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123 バルドル盗賊団5
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人を斬ったのはもちろんはじめてだ。何ともいえない気持ち悪さはある。それでも異世界に来てから何度も魔物を倒してきた経験が少し心を軽くしてくれる。
「悪く無い判断だったと思うわ」
いつの間にやら隣に来ていたアルベロに背中を叩かれる。うん、思っていたよりも大丈夫だ。
「うん」
「見て。ナイフを出そうとしていたわ」
予想通り攻撃する隙を狙っていたということだ。とどめを刺さなかったら、攻撃を受けていた可能性が高い。
「それにしても、マジカルソードの斬れ味が鋭すぎますね。やっぱり、マジカルシリーズは大当たりに違いございません」
アドリーシャもやってきて、胴体を真っ二つにされた盗賊に対して十字架をおでこに持っていきお祈りをしている。
「他のみんなは?」
「もう、終わったわ」
キャットアイはボスのバルドルを殺すことなく縄で縛りあげている。
これで、盗賊団の討伐は完了か。
「アドリーシャ、他に感知に引っかかる人とかいないかな?」
「先ほどから確認しておりますが、これで全部でございます」
「そっか。ありがとう」
「大丈夫でございますか?」
「えっ、何で?」
「顔色が……とても悪そうにみえます」
大丈夫だと思っていたのだけど、実際はかなりきていたらしい。
「大丈夫だよ。塞いでいた入口をもとに戻さないとね」
この世界なら割とよくある話だ。もっと慣れないといけない。
「では、私も一緒に」
インベントリの作業なのでアドリーシャに出来ることは特にはない。それでも心配してそばにいてくれることが心強い。
普段ポンコツのくせにこういうところで聖女っぽさを出してくるのは何かずるいな。
インベントリをとり除くと、そこには天使になった盗賊団の人たちが控えていた。
「聖女様、ご無事でございましたか?」
「ええ、問題ございません。中に入ってバルドルたちを運ぶ手伝いをしてくれますでしょうか」
「かしこまりました」
「お、おめーら、は、早く俺を助けろ! えっ、はあ? や、やめろ、何しやがる」
バルドルからしたら意味がわからないだろう。仲間だと思っていた人が目をキラキラさせて裏切っているのだから。
それにしてもちょうど大きな馬車が来ていてよかったね。歩いていかずに中継都市まで行けるのだから。
「ニール様、彼らのことはどのように報告させるつもりでございますか?」
彼らというのは天使さんたちのことだろう。とりあえず、全員を引き連れてリンドンシティの冒険者ギルドに自習してもらうとして、彼らのことはどうしたものか。
「盗賊団の内紛ということで、処理してもらおう。そうすることで、少しは罪も軽くなるだろうし、ついでに支援している商会についても話してもらおっか」
「では、そのように指示しておきます。でも、せっかく盗賊団を倒したのに皆様のご活躍をお伝えしなくていいのでしょうか」
アドリーシャ的に、こういった活動をアピールしたい気持ちはわかる。しかしながら、経験的にわかるのは関わると面倒くさいということだ。
少なくとも支援していたという商会は敵に回すことになるし、その規模が大きかったら目も当てられない。
そして、それは仲間の反応も一緒だった。
「いらないわ。面倒ごとに巻きこまれる可能性が増えるだけだもの」
「そうだよねー」
「知りたいのは、どこの商会が関わっているかぐらいにゃ」
カルメロ商会ラブの猫さんは一人カチコミをかける可能性を否定できない。
ちなみに裏で手を引いていたのはスリーズモンド商会という、かなり大きい商会であることがわかった。
カルメロ商会とは商売敵でもあるらしく、メインで扱う品目も似かよっているそうだ。
「スリーズモンドも採掘事業がメインにゃ。ここでカルメロ商会の馬車を狙っていたのは許せないにゃ」
盗賊団と手を組み、商売敵である商会の馬車を狙わせるとはキャットアイが許せないと思うのも理解できる。
食料や武器の提供で狙った品物を略奪させるだけでなく、自分たちの馬車も被害にあったことにして、その保険金で更に利益をあげていたのだそうだ。
異世界にも保険金とかあるんだね。魔物や盗賊の多いこの世界では事業としてはかなり厳しそうな気がしないでもない。
「でも、相手も名誉男爵なんでしょ?」
「そこもカルメロ商会と一緒なんだ」
「冒険者ギルドがどう判断するかだよねー」
「たいした処罰じゃなかったら、とっちめてやるにゃ」
相手も名誉とはいえ貴族。お金をつかって買収とか上位の貴族にお願いしたりもあるだろう。とっちめると言っても、僕たちが率先して動いたら単なる商会への盗賊行為ともとられかねない。
猫さんの気持ちもわからなくはないけど、やはり関わらないというのがベストの選択に思えてしまう。
「ひとまずは冒険者ギルドの手腕をみてみようよ。こちらも王国のような腐敗した関係じゃないことを祈りたいね」
「まあ、そうするしかないにゃ」
まあ、天使軍団を誘導してスリーズモンド商会にカチコムという選択肢がないわけでもない。それでも、心がきれいになった人たちを洗脳するように向かわせるのもちょっと違うと思うんだよね。
「悪く無い判断だったと思うわ」
いつの間にやら隣に来ていたアルベロに背中を叩かれる。うん、思っていたよりも大丈夫だ。
「うん」
「見て。ナイフを出そうとしていたわ」
予想通り攻撃する隙を狙っていたということだ。とどめを刺さなかったら、攻撃を受けていた可能性が高い。
「それにしても、マジカルソードの斬れ味が鋭すぎますね。やっぱり、マジカルシリーズは大当たりに違いございません」
アドリーシャもやってきて、胴体を真っ二つにされた盗賊に対して十字架をおでこに持っていきお祈りをしている。
「他のみんなは?」
「もう、終わったわ」
キャットアイはボスのバルドルを殺すことなく縄で縛りあげている。
これで、盗賊団の討伐は完了か。
「アドリーシャ、他に感知に引っかかる人とかいないかな?」
「先ほどから確認しておりますが、これで全部でございます」
「そっか。ありがとう」
「大丈夫でございますか?」
「えっ、何で?」
「顔色が……とても悪そうにみえます」
大丈夫だと思っていたのだけど、実際はかなりきていたらしい。
「大丈夫だよ。塞いでいた入口をもとに戻さないとね」
この世界なら割とよくある話だ。もっと慣れないといけない。
「では、私も一緒に」
インベントリの作業なのでアドリーシャに出来ることは特にはない。それでも心配してそばにいてくれることが心強い。
普段ポンコツのくせにこういうところで聖女っぽさを出してくるのは何かずるいな。
インベントリをとり除くと、そこには天使になった盗賊団の人たちが控えていた。
「聖女様、ご無事でございましたか?」
「ええ、問題ございません。中に入ってバルドルたちを運ぶ手伝いをしてくれますでしょうか」
「かしこまりました」
「お、おめーら、は、早く俺を助けろ! えっ、はあ? や、やめろ、何しやがる」
バルドルからしたら意味がわからないだろう。仲間だと思っていた人が目をキラキラさせて裏切っているのだから。
それにしてもちょうど大きな馬車が来ていてよかったね。歩いていかずに中継都市まで行けるのだから。
「ニール様、彼らのことはどのように報告させるつもりでございますか?」
彼らというのは天使さんたちのことだろう。とりあえず、全員を引き連れてリンドンシティの冒険者ギルドに自習してもらうとして、彼らのことはどうしたものか。
「盗賊団の内紛ということで、処理してもらおう。そうすることで、少しは罪も軽くなるだろうし、ついでに支援している商会についても話してもらおっか」
「では、そのように指示しておきます。でも、せっかく盗賊団を倒したのに皆様のご活躍をお伝えしなくていいのでしょうか」
アドリーシャ的に、こういった活動をアピールしたい気持ちはわかる。しかしながら、経験的にわかるのは関わると面倒くさいということだ。
少なくとも支援していたという商会は敵に回すことになるし、その規模が大きかったら目も当てられない。
そして、それは仲間の反応も一緒だった。
「いらないわ。面倒ごとに巻きこまれる可能性が増えるだけだもの」
「そうだよねー」
「知りたいのは、どこの商会が関わっているかぐらいにゃ」
カルメロ商会ラブの猫さんは一人カチコミをかける可能性を否定できない。
ちなみに裏で手を引いていたのはスリーズモンド商会という、かなり大きい商会であることがわかった。
カルメロ商会とは商売敵でもあるらしく、メインで扱う品目も似かよっているそうだ。
「スリーズモンドも採掘事業がメインにゃ。ここでカルメロ商会の馬車を狙っていたのは許せないにゃ」
盗賊団と手を組み、商売敵である商会の馬車を狙わせるとはキャットアイが許せないと思うのも理解できる。
食料や武器の提供で狙った品物を略奪させるだけでなく、自分たちの馬車も被害にあったことにして、その保険金で更に利益をあげていたのだそうだ。
異世界にも保険金とかあるんだね。魔物や盗賊の多いこの世界では事業としてはかなり厳しそうな気がしないでもない。
「でも、相手も名誉男爵なんでしょ?」
「そこもカルメロ商会と一緒なんだ」
「冒険者ギルドがどう判断するかだよねー」
「たいした処罰じゃなかったら、とっちめてやるにゃ」
相手も名誉とはいえ貴族。お金をつかって買収とか上位の貴族にお願いしたりもあるだろう。とっちめると言っても、僕たちが率先して動いたら単なる商会への盗賊行為ともとられかねない。
猫さんの気持ちもわからなくはないけど、やはり関わらないというのがベストの選択に思えてしまう。
「ひとまずは冒険者ギルドの手腕をみてみようよ。こちらも王国のような腐敗した関係じゃないことを祈りたいね」
「まあ、そうするしかないにゃ」
まあ、天使軍団を誘導してスリーズモンド商会にカチコムという選択肢がないわけでもない。それでも、心がきれいになった人たちを洗脳するように向かわせるのもちょっと違うと思うんだよね。
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