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4話 エリーゼ
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「ここがしばらくあなたが滞在する部屋になります。父上が言われたように、何か必要なものや困ったことがありましたら、何なりとおっしゃってくださいね」
その少女は、淡々と言葉をつむぎながら私を部屋まで案内してくれた。どこか表情が薄いというか、少し無機質なように感じられる。ひょっとしたら、私に対する警戒心がそうさせているのかもしれないです。しかしながら、その容姿は驚くほど美しく、着物姿も相まってか和風人形を想起させられます。
「年上、いや、同い歳くらいなのかな。私は十四歳なのですが、あなたは?」
「十三歳になります」
和服姿が大人びて見えるのか、落ち着いているので、そう感じるのかはわからない。
「年下だったですね……。あなたはこの島から出たことはあるのですか?」
御剣島に住む者は、同じ国でありながらその移動は認められていない。一生をこの島で過ごすというのはどうなのだろうか。きっと私には耐えられないと思うですよ。
「星那と申します。これからは星那とお呼びくださいませ」
「そうですね、星那。では、私のこともエリーゼと呼んでもらえますですか」
「ええ、エリーゼ。私は、生まれてから一度もこの島を離れたことはありません。外の世界に全く興味が無いわけではございませんが、この島が好きですし、皆もよくしてくださるので特に不満はございませんよ」
聞いてもいないのに、島に不満がないことを伝えるあたり、こちらの意図を理解しての回答なのかもしれないです。それとも、外に出たいという裏返しなのか。はたまた、相互不可侵を貫いていると言いたいのかもしれません。
「首都にはね、私たちぐらいの年頃が集まる素敵スポットがあるです。そこには、カラフルで映える美味しいスイーツやファッションで溢れているですよ」
「映える?」
「写真映えするってことです。見るですか?」
スマホにあるデータから、若者の集まるスポットで撮った映えフォルダを開くと星那に渡した。スマホを覗くその表情は、少しだけ和らいだような気がしないでもない。仲良くなれるかな……。
「指でスライドすると、次の写真が見れますです」
「奇抜な色の組み合わせが多いのですね。でも、どれも素敵です。このふわふわなお菓子はとても美味しそうです」
「そのお菓子は今とっても流行っているのです。いつか機会があったら一緒に行きましょう」
「そうですね……」
それはどこか諦めたような、無理だと知っているような顔に見えた。もちろん、私がそう感じているだけで、本人はそこまで興味がない可能性もある。
「このよく映っている女の子は?」
「あっ、そ、それは変身する前の私なのです。本当の姿はこっちなの。これは秘密にしておいてくださいね」
「やっぱり変身するのですね」
「はい、魔法少女ですから。変身しないとすぐ身バレしちゃうから大変なのです。とりあえず、今度お土産を持ってきます。あっ、私の御剣島での滞在が正式に認められたらになるのですけど」
「そうですね。では、私はこれで失礼いたします。何かありましたら、気軽にお呼びください」
「よ、呼ぶって、どうやってですか?」
「この部屋の中にいる限り、心の中で念じて頂ければすぐに参ります」
つまり、この場所は魔力によって監視されている部屋ということになるのでしょうか。私に変な動きがあればすぐに伝わるということを言っている? 魔法少女の部屋を覗くなんてとってもハレンチです。
「エリーゼが念じない限り情報は遮断されていますし、私にしか声は届きませんのでご安心ください」
まるで、心を読まれているような気さえしてくる。この星那という子は、どこか不思議で大人びた雰囲気を感じさせる。
「ひょっとして、あなたも魔法が使えるの?」
「はい。兄ほどではございませんが、多少でしたら」
少し表情がやわらいだような気がする。魔法のことはやっぱり興味があるのでしょう。ということは、星那も魔法少女になるのですね。
「珍しいのですね。男性の方が魔法が得意なんて。御剣島の人は、魔法摂取薬を打ってないと聞きます。それなのに、何で魔法を使えるのか不思議なのです」
「全ての者が魔法を使えるわけではありません。御剣家の血縁者の一部にのみ引き継がれています」
「それで星那からみて、私とあなたのお兄さんではどちらの方が魔法使いとして優れていると思いますか?」
「どちらが優れているか、ですか。それは比べるまでもありません」
珍しくニコニコした表情をみせる星那。どうやら、魔法ではなく兄の話になると少し顔の表情が変化するということがよくわかった。大人びた表情から一転、年相応な柔らかい表情に変わる。こやつ、ブラコンですね……。
「そうですよね。魔法少女は特別ですもの。男性で魔法が使えるのは珍しいけど、そこまで期待しちゃいけないですよね」
「エリーゼは魔法少女の中で何番目に強いのですか?」
「わ、私は新人なので弱々です。い、今はまだそんなでもないけど、伸びしろはきっとある……はずなのです」
私は、何でこんな事まで喋ってしまっているのだろう。本土にいる魔法少女は、魔力溜りとよばれる魔力異常から出現するモンスターの討伐を行うのが主な仕事になっている。当たり前だが、全員が私よりも格段にレベルが高い。というか、私は新人なのでこれから成長していくはず、多分、きっと……です。
その少女は、淡々と言葉をつむぎながら私を部屋まで案内してくれた。どこか表情が薄いというか、少し無機質なように感じられる。ひょっとしたら、私に対する警戒心がそうさせているのかもしれないです。しかしながら、その容姿は驚くほど美しく、着物姿も相まってか和風人形を想起させられます。
「年上、いや、同い歳くらいなのかな。私は十四歳なのですが、あなたは?」
「十三歳になります」
和服姿が大人びて見えるのか、落ち着いているので、そう感じるのかはわからない。
「年下だったですね……。あなたはこの島から出たことはあるのですか?」
御剣島に住む者は、同じ国でありながらその移動は認められていない。一生をこの島で過ごすというのはどうなのだろうか。きっと私には耐えられないと思うですよ。
「星那と申します。これからは星那とお呼びくださいませ」
「そうですね、星那。では、私のこともエリーゼと呼んでもらえますですか」
「ええ、エリーゼ。私は、生まれてから一度もこの島を離れたことはありません。外の世界に全く興味が無いわけではございませんが、この島が好きですし、皆もよくしてくださるので特に不満はございませんよ」
聞いてもいないのに、島に不満がないことを伝えるあたり、こちらの意図を理解しての回答なのかもしれないです。それとも、外に出たいという裏返しなのか。はたまた、相互不可侵を貫いていると言いたいのかもしれません。
「首都にはね、私たちぐらいの年頃が集まる素敵スポットがあるです。そこには、カラフルで映える美味しいスイーツやファッションで溢れているですよ」
「映える?」
「写真映えするってことです。見るですか?」
スマホにあるデータから、若者の集まるスポットで撮った映えフォルダを開くと星那に渡した。スマホを覗くその表情は、少しだけ和らいだような気がしないでもない。仲良くなれるかな……。
「指でスライドすると、次の写真が見れますです」
「奇抜な色の組み合わせが多いのですね。でも、どれも素敵です。このふわふわなお菓子はとても美味しそうです」
「そのお菓子は今とっても流行っているのです。いつか機会があったら一緒に行きましょう」
「そうですね……」
それはどこか諦めたような、無理だと知っているような顔に見えた。もちろん、私がそう感じているだけで、本人はそこまで興味がない可能性もある。
「このよく映っている女の子は?」
「あっ、そ、それは変身する前の私なのです。本当の姿はこっちなの。これは秘密にしておいてくださいね」
「やっぱり変身するのですね」
「はい、魔法少女ですから。変身しないとすぐ身バレしちゃうから大変なのです。とりあえず、今度お土産を持ってきます。あっ、私の御剣島での滞在が正式に認められたらになるのですけど」
「そうですね。では、私はこれで失礼いたします。何かありましたら、気軽にお呼びください」
「よ、呼ぶって、どうやってですか?」
「この部屋の中にいる限り、心の中で念じて頂ければすぐに参ります」
つまり、この場所は魔力によって監視されている部屋ということになるのでしょうか。私に変な動きがあればすぐに伝わるということを言っている? 魔法少女の部屋を覗くなんてとってもハレンチです。
「エリーゼが念じない限り情報は遮断されていますし、私にしか声は届きませんのでご安心ください」
まるで、心を読まれているような気さえしてくる。この星那という子は、どこか不思議で大人びた雰囲気を感じさせる。
「ひょっとして、あなたも魔法が使えるの?」
「はい。兄ほどではございませんが、多少でしたら」
少し表情がやわらいだような気がする。魔法のことはやっぱり興味があるのでしょう。ということは、星那も魔法少女になるのですね。
「珍しいのですね。男性の方が魔法が得意なんて。御剣島の人は、魔法摂取薬を打ってないと聞きます。それなのに、何で魔法を使えるのか不思議なのです」
「全ての者が魔法を使えるわけではありません。御剣家の血縁者の一部にのみ引き継がれています」
「それで星那からみて、私とあなたのお兄さんではどちらの方が魔法使いとして優れていると思いますか?」
「どちらが優れているか、ですか。それは比べるまでもありません」
珍しくニコニコした表情をみせる星那。どうやら、魔法ではなく兄の話になると少し顔の表情が変化するということがよくわかった。大人びた表情から一転、年相応な柔らかい表情に変わる。こやつ、ブラコンですね……。
「そうですよね。魔法少女は特別ですもの。男性で魔法が使えるのは珍しいけど、そこまで期待しちゃいけないですよね」
「エリーゼは魔法少女の中で何番目に強いのですか?」
「わ、私は新人なので弱々です。い、今はまだそんなでもないけど、伸びしろはきっとある……はずなのです」
私は、何でこんな事まで喋ってしまっているのだろう。本土にいる魔法少女は、魔力溜りとよばれる魔力異常から出現するモンスターの討伐を行うのが主な仕事になっている。当たり前だが、全員が私よりも格段にレベルが高い。というか、私は新人なのでこれから成長していくはず、多分、きっと……です。
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