10 / 49
10話 炎の欠片
しおりを挟む
「わ、私がですか? えっと、飲むと火属性の耐性がアップするでしたか」
「君とは異界の門を通じて長いつき合いになると思うんだ。私たちは他の魔法少女をあまり知らない。君さえよければ、ここで暮らしてみないかい? それに少しでも強くなるなら、こちらとしても助かるのだよ。心配なら、最初は私が飲んでもいい」
これは父さんとも話し合いをした結果なのだが、信号機トリオのような魔法少女を派遣されるぐらいなら劣等感を抱えたエリーゼの方がこちらとしても扱いやすいという判断だ。
「エリーゼ、その代わりアイテムの効果については他言無用にしてもらうぞ。これから政府との間で交渉ごとが増えてくる可能性もある。わかっているな?」
「わ、わかってるです。火属性の耐性がつくのはサラマンダーを相手にしなければならない以上、私にとっても有難い話です。で、でも、藍之助はいいのですか? 倒したのは藍之助でしょ」
「俺には必要ない。あの程度の精霊に遅れをとることはないからな。エリーゼはサラマンダー相手だと、二回に一回は必ず死ぬから、せめて耐性をとっておいた方がいい」
「た、確かにそうかもしれないけど、な、なんだかなー! もっと言い方があるかな!」
「エリーゼ、白湯を用意しましたよ」
「あ、ありがとう星那。じゃ、じゃあ、飲むです……」
私の手には紅く輝く炎の欠片。普通に口に入れていいようなモノとは思えないが、ドロップアイテムが人体に悪影響を及ぼすという話は聞いたことがない。そもそも鑑定結果も出ているので問題はないのだろう。
藍之助がこのアイテムを必要としないぐらいに強いのはわかるし、実際に見たサラマンダーを相手に今の私では戦えないのも事実。これは、強くなるチャンスともいえる。
「うー、うぇいっ」
白湯を口に含むと、掌にある炎の欠片を一気に飲み込んだ。口に入ると、そこそこ大きかったサイズだったものが、スルッと喉を抜けて入っていく。
しかしながら、その瞬間お腹が急激に熱くなっていった。まるで、身体の中で細かく割れてしまった欠片が、再び炎となっていくような熱さ。熱いというより、いや、むしろ痛い……。前言撤回、えっーと、これ身体に悪いんじゃないかな……。
「ぐはぁっ、痛っ、痛いっ! お、お腹が、熱いです!」
「だ、大丈夫、エリーゼ?」
「心配いらないよ星那。身体の中で耐性を作っているんだ。明日には復活してるはずだよ」
「なっ!? こ、この痛みが、あ、明日まで続くですか……」
僕の言葉に反応して絶望の表情をみせるエリーゼ。
「悪い、悪い、言うのを忘れていた。火属性の耐性が全くないエリーゼは、少なくとも半日はその痛みに苦しむと思う。次回以降は多少楽になるはずだから、とりあえず頑張れ」
「そ、そんなぁー」
「星那、エリーゼさんを部屋へ連れていってあげなさい。しばらくは動けないだろう」
「はい、かしこまりました。エリーゼ、肩を貸します」
「ううぅ、星那、ありがとう」
「星那、回復魔法はかけるなよ。耐性が作れなくなる可能性があるからな」
「あ、藍之助の、お、鬼ぃー!」
「かしこまりました、お兄さま」
炎の欠片はあと四回ぐらい飲ませておけばかなり高い耐性を持つことができるはずだ。エリーゼには耐性ができてから門に来てもらおう。そうでないと、何度も死にそうになるはずなので面倒だ。
「それでは、父上、私も門へ行ってまいります。島の結界は念のため強化しておきましょう」
無理やりパワーバインドで封鎖しているものの、強いモンスターがこじ開けようとしたら魔法が解けてしまう可能性も否めない。今日一日は様子見が必要だろう。
「うむ、頼んだぞ。こちらも朔丸を通じて月野女史との話を継続していく。状況が動き次第伝えよう」
全くあの三人は面倒くさいことをしてくれたものだ。いや、三人というよりか政府か。門のこともだが、政府の動きも考えなければならないというのは面倒だけど、そのあたりは父さんが何とかしてくれるだろう。僕はただ島のために力を振るえばいい。
再び、瞬間移動で異界の門の近くに降り立つと門を縛るパワーバインドを解除した。しばらくはサラマンダー狩りをしながら炎の欠片を集めるか。
あと調べることは、この門から出てくるモンスターの種類を確認することと、その強さ、ドロップアイテムの確認といったところか。内海の門からはオークしか出てきていないと聞く。
もちろん、強さやレベルはまちまちではあるらしいが、オーク以外の種は発見されていない。そうなると、この門からもサラマンダーのみという可能性も強い。
そんなことを考えていたからなのか、次に門から出てきたのはサラマンダーではなかった。
それはサラマンダーよりも上位の精霊であるイフリート。
その姿は炎の魔人。両脇から羊のような巻き角が生えており、背丈は僕とそう変わらないサイズ。しかしながら、はだけた素肌は盛り上がるような筋肉で割れている。その姿はあきらかに強者の姿。
「なるほど、これはエリーゼ十人分ぐらいか。エリーゼをどれだけ強化すれば、この門の管理を任せられるようになるのか。どうやら先は長そうだな……」
「君とは異界の門を通じて長いつき合いになると思うんだ。私たちは他の魔法少女をあまり知らない。君さえよければ、ここで暮らしてみないかい? それに少しでも強くなるなら、こちらとしても助かるのだよ。心配なら、最初は私が飲んでもいい」
これは父さんとも話し合いをした結果なのだが、信号機トリオのような魔法少女を派遣されるぐらいなら劣等感を抱えたエリーゼの方がこちらとしても扱いやすいという判断だ。
「エリーゼ、その代わりアイテムの効果については他言無用にしてもらうぞ。これから政府との間で交渉ごとが増えてくる可能性もある。わかっているな?」
「わ、わかってるです。火属性の耐性がつくのはサラマンダーを相手にしなければならない以上、私にとっても有難い話です。で、でも、藍之助はいいのですか? 倒したのは藍之助でしょ」
「俺には必要ない。あの程度の精霊に遅れをとることはないからな。エリーゼはサラマンダー相手だと、二回に一回は必ず死ぬから、せめて耐性をとっておいた方がいい」
「た、確かにそうかもしれないけど、な、なんだかなー! もっと言い方があるかな!」
「エリーゼ、白湯を用意しましたよ」
「あ、ありがとう星那。じゃ、じゃあ、飲むです……」
私の手には紅く輝く炎の欠片。普通に口に入れていいようなモノとは思えないが、ドロップアイテムが人体に悪影響を及ぼすという話は聞いたことがない。そもそも鑑定結果も出ているので問題はないのだろう。
藍之助がこのアイテムを必要としないぐらいに強いのはわかるし、実際に見たサラマンダーを相手に今の私では戦えないのも事実。これは、強くなるチャンスともいえる。
「うー、うぇいっ」
白湯を口に含むと、掌にある炎の欠片を一気に飲み込んだ。口に入ると、そこそこ大きかったサイズだったものが、スルッと喉を抜けて入っていく。
しかしながら、その瞬間お腹が急激に熱くなっていった。まるで、身体の中で細かく割れてしまった欠片が、再び炎となっていくような熱さ。熱いというより、いや、むしろ痛い……。前言撤回、えっーと、これ身体に悪いんじゃないかな……。
「ぐはぁっ、痛っ、痛いっ! お、お腹が、熱いです!」
「だ、大丈夫、エリーゼ?」
「心配いらないよ星那。身体の中で耐性を作っているんだ。明日には復活してるはずだよ」
「なっ!? こ、この痛みが、あ、明日まで続くですか……」
僕の言葉に反応して絶望の表情をみせるエリーゼ。
「悪い、悪い、言うのを忘れていた。火属性の耐性が全くないエリーゼは、少なくとも半日はその痛みに苦しむと思う。次回以降は多少楽になるはずだから、とりあえず頑張れ」
「そ、そんなぁー」
「星那、エリーゼさんを部屋へ連れていってあげなさい。しばらくは動けないだろう」
「はい、かしこまりました。エリーゼ、肩を貸します」
「ううぅ、星那、ありがとう」
「星那、回復魔法はかけるなよ。耐性が作れなくなる可能性があるからな」
「あ、藍之助の、お、鬼ぃー!」
「かしこまりました、お兄さま」
炎の欠片はあと四回ぐらい飲ませておけばかなり高い耐性を持つことができるはずだ。エリーゼには耐性ができてから門に来てもらおう。そうでないと、何度も死にそうになるはずなので面倒だ。
「それでは、父上、私も門へ行ってまいります。島の結界は念のため強化しておきましょう」
無理やりパワーバインドで封鎖しているものの、強いモンスターがこじ開けようとしたら魔法が解けてしまう可能性も否めない。今日一日は様子見が必要だろう。
「うむ、頼んだぞ。こちらも朔丸を通じて月野女史との話を継続していく。状況が動き次第伝えよう」
全くあの三人は面倒くさいことをしてくれたものだ。いや、三人というよりか政府か。門のこともだが、政府の動きも考えなければならないというのは面倒だけど、そのあたりは父さんが何とかしてくれるだろう。僕はただ島のために力を振るえばいい。
再び、瞬間移動で異界の門の近くに降り立つと門を縛るパワーバインドを解除した。しばらくはサラマンダー狩りをしながら炎の欠片を集めるか。
あと調べることは、この門から出てくるモンスターの種類を確認することと、その強さ、ドロップアイテムの確認といったところか。内海の門からはオークしか出てきていないと聞く。
もちろん、強さやレベルはまちまちではあるらしいが、オーク以外の種は発見されていない。そうなると、この門からもサラマンダーのみという可能性も強い。
そんなことを考えていたからなのか、次に門から出てきたのはサラマンダーではなかった。
それはサラマンダーよりも上位の精霊であるイフリート。
その姿は炎の魔人。両脇から羊のような巻き角が生えており、背丈は僕とそう変わらないサイズ。しかしながら、はだけた素肌は盛り上がるような筋肉で割れている。その姿はあきらかに強者の姿。
「なるほど、これはエリーゼ十人分ぐらいか。エリーゼをどれだけ強化すれば、この門の管理を任せられるようになるのか。どうやら先は長そうだな……」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる