような状況なのだから、他も似たり寄ったりなのでしょう。
「みなさん、月野さんが参られましたので一度情報共有をさせて頂きますね。御剣島周辺海域における異界の門発生について、魔法省におきまして独断で魔法少女を派遣し、門を開かせたとの報告が入りました。巴村さん、これはあなたの指示であると報告が上がっておりますがいかがですかな?」
「知らん。事務次官の暴走であろう。まあ、二つ目の異界の門を開かせたいという気持ちは私も常に話していた通りであるからして、私の意を汲んで勝手に動いた可能性はあるかもしれんがな」
「あなたの指示であるというのは、その事務次官榊原氏からの報告なのですが」
「奴が仕事のできる人間だったことは私も知っているが、彼の暴走を知っていち早く特別警察を向かわせたのはこの私だ。わざわざ仲間を見殺しにするようなことはしませんよ」
「この狸め……」
「何かおっしゃいましたか? 西條さん」
「ええ、それから魔導哨戒機が出動しておりますがこれは魔法省は把握されておりますか?」
「知らん。それも事務次官が勝手にやったことだろう」
「それは私も初耳です。出動の目的は何でしょうか?」
「巴村さんも月野さんも知らないということですね。目的は御剣島沖に派遣した魔法少女三名がロストしたため、その調査に向かったということになっています。この指示は榊原元事務次官です」
「奴の犯行なのだからそうだろうよ。それで、それがどうしたというのだ」
「その魔導哨戒機以下パイロットが行方不明なのです。月野さんは何かご存じではありませんか? 例えば、御剣家で救命活動をしていたとか」
「い、いえ、そのような話はなかったです。行方不明になった時間を教えてください。御剣家に聞いてみましょう」
「ほぅ、月野さんは御剣家と連絡がとれるのですか?」
「魔法を媒介にして話し合いができる環境が整いました。今後も御剣家とは異界の門の管理やドロップアイテムについて情報共有する必要がありますので」
「それはよかった。電波が通じないので、この時代に手紙でやり取りするというのもね……。では、哨戒機とパイロットのことを頼めますか?」
「は、はい、お任せください」
「そんなことより、門の管理について話をしたい。なぜ、御剣家と共同で管理する必要があるのかね? それではアイテムの取り分が減ってしまうのではないか?」
「それについては、国防総省としても疑問ですね。せっかく開いた異界の門なのですから、政府主導で管理するべきです。御剣島もこの国の一部なのですから」
「そのことについては、月野さんに使者として話をしてもらっております。そもそも、こちらから一方的に相互不可侵条約を破っておりますし、さすがに難しいのではないかと。ねぇ月野さん」
「西條さんのおっしゃるとおりです。こちらから一方的に条約を破棄しており、さらに魔法少女三名の捕虜交換が条件だったのです。共同管理という名目がとれただけでも御の字ではないかと」
その言葉にすぐ反応したのは巴村大臣だった。他にも不服そうな顔は何名かいる。こういうのはちゃんと覚えておいた方がいいだろう。
「これだから、女に交渉などさせるべきではなかったのだよ。こんな交渉はやり直しだ! わしが仕切り直してやろう」
そもそも私たちであの異界の門の管理はできない。彼らがいるから任せられるのであって、こちらが主導して管理することなどありえない。
もしも場所が違ければ、国が滅びていた可能性すらあるのだから。
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