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20話 会談
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実は、御剣島に来るのはこれが二度目になる。一度目は当主、御剣冬獅郎様へのご挨拶ということで、政府団の一員として来た。
当時のことはよく覚えていて、不思議な魔力を感じさせる男性が複数いることに驚いたものだ。魔法少女以外に唯一魔法を操る古の一族、御剣家。
政府との関係は良好とはいえず、どこかピリピリとした雰囲気と厳かな雰囲気を肌で感じていた。
あれから十年、今回の訪問は謝罪がメインとなる。一部の人間の独断により異界の門を開かせてしまった。
可能であるならば、御剣家との関係を改善していきたい。門の管理についても、またドロップアイテムについても情報を聞きたい。
「月野様、こちらになります」
朔丸に案内されて入った部屋は、以前来た時と同じ場所で、その上座には御剣家当主、そして、もう一人の青年が座っていた。歳は朔丸と同じぐらいだろう。おそらく、彼が次期当主の藍之助。
「失礼いたします。魔法省政策参与、月野です。この度は、政府内の一部人間の暴走もあり、大変ご迷惑をおかけいたしました」
「政府のことはあまり信用しておりませんのでお気になさらずに。まずは、よくお越しくださいました。魔法少女シズクちゃんでしたかな? 藍之助、お前もご挨拶をしなさい」
久し振りに魔法少女名で呼ばれた気がするわけだが、何とも気恥しい。実名で活動していたのが何とも言えない懐かしい思い出だ。
「はい。御剣藍之助、冬獅郎の息子にございます」
「あなたとも会うのは二回目になるのかしら? あの時、話はしなかったと思うけど」
「そうですね。お久しぶりでございます」
「それで確認なのですが、門の管理にエリーゼだけで大丈夫なのでしょうか? 内海にある異界の門はAランクの魔法少女が交代で管理しております。エリーゼのランクは最低のFなので、そのあたりが不安ではあるのですが……」
門から出てくるモンスターの強さにもよるのだろうが、これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。
「それにつきましては、エリーゼさんと共同で藍之助も一緒に管理することにしております。他にも御剣家の者がフォローしますし、今のところ問題もなさそうですので大丈夫でしょう。一応、管理については御剣家主導で行わさせてもらいますよ」
条約を先に破っている以上、賠償金等の話にもなりかねないところだ。管理権を譲ることで、共同の形がとれるなら御の字といえよう。
また、Fランクで大丈夫ということは、やはりそこまで危険度が高くない異界の門が開いたということなのかもしれない……。
いや、Bランクの魔法少女が三名捕虜にされているのだ。御剣家の力がこちらの想像を超えていると考えるべきかしら。
「それで、結構でございます。早速ですが、門のことをお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「藍之助、答えられる範囲でお伝えしなさい」
「はい、どのようなことでしょう」
「門から出てくるモンスターとドロップアイテムについてです。お恥ずかしながら、ドロップアイテムについては魔法省でも気になっております」
「ごもっともでしょう。現在確認出来ているのは炎の精霊で、下級精霊のサラマンダーと上級精霊のイフリートです」
「に、二種もですか……。そ、それで、その強さとドロップアイテムは?」
「強さはそこまででもありません。サラマンダーはエリーゼでも(ギリギリ)倒せますし。直近では余裕(ドーピング)も出てきています。ドロップアイテムについては現在判明しているもので……」
アイテムの種類については、炎魂以外については正直に伝えることにした。実際、このアイテムについては僕も説明が出来ないので割愛させてもらう。
「エリーゼでも倒せるというのであれば安心です。炎の欠片と炎柱石については、初めて聞くアイテムです。これらのアイテムの効果については?」
「それはこちらでも確認中ですので、正確なところはまだわかっておりません。魔法の種とこの二つのドロップアイテムを一対二での交換をさせて頂けたらと思っております」
効果のわからないアイテムを、一対二で交換しなければならないのは残念ながらどうしようもない。こちらは魔法少女三名を捕虜にとられているのだから。
「ええ、その話は聞いております。それで問題ございません。魔法省の方でもアイテムの効能を詳しく調べるようにしましょう。それと魔法の種で、よかったのですか? 魔法接種薬の方が興味がおありなのではと思ったのですが……」
「いいえ、種の方でお願いします。御剣島で接種薬を使うつもりは、今のところありませんので」
御剣家の魔法の力は血縁によるところが大きいと聞く。つまり、本土のように魔法少女が誕生してしまっては、御剣家としての威厳に関わるということなのかもしれない。
「では、早速ですが魔法の種を百個お渡しいたしますね」
「お持ちになっておられたのですね。藍之助、こちらも準備を」
「はい、炎の欠片二十五個と炎柱石を二十五個でございます」
こちらが用意してしていたように御剣家でもドロップアイテムを準備していたらしい。今後はドロップ率や効能結果によって交換割合を調整出来ればよいのですが、しばらくは難しいでしょう。
「寛人、それでは三名の魔法少女を連れてきなさい」
「あ、あの、私も異界の門を見学させてもらってもよろしいでしょうか。可能であれば、サラマンダーやイフリートの強さを実際に感じてみたいのですが」
「それなら、全員で行けばいいでしょう。今は妹の星那とエリーゼで門から出てくるモンスターを討伐しているはずです」
「いいのかしら?」
「構いませんよ」
ドロップアイテムの効果についてはしばらく伏せさせてもらうが、モンスターの情報については早めに共有した方がお互いにとってもいいだろうし、別に隠すつもりもない。
というわけで、全員で異界の門へと向かうことになった。
当時のことはよく覚えていて、不思議な魔力を感じさせる男性が複数いることに驚いたものだ。魔法少女以外に唯一魔法を操る古の一族、御剣家。
政府との関係は良好とはいえず、どこかピリピリとした雰囲気と厳かな雰囲気を肌で感じていた。
あれから十年、今回の訪問は謝罪がメインとなる。一部の人間の独断により異界の門を開かせてしまった。
可能であるならば、御剣家との関係を改善していきたい。門の管理についても、またドロップアイテムについても情報を聞きたい。
「月野様、こちらになります」
朔丸に案内されて入った部屋は、以前来た時と同じ場所で、その上座には御剣家当主、そして、もう一人の青年が座っていた。歳は朔丸と同じぐらいだろう。おそらく、彼が次期当主の藍之助。
「失礼いたします。魔法省政策参与、月野です。この度は、政府内の一部人間の暴走もあり、大変ご迷惑をおかけいたしました」
「政府のことはあまり信用しておりませんのでお気になさらずに。まずは、よくお越しくださいました。魔法少女シズクちゃんでしたかな? 藍之助、お前もご挨拶をしなさい」
久し振りに魔法少女名で呼ばれた気がするわけだが、何とも気恥しい。実名で活動していたのが何とも言えない懐かしい思い出だ。
「はい。御剣藍之助、冬獅郎の息子にございます」
「あなたとも会うのは二回目になるのかしら? あの時、話はしなかったと思うけど」
「そうですね。お久しぶりでございます」
「それで確認なのですが、門の管理にエリーゼだけで大丈夫なのでしょうか? 内海にある異界の門はAランクの魔法少女が交代で管理しております。エリーゼのランクは最低のFなので、そのあたりが不安ではあるのですが……」
門から出てくるモンスターの強さにもよるのだろうが、これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。
「それにつきましては、エリーゼさんと共同で藍之助も一緒に管理することにしております。他にも御剣家の者がフォローしますし、今のところ問題もなさそうですので大丈夫でしょう。一応、管理については御剣家主導で行わさせてもらいますよ」
条約を先に破っている以上、賠償金等の話にもなりかねないところだ。管理権を譲ることで、共同の形がとれるなら御の字といえよう。
また、Fランクで大丈夫ということは、やはりそこまで危険度が高くない異界の門が開いたということなのかもしれない……。
いや、Bランクの魔法少女が三名捕虜にされているのだ。御剣家の力がこちらの想像を超えていると考えるべきかしら。
「それで、結構でございます。早速ですが、門のことをお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「藍之助、答えられる範囲でお伝えしなさい」
「はい、どのようなことでしょう」
「門から出てくるモンスターとドロップアイテムについてです。お恥ずかしながら、ドロップアイテムについては魔法省でも気になっております」
「ごもっともでしょう。現在確認出来ているのは炎の精霊で、下級精霊のサラマンダーと上級精霊のイフリートです」
「に、二種もですか……。そ、それで、その強さとドロップアイテムは?」
「強さはそこまででもありません。サラマンダーはエリーゼでも(ギリギリ)倒せますし。直近では余裕(ドーピング)も出てきています。ドロップアイテムについては現在判明しているもので……」
アイテムの種類については、炎魂以外については正直に伝えることにした。実際、このアイテムについては僕も説明が出来ないので割愛させてもらう。
「エリーゼでも倒せるというのであれば安心です。炎の欠片と炎柱石については、初めて聞くアイテムです。これらのアイテムの効果については?」
「それはこちらでも確認中ですので、正確なところはまだわかっておりません。魔法の種とこの二つのドロップアイテムを一対二での交換をさせて頂けたらと思っております」
効果のわからないアイテムを、一対二で交換しなければならないのは残念ながらどうしようもない。こちらは魔法少女三名を捕虜にとられているのだから。
「ええ、その話は聞いております。それで問題ございません。魔法省の方でもアイテムの効能を詳しく調べるようにしましょう。それと魔法の種で、よかったのですか? 魔法接種薬の方が興味がおありなのではと思ったのですが……」
「いいえ、種の方でお願いします。御剣島で接種薬を使うつもりは、今のところありませんので」
御剣家の魔法の力は血縁によるところが大きいと聞く。つまり、本土のように魔法少女が誕生してしまっては、御剣家としての威厳に関わるということなのかもしれない。
「では、早速ですが魔法の種を百個お渡しいたしますね」
「お持ちになっておられたのですね。藍之助、こちらも準備を」
「はい、炎の欠片二十五個と炎柱石を二十五個でございます」
こちらが用意してしていたように御剣家でもドロップアイテムを準備していたらしい。今後はドロップ率や効能結果によって交換割合を調整出来ればよいのですが、しばらくは難しいでしょう。
「寛人、それでは三名の魔法少女を連れてきなさい」
「あ、あの、私も異界の門を見学させてもらってもよろしいでしょうか。可能であれば、サラマンダーやイフリートの強さを実際に感じてみたいのですが」
「それなら、全員で行けばいいでしょう。今は妹の星那とエリーゼで門から出てくるモンスターを討伐しているはずです」
「いいのかしら?」
「構いませんよ」
ドロップアイテムの効果についてはしばらく伏せさせてもらうが、モンスターの情報については早めに共有した方がお互いにとってもいいだろうし、別に隠すつもりもない。
というわけで、全員で異界の門へと向かうことになった。
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