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83 その頃、王都では1
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■■■冒険者ギルド長 バルトロメオ視点
部下の連絡によると、年契の話について前向きに検討しているそうで、契約内容について細かい部分をつめていきたいと言ってきているらしい。
やはり、所詮は低ランク冒険者だ。少し大金をちらつかせればこんなもんだ。あとはじっくり時間を掛けてニールの秘密を探らせればいい。
新しい担当のアローヘッドにな。
キャットアイが契約金額を強引につり上げてきやがったので、すぐに契約を解除した。
こっちが下手に出てたら、出張費まで大幅に請求してきやがった。使い勝手のいい冒険者だったがそろそろ潮どきだったのだろう。
「残念だがキャットアイとは少し距離を置かなければならねぇな。これからは頼むぜアローヘッド」
「ああ、美味しい話なら大歓迎さ」
Aランクの冒険者にとって低ランクのパーティを観察、調査することなど楽な仕事としか言いようがない。普段危険な仕事の依頼が多い分、こういった美味しい仕事というのはある意味特権ともいえる。
「まあ、とりあえずは明後日以降からだがな」
「わかった」
明日は王宮での慰労会がある。さすがに王家のもてなしを受けて酒も飲めばその日は何も動けないだろう。
「一応、気にすることがあるとしたらホワイトドラゴンのブレスらしい」
「ホワイトドラゴン?」
「ああ、調査対象がテイムした従魔なんだが、そのブレスで人が変わったように真人間に変わっちまうらしい」
「それのどこが危険なのさ?」
「犯罪者が天使のような性格に生まれ変わるらしい。しかも、簡単には避けらないらしいぜ」
「それはキャットアイでもかい?」
「そう言っていた」
少し考えるような素振りをみせるアローヘッドだったが、それでも対象への警戒を少し修正する程度かと言って部屋を出ていった。
AランクがDランクを調査するのだからそんなもんなんだろう。
それにしても、白金貨一枚はやりすぎたかもしれない。低ランクに年契はさすがの俺も焦りすぎていたか。
「ちっ、あいつらが国を出るとかふかしやがるからこんなことになっちまった」
「失礼します。本日の完了済クエストの資料をお持ちしました」
「ああ、カルデローネか。仕事が早いな。それで、あいつらの様子はどうだった? 明日の準備で浮かれていたか」
「……そうですね。明日は動けないだろうからとジャイアントトード狩りに出られました」
「そうか、そうか。明日は一日美味しい料理や酒が飲めるんたからな。まったくうらやましい限りだ。あいつらが一生かかっても得られない味だろうぜ」
「では、これで、失礼いたします」
「ちょっと、待て」
「……何でしょうか?」
「明日の朝はお前があいつらを迎えに行け。宵の月亭は知ってるだろ?」
「申し訳ございません。朝は休息日を頂いておりますので、他の方にお願いをしてください」
「ちっ、そうか。まあ、いい」
今夜は酒でも飲んで、ここ最近のストレスでも発散しておくか。
ようやく肩の荷が下りたと思っていたら、翌朝に部下から嫌な報告を受けた。
「もう一回、言ってみろ」
「それが、あの三人組ですが、昨日から宿に戻っていないようなんです」
「おい、どういうことだ! 慰労会は今日なんだぞ!」
「宿のおかみに話を聞いたのですが、十日分の支払いを受けているから、そのうち戻ってくるはずだとは言っておりました」
「本当だろうな。二度目の延期は洒落にならねぇーぞ」
「ど、どうしましょう」
「すぐにアローヘッドを呼べ。それから、ギルド職員は手分けしてあの三人を探すんだ。確か、カルデローネがジャイアントトード狩りに出たと言っていたはずだ」
「か、かしこまりました。すぐに」
不味いぞ、不味いぞ……不味いぞ。年契に乗り気だったんじゃねぇーのかよ。まさか、いや、そんなわけないよな。
「ギルド長、王宮からの使者がいらっしゃいましたが……」
「くそっ! こんな時に」
「いかがいたしますか」
「決まってるだろ! 応接室で丁重におもてなししろ。すぐに行く」
「あ、あのー、三人組の件は……」
「まだ、何もわかってねぇーんだ。余計なことは言うなよ。絶対にだ!」
「は、はい」
「アローヘッドはまだか。こんな時に何してやがるんだ」
すると、開いている扉を覗くようにしてアローヘッドがやってきた。
「おお、こわい、こわい。そんなにあわててどうしたのさ」
「遅せぇー! 三人組がいなくなった。探しだして、慰労会の開催までに間に合わせるんだ」
「おいおいおい、楽な仕事だと思っていたら……で、探せと言われても、どこを探すのさ」
「昨日、ラウラの森の湖付近にジャイアントトード狩りに行ってから音沙汰がない」
「それは……逃げたんじゃないの?」
「そんなはずはねぇ。こっちは低ランクと年契を結ぶ話までしてたんだ」
「この国から逃げるために、適当に話を合わせてたんじゃないのかって言ってるんだけど」
「そ、そんなはずは……ねぇ」
「仕方ないね……情報がほしい。ニールたちを担当していた受付担当は?」
「……今日は休息日だ」
「はあ!? そいつの家は」
「すぐに知らせる。ちょっと待ってろ」
どうしてこうなった。あいつら、本当に国を出るつもりなのか。どっちへ行く。アルジーラ帝国か? それとも聖イルミナ共和国か?
急ぐなら国境までの距離が近いアルジーラ帝国だ。アローヘッドをどっちに向かわせるのが正解だ。
「キャットアイは!? 金はいくらかかってもいい。どうせ昼寝でもしてんだろ。キャットアイを呼べ」
職員にそう指示を飛ばしたところで、アローヘッドから絶望的なことを聞かされた。
「キャットアイは朝から見てないよ。何なら昨日から見ていないね」
「そんな馬鹿な。あいつは、いつも……くそっ!」
部下の連絡によると、年契の話について前向きに検討しているそうで、契約内容について細かい部分をつめていきたいと言ってきているらしい。
やはり、所詮は低ランク冒険者だ。少し大金をちらつかせればこんなもんだ。あとはじっくり時間を掛けてニールの秘密を探らせればいい。
新しい担当のアローヘッドにな。
キャットアイが契約金額を強引につり上げてきやがったので、すぐに契約を解除した。
こっちが下手に出てたら、出張費まで大幅に請求してきやがった。使い勝手のいい冒険者だったがそろそろ潮どきだったのだろう。
「残念だがキャットアイとは少し距離を置かなければならねぇな。これからは頼むぜアローヘッド」
「ああ、美味しい話なら大歓迎さ」
Aランクの冒険者にとって低ランクのパーティを観察、調査することなど楽な仕事としか言いようがない。普段危険な仕事の依頼が多い分、こういった美味しい仕事というのはある意味特権ともいえる。
「まあ、とりあえずは明後日以降からだがな」
「わかった」
明日は王宮での慰労会がある。さすがに王家のもてなしを受けて酒も飲めばその日は何も動けないだろう。
「一応、気にすることがあるとしたらホワイトドラゴンのブレスらしい」
「ホワイトドラゴン?」
「ああ、調査対象がテイムした従魔なんだが、そのブレスで人が変わったように真人間に変わっちまうらしい」
「それのどこが危険なのさ?」
「犯罪者が天使のような性格に生まれ変わるらしい。しかも、簡単には避けらないらしいぜ」
「それはキャットアイでもかい?」
「そう言っていた」
少し考えるような素振りをみせるアローヘッドだったが、それでも対象への警戒を少し修正する程度かと言って部屋を出ていった。
AランクがDランクを調査するのだからそんなもんなんだろう。
それにしても、白金貨一枚はやりすぎたかもしれない。低ランクに年契はさすがの俺も焦りすぎていたか。
「ちっ、あいつらが国を出るとかふかしやがるからこんなことになっちまった」
「失礼します。本日の完了済クエストの資料をお持ちしました」
「ああ、カルデローネか。仕事が早いな。それで、あいつらの様子はどうだった? 明日の準備で浮かれていたか」
「……そうですね。明日は動けないだろうからとジャイアントトード狩りに出られました」
「そうか、そうか。明日は一日美味しい料理や酒が飲めるんたからな。まったくうらやましい限りだ。あいつらが一生かかっても得られない味だろうぜ」
「では、これで、失礼いたします」
「ちょっと、待て」
「……何でしょうか?」
「明日の朝はお前があいつらを迎えに行け。宵の月亭は知ってるだろ?」
「申し訳ございません。朝は休息日を頂いておりますので、他の方にお願いをしてください」
「ちっ、そうか。まあ、いい」
今夜は酒でも飲んで、ここ最近のストレスでも発散しておくか。
ようやく肩の荷が下りたと思っていたら、翌朝に部下から嫌な報告を受けた。
「もう一回、言ってみろ」
「それが、あの三人組ですが、昨日から宿に戻っていないようなんです」
「おい、どういうことだ! 慰労会は今日なんだぞ!」
「宿のおかみに話を聞いたのですが、十日分の支払いを受けているから、そのうち戻ってくるはずだとは言っておりました」
「本当だろうな。二度目の延期は洒落にならねぇーぞ」
「ど、どうしましょう」
「すぐにアローヘッドを呼べ。それから、ギルド職員は手分けしてあの三人を探すんだ。確か、カルデローネがジャイアントトード狩りに出たと言っていたはずだ」
「か、かしこまりました。すぐに」
不味いぞ、不味いぞ……不味いぞ。年契に乗り気だったんじゃねぇーのかよ。まさか、いや、そんなわけないよな。
「ギルド長、王宮からの使者がいらっしゃいましたが……」
「くそっ! こんな時に」
「いかがいたしますか」
「決まってるだろ! 応接室で丁重におもてなししろ。すぐに行く」
「あ、あのー、三人組の件は……」
「まだ、何もわかってねぇーんだ。余計なことは言うなよ。絶対にだ!」
「は、はい」
「アローヘッドはまだか。こんな時に何してやがるんだ」
すると、開いている扉を覗くようにしてアローヘッドがやってきた。
「おお、こわい、こわい。そんなにあわててどうしたのさ」
「遅せぇー! 三人組がいなくなった。探しだして、慰労会の開催までに間に合わせるんだ」
「おいおいおい、楽な仕事だと思っていたら……で、探せと言われても、どこを探すのさ」
「昨日、ラウラの森の湖付近にジャイアントトード狩りに行ってから音沙汰がない」
「それは……逃げたんじゃないの?」
「そんなはずはねぇ。こっちは低ランクと年契を結ぶ話までしてたんだ」
「この国から逃げるために、適当に話を合わせてたんじゃないのかって言ってるんだけど」
「そ、そんなはずは……ねぇ」
「仕方ないね……情報がほしい。ニールたちを担当していた受付担当は?」
「……今日は休息日だ」
「はあ!? そいつの家は」
「すぐに知らせる。ちょっと待ってろ」
どうしてこうなった。あいつら、本当に国を出るつもりなのか。どっちへ行く。アルジーラ帝国か? それとも聖イルミナ共和国か?
急ぐなら国境までの距離が近いアルジーラ帝国だ。アローヘッドをどっちに向かわせるのが正解だ。
「キャットアイは!? 金はいくらかかってもいい。どうせ昼寝でもしてんだろ。キャットアイを呼べ」
職員にそう指示を飛ばしたところで、アローヘッドから絶望的なことを聞かされた。
「キャットアイは朝から見てないよ。何なら昨日から見ていないね」
「そんな馬鹿な。あいつは、いつも……くそっ!」
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