エビルゲート~最強魔法使いによる魔法少女育成計画~

つちねこ

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6話 海上の戦い

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「アンティークマジシャンが、魔法少女に勝てると思ってるの?」
「へぇー、本当にいたんだ。男の魔法使い」


『父上、念のため音声と映像を転送しておきます』


『ああ、しっかり保存しておく。ぬかるなよ、藍之助』


『もちろんです』


「ねぇ、君、ひょっとして無視してるのかなー?」
「逃げる算段でもしてるんじゃない?」

「エリーゼは下がっていろ」

「な、何を言ってるのかな! あ、相手は魔法少女三人なのですよ。し、しかもレベルの高い、首都圏の魔法少女なのです」

 ……あれでレベルが高いだと。少なくとも目の前の三人からはそこまで脅威に感じる魔力はない。そうだな、当時、島に来た月野の半分もないんじゃなかろうか。まぁ、エリーゼより倍以上魔力があるのは確かだけども。

「いいから下がれ」

「む、無理だと思ったらすぐに逃げるのですよ。あ、あなたのスピードならきっと大丈夫です。わ、私が話をしてみるから……」

 最悪の場合は私が話をつけるから、その内に逃げなさいということか……。

 まあいい、すぐ理解するだろう。


「ふぅ、瞬間移動」

 黄色い衣装を着た魔法少女の真後ろに移動すると、少し力をセーブしながら豪快に吹き飛ばした。

「ふぇぇぇぇっ!?」

 黄色いのはまるで飛び石のように、波間を跳ねるようにしながら消えていく。おう、結構飛んだな……。

「ふぁぁっ!? ミルキー!」
「い、いつの間に!」

 おそらく、一キロぐらいは飛んでいったはず。一応は魔法少女なので、あれぐらいなら死ぬことはないだろう。気を失って溺れていたら知らないけど。


「で、次は誰が相手になるんだ?」


「ス、スピードだけは、そこそこあるようね。でも、それがわかっていたら、こっちにだって策はあるの」
「ミルキーの仇は、私たちがとるわ!」

 ミルキーが死んだことにされているが、まだ生きている。魔力を確認したところ、少ないながらも海上に浮かんで回復に専念しているのを察知した。

「エリーゼ、あの黄色い奴、瀕死の状態だけど生きてるから回収してきてもらえるか。一キロぐらい先で浮いている。黄色いから目立つだろ?」

「い、今の、な、何なのですかぁ!!」

「何でエリーゼが怒ってるんだ。お前は味方じゃなかったのか?」

「こ、こんなに強いなんて聞いてないのですよ! あ、あなた何者なのかな?」

「何者って……本土は本当に御剣の力を忘れてしまっているらしいな。お前たちの使うママゴト遊びとは違う、本当の魔法の力というのをみせてやるよ」


「ず、随分と舐められたものね」
「魔法少女でも上位に入る、私たちの力をみせてあげようじゃない!」


「あっ、エリーゼ、早く行かないと黄色いの溺れるかも」

「い、行きますですよ! 行けばいいんですよね!」

 またエリーゼが怒っている。


「よ、余裕ぶっていられるのも今のうちよ」

「アリーナ、こいつは危険。だから全力でいくよ。私に魔力を」
「うん、わかったよリリス。いくよ! エクセレントミラクルパワー、スパイラルオンッ! 」

 アリーナと呼ばれた、青い衣装の魔法少女が、赤い衣装のリリスへと魔力を渡していく。付与魔法のようなものか? うーん、珍しくはあるが、かなり効率が悪そうに思える。

「リリスの魔力は元の二倍弱ぐらいか。それから、青い奴、アリーナはもう戦闘不能に近いだろ。それ、本当に意味あるのか?」

「あなた馬鹿なの? 戦闘力が二倍になった私に、男のあなたが太刀打ち出来ると思ってるわけ? これで、スピードの差も無くなったわよ」

 魔法使いの女尊男卑が酷いな。何で男の方が魔法能力が低いと思い込んでるんだか。それから、さっきのはスピード関係なく瞬間移動だからね。

「知ってるか? 赤リス。リスの戦闘力が二倍になったところで、ライオンが驚くとでも思うのか」

「わたしの名前はリリスよ! 戦闘力が二倍になった私は日本最強の魔法少女なの! 誰にも負けないんだからっ」

 そう言うと、真っ直ぐに、腕を振り上げながらこちらに向かってくる。腕全体が魔力エネルギーに覆われていて、パワーを上げているのだろう。

「ふふんっ、私の攻撃、追えていないのかな? 死んじゃったらゴメンね。プリズムパーンチ!」

「ああ、遅すぎて、つい余所見しちまったよ」

 目の前まで迫っていた右拳を半身になって避けながら、通り過ぎていくその手首を左手で掴む。

「なっ、なっ、は、離せー! い、痛いっ、痛いってば!」

 つい癖で曲がってはいけない方向に、ゆっくりと捻ってしまった。朔丸との訓練では、手首足首は掴んだら極めるまでが流れなのだ。

「お前が最強って本当なのか? 正直、ドン引きするぐらい手応えがないんだが……ん?」


 海上の魔力溜りが、急激な変化を遂げはじめる。渦を巻くようにして魔力を放っていたのが、まるで全てを吸い尽くす勢いで逆流していく。

「し、しまった……。門が」


『父上、申し訳ございません。異界の門が開いてしまいました』


『あぁ、映像で確認している。繋がった先からどんな種族が出てくるかわからん。油断するな』


「ちょ、ちょっと、はやく離しなさいよ。い、いつまで掴んでるつもりよ。この変態野郎!」

 全く腹立たしい、こいつらのせいで異界の門が開いてしまった。しかも、島の近くに……。門から現れるのが強者だった場合、御剣島以外の周辺の島々、都市は壊滅する場合もあるだろうに。
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