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十八話目 魔王のスキル
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「主様、今晩の料理はそのワイルドディアなのかにゃ。ところで、頭が無いのは血抜きをしたからにゃ?」
「えーっと、そ、それはだね……」
「アイミー、ワイルドディアの頭はレックスの魔法で消滅してしまったのだ」
「えっ、消滅したにゃ? 暗黒魔法に消滅させるような初級魔法ってあったかにゃ……?」
「そ、そんな初級魔法あるかよ。レックスが使ったのは、ただのドレインだ」
「ドレインって、確か相手の力を奪うだけの魔法だったはずにゃ」
「そう、それ。レックスのドレインは普通とは違うんだ。ちょっと異常だぞ……」
魔法の専門家であるレムちゃんに、異常と言われてしまうのは驚きではある。ちょっと悲しい言われ方だけれど。
「主様には、不思議な力があるような気がしたにゃ。明日からの特訓が楽しみになったにゃ」
「今回のアイミーの勘は当たっている。前回はクソだったけどな。しかし、あのスキルはレックスが持っている」
前回というのは前の魔王様のことだろう。本当に何をされたのかとても気になる。
「スキルって、カリスマ性のこと?」
「主様、スキルにはユニークスキルと呼ばれるものがあるにゃ。主様の持っているカリスマ性のスキルがそのユニークスキルにゃ」
「ユニークスキルというのは、その者しか持つことが出来ない固有のスキルということだ。つまり、あのクソ野郎はカリスマ性のスキルを持っていないことになる」
「そういうことにゃ。獣人族をまとめるのに四天王の力は欲しいけど、あいつの部下になるのはお断りにゃ」
「あ、あのさ、もしよかったら魔王と何があったのか教えてもらえるかな? その、言いたくないことだったら言わなくてもいいんだけど」
アイミーとレムちゃんが顔を見合わせながら話すべきかをアイコンタクトで相談しているようだった。どちらかというと、アイミーは話してもいいでしょ? と聞いている感じでレムちゃんが「い、いや話すなよ」的な表情をしている。
「主様、カリスマ性のスキルというのは魔王軍四天王を生み出すためのユニークスキルにゃ。あのピカピカで四天王を意のままに操ることも出来るにゃ」
「意のままに……」
「そ、そうだ。嫌がる私を無理やり……」
レムちゃんに一体何を……。
「最前線で魔力が枯渇するまで暴れさせたにゃ。広範囲魔法使えるのレムちゃんだけだから、いっぱい酷使されにゃ」
「ちなみにアイミーはどんなことを?」
「基本的にはレムちゃんと一緒にゃ。無理やり戦わされて、休む間もなく次の戦闘場所へ。あいつは四天王を道具としてしか見てないクソ野郎にゃ」
「俺とアイミーは魔王が勇者に倒されて、ようやく解放されたのだ。それでもカリスマ性のスキルの影響は強く、奴が死んでからも数年はその影響下にあったほどだ」
「あいつがスキルを失って、主様にスキルが移ったから自由になったのかもしれないにゃ」
「話を聞けば聞くほど、何でアイミーが再び四天王になったのか不思議でならないんだけど」
「言ったはずにゃ。獣人族は本能で主様を決めるにゃ。もちろん、前回のことがあったから少しは考えたけど、主様はとても優しいお人だったから問題なしにゃ」
「お、お前は、ただ獣人の国をまとめる力が欲しかっただけだろ」
「そうとも言うにゃ。にゃはっ」
「まあ、俺も、レックスは、あいつとは違うとは思うけどよ……」
「そういえば四天王ということは、あと二人いるんだよね? その人たちはどうなったの」
「魔剣シュナイダーと竜王リュカスにゃ。シュナちゃんは、今でもたまに会ってお茶会をする仲にゃ。リュカスは頭が固くてカリスマ性の洗脳が最後まで解けていなかったから、多分まだ魔王城にいると思うにゃ」
もう、名前からして強そうだよね。魔剣とか竜王とかまさに四天王っぽい。
「リュカスは魔王の側近でも参謀の役割を担っていた。俺が何度も死にそうになったのは、リュカスのせいでもあるんだ。だから、あのクソ野郎同様に、俺はリュカスも好かん」
「レムちゃんはリュカスとは喧嘩ばかりしてたにゃ。まぁ、アイミーもリュカスはあんまり好きじゃないけど」
なるほど、カリスマ性スキルのことが少しづつわかってきた。ユニークスキルにより四天王を配下にすることで大幅にパワーアップさせる。ただ、その代わりに四天王を洗脳に近い形で支配し、操ることが出来てしまうということか。
「つまり、僕がアイミーに何かお願いしたら聞いてくれるということなのかな?」
「な、何をお願いするつもりにゃ!? ペロペロは怪我した時と朝の挨拶の時だけにゃ」
朝の挨拶で何でペロペロされなきゃならないんだ。よくわからないけど、獣人ならではの、ご挨拶とかなのだろう……。
とりあえず、カリスマ性のスキルを意識して使用してみる。
「お。おいっ、お、お前、何、ピカピカ光ってんだよ!」
「アイミー、お手!」
猫人族であるアイミーにお手とか屈辱的だろう。これは犬人族のしつけに使われるものだからね。
「にゃんっ! 主様、お手にゃ」
アイミーは間髪入れず、無駄に空中で一回転しながらドヤ顔でお手を決めてみせた。そこには何の羞恥心もなければ、むしろ褒めて褒めてと犬人族のように尻尾をブンブンに振ってさえいる。
アイミー、それでいいのか。一応、獣人の国の王になるんだよね。
「えーっと、そ、それはだね……」
「アイミー、ワイルドディアの頭はレックスの魔法で消滅してしまったのだ」
「えっ、消滅したにゃ? 暗黒魔法に消滅させるような初級魔法ってあったかにゃ……?」
「そ、そんな初級魔法あるかよ。レックスが使ったのは、ただのドレインだ」
「ドレインって、確か相手の力を奪うだけの魔法だったはずにゃ」
「そう、それ。レックスのドレインは普通とは違うんだ。ちょっと異常だぞ……」
魔法の専門家であるレムちゃんに、異常と言われてしまうのは驚きではある。ちょっと悲しい言われ方だけれど。
「主様には、不思議な力があるような気がしたにゃ。明日からの特訓が楽しみになったにゃ」
「今回のアイミーの勘は当たっている。前回はクソだったけどな。しかし、あのスキルはレックスが持っている」
前回というのは前の魔王様のことだろう。本当に何をされたのかとても気になる。
「スキルって、カリスマ性のこと?」
「主様、スキルにはユニークスキルと呼ばれるものがあるにゃ。主様の持っているカリスマ性のスキルがそのユニークスキルにゃ」
「ユニークスキルというのは、その者しか持つことが出来ない固有のスキルということだ。つまり、あのクソ野郎はカリスマ性のスキルを持っていないことになる」
「そういうことにゃ。獣人族をまとめるのに四天王の力は欲しいけど、あいつの部下になるのはお断りにゃ」
「あ、あのさ、もしよかったら魔王と何があったのか教えてもらえるかな? その、言いたくないことだったら言わなくてもいいんだけど」
アイミーとレムちゃんが顔を見合わせながら話すべきかをアイコンタクトで相談しているようだった。どちらかというと、アイミーは話してもいいでしょ? と聞いている感じでレムちゃんが「い、いや話すなよ」的な表情をしている。
「主様、カリスマ性のスキルというのは魔王軍四天王を生み出すためのユニークスキルにゃ。あのピカピカで四天王を意のままに操ることも出来るにゃ」
「意のままに……」
「そ、そうだ。嫌がる私を無理やり……」
レムちゃんに一体何を……。
「最前線で魔力が枯渇するまで暴れさせたにゃ。広範囲魔法使えるのレムちゃんだけだから、いっぱい酷使されにゃ」
「ちなみにアイミーはどんなことを?」
「基本的にはレムちゃんと一緒にゃ。無理やり戦わされて、休む間もなく次の戦闘場所へ。あいつは四天王を道具としてしか見てないクソ野郎にゃ」
「俺とアイミーは魔王が勇者に倒されて、ようやく解放されたのだ。それでもカリスマ性のスキルの影響は強く、奴が死んでからも数年はその影響下にあったほどだ」
「あいつがスキルを失って、主様にスキルが移ったから自由になったのかもしれないにゃ」
「話を聞けば聞くほど、何でアイミーが再び四天王になったのか不思議でならないんだけど」
「言ったはずにゃ。獣人族は本能で主様を決めるにゃ。もちろん、前回のことがあったから少しは考えたけど、主様はとても優しいお人だったから問題なしにゃ」
「お、お前は、ただ獣人の国をまとめる力が欲しかっただけだろ」
「そうとも言うにゃ。にゃはっ」
「まあ、俺も、レックスは、あいつとは違うとは思うけどよ……」
「そういえば四天王ということは、あと二人いるんだよね? その人たちはどうなったの」
「魔剣シュナイダーと竜王リュカスにゃ。シュナちゃんは、今でもたまに会ってお茶会をする仲にゃ。リュカスは頭が固くてカリスマ性の洗脳が最後まで解けていなかったから、多分まだ魔王城にいると思うにゃ」
もう、名前からして強そうだよね。魔剣とか竜王とかまさに四天王っぽい。
「リュカスは魔王の側近でも参謀の役割を担っていた。俺が何度も死にそうになったのは、リュカスのせいでもあるんだ。だから、あのクソ野郎同様に、俺はリュカスも好かん」
「レムちゃんはリュカスとは喧嘩ばかりしてたにゃ。まぁ、アイミーもリュカスはあんまり好きじゃないけど」
なるほど、カリスマ性スキルのことが少しづつわかってきた。ユニークスキルにより四天王を配下にすることで大幅にパワーアップさせる。ただ、その代わりに四天王を洗脳に近い形で支配し、操ることが出来てしまうということか。
「つまり、僕がアイミーに何かお願いしたら聞いてくれるということなのかな?」
「な、何をお願いするつもりにゃ!? ペロペロは怪我した時と朝の挨拶の時だけにゃ」
朝の挨拶で何でペロペロされなきゃならないんだ。よくわからないけど、獣人ならではの、ご挨拶とかなのだろう……。
とりあえず、カリスマ性のスキルを意識して使用してみる。
「お。おいっ、お、お前、何、ピカピカ光ってんだよ!」
「アイミー、お手!」
猫人族であるアイミーにお手とか屈辱的だろう。これは犬人族のしつけに使われるものだからね。
「にゃんっ! 主様、お手にゃ」
アイミーは間髪入れず、無駄に空中で一回転しながらドヤ顔でお手を決めてみせた。そこには何の羞恥心もなければ、むしろ褒めて褒めてと犬人族のように尻尾をブンブンに振ってさえいる。
アイミー、それでいいのか。一応、獣人の国の王になるんだよね。
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