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18話 エリーゼ対サラマンダー
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エリーゼが星那に連れられてやってきたのは昼を過ぎたあたりだった。どうやら朝に飲んだ二個目の炎の欠片は、そこまで身体に影響がなかったようだ。
「お兄さま、お昼ご飯をお持ちいたしました。みんなで食べましょう」
そういうと、レジャーシートを広げて、おにぎりにから揚げ、たこさんウインナー、大根の漬け物、それから冷たいお茶を用意し始めた。
「うぅー、朝ご飯あんまり食べられなかったからお腹すいてるです」
そういって早速、たこさんウインナーとおにぎりを手にとって食べようとしているエリーゼ。体調は問題ないようだ。
「エリーゼ、まだ本調子ではないのですから、よく噛んで召し上がってくださいね」
「はいです。でも、星那の作る料理は絶品なので、とても楽しみなのですよ」
「はいはい。お茶もこちらに置いておきますね。お兄さま、おにぎりは鮭でよろしかったですか?」
「ああ、ありがとう星那」
「あ、あの、藍之助。そこに落ちているのはドロップアイテムですか?」
「ああ、これは炎柱石といってイフリートを倒すともらえるドロップアイテムの一つだ」
「イフリート? この門は、サラマンダーが出てくるのではなかったですか?」
「そういえば、言ってなかったな。この門からは二種類の精霊が出てくる。下位精霊のサラマンダーと上位精霊のイフリートだ」
「サラマンダーが下位精霊ですか……」
「イフリートはエリーゼ十人分の強さだと思っておけばいい。戦ったら百パーセント死ぬから気をつけろよ」
「マ、マジですか……。ち、ちなみに、藍之助はエリーゼ何人分ぐらいなのかな?」
「比べるのも面倒なぐらい差があるな。とりあえず、昨日だけでサラマンダーとイフリートを各三十ぐらいは倒している。エリーゼ換算すると、三百三十エリーゼ分は倒したことになるか」
「はわわっ、エリーゼ換算ですか!? も、もういいです。私は弱いので、せめてサラマンダーを安全に倒せるぐらいにはなりたいです」
「星那、エリーゼの火属性耐性はどんな感じだ?」
「一つ目で火の熱さを感じないぐらいの耐性を得ておりました。今朝の分を考えると初級魔法程度であれば当たっても問題ないかと思います」
「星那、な、何てこと言うですか? そ、そんなこと言ったら試してみる的な流れになるですよ!」
「火炎放射」
「や、やっぱりですよ! あ、あれれっ、熱くない……」
エリーゼの背中目掛けて、弱めの火属性魔法を放ってみた。すると、エリーゼの身体を覆うように薄く魔力が広がり、炎を防いでいるようにもみえる。本人の意思とは関係なく防御してくれるのは、なかなかいいスキルのように思える。
たった二回の服用でここまで成長しているのは大きい。個人差はあるのだろうけど、元々エリーゼの持っていた光属性との相性がいいのかもしれない。
「これならば、サラマンダーと戦っても大丈夫かもしれないな」
「うぅー、人体実験が続いていくです」
「エリーゼ、頑張ってくださいね。応援してますよ」
「ちょうどいい、ほらっ、門が開くぞ」
異界の門からは、小さな足と長い舌を出しながら進むサラマンダーが出てきた。こちらを見ては興味なさげに横を向く。しかしながら、その目でこちらの様子を窺っているのは知っている。おそらく、視覚範囲が広いのだろう。
「ど、ど、どうすればいいですか?」
「普通に戦ってみればいいよ。耐性がある分、エリーゼの方が優位なはずだからさ。攻撃魔法はあるんだろ?」
「あるにはありますが……い、いいです。やりますですよ。や、やればいいのですよね」
どこか吹っ切れたような、また、諦めたような顔をしたエリーゼが、サラマンダーに向かって飛んでいく。
サラマンダーも敵と認識したのだろう。エリーゼを完全にロックオンしている。その姿をトカゲから鳥へと変えていく。
キュエー、キュエー!
先手はサラマンダーから。回転しながらアクロバティックにエリーゼに突進していく。
「光り輝く守護の力よ、攻撃から私を守るです! バブルボール」
対して、エリーゼは自分の前にバブルボールを出して防御に撤する。そんな使い方も出来るのかバブルボール。どのぐらいの防御力があるのかは不明だが、サラマンダーも警戒して無理に飛び込んではこない。お互いに力が拮抗しているのを理解しているのか、戦いはかなり慎重に運ばれていくようだ。
「時間が掛かりそうな戦いだな」
「エリーゼ、ファイトですよ」
「い、今です! スーパープリティレインボーアタック!」
ピンク色のステッキをくるくる回すと、虹色の光線が放射状に飛んでいき、サラマンダーにヒットする。これがエリーゼの必殺技なのだろう。
「こ、これは、あと九回は攻撃を当てないと倒れなそうだな。なんて攻撃力の低い必殺技なんだ……」
「エリーゼ、その攻撃をあと九回です」
「あ、あと九回もですか!? くっ、さすが、サラマンダー、た、戦いがいが、ありそうですよっ」
その後も、バブルボールを盾にしながらちょこちょこと攻撃を重ねていき、戦いから三十分が経過した頃、十回目の必殺技が決まったエリーゼは、最後の決めポーズを息が切れそうになりながら決めてみせた。
サラマンダーとの死闘では、何度か攻撃をもらっていたようだが、火属性耐性のおかげでほぼダメージなし、無傷での勝利となった。
「あ、藍之助、み、見ましたか! これが私の力です! それから、今ので魔力がほぼ無くなりましたので、今日はもう戦えそうにないですよ」
「お、おう」
「お疲れさまですエリーゼ。冷たいお茶を用意しておきましたよ」
嬉しそうに報告にくるエリーゼだが、門の管理を任せるためには、相当長い道のりになるなと覚悟を決めざるを得なかった。やはり、薬で早めに強化させよう。
ひと仕事終えたおっさんのように、冷たいお茶をすするエリーゼを見て、ため息が止まらない。
「お兄さま、お昼ご飯をお持ちいたしました。みんなで食べましょう」
そういうと、レジャーシートを広げて、おにぎりにから揚げ、たこさんウインナー、大根の漬け物、それから冷たいお茶を用意し始めた。
「うぅー、朝ご飯あんまり食べられなかったからお腹すいてるです」
そういって早速、たこさんウインナーとおにぎりを手にとって食べようとしているエリーゼ。体調は問題ないようだ。
「エリーゼ、まだ本調子ではないのですから、よく噛んで召し上がってくださいね」
「はいです。でも、星那の作る料理は絶品なので、とても楽しみなのですよ」
「はいはい。お茶もこちらに置いておきますね。お兄さま、おにぎりは鮭でよろしかったですか?」
「ああ、ありがとう星那」
「あ、あの、藍之助。そこに落ちているのはドロップアイテムですか?」
「ああ、これは炎柱石といってイフリートを倒すともらえるドロップアイテムの一つだ」
「イフリート? この門は、サラマンダーが出てくるのではなかったですか?」
「そういえば、言ってなかったな。この門からは二種類の精霊が出てくる。下位精霊のサラマンダーと上位精霊のイフリートだ」
「サラマンダーが下位精霊ですか……」
「イフリートはエリーゼ十人分の強さだと思っておけばいい。戦ったら百パーセント死ぬから気をつけろよ」
「マ、マジですか……。ち、ちなみに、藍之助はエリーゼ何人分ぐらいなのかな?」
「比べるのも面倒なぐらい差があるな。とりあえず、昨日だけでサラマンダーとイフリートを各三十ぐらいは倒している。エリーゼ換算すると、三百三十エリーゼ分は倒したことになるか」
「はわわっ、エリーゼ換算ですか!? も、もういいです。私は弱いので、せめてサラマンダーを安全に倒せるぐらいにはなりたいです」
「星那、エリーゼの火属性耐性はどんな感じだ?」
「一つ目で火の熱さを感じないぐらいの耐性を得ておりました。今朝の分を考えると初級魔法程度であれば当たっても問題ないかと思います」
「星那、な、何てこと言うですか? そ、そんなこと言ったら試してみる的な流れになるですよ!」
「火炎放射」
「や、やっぱりですよ! あ、あれれっ、熱くない……」
エリーゼの背中目掛けて、弱めの火属性魔法を放ってみた。すると、エリーゼの身体を覆うように薄く魔力が広がり、炎を防いでいるようにもみえる。本人の意思とは関係なく防御してくれるのは、なかなかいいスキルのように思える。
たった二回の服用でここまで成長しているのは大きい。個人差はあるのだろうけど、元々エリーゼの持っていた光属性との相性がいいのかもしれない。
「これならば、サラマンダーと戦っても大丈夫かもしれないな」
「うぅー、人体実験が続いていくです」
「エリーゼ、頑張ってくださいね。応援してますよ」
「ちょうどいい、ほらっ、門が開くぞ」
異界の門からは、小さな足と長い舌を出しながら進むサラマンダーが出てきた。こちらを見ては興味なさげに横を向く。しかしながら、その目でこちらの様子を窺っているのは知っている。おそらく、視覚範囲が広いのだろう。
「ど、ど、どうすればいいですか?」
「普通に戦ってみればいいよ。耐性がある分、エリーゼの方が優位なはずだからさ。攻撃魔法はあるんだろ?」
「あるにはありますが……い、いいです。やりますですよ。や、やればいいのですよね」
どこか吹っ切れたような、また、諦めたような顔をしたエリーゼが、サラマンダーに向かって飛んでいく。
サラマンダーも敵と認識したのだろう。エリーゼを完全にロックオンしている。その姿をトカゲから鳥へと変えていく。
キュエー、キュエー!
先手はサラマンダーから。回転しながらアクロバティックにエリーゼに突進していく。
「光り輝く守護の力よ、攻撃から私を守るです! バブルボール」
対して、エリーゼは自分の前にバブルボールを出して防御に撤する。そんな使い方も出来るのかバブルボール。どのぐらいの防御力があるのかは不明だが、サラマンダーも警戒して無理に飛び込んではこない。お互いに力が拮抗しているのを理解しているのか、戦いはかなり慎重に運ばれていくようだ。
「時間が掛かりそうな戦いだな」
「エリーゼ、ファイトですよ」
「い、今です! スーパープリティレインボーアタック!」
ピンク色のステッキをくるくる回すと、虹色の光線が放射状に飛んでいき、サラマンダーにヒットする。これがエリーゼの必殺技なのだろう。
「こ、これは、あと九回は攻撃を当てないと倒れなそうだな。なんて攻撃力の低い必殺技なんだ……」
「エリーゼ、その攻撃をあと九回です」
「あ、あと九回もですか!? くっ、さすが、サラマンダー、た、戦いがいが、ありそうですよっ」
その後も、バブルボールを盾にしながらちょこちょこと攻撃を重ねていき、戦いから三十分が経過した頃、十回目の必殺技が決まったエリーゼは、最後の決めポーズを息が切れそうになりながら決めてみせた。
サラマンダーとの死闘では、何度か攻撃をもらっていたようだが、火属性耐性のおかげでほぼダメージなし、無傷での勝利となった。
「あ、藍之助、み、見ましたか! これが私の力です! それから、今ので魔力がほぼ無くなりましたので、今日はもう戦えそうにないですよ」
「お、おう」
「お疲れさまですエリーゼ。冷たいお茶を用意しておきましたよ」
嬉しそうに報告にくるエリーゼだが、門の管理を任せるためには、相当長い道のりになるなと覚悟を決めざるを得なかった。やはり、薬で早めに強化させよう。
ひと仕事終えたおっさんのように、冷たいお茶をすするエリーゼを見て、ため息が止まらない。
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