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19話 エリーゼの強化
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翌日も、朝に炎の欠片をエリーゼに飲ませ、体調が回復する昼頃に再び門に来てもらっている。
「星那のご飯はとても美味ですねー。この玉子焼は何個でも食べられそうですよ」
「エリーゼは、朝ご飯はドロップアイテムを飲むからあまり食べれないですものね」
「吐きそうになるから胃はなるべく空っぽにしておいた方が楽なのですよ。でも、強くなるためにはドーピング頑張るです」
「いい心掛けだな、絵梨花」
「絵梨花じゃないです! エリーゼですよ!」
実は、昨日の夜に寝る前に廊下で知らない地味子とすれ違ったのだが、どうやら変身する前のエリーゼだったのだ。エリーゼ的にも、変身前の姿をみせたことは、それなりに御剣家への信頼を感じてのことなのだろうとは思っている。
「私は絵梨花の姿も好きですよ」
「そうだな、島受けはよさそうだと思うな。子供たちは悲しむかもしれないが、普段は絵梨花でいればいいんじゃないか?」
「そ、そうですか。あ、藍之助が、そういうなら少し考えておくです」
エリーゼは島の女子人気が意外に高い。やはり、小さい子はみんな魔法少女に憧れがあるのだろう。エリーゼも満更でもないようで、手を振ったり新しい決めポーズを披露している。
それに比べ、絵梨花は黒髪のおさげ髪で黒縁の眼鏡を掛けている。何でも変身魔法により、身体能力の向上がアップし視力も回復してしまうらしく、魔法少女になると眼鏡がいらなくなるそうだ。エリーゼのピンク髪、ピンク衣装に慣れてしまっていたので、なかなかにギャップがある。
「今日は力の秘薬を飲んで戦ってもらおうと思ってる。それから、炎の欠片が百個集まることで『初級炎魔の書』へと変化した。早速だが、このアイテムを使ってみてくれ」
「それって、もしかしなくても魔法の書ですよね? ドロップアイテムが魔法の書に変化するなんて……。あ、あれっ? 今、エリーゼにそれをくれるって言ったですか?」
「あぁ、早く攻撃力をあげてくれ。レインボーなんちゃらだと倒すのに時間が掛かりすぎるからな」
「スーパープリティレインボーアタックですよ!」
「といっても、初級の魔法の書ではあまり攻撃力は期待できないかもしれないがな」
「お兄さま、中級の魔法書には変化しないのですか?」
「変化することはする。しかし、『初級炎魔の書』を百冊集めなければ『中級炎魔の書』にはならないらしい。さすがにその量を集めるとなると、しばらく時間がかかりそうだ」
それに、火属性の攻撃魔法が使用できてもサラマンダーやイフリート相手だと効果があるかと問われたらちょっと自信がない。
「ほらっ、これが『初級炎魔の書』だ。使ってみるといい。少しは強くなるはずだ」
「とうとうエリーゼもランクアップしてしまうのですね。心躍りますですよ!」
初級魔法ぐらいでランクアップするのか知らないけど、強くなってくれるならこちらとしても助かる。
アイテムは魔力を持っている者が手にとり、願うことで簡単に習得する。魔法の書が宙に浮かぶと輝きながらページが捲られていく。覚えられる魔法は一つだけ。エリーゼが覚えた火属性魔法は何なのだろう。せめて、攻撃魔法であることを祈ろう。
「新しい魔法、覚えたです……。火炎弾 ファイアボールです!」
「なるほど、ものすごく一般的で有名な魔法だな。サラマンダーに少しでも効くといいんだが、何よりも攻撃の手段が増えるのはいいことだろう」
「攻撃力が上がれば、エリーゼもいつかCランクになれるかもですよ」
Cランクで満足してもらっては困る。それではイフリートは倒せないし、そもそも信号機トリオにも勝てないだろう。まあ、エリーゼの調子に乗りすぎない性格は嫌いじゃない。今後もゆっくり育てていこうと思う。
「エリーゼ、火属性魔法もだが、今日のメインは力の秘薬だ。耐性はあるのだから、思い切ってプリズムパンチでも撃ってみればいいと思う」
「プリズムパンチはリリスさんの必殺技ですよ! 黙って使ったらイジメられちゃうかもしれないです」
全く、上下関係の激しい魔法少女社会だ。きっと必殺技の商標登録とかあって、様々なグッズなどの商売にも繋がっているに違いない。
「おっ、門が開くぞ。サラマンダーだったらエリーゼが倒せ」
「任せるです。私の右腕が獄炎で疼いてるですよ」
光属性の魔法少女のくせに、厨二病っぽい発言をするエリーゼ。心配しなくてもお前の獄炎はただのファイアボールだ。
そうして、門から現れたのは予定通りサラマンダー。その姿を確認するとエリーゼは力の秘薬を飲み込んだ。僕が試した時の効果時間は約十分程度だった。それぐらいの時間があればエリーゼでも倒せるのではないかと思っている。
先制攻撃はエリーゼから。
まだキョロキョロと様子を窺っていたサラマンダーに目くらましの一発を放つ。
「くらえ、火炎弾 ファイアボールです!」
どうやら覚えたての魔法をどうしても使いたかったと思われる。炎の精霊であるサラマンダーにダメージはなさそうだが、爆発の勢いで小さな体は飛ばされる。
その勢いのまま、ひっくり返っているサラマンダーの尻尾を掴むと、ぐるぐる振りまわして岩礁に叩きつける。火属性耐性は問題なく強化されているようで、素手でパンチを繰り返し放っている。
かなり一方的な戦闘になっているといっていい。サラマンダーもまさか自分の尻尾を掴まれるとは思っていなかっただろうし、何かに擬態する余裕もなく五分程度でドロップアイテムに変わってしまった。
「ふぅ、エリーゼ、もうEランクは堅そうですよ。確実にランクアップしてるに違いないです」
EでもFでもそう大差はない。ほとんど誤差といっていいだろう。どうせなら早くAランクになってもらいたいものだ。
「お兄さま、誰か来ます」
本土の方角から魔力反応が近づいてきているのがわかる。この反応は月野女史と朔丸だろう。
「ああ、魔法省の魔女だよ。朔丸も一緒にいるはずだ。信号機トリオの引渡しと話し合いに来ると父さんから聞いている」
「星那のご飯はとても美味ですねー。この玉子焼は何個でも食べられそうですよ」
「エリーゼは、朝ご飯はドロップアイテムを飲むからあまり食べれないですものね」
「吐きそうになるから胃はなるべく空っぽにしておいた方が楽なのですよ。でも、強くなるためにはドーピング頑張るです」
「いい心掛けだな、絵梨花」
「絵梨花じゃないです! エリーゼですよ!」
実は、昨日の夜に寝る前に廊下で知らない地味子とすれ違ったのだが、どうやら変身する前のエリーゼだったのだ。エリーゼ的にも、変身前の姿をみせたことは、それなりに御剣家への信頼を感じてのことなのだろうとは思っている。
「私は絵梨花の姿も好きですよ」
「そうだな、島受けはよさそうだと思うな。子供たちは悲しむかもしれないが、普段は絵梨花でいればいいんじゃないか?」
「そ、そうですか。あ、藍之助が、そういうなら少し考えておくです」
エリーゼは島の女子人気が意外に高い。やはり、小さい子はみんな魔法少女に憧れがあるのだろう。エリーゼも満更でもないようで、手を振ったり新しい決めポーズを披露している。
それに比べ、絵梨花は黒髪のおさげ髪で黒縁の眼鏡を掛けている。何でも変身魔法により、身体能力の向上がアップし視力も回復してしまうらしく、魔法少女になると眼鏡がいらなくなるそうだ。エリーゼのピンク髪、ピンク衣装に慣れてしまっていたので、なかなかにギャップがある。
「今日は力の秘薬を飲んで戦ってもらおうと思ってる。それから、炎の欠片が百個集まることで『初級炎魔の書』へと変化した。早速だが、このアイテムを使ってみてくれ」
「それって、もしかしなくても魔法の書ですよね? ドロップアイテムが魔法の書に変化するなんて……。あ、あれっ? 今、エリーゼにそれをくれるって言ったですか?」
「あぁ、早く攻撃力をあげてくれ。レインボーなんちゃらだと倒すのに時間が掛かりすぎるからな」
「スーパープリティレインボーアタックですよ!」
「といっても、初級の魔法の書ではあまり攻撃力は期待できないかもしれないがな」
「お兄さま、中級の魔法書には変化しないのですか?」
「変化することはする。しかし、『初級炎魔の書』を百冊集めなければ『中級炎魔の書』にはならないらしい。さすがにその量を集めるとなると、しばらく時間がかかりそうだ」
それに、火属性の攻撃魔法が使用できてもサラマンダーやイフリート相手だと効果があるかと問われたらちょっと自信がない。
「ほらっ、これが『初級炎魔の書』だ。使ってみるといい。少しは強くなるはずだ」
「とうとうエリーゼもランクアップしてしまうのですね。心躍りますですよ!」
初級魔法ぐらいでランクアップするのか知らないけど、強くなってくれるならこちらとしても助かる。
アイテムは魔力を持っている者が手にとり、願うことで簡単に習得する。魔法の書が宙に浮かぶと輝きながらページが捲られていく。覚えられる魔法は一つだけ。エリーゼが覚えた火属性魔法は何なのだろう。せめて、攻撃魔法であることを祈ろう。
「新しい魔法、覚えたです……。火炎弾 ファイアボールです!」
「なるほど、ものすごく一般的で有名な魔法だな。サラマンダーに少しでも効くといいんだが、何よりも攻撃の手段が増えるのはいいことだろう」
「攻撃力が上がれば、エリーゼもいつかCランクになれるかもですよ」
Cランクで満足してもらっては困る。それではイフリートは倒せないし、そもそも信号機トリオにも勝てないだろう。まあ、エリーゼの調子に乗りすぎない性格は嫌いじゃない。今後もゆっくり育てていこうと思う。
「エリーゼ、火属性魔法もだが、今日のメインは力の秘薬だ。耐性はあるのだから、思い切ってプリズムパンチでも撃ってみればいいと思う」
「プリズムパンチはリリスさんの必殺技ですよ! 黙って使ったらイジメられちゃうかもしれないです」
全く、上下関係の激しい魔法少女社会だ。きっと必殺技の商標登録とかあって、様々なグッズなどの商売にも繋がっているに違いない。
「おっ、門が開くぞ。サラマンダーだったらエリーゼが倒せ」
「任せるです。私の右腕が獄炎で疼いてるですよ」
光属性の魔法少女のくせに、厨二病っぽい発言をするエリーゼ。心配しなくてもお前の獄炎はただのファイアボールだ。
そうして、門から現れたのは予定通りサラマンダー。その姿を確認するとエリーゼは力の秘薬を飲み込んだ。僕が試した時の効果時間は約十分程度だった。それぐらいの時間があればエリーゼでも倒せるのではないかと思っている。
先制攻撃はエリーゼから。
まだキョロキョロと様子を窺っていたサラマンダーに目くらましの一発を放つ。
「くらえ、火炎弾 ファイアボールです!」
どうやら覚えたての魔法をどうしても使いたかったと思われる。炎の精霊であるサラマンダーにダメージはなさそうだが、爆発の勢いで小さな体は飛ばされる。
その勢いのまま、ひっくり返っているサラマンダーの尻尾を掴むと、ぐるぐる振りまわして岩礁に叩きつける。火属性耐性は問題なく強化されているようで、素手でパンチを繰り返し放っている。
かなり一方的な戦闘になっているといっていい。サラマンダーもまさか自分の尻尾を掴まれるとは思っていなかっただろうし、何かに擬態する余裕もなく五分程度でドロップアイテムに変わってしまった。
「ふぅ、エリーゼ、もうEランクは堅そうですよ。確実にランクアップしてるに違いないです」
EでもFでもそう大差はない。ほとんど誤差といっていいだろう。どうせなら早くAランクになってもらいたいものだ。
「お兄さま、誰か来ます」
本土の方角から魔力反応が近づいてきているのがわかる。この反応は月野女史と朔丸だろう。
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