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7話 異界の門
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深い藍色に染まった渦の中から、一際大きな門が海からせせり上がってくる。あれが異界の門。これが国内では二つ目となる門の出現だ。
一つ目の門については、百年程前まで遡ることになる、政府と御剣家が袂を分かつことになった出来事なので、その話はよく聞かされている。場所は東北地方の内海沖、今回と同様にそれは海に現れた。後に調べる限り、レベル的には初級クラスと言われる門が開いたのだが、門から現れたモンスターによって、そう時間を置かずに内海側の主要都市は軒並み壊滅した。
異界の門から現れたモンスターは、オークと呼ばれる豚の頭を持った人型のモンスターで、口の脇からは鋭い牙が出ている。筋肉量が多く力はかなり強いが、魔力はほぼない。しかしながら、器用に武器や防具を扱い、耐久値が異常に高いため、銃などの火器をものともしなかったという。
まあ、この話はまた気が向いた時にでもしよう。それよりも、今は目の前で開かんとしている大きな門の方が問題だ。
「も、も、も、門がー!?」
「モモンガ?」
「ち、違います。な、何で、門があるですか!?」
「それは、そいつらに聞いてくれ」
エリーゼが黄色いの魔法少女ミルキーを連れて戻ってきたのだが、戻ってきたら門があるんだから、それはまあ驚くか。
「とりあえず、この赤いのと青いのを捕縛しておくから後は頼む」
「た、頼むって、私には倒せないですよ」
「知ってるよ。あっ、でもあの青い奴は魔力空っぽだから、エリーゼでもいける気はするかな」
「ふぇぇぇっ!?」
青い魔法少女のアリーナは海に浮かびながら慌てている。空も飛べないほどに魔力がないらしい。お前、帰り道どうするつもりだったんだよ。
「とはいえ、何かあっても面倒だから、俺が魔法を使えないようにしっかり捕縛しておこう。パワーバインド!」
光の輪が現れると、魔法少女の腕ごと包み込むように体を縛りつける。手に持っていたステッキとかは海へと落ちていき、絶望の表情を浮かべている魔法少女。多分、あのステッキとか相当高価なものなのだろう。知らないけど。
「光り輝く守護の力よ、この者達を守りたまえ! バブルボール」
「恐ろしく恥ずかしい詠唱だな……。その魔法は?」
「わ、私が使える初級のバリア魔法です。水にも浮かぶから丁度いいのです。魔法を使えないなら中から出れませんし」
「なるほど、バリア魔法で捕獲か。なら、俺も捕縛魔法で門が開かないように押さえておこうか、パワーバインド!」
大きめのサイズに撃ち出されたパワーバインドは大きな門を押さえるようにして囲われていく。普通に考えて、余程のパワーでもない限り開くことは出来ないだろう。
「や、やりましたー! こ、これで大丈夫なのですね」
「大丈夫なわけないだろう。扉が開かないようにしてるだけで、異界の門はもう設置されているんだ。バインドの効果が切れたら普通に開くぞ」
「じゃあ、やっぱり……」
「ああ、この門からはモンスターが出てくる」
「何とか出来ないですか? 藍之助は、この三人よりも強い魔法使いなんだもの」
何とかなるならやりたいが、この門は異界に繋がっているため、こちらからの攻撃は無効化されるはず。それは、もう一つの門がそうであったように、この門にも攻撃は通らないはずだ。
とはいえ、やってみないことにはなんとも言えないか。うん、やれることはやってみよう。
「エリーゼ、少し離れてろ……」
「な、何かするですか?」
「かー、めー、○ー、めー」
「う、嘘でしょ!? 藍之助、それドラゴン○ール!」
「波ぁぁぁぁー!!!!!!!!!」
なかなかの規模の、か○はめ波を撃てた。
小さい島なら消滅するぐらいの魔力を込めて撃った。これで、何ともなければどうしようもない。
周辺の海を削り取るかのような激しいエネルギーが門にぶつかっていく。魔法少女達は口をあんぐりと開けたまま海上を転がっていくし、エリーゼも、顔を真っ青にしながら呆然と魔法を見ていた。
「うーん、やっぱ無理か……。門、ビクともしなかったな。こりゃ、ダメだわ」
生まれてから一番力を込めて撃った、か○はめ波だったと思う。あんまりやり過ぎると、怒られるからね。
「あ、藍之助、門、門!」
「あっ、しまった。捕縛魔法が消えちゃった」
「!? ア、アホです、藍之助の馬鹿ぁー!!」
驚いていたのも束の間に、エリーゼが慌てふためいている。どちらにしろ、この攻撃魔法を食らってビクともしていない門が、いずれ開くのは仕方ないことなので、なんというか来るなら来いっていうか。なるべく弱いランクのモンスターが現れてくれってとこだろう。
ゆっくりと開き始める異界の門。三分の一程度が開いたところで、炎に包まれた小さな足が見えた。それは、全身が炎に覆われた火の蜥蜴。
すぐに鑑定魔法を使用すると意外な結果が出た。
「火の精霊か」
サラマンダー、蜥蜴の形をした火の精霊でエレメンタルの体。つまり、エーテルと呼ばれる異界のエネルギーで構成された自然霊。炎の中で自由に生き、また火を操るとされている。そして、人間の姿を取ることもあるのだとか。
一つ目の門については、百年程前まで遡ることになる、政府と御剣家が袂を分かつことになった出来事なので、その話はよく聞かされている。場所は東北地方の内海沖、今回と同様にそれは海に現れた。後に調べる限り、レベル的には初級クラスと言われる門が開いたのだが、門から現れたモンスターによって、そう時間を置かずに内海側の主要都市は軒並み壊滅した。
異界の門から現れたモンスターは、オークと呼ばれる豚の頭を持った人型のモンスターで、口の脇からは鋭い牙が出ている。筋肉量が多く力はかなり強いが、魔力はほぼない。しかしながら、器用に武器や防具を扱い、耐久値が異常に高いため、銃などの火器をものともしなかったという。
まあ、この話はまた気が向いた時にでもしよう。それよりも、今は目の前で開かんとしている大きな門の方が問題だ。
「も、も、も、門がー!?」
「モモンガ?」
「ち、違います。な、何で、門があるですか!?」
「それは、そいつらに聞いてくれ」
エリーゼが黄色いの魔法少女ミルキーを連れて戻ってきたのだが、戻ってきたら門があるんだから、それはまあ驚くか。
「とりあえず、この赤いのと青いのを捕縛しておくから後は頼む」
「た、頼むって、私には倒せないですよ」
「知ってるよ。あっ、でもあの青い奴は魔力空っぽだから、エリーゼでもいける気はするかな」
「ふぇぇぇっ!?」
青い魔法少女のアリーナは海に浮かびながら慌てている。空も飛べないほどに魔力がないらしい。お前、帰り道どうするつもりだったんだよ。
「とはいえ、何かあっても面倒だから、俺が魔法を使えないようにしっかり捕縛しておこう。パワーバインド!」
光の輪が現れると、魔法少女の腕ごと包み込むように体を縛りつける。手に持っていたステッキとかは海へと落ちていき、絶望の表情を浮かべている魔法少女。多分、あのステッキとか相当高価なものなのだろう。知らないけど。
「光り輝く守護の力よ、この者達を守りたまえ! バブルボール」
「恐ろしく恥ずかしい詠唱だな……。その魔法は?」
「わ、私が使える初級のバリア魔法です。水にも浮かぶから丁度いいのです。魔法を使えないなら中から出れませんし」
「なるほど、バリア魔法で捕獲か。なら、俺も捕縛魔法で門が開かないように押さえておこうか、パワーバインド!」
大きめのサイズに撃ち出されたパワーバインドは大きな門を押さえるようにして囲われていく。普通に考えて、余程のパワーでもない限り開くことは出来ないだろう。
「や、やりましたー! こ、これで大丈夫なのですね」
「大丈夫なわけないだろう。扉が開かないようにしてるだけで、異界の門はもう設置されているんだ。バインドの効果が切れたら普通に開くぞ」
「じゃあ、やっぱり……」
「ああ、この門からはモンスターが出てくる」
「何とか出来ないですか? 藍之助は、この三人よりも強い魔法使いなんだもの」
何とかなるならやりたいが、この門は異界に繋がっているため、こちらからの攻撃は無効化されるはず。それは、もう一つの門がそうであったように、この門にも攻撃は通らないはずだ。
とはいえ、やってみないことにはなんとも言えないか。うん、やれることはやってみよう。
「エリーゼ、少し離れてろ……」
「な、何かするですか?」
「かー、めー、○ー、めー」
「う、嘘でしょ!? 藍之助、それドラゴン○ール!」
「波ぁぁぁぁー!!!!!!!!!」
なかなかの規模の、か○はめ波を撃てた。
小さい島なら消滅するぐらいの魔力を込めて撃った。これで、何ともなければどうしようもない。
周辺の海を削り取るかのような激しいエネルギーが門にぶつかっていく。魔法少女達は口をあんぐりと開けたまま海上を転がっていくし、エリーゼも、顔を真っ青にしながら呆然と魔法を見ていた。
「うーん、やっぱ無理か……。門、ビクともしなかったな。こりゃ、ダメだわ」
生まれてから一番力を込めて撃った、か○はめ波だったと思う。あんまりやり過ぎると、怒られるからね。
「あ、藍之助、門、門!」
「あっ、しまった。捕縛魔法が消えちゃった」
「!? ア、アホです、藍之助の馬鹿ぁー!!」
驚いていたのも束の間に、エリーゼが慌てふためいている。どちらにしろ、この攻撃魔法を食らってビクともしていない門が、いずれ開くのは仕方ないことなので、なんというか来るなら来いっていうか。なるべく弱いランクのモンスターが現れてくれってとこだろう。
ゆっくりと開き始める異界の門。三分の一程度が開いたところで、炎に包まれた小さな足が見えた。それは、全身が炎に覆われた火の蜥蜴。
すぐに鑑定魔法を使用すると意外な結果が出た。
「火の精霊か」
サラマンダー、蜥蜴の形をした火の精霊でエレメンタルの体。つまり、エーテルと呼ばれる異界のエネルギーで構成された自然霊。炎の中で自由に生き、また火を操るとされている。そして、人間の姿を取ることもあるのだとか。
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