上 下
15 / 61

14話 ポリスマン2

しおりを挟む
 ポリスマンは驚いていた。

 おいおいおい。なんなんだよこの破壊力は……。久し振りに拳銃を撃ったわけなのではあるが、威力があきらかにおかしい。

 これは五連発の回転式リボルバーだったはず。的に穴を開けるぐらいならまだしも、的を吹っ飛ばすのは予想外だった。

「やはり、鉄砲も弾も強化されてるね。サバチャイの菜切り包丁と同じよ」

「サバチャイさん、これは一体どういうことなんだよ。何か知ってるのか?」

「どうやら召喚された時に持っていた物は強化されるっぽいね。サバチャイの包丁もデカい熊を真っ二つにしたよ」

「いやいやいや、何を言ってるのかよくわかんねーんだけど」

「召喚獣の特権ね。多分その警棒も、どえらい強度になってるはずね」

 ポリスマンは警棒を取り出し、下向きに振り下ろすと棒が倍近くに伸びた。武器の質が異常に高い。シャーロット様もジゼル様もポリスマンの一挙手一投足から目を離すことができない。というか、僕も含めてもうめっちゃ釘付けになっている。

「本当に強度上がってんのか? なぁ、そこの姉ちゃん、的をもう一つ用意してもらえるか?」

「は、はい。かしこまりました」

 普通にシャーロット様をあごで使うポリスマン。僕の友達か、お手伝いさんとでも勘違いしてる可能性がある。何も知らないとはいえ、冷や冷やさせてくれる。

「はいっ、ドッカーンっと」

 軽く振るわれた黒い棒状の武器は、ポリスマンの言葉通りに的を吹き飛ばしていった。

「これはなかなか頼りになりそうね。遠距離も近距離もバッチリよ」

 サバチャイさんも納得のご様子。凄まじい戦闘力だ。ただ、ステータス面では下級召喚獣レベルというのが唯一残念なところか。

「マジかよ……。どうなったらあんなに吹き飛ぶんだよ」

「破壊力がマシマシね。これが召喚パワーよ」

 サバチャイさんが、物知り顔でポリスマンに説明をしている。きっと包丁の切れ味にかなり驚いていたのだろう。どうやら共感が欲しかったと思える。

「よし、じゃあまた戻してくれ。これで弾が失くなっていたら、一気にブルーになるわー。マジヤベーんだから。こればっかりは祈るしかねぇーな」

「チチンポイポイ、バングラディッシュ! &バングラディッシュ!」

 短くした召喚魔法すら省略を始めたようだ。サバチャイさんの異世界慣れが加速している。

「わかっちゃいたけど、速攻で呼び戻しやがったな。まあいい、サバチャイさん朗報だ。戻ってすぐに弾を確認したが、使用した分も元通りだ」

「ということは? どういうことねっ!」

「いや、あんたのはじめた実験だろーが! とにかくだ、弾は五発まで使い放題ってことだ」

 あの、目に見えない程の爆発攻撃が五回も。僕がファイアベアーだったら間違いなく絶望していることだろう。何もさせてもらえないのだから。あんな攻撃、一方的な蹂躙にしかならない。サバチャイさんといい、ポリスマンといい規格外すぎる。

「お前バカか? 五発撃ち終わったら、また再召喚するよ。実質、これで弾切れはないね。撃ちまくりよ」

「マジかー。サバチャイさん、あんた見た目と違って、随分と頭がキレるじゃねーか」

「ちょっと待ってくれるかしら。弾切れがないって、さっきの攻撃が撃ち放題ってことなの!?」

 珍しくシャーロット様も狼狽されている。魔力切れのようなものは存在しないというのだから驚きだ。

「言っただろう。魔法とは違う世界をみせてやるってよ。威力については、俺もビビッちまったけどな」

「こ、こんなの、想定を超えた凄まじさだわ……」
「こ、これが超上級召喚獣なのね……」

 シャーロット様とジゼル様が、驚きすぎて呆然と立ち尽くしている。正直、僕もその結果に驚きを隠せない。

「ルークさん、とりあえず弾は大丈夫だったから今回はいいけどよ。次呼んだときは何かグレートなお土産を期待してるぜ」

「お、お土産ですか……。そ、そうですね、何かあったかなー、ちょっと考えておきます」

「じゃあまたな。サバチャイさん、送っちゃってくれよ」

「了解、バングラディッシュ!」

 もはや、出身地を叫んでるだけのはずなのに召喚魔法が動き出す不思議。もう気にしない方向でいこう。




「サバチャイさん、確かもう一つスキルがありましたよね」

「おー、ルーク覚えてたか。もう一つのスキルは分身よ。サバチャイ全力パワーで分身してみるから見ててほしいね」

 レベルアップに続いて戦闘力の大幅増強に気を良くしたのか、サバチャイさんもノリノリなようだ。

「分身っ!」

 その叫び声とともにサバチャイさんがヌルっと二つに分かれた。それは、びっくりするぐらい気持ち悪い分身というよりも見た目に分裂だった。

「どっちもサバチャイさんなんですか?」

「見ればわかるね! どっちもサバチャイよ。それにしても、ルークどうしよう。サバチャイ凄い実験思いついちゃった……」

 あまり感情の機微が少ない、サバチャイさんにしては思いの外興奮している。次は何の実験をするつもりなのか。

「実験ですか……」

「サバチャイのポケットの中には銀貨があるね。これを地面に置いて……」

 どちらも本体というのは本当みたいで、持ち物も一緒に分身もとい分裂している。サバチャイさんのやろうとしていることは僕にも理解ができた。つまりお金を増やそうとしているのだ。

「分身解除ね!」

 再び気持ち悪くヌルっと合体していくとサバチャイさんは一人に戻る。そして地面に置いてある銀貨は倍に増えたまま消えない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

周囲が優しくないイケメンばかりなので、優しいイケメンを召喚する!

ぬい
恋愛
 侯爵令嬢のイリスは、麗しい家族のもと侯爵令嬢らしく生きようと考えている。しかし周囲の、許嫁・先輩・先生・執事といったイケメンは、皆優しくない。イケメンとは冷たい生き物なのか。いいやそんな馬鹿な――そうだ、優しいイケメンを召喚しよう。そこから始まるコメディ方向の逆ハー風ファンタジーです。

異世界に来ちゃったけど、甘やかされています。

猫野 狗狼
恋愛
異世界に気がつくと転移していた主人公吉原凪。右も左もわからなかったが一つだけわかったことがある。それは女性が少ないこと!深くフードをかぶり近くにあった街に訪れた凪はあてもなくフラフラとさ迷っていたが、ふと目に付いた先にあった張り紙を見て宮廷魔術師になることを決める。 これは、女性が希少な世界に転移した凪が出会ったイケメン達に甘やかされたり成長したりする話。 お気に入り500人突破!いつも読んで下さり、ありがとうございますm(_ _)m 楽しんで頂けたら幸いです。 一週間に1〜2話のペースで投稿します。

処理中です...