エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~

つちねこ

文字の大きさ
上 下
18 / 49

18話 エリーゼ対サラマンダー

しおりを挟む
 エリーゼが星那に連れられてやってきたのは昼を過ぎたあたりだった。どうやら朝に飲んだ二個目の炎の欠片は、そこまで身体に影響がなかったようだ。

「お兄さま、お昼ご飯をお持ちいたしました。みんなで食べましょう」

 そういうと、レジャーシートを広げて、おにぎりにから揚げ、たこさんウインナー、大根の漬け物、それから冷たいお茶を用意し始めた。

「うぅー、朝ご飯あんまり食べられなかったからお腹すいてるです」

 そういって早速、たこさんウインナーとおにぎりを手にとって食べようとしているエリーゼ。体調は問題ないようだ。

「エリーゼ、まだ本調子ではないのですから、よく噛んで召し上がってくださいね」

「はいです。でも、星那の作る料理は絶品なので、とても楽しみなのですよ」

「はいはい。お茶もこちらに置いておきますね。お兄さま、おにぎりは鮭でよろしかったですか?」

「ああ、ありがとう星那」

「あ、あの、藍之助。そこに落ちているのはドロップアイテムですか?」

「ああ、これは炎柱石といってイフリートを倒すともらえるドロップアイテムの一つだ」

「イフリート? この門は、サラマンダーが出てくるのではなかったですか?」

「そういえば、言ってなかったな。この門からは二種類の精霊が出てくる。下位精霊のサラマンダーと上位精霊のイフリートだ」

「サラマンダーが下位精霊ですか……」

「イフリートはエリーゼ十人分の強さだと思っておけばいい。戦ったら百パーセント死ぬから気をつけろよ」

「マ、マジですか……。ち、ちなみに、藍之助はエリーゼ何人分ぐらいなのかな?」

「比べるのも面倒なぐらい差があるな。とりあえず、昨日だけでサラマンダーとイフリートを各三十ぐらいは倒している。エリーゼ換算すると、三百三十エリーゼ分は倒したことになるか」

「はわわっ、エリーゼ換算ですか!? も、もういいです。私は弱いので、せめてサラマンダーを安全に倒せるぐらいにはなりたいです」

「星那、エリーゼの火属性耐性はどんな感じだ?」

「一つ目で火の熱さを感じないぐらいの耐性を得ておりました。今朝の分を考えると初級魔法程度であれば当たっても問題ないかと思います」

「星那、な、何てこと言うですか? そ、そんなこと言ったら試してみる的な流れになるですよ!」

「火炎放射」
「や、やっぱりですよ! あ、あれれっ、熱くない……」

 エリーゼの背中目掛けて、弱めの火属性魔法を放ってみた。すると、エリーゼの身体を覆うように薄く魔力が広がり、炎を防いでいるようにもみえる。本人の意思とは関係なく防御してくれるのは、なかなかいいスキルのように思える。
 たった二回の服用でここまで成長しているのは大きい。個人差はあるのだろうけど、元々エリーゼの持っていた光属性との相性がいいのかもしれない。

「これならば、サラマンダーと戦っても大丈夫かもしれないな」

「うぅー、人体実験が続いていくです」
「エリーゼ、頑張ってくださいね。応援してますよ」

「ちょうどいい、ほらっ、門が開くぞ」

 異界の門からは、小さな足と長い舌を出しながら進むサラマンダーが出てきた。こちらを見ては興味なさげに横を向く。しかしながら、その目でこちらの様子を窺っているのは知っている。おそらく、視覚範囲が広いのだろう。

「ど、ど、どうすればいいですか?」

「普通に戦ってみればいいよ。耐性がある分、エリーゼの方が優位なはずだからさ。攻撃魔法はあるんだろ?」

「あるにはありますが……い、いいです。やりますですよ。や、やればいいのですよね」

 どこか吹っ切れたような、また、諦めたような顔をしたエリーゼが、サラマンダーに向かって飛んでいく。
 サラマンダーも敵と認識したのだろう。エリーゼを完全にロックオンしている。その姿をトカゲから鳥へと変えていく。

 キュエー、キュエー!

 先手はサラマンダーから。回転しながらアクロバティックにエリーゼに突進していく。

「光り輝く守護の力よ、攻撃から私を守るです! バブルボール」

 対して、エリーゼは自分の前にバブルボールを出して防御に撤する。そんな使い方も出来るのかバブルボール。どのぐらいの防御力があるのかは不明だが、サラマンダーも警戒して無理に飛び込んではこない。お互いに力が拮抗しているのを理解しているのか、戦いはかなり慎重に運ばれていくようだ。

「時間が掛かりそうな戦いだな」
「エリーゼ、ファイトですよ」

「い、今です! スーパープリティレインボーアタック!」

 ピンク色のステッキをくるくる回すと、虹色の光線が放射状に飛んでいき、サラマンダーにヒットする。これがエリーゼの必殺技なのだろう。

「こ、これは、あと九回は攻撃を当てないと倒れなそうだな。なんて攻撃力の低い必殺技なんだ……」
「エリーゼ、その攻撃をあと九回です」

「あ、あと九回もですか!? くっ、さすが、サラマンダー、た、戦いがいが、ありそうですよっ」

 その後も、バブルボールを盾にしながらちょこちょこと攻撃を重ねていき、戦いから三十分が経過した頃、十回目の必殺技が決まったエリーゼは、最後の決めポーズを息が切れそうになりながら決めてみせた。

 サラマンダーとの死闘では、何度か攻撃をもらっていたようだが、火属性耐性のおかげでほぼダメージなし、無傷での勝利となった。

「あ、藍之助、み、見ましたか! これが私の力です! それから、今ので魔力がほぼ無くなりましたので、今日はもう戦えそうにないですよ」

「お、おう」
「お疲れさまですエリーゼ。冷たいお茶を用意しておきましたよ」

 嬉しそうに報告にくるエリーゼだが、門の管理を任せるためには、相当長い道のりになるなと覚悟を決めざるを得なかった。やはり、ドロップアイテムで早めに強化させよう。

 ひと仕事終えたおっさんのように、冷たいお茶をすするエリーゼを見て、ため息が止まらない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...