上 下
77 / 151

76 レア採掘ガチャ1

しおりを挟む
 場所を応接室に移してガチャを回す。やはり、みんなそこまで酔ってはいない。みんなガチャに興味津々なのだ。

 多分、ガチャガチャの機械は僕とルリカラしか見えないだろう。

 それでも、ガチャの景品は見れるから参加してる感じは楽しめるだろう……と思う。

 さて、採掘ガチャ頼むよ。スケルトンガチャだけは勘弁願いたい。マハリトをいっぱい出すんだ。

「おおお、こ、これは……」

「どうしましたか、ニールさん」

 大量の小銀貨を僕の近くに持ってきたカルメロさんが僕の驚きを気にしている。

「いえ、それが、予想外の新しいガチャだったので」

「新しいガチャですか。そ、それは」

「レア採掘ガチャです」

「レア採掘ガチャ!」

 レアという言葉に他のみんなも反応している。昨日回した採掘ガチャの一段階上のものと考えていいだろう。これならマハリトも出そうだよね。

 採掘量や金額からしたら昨日のミスリル鉱石の方が圧倒的に高いはず。しかしながら、ガチャにレアの文字がついているということはアダマンタイトのレア度が反映されてのガチャということだ。

「そうなると、小銀貨ガチャではないのですか?」

 頑張って運び入れた小銀貨が無駄になってしまうのかと思ったカルメロさんはちょっと残念そうな顔をしている。

「いえ、このガチャは小銀貨二枚で回すガチャのようです」

 現れたガチャガチャの機械は昨日の採掘ガチャと同じ形をしていながら、そのボディはシルバーに輝いている。

 投入口には小銀貨のマークと枚数二枚との表記。コインを二枚入れて回すパターンははじめてだ。つまり、二千円ガチャということか。

「小銀貨二枚ということは、その分、昨日のガチャよりもいいということよね?」

 そう確かめるように言ったのはアルベロだ。きっとマハリトの出る確率を気にしているのだろう。それは僕も気になるところ。

「どうだろうね。とりあえず十回分を回してみようか」

 カルメロさんが用意してくれた小銀貨を使わせてもらいガチャを回していく。

 お金を気にすることなくガチャを回すのははじめてのことだ。ここは何とかして結果を出したい。

 マハリト、マハリト、マハリト。とにかく、この十回で一つはマハリトのスクロールを出したい。そうすればこのガチャに負けはないのだ。最悪二十回で一つでもプラマイゼロ。

 今回のガチャでは、マハリト一本を銀貨二枚でカルメロさんが交換してくれる。

 十回まわすと小銀貨十枚、つまり銀貨一枚分になるので、マハリトが出れば銀貨一枚分のプラスになるのだ。目の前には五百回は回せる小銀貨が山のように積んである。

 十回までにマハリト。十回までにマハリトを。

 コイン投入口に小銀貨を二枚入れると、ガチャの採掘場から昨日と同様に入口が光ると何かが現れる。人型ではあるが、これはスケルトンではない。

 グールなのだろう。腐った体を引きずるように血走った紅い目をしながら歩いてくる。片方の目玉は飛び出していて、ぶらんぶらんと揺れている。

 グールの実物をまだ見ていないけど、結構えぐい容姿をされてらっしゃる。暗闇から急にこんなのが現れたら絶対にこわいよ。

 スケルトンと違って悪臭もするって聞くし、このまま出会わずに王都へ戻りたいと思う。

 そしてガチャから何かが現れると気になるのはルリカラだ。僕とガチャガチャの機械の間に立ち臨戦態勢をとっている。

 とってはいるものの、その肉球は動かない。グールを凝視してその手? いや、足は止まっている。

「ルリカラちゃんどうしたのー?」

「あっ、いや、ガチャからグールが出てきてね……」

「ガチャからグール!?」

「あっ、違う違う。その演出的なやつで、本物のグールじゃないんだ」

「そ、そうなのー。あっ、ルリカラちゃん、スケルトンは大丈夫なんだけどー、グールは臭いが苦手みたいでずっと隠れてたよー」

「なるほど、だからかー」

 スケルトン相手には遊んでいたものの、相手が臭いグールとなると躊躇しているらしい。

 しかしながら、ガチャから出てきたグールから特に変な臭いは感じない。そもそも演出であって魔物とは違うと思うんだよね。

 まあ、ここはルリカラの邪魔が入らないということで、ガチャを進めさせてもらおうか。

「では、回します」

 みんなが注目する中、一回、二回と回すとグールが寸劇を始めだす。これはスケルトンの時と同じようだ。

 一体の魔法使いっぽいマントをまとったグールが呪文を唱えながら杖を振るう。

 すると、まるで爆発に巻き込まれたかのように吹き飛ぶグール。肉は吹き飛び、骨が剥き出しとなり、何なら骨も吹き飛ぶ。ん? い、いや、これは、グールではなくスケルトンだ!

 何と吹き飛んだのはグールの衣装を着たスケルトンだったのだ。

 カタカタカタカタと騙されただろと言わんばかりに笑っているような気がする。

 これには、グールはちょっと触りたくないと思っていたルリカラも大興奮。勢い余って全てのスケルトンを弾き飛ばしてみせた。

 ガチャからある程度離れるとスケルトンたちはポフンっと煙になって消えてしまい、再び採掘ガチャの入り口から現れる。仕組みがよくわからないけど、一応は無事らしい。

 急に動きはじめたルリカラを見て「何が起こっているの。解説してよ」というアルベロの強い視線を感じるけど、この寸劇をどう説明すればいいのか僕にはわからない。

 しかしながら、目の前にアイテムが現れたら何が起ったのか理解する。カルメロさんは突如現れたスクロールにものすごく興奮している。

「そ、それは、スクロールですか!」

「あっ、はい。いきなり大当たりでした。マハリトです」

「とんでもないスキルですね! 本当にお金と引き換えにスクロールが出てくるなんて……」

 ということで、その後連続で回した十回分の結果発表といこうか。

 ●マハリトのスクロール×二本
 ●清浄のスクロール×三本
 ●光玉のスクロール×三本
 ●聖水×一本
 ●スケルトン必中の石×一個

 さすがはレア採掘ガチャだ。回した限り、ただの採掘ガチャよりも圧倒的にいい。マハリトのスクロールが二本も出てしまった。

 これは本当に一銭も払わずに全部回せそうだよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。 女神の話によれば、異世界に転生できるという。 ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。 父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。 その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。 食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。 そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...