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十九話目 スキルの連動
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翌朝起きると、顔がとてもベタベタしていた。寝汗? 昨日の特訓で疲れているのだろうか、何だか体も重い……。い、いや、これは誰かが僕の上で寝ている。猫耳がピコピコしている、これは……。何故かそこにはアイミーが寝ていた。
「ふにゃあぁー。起きたにゃ?」
どうやら、ベッドにもぐり込んだアイミーにずっと顔を舐められていたらしい。そのまま、いつの間にか寝てしまったのだろう。確か、昨夜カギはちゃんと掛けたはずなんだけど。
とはいえ、獣人とはいっても、見た目には可愛らしい少女にしか見えないわけでちょっと困る。
「ちょ、ちょっと、アイミー。な、何で、僕のベッドに」
「んんー、おはようございますですにゃ。アイミー、主様を起こしに来たんだけど、あたたかくて気持ちよかったから、ついつい寝ちゃったみたいにゃ」
「ね、寝るのも、舐めるのもダメだって!」
「ひ、ひどいにゃ。それは猫人族の挨拶を侮辱するということですにゃ……」
「い、いや、決してそんなつもりはなかったんだけど。ごめんねアイミー」
「……ふっ、主様も、ちょろいにゃ」
「ん、何か言った?」
「な、何でもないにゃ。主様は早く朝食の準備をするにゃ。アイミーはレムちゃんを起こしに行くにゃ」
「う、うん。そうだね」
昨日狩ったワイルドディアの残りを燻製にしておいたので、今朝は簡単にディア肉を薄くスライスしたサンドイッチにするつもりだ。
レムちゃんの住むこのお城は修復魔法や保存魔法が掛けられていて、物を壊しても元通りに戻ってしまうし、スパイスや食材は保存魔法の掛けられている食在庫にしまうことで鮮度が保たれている。なので、下処理さえ終わっていれば大量のディア肉でも問題ない。
とはいっても、下処理は僕以外は誰もしてくれなさそうなので出来る範囲でしかやらないけども。
昨夜作ったスープとサンドしたパンを切っていると、アイミーとレムちゃんがやってきた。レムちゃんはやはり朝が苦手なようでアイミーにおんぶされていて目も半分開いていない。
「はいっ、レムちゃん、昨日のスープを温め直したから飲んで。目が覚めるよ」
「うん……。いい匂い」
「アイミー、午前中の特訓は、同じように追いかけっこをするのかな?」
「うーん、実は少し気になることがあるにゃ。昨日レムちゃんから聞いた話だと主様は不思議なドレインを使っているにゃ。アイミーにも見せてもらいたいにゃ。その上で、特訓内容を決めようと思うにゃ」
「ドレインを見せればいいの?」
「体力、魔力が満タンの時にドレインした場合、使用した魔力が元通りになったと聞いたにゃ。例えば、そのエネルギーを他に回せないかなと思っているにゃ」
「どういうこと?」
「魔法には身体強化魔法っていうのがあるにゃ。この魔法を使うと獣人族のように大幅にスピードやパワーがアップするにゃ。暗黒魔法にそういう魔法はないけど、主様のドレインならひょっとしたら出来るんじゃないかにゃと」
「何、そのドレイン万能説」
「普通はドレインの大きさを変えたり、糸状にしたり、影のように動かしたり出来ないにゃ」
「まあ、そうなのかもしれないけど……」
「お、俺は、レックスのスキルが連動して意味不明な魔法になっている可能性があると思っているってアイミーに話したんだ」
「スキル?」
「ああ、魔王にはカリスマ性の他に魔力変換というスキルがある。これは、ユニークスキルではなく自分の体力を魔力に変換する捨て身のスキルなんだが、レックスにはそれに器用さの極みとかいうおかしなスキルがあるだろ。最初は手先が器用で料理が得意じゃねぇかぐらいにしか思ってなかったんだが……」
「このスキルがドレインに影響を与えている可能性が強いにゃ」
確かに、手先は器用な方だという自覚は昔からあったけど、スキルに昇華されるまで凄いものだとは思ってもみなかった。
「俺とアイミーが考えているのはドレインで吸収したエネルギーを身体強化魔法に変換することだ。もしくは、自分の体力を削って身体強化魔法を使うということも考えられるが、それはちょっと微妙だろ」
「確かにね。代償は無い方がいいかな。戦闘時に自分から体力減らすとか、ちょっとね……」
「出来るかどうかはいろいろ試してみた方がいいと思うにゃ。もしもの時に使えるかもしれないし、こういう経験値の引き出しが、その者の強さに繋がるものにゃ」
「レックス、魔王にとって魔力と暗黒魔法はなくてはならないものだ。どんな時でも魔力切れとか起こしてはならない。その為には自分の体力が無くなることも厭わぬことだ」
「う、うん。わかった。ところで、僕は身体強化魔法って使い方知らないんだけど……」
「それは、お前、エキスパートがいるだろうが。なあ、アイミー」
「そうですにゃ。主様の目の前にいるのは獣王バリュオニウスにゃ」
そうだ、獣人族は魔法が苦手ではあるけど、こと身体強化魔法に至っては最も得意としている。しかも目の前にいるアイミーは身体強化魔法の専門家と言ってもいい。教わるのに、これ以上に適した人はいないだろう。
「ふにゃあぁー。起きたにゃ?」
どうやら、ベッドにもぐり込んだアイミーにずっと顔を舐められていたらしい。そのまま、いつの間にか寝てしまったのだろう。確か、昨夜カギはちゃんと掛けたはずなんだけど。
とはいえ、獣人とはいっても、見た目には可愛らしい少女にしか見えないわけでちょっと困る。
「ちょ、ちょっと、アイミー。な、何で、僕のベッドに」
「んんー、おはようございますですにゃ。アイミー、主様を起こしに来たんだけど、あたたかくて気持ちよかったから、ついつい寝ちゃったみたいにゃ」
「ね、寝るのも、舐めるのもダメだって!」
「ひ、ひどいにゃ。それは猫人族の挨拶を侮辱するということですにゃ……」
「い、いや、決してそんなつもりはなかったんだけど。ごめんねアイミー」
「……ふっ、主様も、ちょろいにゃ」
「ん、何か言った?」
「な、何でもないにゃ。主様は早く朝食の準備をするにゃ。アイミーはレムちゃんを起こしに行くにゃ」
「う、うん。そうだね」
昨日狩ったワイルドディアの残りを燻製にしておいたので、今朝は簡単にディア肉を薄くスライスしたサンドイッチにするつもりだ。
レムちゃんの住むこのお城は修復魔法や保存魔法が掛けられていて、物を壊しても元通りに戻ってしまうし、スパイスや食材は保存魔法の掛けられている食在庫にしまうことで鮮度が保たれている。なので、下処理さえ終わっていれば大量のディア肉でも問題ない。
とはいっても、下処理は僕以外は誰もしてくれなさそうなので出来る範囲でしかやらないけども。
昨夜作ったスープとサンドしたパンを切っていると、アイミーとレムちゃんがやってきた。レムちゃんはやはり朝が苦手なようでアイミーにおんぶされていて目も半分開いていない。
「はいっ、レムちゃん、昨日のスープを温め直したから飲んで。目が覚めるよ」
「うん……。いい匂い」
「アイミー、午前中の特訓は、同じように追いかけっこをするのかな?」
「うーん、実は少し気になることがあるにゃ。昨日レムちゃんから聞いた話だと主様は不思議なドレインを使っているにゃ。アイミーにも見せてもらいたいにゃ。その上で、特訓内容を決めようと思うにゃ」
「ドレインを見せればいいの?」
「体力、魔力が満タンの時にドレインした場合、使用した魔力が元通りになったと聞いたにゃ。例えば、そのエネルギーを他に回せないかなと思っているにゃ」
「どういうこと?」
「魔法には身体強化魔法っていうのがあるにゃ。この魔法を使うと獣人族のように大幅にスピードやパワーがアップするにゃ。暗黒魔法にそういう魔法はないけど、主様のドレインならひょっとしたら出来るんじゃないかにゃと」
「何、そのドレイン万能説」
「普通はドレインの大きさを変えたり、糸状にしたり、影のように動かしたり出来ないにゃ」
「まあ、そうなのかもしれないけど……」
「お、俺は、レックスのスキルが連動して意味不明な魔法になっている可能性があると思っているってアイミーに話したんだ」
「スキル?」
「ああ、魔王にはカリスマ性の他に魔力変換というスキルがある。これは、ユニークスキルではなく自分の体力を魔力に変換する捨て身のスキルなんだが、レックスにはそれに器用さの極みとかいうおかしなスキルがあるだろ。最初は手先が器用で料理が得意じゃねぇかぐらいにしか思ってなかったんだが……」
「このスキルがドレインに影響を与えている可能性が強いにゃ」
確かに、手先は器用な方だという自覚は昔からあったけど、スキルに昇華されるまで凄いものだとは思ってもみなかった。
「俺とアイミーが考えているのはドレインで吸収したエネルギーを身体強化魔法に変換することだ。もしくは、自分の体力を削って身体強化魔法を使うということも考えられるが、それはちょっと微妙だろ」
「確かにね。代償は無い方がいいかな。戦闘時に自分から体力減らすとか、ちょっとね……」
「出来るかどうかはいろいろ試してみた方がいいと思うにゃ。もしもの時に使えるかもしれないし、こういう経験値の引き出しが、その者の強さに繋がるものにゃ」
「レックス、魔王にとって魔力と暗黒魔法はなくてはならないものだ。どんな時でも魔力切れとか起こしてはならない。その為には自分の体力が無くなることも厭わぬことだ」
「う、うん。わかった。ところで、僕は身体強化魔法って使い方知らないんだけど……」
「それは、お前、エキスパートがいるだろうが。なあ、アイミー」
「そうですにゃ。主様の目の前にいるのは獣王バリュオニウスにゃ」
そうだ、獣人族は魔法が苦手ではあるけど、こと身体強化魔法に至っては最も得意としている。しかも目の前にいるアイミーは身体強化魔法の専門家と言ってもいい。教わるのに、これ以上に適した人はいないだろう。
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