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二十九話目 魔剣シュナイダー

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「待たせてしまって申し訳ないアイミー。レムリアは久し振りだな」

「急に来たのはアイミー達にゃ。気にしないでいいのにゃ」

 部屋に入ってきたのは、長いサラサラの金髪をした美少女シュナイダー。アイミーとレムちゃんの話を聞く限り、僕のイメージは気弱そうな女の子だったのだけど、凛とした姿と立ち振る舞いをみると、幼少期から比べてかなりの成長を遂げたらしい。そもそも、魔王軍四天王だったんだもんね。そりゃ、当り前か……。

「ところで、そちらの少年を紹介してもらえないか?」

「アイミーとレムちゃんの新しい主様にゃ。今日はちょっと面倒なことが起きたから、シュナちゃんに伝えにきたのにゃ」

「あ、主様……って、ま、まさか!? また魔王に騙されてるのか!」

 シュナちゃんは、僕をみると腰に差したレイピアを抜こうとしている。その禍々しい魔力は絶対に魔剣だよね。初対面の人にいきなり魔剣抜いちゃダメ絶対。

「レ、レックスは、大丈夫な魔王だ。魔剣を抜くなシュナイダー」

「う、嘘つけ、大丈夫な魔王などいるものか! まさか、また、私を四天王にするつもりなのだな。も、もうやらんぞ」

「そうじゃないにゃ。魔王が復活して、リュカスが襲いに来たにゃ。私達は危うく魔王城に連れていかれるところだったにゃ」

「話が全く見えぬぞ……。目の前に魔王がいて、リュカスが二人を襲った!? つまり、お前達は既に魔王の手に落ちたというのか……」

「アイミーはちょっと黙ってろ。シュナイダーが混乱してるだろ。とりあえず、俺が順を追って説明する」

 アイミーと二人で来なくて本当によかったと思う。どうやら、シュナちゃんも四天王にさせられて酷い目にあったとのこと。カリスマ性のスキルで洗脳に近い命令を多く受けていたようで、里のみんなにも迷惑を掛けたと自責の念にかられていた。

「つまり、あの魔王が復活したのは事実ということか。そして、私を再び四天王にしようとリュカスがここへ来る可能性が高いと言うのだな」

「理解してもらえて助かる」

「レックス殿、知らなかったとはいえ無礼を許してほしい。それから親友を、アイミーとレムリアを助けてくれたことを感謝する」

「いえ、僕も何でこんな面倒な職業を授かってしまったのか分からないんですけど、二人の力になれたようでよかったです」

 シュナちゃんは、少し考えるようにしながら困った表情をみせる。竜王リュカスがエルフの里に来るかもしれないのだ。

「リュカスがこの里に来るのは厄介だな。しかも、奴はステータスがそのままだったのだろう。今の私には対抗できる手段がない」

「そこで、シュナちゃんには新しく主様の四天王になることをおすすめしたいにゃ」

 何故そうなる、とアイミーに突っ込みを入れたいところだけど、いつエルフの里が襲われるのかわからない以上、対抗策としては一番ありな気はする。僕たちがこの場所でずっと待ち構えていることも出来ない。

「助けを呼んでも来るまでに時間を要するか……」

「一番近い俺の城からここまで、どんなに飛ばしても二時間以上は掛かるからな。それまで、エルフの里が耐えられるなら」

「リュカスの戦闘力を考えると、難しいだろう……。犠牲が大きすぎる」

「シュナちゃん、数日ならここで待機してもいいにゃ。でも、私たちも主様も目標があるから、いつまでもここにいることは出来ないにゃ」

「それは助かる」

「そうだな。であれば、シュナイダーに一つお願いがある。ここに滞在する数日の間、レックスに剣を教えてもらえないか?」

「魔王、いや、レックス殿に剣を教えるのか?
魔王なら魔法を学んだ方がいいのでは」

「俺たちは、あのクソ野郎とリュカスを倒すということで意見が一致している。レックスには魔法だけでなく、他の分野でも強くなってもらいたいんだ。引き出しは多いほど身を助けるからな」

 魔王という職業柄、魔法に特化したステータスではあるけど、物理攻撃強化スキルもある。総合的な力を手にすることで、自身の助けになることはいくらでもあるだろうし僕も賛成だ。

「それだけの可能性を秘めているということか」

「リュカスをあと少しのところまで追いつめたのは、このレックスだからな」

 間違ってはいないけど、その時、僕の記憶はなかったので全然胸を張れない。しかしながら、その話を聞いたシュナちゃんの目はピカーンと光ったような気がした。

「魔王になったばかりで四天王を返り討ちにするとはやるではないか。レックス殿、早速ではあるが、一つ手合わせ願いたい」

「て、手合わせですか。僕、まだレベル二十ですからね」

「レベル二十でリュカスを追い返したというのか。それは凄いな、すぐに準備をさせるから待っててくれ」

 そう言うと、シュナちゃんは魔剣を抱えたまま準備に向かってしまった。あのー、まさか手合わせで魔剣を使わないよね?


「お、おいっ、レックス。わかってるとは思うが絶対に本気を出すなよ」
「そうにゃ、主様が本気出したらシュナちゃんの腕が吹っ飛ぶにゃ」
「そして、気を失って……お、俺にチューとかするからな」
「主様、とても積極的だったにゃ!」
「ドレインで使用するエネルギーは、あの時に使った三十パーセント以下だからな。わかったな?」

「う、うん、わかった。それで、何か手合わせする上でアドバイスとかほしいんだけど」
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