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四十四話目 勇者対魔王
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「エリオ! 僕の声が聞こえてる? レックスだよ」
いつもの快活な表情は無く、目は虚ろ。僕の声は届いている様子はない。
「ホーリーアロー!」
聖光の矢が僕を目掛けて幾つも飛んでくる。しかも避ける場所を誘導されているらしく、既に走り出しているエリオが聖剣を大きく振りかぶっていた。
「それなりに成長しているようで驚いたよ。でも、これぐらいならまだ大丈夫かな」
僕は、振り抜かれた聖剣をレーヴァテインで受け止めると、そのまま押し返した。お披露目前のステータスなので、レベルでいうところの二十前後といったところなのだろう。憑りつかれた状態なので、実際はもう少しやれるのだろうけど、これならば傷つけずに無力化することもできそうだ。
「ドレイン!」
すぐに僕は複数のドレインを飛ばしながらゴーストを追い出す作戦を試みる。さすがに、魔力をまとった拳で殴りまくるのは幼馴染に対してどうかと思うんだよね。
しかしながら、その作戦はあっさりとかわされてしまった。
「光りの加護を、ライトディフェンス!」
「なっ!」
なんと、聖女様の防御魔法が僕の出したドレインを消滅してしまったのだ。光属性魔法と暗黒魔法は相性が悪いということなのか。そうなると、聖光魔法とか更に相性が悪そうだよね……。
ふと、エリオを見ると口角が上がっており、あきらかにこの戦闘を楽しんでいる。おい、エリオ、何でお前は戦いながら笑っているんだ。いや、中身はゴーストか……。
僕の弱点を見つけたといわんばかりの笑顔なのかもしれない。エリオは魔力を高めながら聖剣に光りの珠をいくつも増殖していく。そして、魔法名を叫ぶと同時に僕に向けてその魔力の珠を放出した!
「ディバインストライク!」
何となく、あれは当たっちゃいけない技のような気がした。最初から逃げることを考えていなかったらヤバかったかもしれない。それほどにとんでもないスピードで僕の横を駆け抜けていった。勇者の必殺技といったところか……。
避けた先の壁が盛大に崩れさり、空いた穴から驚いたレムちゃんの声が聞こえてきた。
「お、おいっ! レックス、何が起こってんだよ」
どうやら隣の部屋で残りのスケルトンとゴーストを倒していたらしいレムちゃんが壊れた壁からこちらにやってきてくれた。
「レムちゃん、今の魔法、大丈夫だった?」
「ヤバいエネルギーを感知したから端に避けていたんだ。おかげで残りのスケルトンは全滅したみたいだがな」
いくらそこそこ広いお屋敷とはいえ、ポンポン魔法をぶっ放していたら外の誰かに気づかれてしまう。ウサ吉たちが抑えるのにも限界はある。
「レムちゃん、あまり時間は掛けられない。急ぐよ」
「っていうか、その剣は聖剣じゃねぇか!? 相手、勇者なのかよ。あっ、憑りつかれてるのか……」
「聖女様の光の魔法で、ドレインが防がれてしまうんだ。何か方法ないかな?」
「殴ればいいだろ。今のこいつらならステータスでゴリ押しできるだろ。魔力込めた攻撃でもゴーストは対象から出ていくんだ」
「……」
「お、お前、女だから殴るのはちょっととか思ってるんじゃねぇだろうな。べ、別に殴んなくても、軽くチョップでもすればいいだろっ」
「あっ、そうか、さすがレムちゃん。そうだね、魔力の攻撃を与えればいいだけだもんね」
これで、二対二。いや、ボスのレイスさんが逃げられない感じであたふたしているのが見える。レムちゃんを見て、更に焦っているのが丸わかりだ。
聖女様が付与魔法でエリオを助けようとする。あれは、魔力をアップさせる類の光魔法だろうか……。
「ライトインクリーズ!」
なかなか連携がとれていらっしゃる……と、思いきや、直接魔法を付与してしまったことで、エリオに取り憑いていたゴーストが弱りきった感じで出てきてしまった。あっ、ゴーストって光属性苦手っぽいもんね。こいつら、アホ丸出しか……。
「よ、よくわからないが、あとはあの聖女様をぶん殴れば終わりか!」
大した攻撃魔法もないと思われる聖女様相手に強気のレムちゃん。しかしながら、直接アタックはこわいのか、魔法でこれでもかとぶち当てていく。これで、聖女様に取り憑いたゴーストもあっさり出ていった。予想外すぎる、まさかの勝利。
「う、動くな。これ以上近づいたら、この女勇者がどうなっても知らないぞ」
しまった……エリオを人質にとられてしまった。
「俺はその女勇者がどうなっても別に構わない。……むしろ、居なくなった方がアイミーとの一騎打ちに持ち込める」
「レ、レムちゃん!?」
「えっ? 人質としての価値ないの。この人、まだ発表前だけど本物の勇者なんだよっ!」
「証拠はあるのか? 勇者候補というのは各地にいっぱいいるらしいじゃないか。なんで、そいつが勇者だといえるのだ」
「ほ、ほらっ、そこに落ちてるの紛うことなき聖剣だろっ。レムリアもさっきそれを見て聖剣だと言っていただろ!」
「……ほう、俺の名前を知っているのか。一応、お前の名前ぐらいは聞いといてやろうか。どうせすぐに忘れると思うがな」
「魔王軍、四天王が一人。アンデッド軍死霊レイスのプリサイファだ」
なるほど、四天王でしたか……。
「なんだかお前、四天王の割りに弱そうだな……」
いつもの快活な表情は無く、目は虚ろ。僕の声は届いている様子はない。
「ホーリーアロー!」
聖光の矢が僕を目掛けて幾つも飛んでくる。しかも避ける場所を誘導されているらしく、既に走り出しているエリオが聖剣を大きく振りかぶっていた。
「それなりに成長しているようで驚いたよ。でも、これぐらいならまだ大丈夫かな」
僕は、振り抜かれた聖剣をレーヴァテインで受け止めると、そのまま押し返した。お披露目前のステータスなので、レベルでいうところの二十前後といったところなのだろう。憑りつかれた状態なので、実際はもう少しやれるのだろうけど、これならば傷つけずに無力化することもできそうだ。
「ドレイン!」
すぐに僕は複数のドレインを飛ばしながらゴーストを追い出す作戦を試みる。さすがに、魔力をまとった拳で殴りまくるのは幼馴染に対してどうかと思うんだよね。
しかしながら、その作戦はあっさりとかわされてしまった。
「光りの加護を、ライトディフェンス!」
「なっ!」
なんと、聖女様の防御魔法が僕の出したドレインを消滅してしまったのだ。光属性魔法と暗黒魔法は相性が悪いということなのか。そうなると、聖光魔法とか更に相性が悪そうだよね……。
ふと、エリオを見ると口角が上がっており、あきらかにこの戦闘を楽しんでいる。おい、エリオ、何でお前は戦いながら笑っているんだ。いや、中身はゴーストか……。
僕の弱点を見つけたといわんばかりの笑顔なのかもしれない。エリオは魔力を高めながら聖剣に光りの珠をいくつも増殖していく。そして、魔法名を叫ぶと同時に僕に向けてその魔力の珠を放出した!
「ディバインストライク!」
何となく、あれは当たっちゃいけない技のような気がした。最初から逃げることを考えていなかったらヤバかったかもしれない。それほどにとんでもないスピードで僕の横を駆け抜けていった。勇者の必殺技といったところか……。
避けた先の壁が盛大に崩れさり、空いた穴から驚いたレムちゃんの声が聞こえてきた。
「お、おいっ! レックス、何が起こってんだよ」
どうやら隣の部屋で残りのスケルトンとゴーストを倒していたらしいレムちゃんが壊れた壁からこちらにやってきてくれた。
「レムちゃん、今の魔法、大丈夫だった?」
「ヤバいエネルギーを感知したから端に避けていたんだ。おかげで残りのスケルトンは全滅したみたいだがな」
いくらそこそこ広いお屋敷とはいえ、ポンポン魔法をぶっ放していたら外の誰かに気づかれてしまう。ウサ吉たちが抑えるのにも限界はある。
「レムちゃん、あまり時間は掛けられない。急ぐよ」
「っていうか、その剣は聖剣じゃねぇか!? 相手、勇者なのかよ。あっ、憑りつかれてるのか……」
「聖女様の光の魔法で、ドレインが防がれてしまうんだ。何か方法ないかな?」
「殴ればいいだろ。今のこいつらならステータスでゴリ押しできるだろ。魔力込めた攻撃でもゴーストは対象から出ていくんだ」
「……」
「お、お前、女だから殴るのはちょっととか思ってるんじゃねぇだろうな。べ、別に殴んなくても、軽くチョップでもすればいいだろっ」
「あっ、そうか、さすがレムちゃん。そうだね、魔力の攻撃を与えればいいだけだもんね」
これで、二対二。いや、ボスのレイスさんが逃げられない感じであたふたしているのが見える。レムちゃんを見て、更に焦っているのが丸わかりだ。
聖女様が付与魔法でエリオを助けようとする。あれは、魔力をアップさせる類の光魔法だろうか……。
「ライトインクリーズ!」
なかなか連携がとれていらっしゃる……と、思いきや、直接魔法を付与してしまったことで、エリオに取り憑いていたゴーストが弱りきった感じで出てきてしまった。あっ、ゴーストって光属性苦手っぽいもんね。こいつら、アホ丸出しか……。
「よ、よくわからないが、あとはあの聖女様をぶん殴れば終わりか!」
大した攻撃魔法もないと思われる聖女様相手に強気のレムちゃん。しかしながら、直接アタックはこわいのか、魔法でこれでもかとぶち当てていく。これで、聖女様に取り憑いたゴーストもあっさり出ていった。予想外すぎる、まさかの勝利。
「う、動くな。これ以上近づいたら、この女勇者がどうなっても知らないぞ」
しまった……エリオを人質にとられてしまった。
「俺はその女勇者がどうなっても別に構わない。……むしろ、居なくなった方がアイミーとの一騎打ちに持ち込める」
「レ、レムちゃん!?」
「えっ? 人質としての価値ないの。この人、まだ発表前だけど本物の勇者なんだよっ!」
「証拠はあるのか? 勇者候補というのは各地にいっぱいいるらしいじゃないか。なんで、そいつが勇者だといえるのだ」
「ほ、ほらっ、そこに落ちてるの紛うことなき聖剣だろっ。レムリアもさっきそれを見て聖剣だと言っていただろ!」
「……ほう、俺の名前を知っているのか。一応、お前の名前ぐらいは聞いといてやろうか。どうせすぐに忘れると思うがな」
「魔王軍、四天王が一人。アンデッド軍死霊レイスのプリサイファだ」
なるほど、四天王でしたか……。
「なんだかお前、四天王の割りに弱そうだな……」
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