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24話 イフリートチャレンジ
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あれから少しして月野さん以下、三名の魔法少女たちは本土へと戻っていった。一応、確認ということで、サラマンダーとイフリートを更に数体倒してからだったが、やはりイフリートを倒すのにはそれなりの魔力消費があるらしく、後半は魔女といえど苦戦をしているように見えた。
信号機トリオもイフリートにチャレンジしたのだが、三対一にも関わらず惜しくも倒しきれなかった。
攻撃をもらうまえに星那が助太刀に入り、あっさり倒したことで事なきを得たのだが、これによりこの門のレベルと、御剣家の力についてもハッキリとしたと思われる。
この門を管理するには月野さんでもおそらく半日しか持たない。Aランクの魔法少女が何人いるのか知らないが、相当な数をこちらに割かなければ難しいはず。「あの子も魔法を扱えたのね……また、時間を作って来るわ」と表面上は軽く言っていたが、今後も御剣家の強さの秘密、ドロップアイテムの効果、あとエリーゼの成長あたりを確認したいのだろう。
朔丸もしばらくは本土滞在になるので、島の女子が悲しむことになるだろう。僕よりも朔丸の方が女子人気が高い。あの優しく涼し気な目にやられてしまうのだろう。また、本家の人間ではないところも人気の一つだろうとは思っている。特に厳しいことはないと思うのだけど、本家に嫁ぐとなるとそれなりに周りの目も気になるのだろうな。
「お兄さまは、このままここに残られるのですか?」
「そうだな。話し合いは終わったし、しばらくはこの門の担当ということになるだろう」
「それでは、私も夕飯を準備する時間まではこちらでご一緒いたします」
「大丈夫なのか?」
「はい、話はしてありますので問題ございません」
「さあ、今のエリーゼちゃんならイフリートもいけちゃう気がするですよ。星那、お手伝いはいらないですよ。一人でやってやるです!」
強気な言葉とは裏腹にその目はヤバかったら助けてねと言っているように見えなくもない。
情緒不安定な魔法少女だ。
午前中にイフリートをあっさり倒していく星那の強さをみてきたからこそ、頼りにしているところもあるのだろう。
あとは、一応年上だから一人でもやれるところをみせたいのかもしれない。
「ま、まだ、イフリートは無理だと思うのですけど……」
そう言いながら、僕の方を見てくる星那。サラマンダーにあれだけ苦戦しているのだから厳しいだろうとは思う。とはいえ、本人の気持ちは優先してあげたい。
強い敵に立ち向かう気持ちというのは大事なことだ。戦うことで学ぶことも多いし、防御やダメージを与えられることも一つの勉強になる。
「とりあえずやらせてみたらいいんじゃないか? 厳しいようなら手助けすればいい」
火属性耐性はあるのだから大怪我することもないだろう。時間は掛かるかもしれないが、倒せる可能性もなくはない。限りなくゼロに近いとは思うけど……。
「さあ星那、早く薬をよこすです」
自ら薬漬けになっていく魔法少女エリーゼ。しかしながら、力の秘薬をなしにはイフリートはおろかサラマンダーですら倒すことはできないのだからしょうがない。
今後、魔法の種が定期的に入ってくるようになれば、魔力の回復ができるようになる。第二段階としてエリーゼにも魔法の使い方を教えてもいいかもしれない。
光属性が得意と言っていたが、可能であれば水や氷属性の魔法を習得した方がこの門の担当としては向いているだろう。
覚えられるかどうかはエリーゼ次第だが、僕の仕事が軽減するのだから、そこはじっくり教えていってもいい。
「で、出やがったですねっ! イフリート。今のエリーゼはお前を恐れたりしないんですよ。やってやるです!」
後ろ姿からはきっと武者震いと思われる体の揺れが止められていない。
何だろう、変身すると性格が強気になるようにでも設定されているのだろうか。あとで聞いてみたい。
「い、いくです!」
出てきたイフリートは一体。力の秘薬を飲み込んだエリーゼは、無理やりに震えを押さえ込み正面から突っ込んでいく。
スピードも力も相手の方が上であれば小細工をしても無駄になる。
効果があるとするならば、相手の想像を超える予想外の攻撃だろう。
そしてエリーゼのとった攻撃手段はまさかの相打ち。
「ぐべしっ……」
魔法少女らしからぬ、正面からのボディブローがお互いの腹にめり込んでいる。どうやらイフリートも強気な性格らしい。
お互いに笑みを浮かべながら右の拳を突き刺していた。
「お兄さま、あ、あの、どうしましょうか」
「火属性耐性がある分、悪くない攻撃だとは思う。普通に攻撃しようとしても避けられてしまうだろうし、エリーゼがイフリートにダメージを与えるにはあれしかないだろう」
エリーゼには、スーパープリティレインボーアタックという必殺技もあるが、イフリートに対してはほぼダメージが入らないだけで魔力の無駄づかいになってしまう。
ここはエリーゼの気持ちに応えるべく援護してやろう。
「星那、回復ポーションをエリーゼに」
「は、はい。かしこまりました」
回復手段を持っていないイフリートに対して、回復ポーションを使えるエリーゼ。これならば、魔法少女らしからぬ肉弾戦ではあるがエリーゼが勝てる可能性が出てきた。
「ふぐぉっ! ぐべしっ……」
左のショートアッパーがお互いの内臓を抉る。最初は笑みを浮かべながら付き合っていたイフリートも属性耐性により思うように攻撃の通らないエリーゼに対して、焦りの色を浮かべ始めている。
距離をとって魔法攻撃をしてもダメージがほとんど入らないし、その隙に回復ポーションを飲まれてしまう。一番攻撃が入るのは近距離からの肉弾戦。しかしながら、それは自分にもダメージが入ってしまう消耗戦。
イフリートは、完全に沼に放り込まれて抜け出せなくなっていた。
「ぶふぉあっ……」
「は、早く、ドロップアイテムになりやがれっ、です!」
対戦時間、おおよそ三十分。
イフリートが倒れたのに使用したアイテム、回復ポーションを三回、力の秘薬一回。
そして、倒したイフリートからのドロップアイテムは、力の秘薬一個だけだった……。
「マイナスだな星那……」
「そうですね、お兄さま」
「いや、しかし、これを回復魔法にしてエリーゼに倒させれば……」
「それならお兄さまが倒された方が早いのではないでしょうか」
「…………」
信号機トリオもイフリートにチャレンジしたのだが、三対一にも関わらず惜しくも倒しきれなかった。
攻撃をもらうまえに星那が助太刀に入り、あっさり倒したことで事なきを得たのだが、これによりこの門のレベルと、御剣家の力についてもハッキリとしたと思われる。
この門を管理するには月野さんでもおそらく半日しか持たない。Aランクの魔法少女が何人いるのか知らないが、相当な数をこちらに割かなければ難しいはず。「あの子も魔法を扱えたのね……また、時間を作って来るわ」と表面上は軽く言っていたが、今後も御剣家の強さの秘密、ドロップアイテムの効果、あとエリーゼの成長あたりを確認したいのだろう。
朔丸もしばらくは本土滞在になるので、島の女子が悲しむことになるだろう。僕よりも朔丸の方が女子人気が高い。あの優しく涼し気な目にやられてしまうのだろう。また、本家の人間ではないところも人気の一つだろうとは思っている。特に厳しいことはないと思うのだけど、本家に嫁ぐとなるとそれなりに周りの目も気になるのだろうな。
「お兄さまは、このままここに残られるのですか?」
「そうだな。話し合いは終わったし、しばらくはこの門の担当ということになるだろう」
「それでは、私も夕飯を準備する時間まではこちらでご一緒いたします」
「大丈夫なのか?」
「はい、話はしてありますので問題ございません」
「さあ、今のエリーゼちゃんならイフリートもいけちゃう気がするですよ。星那、お手伝いはいらないですよ。一人でやってやるです!」
強気な言葉とは裏腹にその目はヤバかったら助けてねと言っているように見えなくもない。
情緒不安定な魔法少女だ。
午前中にイフリートをあっさり倒していく星那の強さをみてきたからこそ、頼りにしているところもあるのだろう。
あとは、一応年上だから一人でもやれるところをみせたいのかもしれない。
「ま、まだ、イフリートは無理だと思うのですけど……」
そう言いながら、僕の方を見てくる星那。サラマンダーにあれだけ苦戦しているのだから厳しいだろうとは思う。とはいえ、本人の気持ちは優先してあげたい。
強い敵に立ち向かう気持ちというのは大事なことだ。戦うことで学ぶことも多いし、防御やダメージを与えられることも一つの勉強になる。
「とりあえずやらせてみたらいいんじゃないか? 厳しいようなら手助けすればいい」
火属性耐性はあるのだから大怪我することもないだろう。時間は掛かるかもしれないが、倒せる可能性もなくはない。限りなくゼロに近いとは思うけど……。
「さあ星那、早く薬をよこすです」
自ら薬漬けになっていく魔法少女エリーゼ。しかしながら、力の秘薬をなしにはイフリートはおろかサラマンダーですら倒すことはできないのだからしょうがない。
今後、魔法の種が定期的に入ってくるようになれば、魔力の回復ができるようになる。第二段階としてエリーゼにも魔法の使い方を教えてもいいかもしれない。
光属性が得意と言っていたが、可能であれば水や氷属性の魔法を習得した方がこの門の担当としては向いているだろう。
覚えられるかどうかはエリーゼ次第だが、僕の仕事が軽減するのだから、そこはじっくり教えていってもいい。
「で、出やがったですねっ! イフリート。今のエリーゼはお前を恐れたりしないんですよ。やってやるです!」
後ろ姿からはきっと武者震いと思われる体の揺れが止められていない。
何だろう、変身すると性格が強気になるようにでも設定されているのだろうか。あとで聞いてみたい。
「い、いくです!」
出てきたイフリートは一体。力の秘薬を飲み込んだエリーゼは、無理やりに震えを押さえ込み正面から突っ込んでいく。
スピードも力も相手の方が上であれば小細工をしても無駄になる。
効果があるとするならば、相手の想像を超える予想外の攻撃だろう。
そしてエリーゼのとった攻撃手段はまさかの相打ち。
「ぐべしっ……」
魔法少女らしからぬ、正面からのボディブローがお互いの腹にめり込んでいる。どうやらイフリートも強気な性格らしい。
お互いに笑みを浮かべながら右の拳を突き刺していた。
「お兄さま、あ、あの、どうしましょうか」
「火属性耐性がある分、悪くない攻撃だとは思う。普通に攻撃しようとしても避けられてしまうだろうし、エリーゼがイフリートにダメージを与えるにはあれしかないだろう」
エリーゼには、スーパープリティレインボーアタックという必殺技もあるが、イフリートに対してはほぼダメージが入らないだけで魔力の無駄づかいになってしまう。
ここはエリーゼの気持ちに応えるべく援護してやろう。
「星那、回復ポーションをエリーゼに」
「は、はい。かしこまりました」
回復手段を持っていないイフリートに対して、回復ポーションを使えるエリーゼ。これならば、魔法少女らしからぬ肉弾戦ではあるがエリーゼが勝てる可能性が出てきた。
「ふぐぉっ! ぐべしっ……」
左のショートアッパーがお互いの内臓を抉る。最初は笑みを浮かべながら付き合っていたイフリートも属性耐性により思うように攻撃の通らないエリーゼに対して、焦りの色を浮かべ始めている。
距離をとって魔法攻撃をしてもダメージがほとんど入らないし、その隙に回復ポーションを飲まれてしまう。一番攻撃が入るのは近距離からの肉弾戦。しかしながら、それは自分にもダメージが入ってしまう消耗戦。
イフリートは、完全に沼に放り込まれて抜け出せなくなっていた。
「ぶふぉあっ……」
「は、早く、ドロップアイテムになりやがれっ、です!」
対戦時間、おおよそ三十分。
イフリートが倒れたのに使用したアイテム、回復ポーションを三回、力の秘薬一回。
そして、倒したイフリートからのドロップアイテムは、力の秘薬一個だけだった……。
「マイナスだな星那……」
「そうですね、お兄さま」
「いや、しかし、これを回復魔法にしてエリーゼに倒させれば……」
「それならお兄さまが倒された方が早いのではないでしょうか」
「…………」
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