上 下
13 / 71

十二話目 レムリア

しおりを挟む
「あっ、うん、スキルは使わないから安心して」

「スキルのことを知っているとか、ほ、本当に新しい魔王なのかよ……」

「二階の窓とか壊しちゃってごめんね。あとでちゃんと直しておくから」

「二階の窓……あぁ、それなら大丈夫だ。もう直っている」

「レムちゃんの魔法はとっても便利なのにゃ。血を使ってイメージしたモノを作り出すことが出来るにゃ」

 アイミーがまるで自分の手柄であるかのようにアピールしているが、窓を壊したの君だからね。それにしても魔法というのにはとっても興味がある。

「ヴァンパイアなら造作もないことだ」

「レムちゃん、僕は本当の魔王を倒すために強くなりたいんだ。よかったら、僕に魔法を教えてくれないかな」

「いいぞ」

「もちろん、嫌だとは思うんだけど、何か僕に出来ることがあれば……」

「だから、いいぞと言っている」

「えっ! いいの!?」

「魔王は嫌いだが、暗黒魔法には興味がある。あれは魔王にしか使えない魔法だからな。俺も奴の暗黒魔法は何度も見ているからよく知っている。安心しろ、コツはわかっているつもりだ」

「あ、ありがとう、レムちゃん」

「それに、あの魔王が復活した気配を感じたから、俺もしょうがなく目覚めたというのもある。お、お前があの魔王を倒すというのなら、協力してやろうではないか」

「あっ、やっぱり、あの嫌な気配はクソ野郎が復活したってことだったのにゃ」

「アイミーも感じたか。あぁ、間違いない、近いうちに俺たちの元にも来るかもしれない。注意をしておいた方がいいだろう。そ、それからレックス……」

「それから?」

「お、お前、料理は出来るか?」

「料理? 一人暮らしをしていたから、それなりには出来ると思うけど……」

 エリオのように美味しい料理を作ることは難しいかもしれない。でも、食材がどう調理されれば美味しくなるかは何となくわかっているつもりだ。それに、一人暮らしをしてきたわけなので、それなりに作ることは出来る……と思う。

「ま、魔法を教えてやる代わりに、修行中の料理はお前に担当してもらうからな。お、俺はこう見えて美食家なんだ! 普段食事をとらないが、美味しいものは好きだ。人間の作る料理は繊細だと聞く。だから、あれだ、しっかり頼むぞ……」

 レムちゃんは横を向きながら、ぶっきらぼうにそう言った。僕と目を合わせないあたり、照れがあるように思える。しかしながら、ちょっと期待されている気がしないでもない。

「ちなみに、アイミーは料理は出来るの?」

「主様、各々得意なものもあれば、苦手な物もあるものにゃ」

 アイミーに調理は期待出来ないらしい。どうやら本当に、僕が一人でやるしかなさそうだ。

「特訓については、午前中はアイミーが基礎体力アップトレーニングをするにゃ。レムちゃんは午後から頼むにゃ」

「うむ。朝から起きれるわけないからな。俺はそれで構わない」

 レムちゃん、昼まで寝るつもりだな……。いや、教えてもらえるだけでもありがたいわけで、別に構わないんだけどさ。

「つまり、レムちゃんは朝ごはんはいらないってことでいいのかな?」

「うむむ……。と、とりあえず今日の晩ごはんの様子をみてから判断しよう」

「もうすぐ日が暮れるし、今日は三人で懇親会をするにゃ。特訓は明日から始めるにゃ」

「あれっ、そういえば、特訓ってここで行うの? そ、その、レムちゃんはいいのかな?」

「ふんっ、べ、別に構わん。この森は、特訓するにはうってつけの場所だからな。普段からモンスター討伐の手が入ってないから、必然的に生き残った強いモンスター共が集まっている。もちろん、食材にも困らない」

 レムちゃんが自慢げに胸を張りながら、ヤバい森アピールをしている。ここに来るまでは、アイミーがあっさりモンスターを倒していたので、そこまで身の危険を感じなかったのだけど、どうやら結構危険な森のようだ……。

「とりあえず、今日のところはアイミーが適当にモンスターを狩ってくるにゃ。主様には申し訳ないのですが、キッチンで今晩のごはんの準備をお願いしたいにゃ」

「そうしたら、アイミーにはビーグ鳥をとってきてもらえるかな? あとは、葉物野菜が幾つかあると助かるかな」

「ビーグ鳥でいいのかにゃ? あれは小さすぎるから、もっと大きなワイルドボアとかワイルドベアの方が食べごたえがあるにゃ」

 ワイルドなモンスターばかり推してくる。そんなデカいモンスターを持ってこられても量が多すぎて食べきれないと思うんだけどな。

「アイミーは言われた通りにビーグ鳥をとってくればいい! レ、レックス、キッチンはこっちだ。案内するからついてこい。い、一応、調味料関係と調理器具について説明しておく」

「あっ、うん。よろしくね、レムちゃん」



***



 アイミーがとってきた大量のビーグ鳥を半分ほど下処理しながら骨付き肉のゴロゴロ野菜スープを作ることにした。

 このビーグ鳥のスープはエリオが得意にしていた料理だ。ニンニクを一欠片入れると更に味に深みが増すのだけど、キッチンの端でレムちゃんが涙目をしながら嫌がっているように見えるので入れるのは止めておいた。

 嫌ならニンニクは除けておけばいいのに。とはいえ、味付けは成功といっても良いなかなかの仕上がりだ。味も濃く付け合わせのパンと一緒に食べると美味しい。久し振りに作ったにしてはなかなかの出来だった。

「主様の料理、美味しいですにゃ! パンが止まらないにゃ」

 そこまで喜んでもらえると作った方としても嬉しい。

「レムちゃんはどうかな?」

「……お、美味しいな。レ、レックスは他にもいろいろ作れるのか?」

「そこまで種類は多く作れないけど、何パターンかはあるから飽きないように工夫するよ」

「よし、ご、合格だ! 明日の朝から三食ご飯を用意するのだぞ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

月見ひろっさん
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

処理中です...