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118 お別れ
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「もう行ってしまうんだね。また、来てくれるの?」
「年に一度は寄らせてもらうよ」
何だかんだカルメロさんの所へ採掘するために戻る約束をしてるので、その途中に風の谷へ寄り道するぐらいはいいだろう。
「本当に? 約束だよ」
それにここへ顔を出すことはルリカラにとっても大事なことだ。長い年月を生きるドラゴンなので、この場所に同族がいると知っておくのはきっと悪いことではないはず。
「うん、もちろん。ルリカラもここは居心地が良さそうだからね」
「キューイ」
他種のドラゴンと会うのが珍しいのか、同胞、同胞と風の谷の民からも大人気だった。聖獣として聖都で大々的に紹介されようものなら、毎日こうなるのだろうなというイメージが湧いた。
まあでも、ケツァルコアトル族だからルリカラも心を許しているのだろうけど、これが一般の人だったらそうはいかないだろう。
ただ、マリアンヌさんのケースもあるから一概には言えない。
「それはよかった。今度は同胞の好きな川魚をいっぱい用意しておくよ」
「キュイ、キュイ」
昨日まで開催されていたお見送りの会では風の谷の集落で採れた野菜や川魚などを振る舞ってもらい、ルリカラはなかでも川魚にご執心だった。
やはり、この子は肉よりも魚の方が好きなようだ。特に内臓をよく好む。臭くて美味しいと独り占めしていた。
「属性付与の効果はどうだったかな?」
やはり、初めて行なう付与だったからなのか、若干の不安はあるらしい。
振り返ると、猫さんもアルベロもルイーズも笑顔で親指をぐっと突き出している。
「問題ないみたいだよ」
「それならよかった。情報として知っているのと、実際にやるのとではまた違うからね」
あの時、前任の長から記憶を共有してもらったらしい。
それにしても付与か。うらやましい。聖都まで付与ができない僕との差がまた大きく開いたことだろう。あくまでも補助的なものとは言っていたけど、どの程度変わるのかは僕も気になる。
僕もマジカルソードをもっと使いこなして、よりよい付与にするためにはどうすればいいかを考えよう。
「グレーリノ、また来るね」
「うん。旅の話を楽しみにしてるからね」
「またね」
グレーリノは聖域を守護する長となったので、気軽に旅とかは行けないらしい。それはそれでかわいそうな気もしないでもない。でも、本人はあまり気にした様子もないので、この場所と風の谷の民が好きなのだろう。
僕が悠久の時を刻むドラゴンの考えなどわかるはずもないのだから。
馬車が進んでいくと、通り過ぎる度に風の谷の民全員が手を降ってお別れを惜しんでくれた。たった三日間の滞在だったけど、僕たちにとってもここはお気に入りの場所となった。
「いーっぱい、お土産もらっちゃったねー」
「うん。インベントリの半分は使っちゃってるからね」
相手が人ではなくドラゴンとわかったので、食料をいただく時にインベントリのことを話したら、持てるだけ持っていってくれと大量に農作物をわけてもらったのだ。
トマトや葉物野菜に小麦がいっぱい。しばらくは困らない量を確保できてしまった。お肉や魚は旅の途中で確保すればいいからね。
「キュイ?」
「えっ、次はどこに行くかって?」
「ルリカラちゃんが大好きな美味しいものがいっぱいある場所でしゅよー」
次の場所は聖都ルーンまでのちょうど中間に位置する中継都市リンドンシティだ。
人がいっぱいとか言うとルリカラのテンションが下がりそうなので、ルイーズなりに気を使って美味しいものがある場所と紹介したのだろう。
聖イルミナ共和国においても聖都ルーンに次いで二番目に人が多い都市なのだそうだ。人や物が多く集まり、賑やかな場所らしい。
途中でいくつかの村があるけど、食料にも余裕ができたので、よほどのことがない限りはそのまま馬車旅を進めることになるだろう。
「じゃあ、アルベロ。よろしくね」
「そんなに難しくないから大丈夫よ」
御者の席に座って馬に指示を伝える。今日はアルベロと一緒に馬車の操縦を教わる。
といっても、そんなに難しいことではないらしい。基本的な指示は進め、止まれ、曲がれの三つのみ。馬も馴れていて賢いので、基本的にはマイペースで道なりに進んでいってくれる。
急げとかもあるけど、よほどのことがない限りはその指示は出さない。もう、追われてるわけでもないし、急ぐ旅でもないからね。
「予想通り、ニールはこの子たちに好かれているから問題なさそうね」
「よかったよ。これでローテーション組んで旅を進めていけるね」
アルベロが言うには、何よりも大事なのは信頼関係らしく、そのあたりは普段からお世話をしてきたことで構築できているようだ。
美味しいお水やブラッシング、たまに甘い果物をあげたりしていたのでお馬さんとの仲はいい。
ちなみにアドリーシャは相性が良くなかったのかまるでダメだった。アドリーシャが御者席に座ると馬が動いてくれなかったし、何だかそっぽ向いて不機嫌になってしまうのだ。
その理由はよくわからなかったものの、まあ、そんなこともあるのだろう。とりあえず、三人で御者役を回せるので十分ではあるんだけどね。
とりあえず、悲しそうな顔をしているアドリーシャを全員でなぐさめてあげた。
君はお馬さんのお世話からじっくりスタートしてもらおうか。
「年に一度は寄らせてもらうよ」
何だかんだカルメロさんの所へ採掘するために戻る約束をしてるので、その途中に風の谷へ寄り道するぐらいはいいだろう。
「本当に? 約束だよ」
それにここへ顔を出すことはルリカラにとっても大事なことだ。長い年月を生きるドラゴンなので、この場所に同族がいると知っておくのはきっと悪いことではないはず。
「うん、もちろん。ルリカラもここは居心地が良さそうだからね」
「キューイ」
他種のドラゴンと会うのが珍しいのか、同胞、同胞と風の谷の民からも大人気だった。聖獣として聖都で大々的に紹介されようものなら、毎日こうなるのだろうなというイメージが湧いた。
まあでも、ケツァルコアトル族だからルリカラも心を許しているのだろうけど、これが一般の人だったらそうはいかないだろう。
ただ、マリアンヌさんのケースもあるから一概には言えない。
「それはよかった。今度は同胞の好きな川魚をいっぱい用意しておくよ」
「キュイ、キュイ」
昨日まで開催されていたお見送りの会では風の谷の集落で採れた野菜や川魚などを振る舞ってもらい、ルリカラはなかでも川魚にご執心だった。
やはり、この子は肉よりも魚の方が好きなようだ。特に内臓をよく好む。臭くて美味しいと独り占めしていた。
「属性付与の効果はどうだったかな?」
やはり、初めて行なう付与だったからなのか、若干の不安はあるらしい。
振り返ると、猫さんもアルベロもルイーズも笑顔で親指をぐっと突き出している。
「問題ないみたいだよ」
「それならよかった。情報として知っているのと、実際にやるのとではまた違うからね」
あの時、前任の長から記憶を共有してもらったらしい。
それにしても付与か。うらやましい。聖都まで付与ができない僕との差がまた大きく開いたことだろう。あくまでも補助的なものとは言っていたけど、どの程度変わるのかは僕も気になる。
僕もマジカルソードをもっと使いこなして、よりよい付与にするためにはどうすればいいかを考えよう。
「グレーリノ、また来るね」
「うん。旅の話を楽しみにしてるからね」
「またね」
グレーリノは聖域を守護する長となったので、気軽に旅とかは行けないらしい。それはそれでかわいそうな気もしないでもない。でも、本人はあまり気にした様子もないので、この場所と風の谷の民が好きなのだろう。
僕が悠久の時を刻むドラゴンの考えなどわかるはずもないのだから。
馬車が進んでいくと、通り過ぎる度に風の谷の民全員が手を降ってお別れを惜しんでくれた。たった三日間の滞在だったけど、僕たちにとってもここはお気に入りの場所となった。
「いーっぱい、お土産もらっちゃったねー」
「うん。インベントリの半分は使っちゃってるからね」
相手が人ではなくドラゴンとわかったので、食料をいただく時にインベントリのことを話したら、持てるだけ持っていってくれと大量に農作物をわけてもらったのだ。
トマトや葉物野菜に小麦がいっぱい。しばらくは困らない量を確保できてしまった。お肉や魚は旅の途中で確保すればいいからね。
「キュイ?」
「えっ、次はどこに行くかって?」
「ルリカラちゃんが大好きな美味しいものがいっぱいある場所でしゅよー」
次の場所は聖都ルーンまでのちょうど中間に位置する中継都市リンドンシティだ。
人がいっぱいとか言うとルリカラのテンションが下がりそうなので、ルイーズなりに気を使って美味しいものがある場所と紹介したのだろう。
聖イルミナ共和国においても聖都ルーンに次いで二番目に人が多い都市なのだそうだ。人や物が多く集まり、賑やかな場所らしい。
途中でいくつかの村があるけど、食料にも余裕ができたので、よほどのことがない限りはそのまま馬車旅を進めることになるだろう。
「じゃあ、アルベロ。よろしくね」
「そんなに難しくないから大丈夫よ」
御者の席に座って馬に指示を伝える。今日はアルベロと一緒に馬車の操縦を教わる。
といっても、そんなに難しいことではないらしい。基本的な指示は進め、止まれ、曲がれの三つのみ。馬も馴れていて賢いので、基本的にはマイペースで道なりに進んでいってくれる。
急げとかもあるけど、よほどのことがない限りはその指示は出さない。もう、追われてるわけでもないし、急ぐ旅でもないからね。
「予想通り、ニールはこの子たちに好かれているから問題なさそうね」
「よかったよ。これでローテーション組んで旅を進めていけるね」
アルベロが言うには、何よりも大事なのは信頼関係らしく、そのあたりは普段からお世話をしてきたことで構築できているようだ。
美味しいお水やブラッシング、たまに甘い果物をあげたりしていたのでお馬さんとの仲はいい。
ちなみにアドリーシャは相性が良くなかったのかまるでダメだった。アドリーシャが御者席に座ると馬が動いてくれなかったし、何だかそっぽ向いて不機嫌になってしまうのだ。
その理由はよくわからなかったものの、まあ、そんなこともあるのだろう。とりあえず、三人で御者役を回せるので十分ではあるんだけどね。
とりあえず、悲しそうな顔をしているアドリーシャを全員でなぐさめてあげた。
君はお馬さんのお世話からじっくりスタートしてもらおうか。
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