35 / 61
34話 今田豪
しおりを挟む
俺の名前は今田豪、一応警察官だ。小さい頃は、「今だ、ゴー!」とか言われて、よく走らされていたせいか、運動神経だけはよかった。警察官になったのも、剣道を長く続けていたこともあって、顧問の先生からすすめられたからというのが理由だった。
最近はたまに異世界にも連れていかれる。同僚に話をしたらバカにされそうなので、黙ってはいるが、本当に俺は異世界に行っている。
というか、召喚獣として呼び出されている。人生何が起こるかわからねぇものだ。
「今田巡査長、突然何処へ行ってしまわれたのですか!?」
「あー、わりぃわりぃ。急に婆さんに道を訪ねられてな。道のりを説明していたんだよ。悪かったな」
「いえいえ、後ろを振り返ったら、姿が消えていたので驚きました」
パトロール中に数秒間とはいえ、いきなり姿を消してしまったせいか驚かしてしまったようだな。とはいえ、この程度なら何の問題もない。どうやら呼ばれそうな時が、何となく体感的にもわかるようになってきているので、今後はいきなり目の前から消えていなくなるという事態は避けられそうだ。
「あっ、ちょっと、そこの公衆トイレ行ってくるわ」
「あっ、はい。かしこまりました」
ふぅー、あぶねぇ。サバチャイさん連チャンで呼び出す時あるから、注意が必要なんだよな。ほらっ、きたきたきたっ!
召喚っ!
「あ、あのー、今田巡査長、大の方だったと思うのですけど、出てくるの速すぎませんか? 十秒もなかった気がしますが……」
「お前、覗いてたのか?」
「あっ、いえ、そういうつもりではなかったのですが……」
召喚されている間、どのくらい時間が進んでいるか、わからないだけにタイミングが難しい。今後は、呼ばれる前に時計を確認しておくべきだな……。
「そ、そうか? 一応、パトロール中だしな。警察官なら日頃からスピード感を持って行動しなければならない。お前も訓練しておけよ」
「そ、そんな訓練が必要なんですね……。勉強になります!」
こいつは、今月からやってきたばかりの新人だ。誤魔化すのも楽なので、適当なことを言っているが、真面目にメモをとっているあたりは、なかなかにかわいい後輩だ。
「ところで、その手に持っているのは何ですか? トイレに落とし物ですか」
し、しまった……。俺が持っているのは、ルークさんから召喚料としてもらったポーションの瓶だ。こいつは、ちょっとした外傷や体力の回復に効き目のある異世界グッズだ。
「いや、これは俺の私物だ。持病があって、定期的に摂取しなきゃならねぇーんだよ」
ルークさんから、古びた銀貨を渡されたのだけど、これ持って帰っても何の役にも立たなそうだよなと思った訳で、こちらから提案をさせてもらった。その銀貨で買えるポーションがいいと。
「今田巡査長、持病があったのですね……。体が辛い時がありましたら何でも言ってください! 私で代われるものであればやらせて頂きます」
「お、おう。まぁ、大丈夫だ。体が丈夫でないと、この仕事はやってられねぇからな。このポーションがあれば何の問題もねぇよ」
「ポーション?」
「あー違ぇー、違ぇー。よく効く薬だから俺が勝手にポーションってよんでるんだよ」
「それにしても、変わった飲み薬ですね。その瓶の容器といい、中身のブルーの色味といい、まるでファンタジー世界のポーションみたいですね」
「そ、そうか? そんなことより、パトロールの続きに行くぞ。時間は有限なんだ」
「は、はい!」
どうやらルークさん的にも、ポーションの方がありがたいようだったので助かったと言われた。親父さんの仕事関係で手に入れやすいとのこと。銀貨を大量に渡されても、換金に手間がかかるし、変に疑われかねないだけに正直助かった。
このポーションは、未開封の物で半年ほど日持ちするらしい。半年を過ぎた物は、使い物にならない訳ではなく、都度劣化していくということだ。一年ぐらいでただの水になっちまうから早めに使う必要がある。
さて、俺がこのポーションをどう使おうとしているかというと、もちろん人助けなどではない。ある意味では人助けになるかもしれないけどな。
「今田巡査長は、明日は非番でしたね。ゆっくりされるのですか?」
「そうだな。少し大事な用があるんだよ」
「ま、まさか、デートですか!?」
「違ぇーよ。バーカ」
もちろん、大事な用件というのはこのポーションだ。俺はある新興宗教団体の教祖とアポをとっている。俺はこのポーションを使って奇跡を起こさせる、手助けをしてやることを考えついた。
宗教法人というのは儲かる。税金面で優遇されているのはもちろん、信者は無尽蔵にお金をお布施していく。そして、教祖は信者を集めるため、信仰力を高めるために奇跡を見せる必要がある。ちょっとした外傷ならその場で治してしまうポーションがあれば効果は絶大だ。
必要なのは銀貨ではなく、ファンタジーな異世界グッズなんだよ。サバチャイさんの財布を増やすってのも悪くはねぇー。けれど、札はナンバーリングされているから危険が伴う。よほど大掛かりに増やさない限りは、バレねぇとは思うけど。サバチャイさんには指紋をなるべくつけねぇように注意はしておいた。すぐにATMに持っていくと言ってたから大丈夫だとは思うけどな。
「さて、ポーション一瓶で一千万ぐらいにするか。あまり高すぎてもリピートがなさそうだしな。それにしても、日持ちに制限があるってのは理想的だったぜ。定期的に注文をもらえそうだ」
最近はたまに異世界にも連れていかれる。同僚に話をしたらバカにされそうなので、黙ってはいるが、本当に俺は異世界に行っている。
というか、召喚獣として呼び出されている。人生何が起こるかわからねぇものだ。
「今田巡査長、突然何処へ行ってしまわれたのですか!?」
「あー、わりぃわりぃ。急に婆さんに道を訪ねられてな。道のりを説明していたんだよ。悪かったな」
「いえいえ、後ろを振り返ったら、姿が消えていたので驚きました」
パトロール中に数秒間とはいえ、いきなり姿を消してしまったせいか驚かしてしまったようだな。とはいえ、この程度なら何の問題もない。どうやら呼ばれそうな時が、何となく体感的にもわかるようになってきているので、今後はいきなり目の前から消えていなくなるという事態は避けられそうだ。
「あっ、ちょっと、そこの公衆トイレ行ってくるわ」
「あっ、はい。かしこまりました」
ふぅー、あぶねぇ。サバチャイさん連チャンで呼び出す時あるから、注意が必要なんだよな。ほらっ、きたきたきたっ!
召喚っ!
「あ、あのー、今田巡査長、大の方だったと思うのですけど、出てくるの速すぎませんか? 十秒もなかった気がしますが……」
「お前、覗いてたのか?」
「あっ、いえ、そういうつもりではなかったのですが……」
召喚されている間、どのくらい時間が進んでいるか、わからないだけにタイミングが難しい。今後は、呼ばれる前に時計を確認しておくべきだな……。
「そ、そうか? 一応、パトロール中だしな。警察官なら日頃からスピード感を持って行動しなければならない。お前も訓練しておけよ」
「そ、そんな訓練が必要なんですね……。勉強になります!」
こいつは、今月からやってきたばかりの新人だ。誤魔化すのも楽なので、適当なことを言っているが、真面目にメモをとっているあたりは、なかなかにかわいい後輩だ。
「ところで、その手に持っているのは何ですか? トイレに落とし物ですか」
し、しまった……。俺が持っているのは、ルークさんから召喚料としてもらったポーションの瓶だ。こいつは、ちょっとした外傷や体力の回復に効き目のある異世界グッズだ。
「いや、これは俺の私物だ。持病があって、定期的に摂取しなきゃならねぇーんだよ」
ルークさんから、古びた銀貨を渡されたのだけど、これ持って帰っても何の役にも立たなそうだよなと思った訳で、こちらから提案をさせてもらった。その銀貨で買えるポーションがいいと。
「今田巡査長、持病があったのですね……。体が辛い時がありましたら何でも言ってください! 私で代われるものであればやらせて頂きます」
「お、おう。まぁ、大丈夫だ。体が丈夫でないと、この仕事はやってられねぇからな。このポーションがあれば何の問題もねぇよ」
「ポーション?」
「あー違ぇー、違ぇー。よく効く薬だから俺が勝手にポーションってよんでるんだよ」
「それにしても、変わった飲み薬ですね。その瓶の容器といい、中身のブルーの色味といい、まるでファンタジー世界のポーションみたいですね」
「そ、そうか? そんなことより、パトロールの続きに行くぞ。時間は有限なんだ」
「は、はい!」
どうやらルークさん的にも、ポーションの方がありがたいようだったので助かったと言われた。親父さんの仕事関係で手に入れやすいとのこと。銀貨を大量に渡されても、換金に手間がかかるし、変に疑われかねないだけに正直助かった。
このポーションは、未開封の物で半年ほど日持ちするらしい。半年を過ぎた物は、使い物にならない訳ではなく、都度劣化していくということだ。一年ぐらいでただの水になっちまうから早めに使う必要がある。
さて、俺がこのポーションをどう使おうとしているかというと、もちろん人助けなどではない。ある意味では人助けになるかもしれないけどな。
「今田巡査長は、明日は非番でしたね。ゆっくりされるのですか?」
「そうだな。少し大事な用があるんだよ」
「ま、まさか、デートですか!?」
「違ぇーよ。バーカ」
もちろん、大事な用件というのはこのポーションだ。俺はある新興宗教団体の教祖とアポをとっている。俺はこのポーションを使って奇跡を起こさせる、手助けをしてやることを考えついた。
宗教法人というのは儲かる。税金面で優遇されているのはもちろん、信者は無尽蔵にお金をお布施していく。そして、教祖は信者を集めるため、信仰力を高めるために奇跡を見せる必要がある。ちょっとした外傷ならその場で治してしまうポーションがあれば効果は絶大だ。
必要なのは銀貨ではなく、ファンタジーな異世界グッズなんだよ。サバチャイさんの財布を増やすってのも悪くはねぇー。けれど、札はナンバーリングされているから危険が伴う。よほど大掛かりに増やさない限りは、バレねぇとは思うけど。サバチャイさんには指紋をなるべくつけねぇように注意はしておいた。すぐにATMに持っていくと言ってたから大丈夫だとは思うけどな。
「さて、ポーション一瓶で一千万ぐらいにするか。あまり高すぎてもリピートがなさそうだしな。それにしても、日持ちに制限があるってのは理想的だったぜ。定期的に注文をもらえそうだ」
0
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる