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5話 調査開始
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翌朝、食事の席で父さんは二人で現地の調査をするようにと指示を出した。
「つ、つまり、私の職は守られたということなのですね!?」
どうやら朔丸も無事に魔女と会えたようで、まずはひと安心といったところだろう。簡易的な話し合いの場は持てたということらしく、共同での調査活動ということになったようだ。
「藍之助、エリーゼさんのことをしっかり頼むぞ」
「心配しなくても平気です。わ、私、魔法少女ですから!」
「頼もしいな、新人魔法少女さん」
「あ、あなたのことも守ってあげますです」
下から見上げるように挑戦的な目を向けてくる魔法少女。どうやら何か勘違いをしているようだな。
「お兄さま、エリーゼも仲良くしてください。二人は、お仲間なのでしょう」
「星那が言うならしょうがないですね。そ、それと、朝食がめちゃくちゃ美味しかったです。私、和食が苦手だったですけど、ただの食わず嫌いだったのかもしれないです」
「いいえ、お粗末さまでした」
当たり前のことだが、朝食の材料は全て島で採れた新鮮な食材だ。本土で栽培されている肉や野菜、卵なんかとは比べ物にならないぐらい高品質のものがとり揃えられている。たまに食べるジャンクフードも嫌いじゃないが、毎日食べる物はこだわったものをとりたい。
「エリーゼ、空は飛べるか?」
「あ、当たり前です。これでも魔法少女ですよ。だ、誰だと思っているんですか」
新人魔法少女だろう。不安だから聞いたのだ。海上の魔力溜りを調べるとなると、船で向かうか飛ぶかの二つの選択肢になる。わざわざ船で向かうのは面倒だったのだが、空中浮遊は問題なくこなせるようで安心した。
「それは失礼したな。では、早速向かうとするか。ついてこい」
「ちょっ、は、早いですね! な、何かな、競争するつもりなのかな!?」
何やら後方で喚いているが、ギリギリ離れずについてきているようなので、そのまま向かうことにする。今日は珍しく天気のよい日らしい。この時期、結界の外は台風も多く嵐になることも少なくない。空を見上げても雨をもたらすような厚い雲は見当たらないので、しばらくは大丈夫そうだ。
「な、な、何なのかなーですよ!! ちょっと飛ぶのが早いからって、いい気にならないでもらいたいかなー」
「何で怒っているんだ?」
「な、何でもないかな!」
「そんなことより、さっそく魔力溜りを発見した。例のやつというのはあれのことだろう」
海上に渦を巻くようにして色の異なる場所があった。濃い藍色をした魔力溜りは、かなり大きくなっている。通常、海に出現する魔力溜りは海底に現われてモンスターを生み出す。しかし、目の前にあるそれは、海上に影響力を持つまでに成長してしまっている。
「ええぇぇ! そ、そんな、昨日私が見た時よりも、かなり広がってしまってるです。ど、ど、どうしましょう」
海底までの深さは数百メートルはあるはず。つまり、海上に影響がある時点で相当不味いのは間違いない。結界の外なので、そこまで気にしていなかった自分にも落ち度はあるが、ここまで急激に拡大するものなのか……。
さて、どうしたものか。
『父上、魔力溜りの場所を確認しましたが、今日明日にも急成長して門が開く可能性があります』
「ほえぇぇ! スマホが無いのに会話出来るですか!? や、やりますね」
『藍之助、今から魔力溜りを消すことは出来そうか?』
『ここまで成長していると、逆にエネルギーを渡すことになりそうですが……。とりあえず、やれることをやっておきます』
『うむ、頼んだ』
「何、何かな? 今のも魔法なのですか? やり方を教えてください。それ星那も出来るのですか?」
「ああ、それは構わないが……。ところで、あれはエリーゼの仲間じゃないのか?」
魔力溜りを囲うようにして、海上に浮かぶキラキラ衣装の魔法少女が三名。浮かんだり、潜ったりを繰り返している。
これは、あれだな、政府の方が動きが早かったということか。それとも、エリーゼの動きを見られていたのかもしれない。
「そ、そんな、首都圏の先輩たちが集結しているなんて……聞いてないです」
「エリーゼ、魔力溜りに魔力を放出しているように見えるんだが、急成長した原因というのがよくわかった気がするな。で、どうする?」
「ど、どうするって言われても、首都圏のエリート魔法少女さん達ですよ。わ、私なんかが相手になるわけないじゃないですか……」
「そうだな。さすがに、殺したらまずいか……」
人の島の近くで何てことをしてくれてるんだという思いも強く、つい変なことを考えてしまうが、あの三人もエリーゼ同様に相互不可侵の約束を破っているのは間違いない。
ならば、少し脅してみるか。
「おいっ、ここが何処の領海か知ってやってるんだろうな」
正確には、どちらの領海にもなるらしいが、知ったことではない。
「ヤバい、見つかったわ」
「男が空を飛ぶということは、御剣家のアンティークマジシャンね」
アンティークマジシャンというのは、多分、いや、確実に馬鹿にされているのだろう。古くさい魔法使い的な言葉なのだろうな……。
「ちょっとー、次はミルキーの潜る番でしょ……って、あ、あらっ、もう見つかっちゃったのね」
「な、何をやってるですかー。そ、そんなことしたら、異界の門が開いてしまうんですよ」
「そんなことは知っているわよ。あなたが新人魔法少女のエリーゼね」
「残念ながら、私たちの目的は異界の門を出現させることなの」
「悪いけど、邪魔はしないでもらえる? 私たちは政府の指示で動いているから。相手になるっていうなら、別に構わないけど」
「で、でもっ!」
「いい、エリーゼ。あれは敵勢力なんだろう。少なくとも、御剣家にとっては攻撃の許可を得ずとも倒していい輩だ。先に約束を破っているのは、こいつらだからな」
実際には、瞬間移動が出来るので昨日も朔丸を連れて首都へ行ってるし、月に数回は遊びに行っているので、こちらも約束は破りまくっている。だが、約束はバレなければ問題にならない。
星那が誘っても来ないのは、万が一のことを考えてなのかもしれない。いや、あいつは島が好きだから、そこまで外に興味が無いのかもしれないが……。
「大丈夫よ。ここにいるのは、あの男と新人魔法少女ちゃんだけ」
「つまり、あの二人を倒せば私たちは、ここにいなかったことになるの」
「そうね、命まではとらないわ。ずっと拘置所に入ってもらうことになるけど。うふふっ」
自分たちが負けるとは微塵も思っていないところに驚かされる。エリーゼもそうだが、魔法を男が使えないと思っているせいで、僕が使えたとしてもそこまで脅威でないと考えているらしい。
アンティークマジシャンね……。
「やれやれ、お前たちは御剣の力を忘れてしまっているらしいな。まったく、舐められたものだ」
「つ、つまり、私の職は守られたということなのですね!?」
どうやら朔丸も無事に魔女と会えたようで、まずはひと安心といったところだろう。簡易的な話し合いの場は持てたということらしく、共同での調査活動ということになったようだ。
「藍之助、エリーゼさんのことをしっかり頼むぞ」
「心配しなくても平気です。わ、私、魔法少女ですから!」
「頼もしいな、新人魔法少女さん」
「あ、あなたのことも守ってあげますです」
下から見上げるように挑戦的な目を向けてくる魔法少女。どうやら何か勘違いをしているようだな。
「お兄さま、エリーゼも仲良くしてください。二人は、お仲間なのでしょう」
「星那が言うならしょうがないですね。そ、それと、朝食がめちゃくちゃ美味しかったです。私、和食が苦手だったですけど、ただの食わず嫌いだったのかもしれないです」
「いいえ、お粗末さまでした」
当たり前のことだが、朝食の材料は全て島で採れた新鮮な食材だ。本土で栽培されている肉や野菜、卵なんかとは比べ物にならないぐらい高品質のものがとり揃えられている。たまに食べるジャンクフードも嫌いじゃないが、毎日食べる物はこだわったものをとりたい。
「エリーゼ、空は飛べるか?」
「あ、当たり前です。これでも魔法少女ですよ。だ、誰だと思っているんですか」
新人魔法少女だろう。不安だから聞いたのだ。海上の魔力溜りを調べるとなると、船で向かうか飛ぶかの二つの選択肢になる。わざわざ船で向かうのは面倒だったのだが、空中浮遊は問題なくこなせるようで安心した。
「それは失礼したな。では、早速向かうとするか。ついてこい」
「ちょっ、は、早いですね! な、何かな、競争するつもりなのかな!?」
何やら後方で喚いているが、ギリギリ離れずについてきているようなので、そのまま向かうことにする。今日は珍しく天気のよい日らしい。この時期、結界の外は台風も多く嵐になることも少なくない。空を見上げても雨をもたらすような厚い雲は見当たらないので、しばらくは大丈夫そうだ。
「な、な、何なのかなーですよ!! ちょっと飛ぶのが早いからって、いい気にならないでもらいたいかなー」
「何で怒っているんだ?」
「な、何でもないかな!」
「そんなことより、さっそく魔力溜りを発見した。例のやつというのはあれのことだろう」
海上に渦を巻くようにして色の異なる場所があった。濃い藍色をした魔力溜りは、かなり大きくなっている。通常、海に出現する魔力溜りは海底に現われてモンスターを生み出す。しかし、目の前にあるそれは、海上に影響力を持つまでに成長してしまっている。
「ええぇぇ! そ、そんな、昨日私が見た時よりも、かなり広がってしまってるです。ど、ど、どうしましょう」
海底までの深さは数百メートルはあるはず。つまり、海上に影響がある時点で相当不味いのは間違いない。結界の外なので、そこまで気にしていなかった自分にも落ち度はあるが、ここまで急激に拡大するものなのか……。
さて、どうしたものか。
『父上、魔力溜りの場所を確認しましたが、今日明日にも急成長して門が開く可能性があります』
「ほえぇぇ! スマホが無いのに会話出来るですか!? や、やりますね」
『藍之助、今から魔力溜りを消すことは出来そうか?』
『ここまで成長していると、逆にエネルギーを渡すことになりそうですが……。とりあえず、やれることをやっておきます』
『うむ、頼んだ』
「何、何かな? 今のも魔法なのですか? やり方を教えてください。それ星那も出来るのですか?」
「ああ、それは構わないが……。ところで、あれはエリーゼの仲間じゃないのか?」
魔力溜りを囲うようにして、海上に浮かぶキラキラ衣装の魔法少女が三名。浮かんだり、潜ったりを繰り返している。
これは、あれだな、政府の方が動きが早かったということか。それとも、エリーゼの動きを見られていたのかもしれない。
「そ、そんな、首都圏の先輩たちが集結しているなんて……聞いてないです」
「エリーゼ、魔力溜りに魔力を放出しているように見えるんだが、急成長した原因というのがよくわかった気がするな。で、どうする?」
「ど、どうするって言われても、首都圏のエリート魔法少女さん達ですよ。わ、私なんかが相手になるわけないじゃないですか……」
「そうだな。さすがに、殺したらまずいか……」
人の島の近くで何てことをしてくれてるんだという思いも強く、つい変なことを考えてしまうが、あの三人もエリーゼ同様に相互不可侵の約束を破っているのは間違いない。
ならば、少し脅してみるか。
「おいっ、ここが何処の領海か知ってやってるんだろうな」
正確には、どちらの領海にもなるらしいが、知ったことではない。
「ヤバい、見つかったわ」
「男が空を飛ぶということは、御剣家のアンティークマジシャンね」
アンティークマジシャンというのは、多分、いや、確実に馬鹿にされているのだろう。古くさい魔法使い的な言葉なのだろうな……。
「ちょっとー、次はミルキーの潜る番でしょ……って、あ、あらっ、もう見つかっちゃったのね」
「な、何をやってるですかー。そ、そんなことしたら、異界の門が開いてしまうんですよ」
「そんなことは知っているわよ。あなたが新人魔法少女のエリーゼね」
「残念ながら、私たちの目的は異界の門を出現させることなの」
「悪いけど、邪魔はしないでもらえる? 私たちは政府の指示で動いているから。相手になるっていうなら、別に構わないけど」
「で、でもっ!」
「いい、エリーゼ。あれは敵勢力なんだろう。少なくとも、御剣家にとっては攻撃の許可を得ずとも倒していい輩だ。先に約束を破っているのは、こいつらだからな」
実際には、瞬間移動が出来るので昨日も朔丸を連れて首都へ行ってるし、月に数回は遊びに行っているので、こちらも約束は破りまくっている。だが、約束はバレなければ問題にならない。
星那が誘っても来ないのは、万が一のことを考えてなのかもしれない。いや、あいつは島が好きだから、そこまで外に興味が無いのかもしれないが……。
「大丈夫よ。ここにいるのは、あの男と新人魔法少女ちゃんだけ」
「つまり、あの二人を倒せば私たちは、ここにいなかったことになるの」
「そうね、命まではとらないわ。ずっと拘置所に入ってもらうことになるけど。うふふっ」
自分たちが負けるとは微塵も思っていないところに驚かされる。エリーゼもそうだが、魔法を男が使えないと思っているせいで、僕が使えたとしてもそこまで脅威でないと考えているらしい。
アンティークマジシャンね……。
「やれやれ、お前たちは御剣の力を忘れてしまっているらしいな。まったく、舐められたものだ」
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