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141 合成

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 ドランクモンキーは群れの仲間とは関係が良好な魔物だと聞いていたのだけど、その関係を失わせる物がある。

「ほーれー、とってこーい!」

 無論、マヌルー玉である。愛犬がボール遊びをするがごとく飛ぶように駆けていく。愛犬と違うところは拾ってもこちらに戻ってこないところだろう。むしろ、誰にも渡さないとばかりに仲間同士の間で険悪な雰囲気が漂っている。

 マヌルー成分が異常に高いこの玉のことをすでに理解しているドランクモンキー。死にものぐるいで仲間との奪い合いを展開している。

 それはもう喧嘩という範疇を超えて、殺し合いに発展している。

 まあ、僕としては群れの数が減ることはありがたいことなので放っておいて、単独行動をとっているドランクモンキーや少数の群れを狙って逐次撃破していっている。

 ステータスがある程度上昇するまではこの作戦で行こうと思う。ドランクモンキーを倒すことで俊敏のステータスは上がりやすくなる。

 そうすれば相対する群れの数が増えても対処できるようになるはずだ。

「俊敏だけでなく魔力量も増えてくれるといいんだけどね……」

 ランクアップに伴い魔力関係のステータスも多少は上がったものの魔力量は心もとない。

 今も節約しながら使用しているけど、すぐに底をついてしまう。マジックポーションはガチャでもあまり出ないアイテムのため、手持ちの在庫もほとんどない。

 僕の戦い方的にマジカルソードを扱う際に魔力を消費することになる。元々、ハリトを数発しか撃てない魔力量なので、もう少し何とかならないものかと悩んでいる。

 マジカルソードは今のところ最大で魔力を込めると半分近くの魔力を消費して三十センチ伸び、斬れ味もアップする。

 つまり、二回使用したらもうマジカルでもなんでもない普通のソードになってしまうのだ。

 もちろん斬れ味だけをアップさせることも可能で、その場合でも四回までで魔力が切れてしまう。

 ちなみに斬れ味が落ちたマジカルソードではやはりそれなりにドランクモンキーを倒すのにも時間を要してしまう。

「ハリト! ハリト! ハリト!」

 そこで、現在の僕の戦い方はというと、インベントリと魔法のスクロールを利用した省エネ作戦に落ち着いている。

 インベントリで落とし穴に落としてからの魔法のスクロール。森でハリトを使用するのは危険だけど、落とし穴の中で使用する分には何も問題ない。ちゃんと後で穴も埋めておくしね。

 ハリトのスクロールがもっと欲しい。あとでガチャを回してみようかな。もう少し倒せばドランクモンキーガチャが出現すると思うんだ。

「ガチャもそうだけどインベントリの合成も可能性もあるか……」

 水場でマギカ草っぽいもの発見したのだ。インベントリに入れてみて本当にマギカ草だった場合、水があればマジックポーションに合成可能なのではなかろうかと思ったりしている。

 ハリトのスクロールも欲しいけど、マジックポーションも欲しい。ポーションって何本飲んでも体は大丈夫なのだろうか。この分だと戦闘に入るたびに飲むことになりそうなんだけど。

「まあ、いいか。とりあえず、しばらくはハリトのスクロールも大丈夫だし、マギカ草を採取しに行こうかな」

 とりあえずは、池の周辺を縄張りにしているドランクモンキーは全て討伐が完了した。水場近くの縄張りは人気だろうから、他の群れが移動してくる可能性はあるけど、少なくともしばらくは大丈夫なはず。

 初日から順調すぎるぐらいには倒せている。これも全てマヌルー玉のおかげなのだけど、僕はここへマヌルー玉を作りに来たわけではない。

 あくまでも防御より遊撃ポジションの確立と、メイン武器であるマジカルソードの扱いに慣れるため。

 今は特訓の第一段階でとにかく数を捌くことで物理的に慣れる訓練をさせられてると思っている。

 そのためにもマジックポーションを手に入れる必要がある。

「よしっ、かなり群生してる」

 問題はあれがマギカ草かどうかなのである。見た目は間違いなくマギカ草。確認するために一度インベントリに入れる。そうすればこれがマギカ草であるかが判明する。

「頼むよ、本当に頼む」

 ●マギカ草×20

「よ、よしっ! これでマジカルソードを普段使いできる」

 元々インベントリにあったブルーに変わった『マジックポーション』をタップすると、インベントリ内のアイテムを使って合成しますか? と出てくる。

 アイテム『マギカ草』、『水』でマジックポーションを合成しますか?
 →はい
 →いいえ

 悩むまでもなく、はいを選択する。

 インベントリのマジックポーションは十一個に増えてくれた。マギカ草二個に水を合成することでマジックポーション一つになるらしい。

 その後、周辺にあるマギカ草をどんどんインベントリに集めては合成を繰り返し、マジックポーションの数は二百本まで増えていた。

 この辺りに自生していたマギカ草はほとんど取り尽くした。何日かしたらまた採取しに来てもいいけど、それまでは次の群生地を探したい。

 とはいえ、そろそろ日も傾いてきている。

「マギカ草を探しながら、今日のところは拠点へと戻ろうか」
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